JP2745340B2 - アルミニウム2ピース缶体の製造方法 - Google Patents

アルミニウム2ピース缶体の製造方法

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JP2745340B2 JP2414783A JP41478390A JP2745340B2 JP 2745340 B2 JP2745340 B2 JP 2745340B2 JP 2414783 A JP2414783 A JP 2414783A JP 41478390 A JP41478390 A JP 41478390A JP 2745340 B2 JP2745340 B2 JP 2745340B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はアルミニウム合金製の
2ピース缶の缶体の製造方法に関するものであり、特に
高強度を有しかつリサイクル容易なアルミニウム2ピー
ス缶缶体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のようにアルミニウム2ピース缶の
缶体は、DI加工による缶胴(DI缶胴)と缶蓋(エン
ド)とによって組立てられ、また通常のイージーオープ
ンエンドの場合は缶蓋にタブが取付けられている。
【0003】これらのうち、缶体の胴材としては、深絞
り性、しごき性、さらにはDI加工−焼付塗装後のネッ
キング加工性、フランジング加工性等に優れていること
が要求され、一般にはAl−Mn系の3004合金H1
9材やH39材が使用されている。近年の薄肉化の要求
に伴ない、胴材としてもより高強度化が要求されるよう
になっているが、従来の3004合金缶胴材でも焼付塗
装後の耐力で 270N/mm2 以上の強度が得られるように
なっている。
【0004】一方缶体の蓋材としては、ビールその他の
炭酸飲料用の缶体の蓋材、すなわち内圧が高くなる用途
の缶体の蓋材では、近年の薄肉化の傾向に伴ない、焼付
塗装後の耐力で 300N/mm2 以上の高強度が要求され、
そこで一般にはAl−Mg系の5182合金が多用され
ており、このほか特に高強度が要求されない蓋材では5
082合金や5052合金も使用され、さらにAl−M
n系の3004合金も使用されることがある。
【0005】なおタブ材は、一般に焼付塗装を施さない
ため、特に高強度は要求されず、耐力 250N/mm2 以上
で曲げ性に優れていれば良く、5182合金、5082
合金、5052合金、3004合金のいずれも上述の強
度は得られ、かつ低加工度であるため、曲げ性に対して
も特に問題はない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、従来の
アルミニウム2ピース缶体の胴材としてはAl−Mn系
の3004合金が一般的であり、蓋材としては内圧が加
わる用途ではAl−Mg系の5182合金が主流であ
る。ところがこのように胴材に3004合金、蓋材に5
182合金を用いた場合、使用後の缶体を回収して再溶
解して、再び2ピース缶体用の材料として用いる場合
(すなわちリサイクル時)に、再生前と同じ缶胴用30
04合金および缶蓋用5182合金を溶製するために
は、新たな純アルミ地金とMg添加用の母合金、その他
若干の成分調整材料を添加して成分調整を行なわなけれ
ばならない不便がある。
【0007】一方、最近では缶体のリサイクルを容易に
するため、缶胴と缶蓋とを同一成分組成の合金で構成す
る所謂ユニアロイ化の試みもなされているが、この場合
最も問題となるのは、内圧が加わる用途の缶体における
蓋材である。すなわち、缶胴のDI加工に要求されるよ
うな良好な成形性を呈し得る成分組成の合金を用いて、
内圧が加わるような用途の缶体の蓋材に要求される高強
度を達成しようとした場合、蓋材としての成形性が著し
く低下してしまう。具体的には、3004合金を缶胴、
缶蓋の両者に共用しようとする提案が既になされている
が、この場合、内圧が加わる用途の缶蓋に要求される焼
付塗装後の 300N/mm2 以上の強度を得るためにはH1
9相当以上の冷間加工が必要となり、蓋材としての成形
性が従来の5182合金と比較して著しく劣ってしまう
問題があった。したがって従来は実際にはユニアロイ化
を達成することは困難であった。
【0008】また従来から、3004合金の強度を向上
させるため、MgやCu等の強化用合金元素を増量して
高強度を達成することが提案されているが、これらの合
金元素を増量した場合、特に缶体の胴材としてはDI加
工性を悪化させ、さらにはDI加工後のフランジ部の加
工性(ネッキング成形性、フランジ成形性)を悪化させ
る等の問題が生じ、そのため単純にMgやCuを増量す
ることは不適当と考えられる。
【0009】 この発明は以上の事情を背景としてなさ
れたもので、蓋材および胴材の強度および成形性を損な
うことなく、リサイクル容易なアルミニウム2ピース缶
体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】前述のような課題を解決
するため、本発明者等が種々実験・検討を重ねた結果、
従来から缶体の胴材に使用されている3004合金に対
してCu,Mgを増量した場合、蓋材としては中間焼鈍
に連続焼鈍を適用することによって蓋材に必要な強度が
得られ、また胴材としては中間焼鈍に高温・長時間の箱
型焼鈍を適用することによって胴材として必要な強度と
良好な成形性が得られること、そしてそればかりでな
く、鋳塊加熱段階で鋳塊断面の金属間化合物の分散状態
を蓋材、胴材のそれぞれに応じた適切な状態に個別に調
整し、最終的に得られる板の金属間化合物を適切に制御
することによって、蓋材、胴材として同じ成分組成の合
金を用いた場合でもそれぞれに応じた適切な性能が得ら
れることを見出し、この発明をなすに至った。
【0011】
【0012】 具体的には、請求項1の発明のアルミニ
ウム2ピース缶体の製造方法は、Mg0.8〜1.8w
t%、Cu0.3〜0.7wt%、Mn0.8〜1.4
wt%、Fe0.1〜0.7wt%、Si0.1〜0.
5wt%を含有し、かつMnとFeの合計量が1.0〜
1.8wt%の範囲内にあり、残部がAlおよび不可避
的不純物よりなるアルミニウム合金をDC鋳造法により
鋳造した後、鋳塊を560〜630℃で2時間以上加熱
して、鋳塊中の無析出物帯の領域が鋳塊断面の平均面積
率で40%以上を占め、かつ析出物帯の析出物の平均径
が0.3〜0.8μmの範囲内となるように調整し、そ
の後所要の板厚となるまで圧延してから1℃/sec以
上の昇温速度で500〜620℃の温度域に加熱して直
ちにもしくは5分以内の保持後1℃/sec以上の降温
速度で冷却する中間焼鈍を行ない、その後圧延率40%
以上の冷間圧延を施して、表面で観察した金属間化合物
の最大径が30μm以下のアルミニウム合金圧延板から
なる蓋材を得、一方Mg0.8〜1.8wt%、Cu
0.3〜0.7wt%、Mn0.8〜1.4wt%、F
e0.1〜0.7wt%、Si0.1〜0.5wt%を
含有し、かつMnとFeの合計量が1.0〜1.8wt
%の範囲内にあり、残部がAlおよび不可避的不純物よ
りなるアルミニウム合金をDC鋳造法により鋳造した
後、鋳塊を530〜600℃で15時間以下加熱して、
鋳塊中の無析出物帯の領域が鋳塊断面の平均面積率で4
0%未満となりかつ析出物帯の析出物の平均径が0.1
〜0.5μmの範囲内となるように調整し、その後所要
の板厚となるまで圧延した後、600℃/hr以下の昇
温速度で370〜500℃の温度域に加熱して1時間以
上の保持後20℃/hr以上の降温速度で200℃以下
まで冷却する中間焼鈍を施し、その後圧延率60%以上
の冷間圧延を施して、表面で観察した金属間化合物の最
大径が30μm以下であって、しかも表面における1.
0μm以上の金属間化合物の数が0.2mm当り80
0〜2000個の範囲内にあるアルミニウム合金圧延板
からなる胴材を得、前記蓋材および胴材を組合せて缶体
を製造することを特徴とするものである。
【0013】
【作用】この発明においては重要なことは、製造プロセ
スにおける中間焼鈍の条件と、鋳塊加熱による鋳塊断面
における金属間化合物分散状態の調整、さらに最終板に
おける金属間化合物の状態であり、以下これらの作用に
ついてその順に説明する。
【0014】先ず中間焼鈍に関しては、3004合金を
べースとしてCu量、Mg量を増量したこの発明で規定
する成分組成範囲(蓋材、胴材とも共通)の合金では、
蓋材向けとして急速加熱、急速冷却の連続焼鈍炉による
中間焼鈍を適用することにより、溶体化効果を期待する
ことができ、そのためその後の時効硬化によって、焼付
塗装後に蓋材に必要な耐力 300N/mm2 以上の強度を充
分に確保することが可能となる。特に蓋材の焼付塗装手
段として最近主流を占めている高温短時間( 220〜 400
℃×5〜180秒)の連続焼付塗装ラインを用いる場合
でも中間焼鈍に連続焼鈍を適用しておけば、焼付塗装時
の強度低下が少なくなり、連続焼付塗装後の耐力で 300
N/mm2 以上を確保することができる。
【0015】一方胴材に関しても、Cu,Mgを増量し
たこの発明の成分組成範囲内の合金であれば、中間焼鈍
として急速加熱、急速冷却の連続焼鈍を適用した場合、
焼付塗装後の強度として胴材に必要な耐力 270N/mm2
以上を容易に得ることができ、かつ缶胴成形のためのD
I加工も可能である。しかしながらその場合、時効硬化
性が過大となってDI加工後のフランジ部の加工時にフ
ランジ部に割れが発生したり成形荷重が大きくなって胴
部に座屈が生じたりする危険がある。そこで中間焼鈍に
箱型焼鈍炉を適用すれば、中間焼鈍から胴材の板厚まで
の冷間圧延率を60%以上と大きくすることができるた
め、フランジ部の加工時の強度上昇が少なくなってフラ
ンジ加工のための成形荷重が少なくて済み、さらには時
効硬化性も小さくなるため成形時の強度も低くなり、し
たがってフランジ部に割れが生じたり、缶胴部に座屈が
生じたりすることを防止できる。しかしながら箱型焼鈍
であっても、従来の一般的な条件、すなわち 350℃×2
時間程度の保持温度、保持時間では、CuがMgと化合
して強度に寄与しない程度の大きさの金属間化合物に成
長してしまうため、強化成分であるCu,Mgの固溶量
が減少し、そのためCuを増量してもむしろ強度が低下
してしまう現象が生じ、胴材として必要な強度を確保で
きなくなることがある。そこでこの発明では、胴材につ
いては高温で長時間の保持( 370℃以上、1時間以上)
の条件の箱型焼鈍炉による中間焼鈍を適用することによ
って、Cu,Mgの固溶量を充分に維持し、胴材として
必要な強度を維持することが可能となった。すなわち、
胴材として必要な強度と良好な成形性(特にフランジ部
の成形性)とを同時に確保することが可能となった。
【0016】次に鋳塊加熱による鋳塊段階での金属間化
合物の分散状態の調整、および最終板における金属間化
合物の制御について説明する。
【0017】この発明で用いる合金のベースとしている
3004合金は、5000番系の合金と比較して金属間
化合物の数、大きさともに大きい。したがってこの金属
間化合物の分散を、胴材、蓋材のそれぞれに応じた適切
な状態とすることによって、各々の性能を充分に発揮す
ることが可能となった。
【0018】すなわち先ず蓋材に関しては、その製造プ
ロセス中における鋳塊の段階で、鋳塊中の無析出物帯の
領域が平均面積率で鋳塊断面の40%以上を占め、しかも
析出物帯における析出物の平均径が 0.3〜 0.8μmの範
囲内となるように、鋳塊加熱によって調整する。
【0019】ここで、鋳塊中の無析出物帯が40%を占め
るように調整することは、マトリックス中で金属間化合
物が存在しない部分を広くすることを意味し、これによ
って成形加工時の材料の流れの障害が少なくなる。また
析出物帯の析出物(金属間化合物)の平均粒径が 0.3〜
0.8μmの範囲内であれば、これらの金属間化合物の存
在が材料の流れの障害となることが比較的少なくなる。
したがってこれらの無析出物帯の条件および析出物帯の
条件を適用することによって、良好な成形性を得ること
ができる。そしてこのような鋳塊断面における析出条件
は、鋳塊加熱を560〜 630℃で2時間以上行なうことに
よって達成できる。
【0020】また蓋材の最終板については、表面におけ
る金属間化合物の最大径(最大長さ)が30μm以上を越
えれば、その大径の金属間化合物が曲げや張り出し時の
割れの起点となりやすく、局部的な伸びを要する加工に
は不適当となるから、最終板の金属間化合物の最大径は
30μm以下とする必要があり、特に20μm以下とするこ
とが好ましい。上述のように最終板の金属間化合物の最
大径を30μm以下とすることは、通常のDC鋳造であれ
ばFeとMnの合計量を 1.8wt%以下とすることによっ
て達成できる。
【0021】一方胴材に関しては、その製造プロセスに
おける鋳塊の段階で、鋳塊中の無析出物帯の領域が平均
面積率で鋳塊の40%未満となり、かつ析出物帯における
析出物の平均径が 0.1〜 0.5μmの範囲内となるよう
に、鋳塊加熱によって調整する。ここで、胴材の製造プ
ロセスで適用している箱型焼鈍炉による中間焼鈍での再
結晶は、典型的なバイモーダルモデルに従うことが知ら
れており、この場合通常は 1μm以上の晶出物が核とな
り、微細析出物がピンニングする。このように晶出物を
核としてその周囲から発生する再結晶粒は通常はR方位
と称される方位の粒となるが、析出物帯が少なく、析出
物帯の析出物が微細であれば、R方位の再結晶の進行が
抑制されるため、胴材について鋳塊中の析出物帯面積率
を40%未満、析出物平均径 0.1〜 0.5μmとすることに
よって、蓋材の場合のように鋳塊中の析出物帯面積率40
%以上、析出物平均径 0.3〜 0.8μmとした場合と比較
して相対的に立方体方位(キューブ方位)を有する再結
晶粒の成長が速くなる。この立方体方位は、冷間圧延後
の深絞り耳を低くする作用があり、そのため深絞り耳が
過大となることなく中間焼鈍後の冷間圧延率を大きくす
ることができ、その結果箱型焼鈍炉による中間焼鈍後で
も強度が得られ、そのためのフランジ部の成形時の強度
を低く保ってフランジ部成形における成形荷重を下げる
ことが可能となり、ひいてはフランジ部成形において割
れや胴部の座屈が生じることを防止できる。そしてこの
ような胴材製造において鋳塊断面の析出条件は、 530〜
600℃の鋳塊加熱で15時間以内の保持とすることによ
って得ることができる。
【0022】また胴材の最終板についても、表面におい
て観察した金属間化合物の最大径(最大長さ)を30μm
以下とする必要がある。金属間化合物の最大径が30μm
を越えれば、その金属間化合物が成形時の割れの起点と
なり易い。そして最大径を30μm以下とすることによっ
て、蓋材の場合と同様に、フランジ部の成形時の割れを
防ぐことができ、かつ缶材の薄肉化に伴なって缶胴側壁
を 100μm程度の薄肉とした場合でも、金属間化合物が
DI加工における缶切れの起点となることを防止でき
る。このように胴材最終板の金属間化合物を30μm以下
にすることは、通常のDC鋳造法においてFeとMnの
合計含有量を 1.8wt%以下とすることによって達成でき
る。
【0023】また同じく胴材の最終板について、板表面
で観察した 1μm以上の金属間化合物の析出物の数を
0.2mm2 当り800〜2000個とすることが好まし
い。このようにすることによってDI加工におけるしご
き加工性を良好にすることができる。なおこのような条
件は、FeおよびMnの合計含有量が 1.0wt%以上では
通常のDC鋳造法によって達成できる。
【0024】そのほか、本願各発明の特徴、作用は次に
記載する成分限定理由や製造プロセスの説明からも明ら
かとなる。
【0025】次にこの発明における成分限定理由を説明
する。
【0026】 Mg:Mgは強度向上に寄与し、また圧
延加工時に剪断帯を発達させて再結晶粒を微細化するに
寄与する。Mg量が0.8wt%未満では胴材としての
強度は得られるが、蓋材としては充分な強度が得られ
ず、一方Mg量が1.8wt%を越えれば蓋材としては
有効であるが、胴材としてはDI成形におけるしごき加
工時に工具の焼付等を生じるおそれがあるから、Mg量
は0.8〜1.8wt%の範囲内とした。
【0027】Cu:CuもMgと同様に強度向上に寄与
する。特にCu添加の場合はGPBゾーンやS′相等の
時効析出による硬化が期待できるため、特に連続焼付塗
装ラインの如く 220〜 400℃の高温で焼付けする場合に
は、連続焼鈍による溶体化処理が効果的であり、焼付け
塗装後の強度低下を少なくするに有効である。Cu量が
0.3wt%未満では蓋材として必要な強度を得ることが困
難となり、一方Cu量が 0.7wt%を越えれば、溶体化後
に常温でも時効してしまうため安定した強度が得られ
ず、また時効硬化性が大き過ぎるため材料が硬化して成
形性が低下する。したがってCu量は 0.3〜 0.7wt%の
範囲内とした。
【0028】Mn:Mnは強度向上に寄与するばかりで
なく、既に述べたような金属間化合物の適切な分散状態
を得るためにFeとともに重要な役割を果たす。ここで
金属間化合物の適切な分散状態の効果としては、例えば
蓋材の場合はAlマトリックス中における無析出物帯の
制御等によって成形性の向上に寄与し、また胴材の場合
は無析出物帯の制御等によって深絞り耳率の低下に寄与
するとともに、比較的大きい( 1μm以上)金属間化合
物の分散により固体潤滑能を得てDI成形のしごき加工
性の向上に寄与する等の効果をもたらす。蓋材、胴材の
いずれの場合でも、Mn量が 0.8wt%未満では金属間化
合物の適切な分散状態が得られず、一方Mn量が 1.4wt
%を越えればFe量との関係で巨大晶出物を生成して成
形性を著しく低下させるおそれがある。したがってMn
量は 0.8〜 1.4wt%の範囲内とした。
【0029】Fe:Mnと同様に金属間化合物の適切な
分散状態を得るために重要な役割を果たす。Fe量が
0.1wt%未満ではその効果が得られず、 0.7wt%を越え
れば成形性を劣化させるから、Fe量は 0.1〜 0.7wt%
の範囲内とした。
【0030】Mn+Fe:Mn量,Fe量は個別的には
前述の通りであるが、金属間化合物の生成には両者が並
存することが必要であるから、金属間化合物の適切な分
散状態を得るためには、両者の合計含有量も考慮する必
要がある。Mn+Feの合計量が 1.0wt%未満では金属
間化合物の適切な分散状態が得られず、一方その合計量
が 1.8wt%を越えれば成形性を劣化させるから、Mn+
Feの合計量を 1.0〜1.8wt%の範囲内とする必要があ
る。
【0031】Si:SiはMg2 Si等の微細析出物を
生成して強度向上に寄与するが、この発明の場合はFe
およびMnの析出を促進させて金属間化合物の適切な分
散状態を得るに寄与する。Si量が 0.1wt%未満ではそ
の効果が得られず、一方 0.5wt%を越えればその効果が
飽和する。またFe/Si比が小さい方が深絞り耳率は
小さくなり、特にFe/Si比を3以下に抑えることが
好ましく、Si量が 0.1〜 0.5wt%であれば通常はこ
れを満たすことができる。したがってSi量は0.1〜 0.
5wt%の範囲内とした。
【0032】なお通常のアルミニウム合金においては、
鋳塊結晶粒微細化のため、Ti単独あるいはTiをBと
組合せて微量添加することがあり、この発明でも微量の
Ti、あるいはTiおよびBを添加することは許容され
る。但しTiを添加する場合その添加量が0.01wt%未満
では鋳塊結晶粒微細化の効果が得られず、一方 0.3wt%
を越えれば成形性を害するから、Tiは0.01〜 0.3wt%
の範囲内とすることが好ましい。またTiとともにBを
添加する場合、Bが1ppm未満ではその効果がなく、一方
500ppmを越えれば成形性を害するからBは 1〜500ppmの
範囲内とすることが好ましい。
【0033】またこのほか、Cr,Zr,Vはいずれも
それぞれ 0.3wt%程度までであれば、この発明の効果を
失わずに強度向上に寄与する。またZnも 1.0wt%程度
までであれば、この発明の効果を失わずに強度向上に寄
与する。
【0034】次にこの発明における製造プロセス、すな
わち蓋材の製造プロセスと胴材の製造プロセスをその順
番に説明する。
【0035】先ず蓋材については、前述のような成分組
成を有するアルミニウム合金鋳塊を常法にしたがってD
C鋳造法(半連続鋳造法)によって鋳造する。
【0036】次いでその鋳塊に対しては、均質化処理と
しての加熱を施した後、熱間圧延前の予備加熱を施す
か、または均質化を兼ねた熱間圧延前予備加熱を施す。
このような鋳塊加熱においては、既に述べたように金属
間化合物析出物が実質的に析出していない無析出物帯の
領域が、鋳塊断面の平均面積率で40%以上を占めるよ
う、換言すれば析出物帯の領域が鋳塊断面の平均面積率
で60%未満となるように、しかも析出物帯における析出
物の平均径が 0.3〜 0.8μmの範囲内となるように調整
する。
【0037】ここで、無析出物帯の面積率について若干
説明を加えれば、鋳塊加熱の昇温過程においては金属間
化合物が分散析出するが、その加熱を高温で長時間行な
うことによって析出物は次第にマトリックス中に溶け込
み、図1に模式的に示すように析出物が群状に残ってい
る領域、すなわち析出物帯1と、析出物がAlマトリッ
クス中に溶け込んで実質的に析出物が存在しなくなった
無析出物帯2とに分かれて行く。この発明では特に蓋材
の製造にあたって鋳塊加熱時の条件により上述の無析出
物帯の平均面積率を40%以上に制御し、かつ析出物帯に
おける析出物の平均粒径を 0.3〜 0.8μmの範囲内に制
御するのである。そのためには、鋳塊加熱条件を 560〜
630℃で2時間以上とすることが好ましい。鋳塊加熱温
度が 560℃未満では、このような分布状態が得ることが
困難であり、鋳塊加熱時間が2時間未満でもこのような
分布状態が得難い。一方鋳塊加熱温度が 630℃を越えれ
ば鋳塊の局部的な融解が生じるおそれがある。なお鋳塊
加熱時間の上限は特に定めないが、通常は経済性の観点
から24時間以内とする。
【0038】なお鋳塊断面の無析出物帯が占有する面積
率は、透過電子顕微鏡を用いて直接観察を行ない、10
〜20視野の無析出物帯を含む領域における無析出物帯
の占有率を直接調べる方法もあるが、次の方法が簡便で
かつ測定における個人差を排除することができる。すな
わち、測定すべき鋳塊の断面をダイヤモンドペースト研
磨あるいはマゴメット仕上研磨等によりミクロ研磨し、
ケラー氏液を約40倍の純水で薄めたエッチング液を用
いて室温にて約60〜80秒浸漬エッチングし、水洗・
乾燥後、光学顕微鏡による断面組織像を画像解析装置を
用いて処理して、晶出物の部分を消すとともに無析出物
帯と析出物帯を2値化し、無析出物帯の占有率を面積率
で求める。このように光学顕微鏡による断面組織像を画
像処理装置で2値化処理した例を図2に示す。図2は図
1に示される断面組織像を処理した場合の例を示すもの
であり、白地の部分が無析出物帯2、網目を施した部分
が析出物帯1をそれぞれ示し、断面組織が2値化されて
いることが判る。
【0039】上述のようにして鋳塊加熱により鋳塊断面
の無析出物帯の面積率および析出物帯の析出物平均粒径
を調整した後、常法にしたがって圧延し、中間板厚とす
る。この圧延は熱間圧延のみによって行なっても、ある
いは熱間圧延と冷間圧延とを組合せて行なっても良く、
さらには冷間圧延のみによって行なっても良い。
【0040】圧延後の中間板厚の板に対しては、連続焼
鈍炉による中間焼鈍を行なう。この中間焼鈍は、昇温速
度 1℃/sec 以上で 500〜 620℃の範囲内の温度に加熱
して、保持なしもしくは5分以内の保持の後、 1℃/se
c 以上の降温速度で冷却する。この連続焼鈍炉による中
間焼鈍は、溶体化効果を得て、その後の時効硬化による
強度向上を図るために有効である。ここで、中間焼鈍の
昇温速度、降温速度が1℃/sec 未満の場合、また加熱
温度が 500℃未満では充分な溶体化効果が得られず、ま
た加熱温度が 620℃を越えれば局部的な溶融が生じるお
それがあり、さらに保持時間が5分を越えれば表面酸化
が生じるおそれがある。したがって各条件を前述のよう
に定めた。
【0041】中間焼鈍後は最終冷間圧延を行なうが、こ
の最終冷間圧延は40%以上の圧延率で行なう必要があ
る。圧延率が40%未満では、強度が最小となる方向の焼
付塗装後の耐力で 300N/mm2 以上を得ることが困難と
なる。なお最終冷間圧延率の上限は特に定めないが、90
%を越えれば成形性を悪化させるから、40〜90%の範囲
内とすることが好ましい。
【0042】最終冷間圧延により得られた最終板厚の圧
延板は、そのまま缶蓋の成形に供しても良いが、 100〜
200℃の範囲内の温度で30分から10時間程度の最終
焼鈍を施せば、時効析出を促進させて、塗装焼付処理に
よる強度低下を少なくすることができる。具体的には、
最終焼鈍を行なうことによって、塗装焼付処理後の耐力
を最大で20N/mm2 程度高めることができる。
【0043】このようにして得られた蓋材の最終板にお
ける金属間化合物分散状態としては、既に述べたように
板表面で観察した金属間化合物の最大径が30μm以下、
より最適には20μm以下となっていることが望ましい。
【0044】なお上述のような蓋材を用いてアルミニウ
ム2ピース缶体を製造するにあたっては、焼付塗装を行
なうのが通常である。この焼付塗装としては低温・長時
間( 100〜 220℃×10〜60分)のバッチ式のものま
たは高温・短時間( 220〜400℃×5〜180秒)の連
続焼付塗装が一般に適用されているが、前述のようにし
て得られたこの発明の蓋材の場合は、いずれの場合も焼
付塗装後の耐力として 300N/mm2 以上の強度が確実に
得られる。すなわち、従来の3004合金の場合には、
低温・長時間の焼付塗装であれば中間焼鈍として連続焼
鈍を適用することによって耐力 300N/mm2 を得ること
ができたが、 220℃以上の高温・短時間の焼付塗装では
急激な強度低下が生じ、耐力 300N/mm2 以上を確保す
ることができなかった。これに対しこの発明の蓋材の場
合は、 220℃以上の高温・短時間の焼付塗装でも急激な
耐力の低下は生じず、 300N/mm2 以上を確保すること
ができる。
【0045】次に胴材の製造プロセスについて説明すれ
ば、この場合も蓋材と同様に所定の成分組成を有するア
ルミニウム合金鋳塊を常法にしたがってDC鋳造法(半
連続鋳造法)によって鋳造する。
【0046】次いでその鋳塊に対して、均質化処理とし
ての加熱を施した後、熱間圧延前予備加熱を施すか、ま
たは均質化を兼ねた熱間圧延前予備加熱を施す。このよ
うな鋳塊加熱においては、既に述べたように金属間化合
物析出物が実質的に析出していない無析出物帯の領域が
鋳塊断面の平均面積率で40%未満となるように、しかも
析出物帯における析出物の平均径が 0.1〜 0.5μmの範
囲内となるように調整する。このような鋳塊中の金属間
化合物析出物分散状態は、 530〜 600℃の範囲内の温度
での15時間以内の保持で得ることが可能である。
【0047】鋳塊加熱後には、常法にしたがって圧延
し、中間板厚とする。この圧延は熱間圧延のみによって
行なっても、あるいは熱間圧延と冷間圧延とを組合せて
行なっても、さらには冷間圧延のみによって行なっても
良い。
【0048】圧延後の中間板厚の板に対しては、箱型焼
鈍炉を用いたバッチ式の中間焼鈍を行なう。この箱型焼
鈍炉による中間焼鈍の条件としては、昇温速度600℃/h
r以下で加熱昇温して 370〜 500℃の範囲内の温度に1
時間以上保持し、20℃/hr以上の冷却速度で 200℃以下
まで冷却することが必要である。このような条件は、C
u,Mgの固溶量を充分に維持し、胴材として必要な強
度を得るに必要であり、昇温速度が 600℃/hr超、加熱
保持温度が 370℃未満、保持時間が1時間未満ではいず
れも充分な固溶量が得られず、また加熱保持温度が 500
℃を越えれば表面酸化が進行して不適当となり、さらに
冷却速度が20℃/hr未満では折角固溶したCu,Mgが
析出してしまって強度が低下する。
【0049】中間焼鈍後は圧延率60%以上で最終冷間圧
延を行なう。このように最終冷間圧延を60%以上の圧延
率で行なうことによって、胴材のフランジ部の成形時に
おけるフランジ部の強度上昇を防止できるとともに、ネ
ッキング成形、フランジング成形における成形荷重を小
さくすることができる。なお最終冷間圧延率の上限は特
に定めないが、90%を越えれば成形性を悪化させるか
ら、90%以下とすることが好ましい。
【0050】最終冷間圧延により得られた最終板厚の圧
延板は、そのまま缶胴の成形に供しても良いが、 100〜
200℃の範囲内の温度で30分〜10時間程度の最終焼
鈍を施しても良く、この場合には塗装焼付処理による強
度低下をより少なくすることができるとともに、材料に
伸びを持たせて深絞り性を良好にすることができる。
【0051】このようにして得られた胴材の最終板にお
ける金属間化合物分散状態としては、既に述べたように
板表面で観察して金属間化合物の最大径を30μm以下と
し、また 1μm以上の金属間化合物の数を 0.2mm2 当り
800〜2000個の範囲内とすることが望ましい。
【0052】なお胴材の最終板については、圧延後(最
終焼鈍を施す場合には最終焼鈍後)に潤滑油を再塗油
(リオイル)することが望ましい。すなわち、圧延後あ
るいは最終焼鈍後に潤滑油を50〜500mmg/m2 程度再塗
油しておくことによって、DI成形における潤滑性が良
好となり、黒筋等のDI成形時における焼付模様の発生
を少なくすることができる。
【0053】以上のようにして得られた蓋材および胴材
は、それぞれ成形加工を施して組合せることにより2ピ
ース缶体とすれば良いが、その段階の具体的方法として
は従来公知の方法を適用すれば良い。
【0054】なおタブ材については特に限定しないが、
前述の蓋材および胴材と同じ成分組成の合金を用いるこ
とができる。
【0055】
【実施例】実施例1:蓋材としては、表1の合金A〜E
を用いた。すなわち、表1のA〜Eの合金についてそれ
ぞれ常法にしたがってDC鋳造し、得られた各鋳塊に対
して鋳塊加熱を施し、さらに熱間圧延を行なった後、一
部のものは冷間圧延を行なってから中間焼鈍を施し、最
終冷間圧延を行なって最終板厚 0.285mmに仕上げ、さら
に一部のものは最終焼鈍を施した。各工程の条件を表2
中の製造番号1〜7に示す。なお中間焼鈍はいずれも連
続焼鈍炉を用い、表2中に示す温度で保持なしとした。
この場合いずれも昇温速度、降温速度が 1℃/sec を大
幅に上廻っている。
【0056】得られた蓋材に対して、連続塗装焼付に相
当する熱処理として、オイルバスによる 270℃×20秒
の熱処理を施した。この熱処理後の耐力と、成形性評価
としてエリクセン値、局部伸び、曲げ性を調べた結果を
表3に示す。また鋳塊加熱直後の鋳塊断面の無析出物帯
の平均面積率と、同じく鋳塊加熱後の鋳塊断面における
析出物帯の金属間化合物平均径を調べ、さらに最終板に
おける金属間化合物の最大径を調べたので、その結果も
表3に示す。
【0057】なお鋳塊断面の無析出物帯の平均面積率は
既に述べた方法によって調べた。また局部伸びは、リベ
ット成形、ディンプル成形、曲げ成形の総合評価を表わ
すものであって、図3に示すように、直径φ= 2mm、先
端曲率R= 1mmの球頭ポンチ5を用い、ダイス板6上に
試験材料板7を載置してプレス成形を行ない、かつポン
チ長さLを 1.0mm〜 1.9mmまで 0.1mmごとに10段階に
変化(この10段階をポンチ長さの短い方から順にラン
ク1、ランク2、……ランク10とする)させ、割れが
発生した段階の1段階手前のランクを表3中に記載し
た。したがってランクの数値が大きくなるほど局部伸び
は良好となる。また曲げ性は、図4に示すように試験材
料板7を曲げた場合に、例えば符号8で示すように割れ
が発生して完全に分離した場合を×印、従来蓋材(51
82合金)よりも亀裂が大きい場合は△印、従来蓋材と
同程度の場合を○印、それより亀裂の発生が少ない場合
を◎印とした。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】以上の表1〜表3に示されるように、製造
番号1により得られた蓋材は、製造プロセスはこの発明
の範囲内であるが、合金として従来の胴材に使用されて
いる3004合金、すなわちCu量がこの発明で規定す
る下限よりも少ない比較材を用いたものであり、この場
合は焼付塗装後の耐力 300N/mm2 以上を得るために最
終冷間圧延の圧延率を90.5%と高めざるを得ず、そのた
め成形性が劣ってしまった。製造番号2により得られた
蓋材は、製造プロセス、合金成分組成ともにこの発明の
範囲内であり、従来の蓋材(5182合金材:製造番号
7)と同程度の性能が得られた。製造番号3により得ら
れた蓋材も、製造プロセス、合金成分組成ともにこの発
明の範囲内のものであるが、最終焼鈍を行なって強度を
向上させているため、所要の強度を得るためには最終冷
間圧延率を小さくすることができ、そのため優れた成形
性が得られた。製造番号4による蓋材は、合金成分組成
はこの発明の範囲内であるが、製造プロセスがこの発明
の範囲から外れ、鋳塊の無析出物帯の面積率および析出
物帯の平均析出物径がこの発明の条件を満たさなかった
ものであり、この場合は成形性に、特に局部伸び、曲げ
性が劣っていた。製造番号5による蓋材は、Mn+Fe
の合計量がこの発明で規定する下限よりも少ない比較材
を用い、製造プロセスはこの発明の範囲内としたもので
あり、この場合は所要の強度を得るために最終冷間圧延
率をやや大きくする必要があり、そのため成形性に劣っ
ていた。製造番号6による蓋材は、Mn+Feの合計量
がこの発明で規定する上限よりも多い比較材を用い、製
造プロセスはこの発明の範囲内としたものであるが、こ
の場合は最終板での金属間化合物最大径が大きくなり、
割れが発生しやすくなって曲げ性が劣っていた。なお製
造番号7による蓋材は、従来から蓋材として使用されて
いる5182合金を用いて、連続焼鈍を適用した従来一
般のプロセスで製造したものである。
【0062】なお蓋材の製造における中間焼鈍として、
箱型焼鈍炉を用いた比較プロセスも適用してみたが、い
ずれの合金でも塗装焼付後の耐力として 300N/mm2
得ることはできなかった。
【0063】一方胴材として、表1の合金符号A〜Dに
示す各合金を用い、それぞれ常法にしたがってDC鋳造
し、得られた鋳塊に対して鋳塊加熱を施し、さらに熱間
圧延を行なった後、中間板厚まで冷間圧延し、中間焼鈍
を行なってから最終焼鈍を施して板厚 0.3mmに仕上げ、
さらに最終焼鈍を施した。各工程の条件を表4に示す。
なお中間焼鈍として箱型焼鈍炉を適用した場合、いずれ
も、その昇温速度は 600℃/hr以下、降温速度は20℃
/hr以上である。
【0064】上述の胴材製造過程における鋳塊加熱直後
の鋳塊断面の無析出物帯の平均面積率および析出物帯の
金属間化合物平均径を調べ、また最終板における表面の
金属間化合物最大径と 1μm以上の径の金属間化合物の
0.2mm2 当りの数を調べたので、その結果を表5に示
す。
【0065】また前述のようにして得られた各胴材に対
して、バッチ式の塗装焼付に相当する 200℃×20分の
熱処理を施した。この塗装焼付相当処理前の各胴材につ
いて、機械的性能として引張強さ、耐力、伸びを調べる
とともに、成形性評価として限界絞り比、しごき性、絞
り耳率を調べ、さらに上述の塗装焼付相当処理後の各蓋
材について、機械的性質として耐力を調べるとともに、
ネッキング荷重と口拡げ性を調べた。その結果を表6に
示す。
【0066】なおここで限界絞り比については、径32mm
φのポンチを用い、絞り可能な限界のブランク径をAmm
φとして、A/32の比で限界絞り比を表わした。また
耳率については、径32mmφのポンチを用い、プラグ径を
58mmφとして、クリアランス30%で絞り耳率を測定し
た。さらにネッキング荷重としては、口絞り率 4%とし
てDI加工後の缶胴に対し口絞りを行ない、その口絞り
での最大荷重で表示した。さらに口拡げ性については、
図5に示すようにDI加工後の缶胴10に対し角部の曲
率半径Rが17mmのダイス11を用いて口拡げを行ない、
破断せずに口拡げ可能であった最大口拡げ量(半径増大
距離)Pを調べ、その値が 5mm以上をOKとし、それ未
満で破断した場合にはその最大口拡げ量Pの値を表示し
た。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】表4〜表6において、製造番号8により得
られた胴材は、従来から胴材として使用されている30
04合金を用いて、連続焼鈍炉を用いた従来の一般的な
製造プロセスで製造したものである。また製造番号9に
よる胴材は、合金成分組成はこの発明の範囲内である
が、鋳塊段階での無析出物帯が広く、かつ中間焼鈍に連
続焼鈍炉を用いた比較プロセスによるものであり、この
場合は強度は得られておりかつ耳率も低いが、時効性が
大きいためフランジ部の強度が高く、ネッキング荷重が
異常に高くなった。その結果、この製造番号9の胴材に
よる缶のみがボトムの座屈(10缶中4缶に発生)、側
壁の座屈(10缶中3缶発生)が生じた。さらに製造番
号10の胴材は、合金成分組成はこの発明の範囲内であ
るが、鋳塊加熱後の無析出物帯が広くなった比較プロセ
スによるものであり、この場合は耳率が異常に高くなっ
た。また製造番号11の胴材は、合金成分組成はこの発
明の範囲内であるが、製造プロセスにおける箱型焼鈍炉
での中間焼鈍温度が低く、塗装焼付相当処理後の強度と
して 290N/mm2 を得ることができなかった。製造番号
12の胴材は、この発明の成分組成範囲内の合金につい
てこの発明の条件範囲内のプロセスを適用したものであ
り、この場合には強度、成形性のすべての面で製造番号
8の従来材と同等かもしくはこれより良好となった。さ
らに製造番号13による胴材は、Mn+Feの合計量が
この発明で規定する下限よりも少ない比較合金を用いた
ものであり、この場合は最終板における 1μm以上の金
属間化合物の数が少なく、しごき性に劣っていた。そし
て製造番号14による胴材は、Mn+Feの合計量がこ
の発明で規定する上限よりも多い比較合金を用いたもの
であり、この場合は巨大晶出物が生じて、口拡げ時の割
れの発生の起点となり、口拡げ性が劣ることとなった。
【0071】さらにタブ材としての性能を調べるため
に、表1の合金符号BおよびEの合金について次のよう
に実験を行なった。
【0072】すなわち、この発明で規定する成分組成範
囲内の合金符号Bの合金、およびタブ材として従来から
使用されている5182合金である合金符号Eの合金に
ついて、常法にしたがってDC鋳造、均熱処理、熱間圧
延、一次冷間圧延を行ない、板厚 0.7mmの段階で中間焼
鈍として 550℃×保持なしの連続焼鈍を行ない、最終冷
間圧延によって板厚0.35mmに仕上げた。
【0073】得られたタブ材について、塗装焼付相当処
理として 200℃×20分の熱処理を施し、その塗装焼付
相当処理後の耐力を調べるとともに、曲げ性を調べた。
その結果、この発明の成分組成範囲内の符号Bの場合
も、従来合金Eと同じく 290N/mm2 の耐力を有すると
ともに良好な曲げ性を有することが判明した。したがっ
てこの発明の成分組成範囲内の合金は、タブ材としても
特に問題はないことが明らかである。
【0074】
【発明の効果】以上の実施例からも明らかなように、こ
の発明によるアルミニウム2ピース缶体は、蓋材と胴材
の合金成分組成が同じであって、所謂ユニアロイ化され
ているから、これをリサイクルするにあたっては缶体の
再溶解後の再生塊から蓋材、胴材のいずれをも得ること
ができ、したがって缶体のリサイクルが容易であり、し
かもそればかりでなく、蓋材、胴材ともにそれぞれに応
じて必要な強度、特に焼付塗装後の高い耐力と、優れた
成形性を有している。具体的には、蓋材としては、内圧
が加わる用途の缶体において要求される焼付塗装後の耐
力300N/mm2 以上の強度を確実かつ充分に確保するこ
とができると同時に、蓋材の成形性として要求される局
部伸び性や曲げ性に優れ、また胴材としては、焼付塗装
後の耐力として望まれる 290/Nmm2以上の強度を確実
かつ充分に確保することができると同時に、胴材の成形
性として要求されるDI加工後の絞り性やしごき性、D
I加工後のフランジ部成形性も優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳塊加熱後の鋳塊断面における無析出物帯を説
明するための鋳塊断面組織の模式図である。
【図2】図1の鋳塊断面組織について画像処理により2
値化した状態の模式図である。
【図3】実施例において局部伸びの評価を行なうための
プレス成形の態様を示す略解図である。
【図4】実施例において曲げ性の評価を行なうために試
料板を曲げた状態を示す模式的な断面図である。
【図5】実施例において口拡げ性の評価を行なうための
口拡げ加工時の状態を示す略解図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 685 C22F 1/00 685Z 686 686A 691 691A 691B 691C 692 692A 694 694A

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg0.8〜1.8wt%、Cu0.3
    〜0.7wt%、Mn0.8〜1.4wt%、Fe0.
    1〜0.7wt%、Si0.1〜0.5wt%を含有
    し、かつMnとFeの合計量が1.0〜1.8wt%の
    範囲内にあり、残部がAlおよび不可避的不純物よりな
    るアルミニウム合金をDC鋳造法により鋳造した後、鋳
    塊を560〜630℃で2時間以上加熱して、鋳塊中の
    無析出物帯の領域が鋳塊断面の平均面積率で40%以上
    を占め、かつ析出物帯の析出物の平均径が0.3〜0.
    8μmの範囲内となるように調整し、その後所要の板厚
    となるまで圧延してから1℃/sec以上の昇温速度で
    500〜620℃の温度域に加熱して直ちにもしくは5
    分以内の保持後1℃/sec以上の降温速度で冷却する
    中間焼鈍を行ない、その後圧延率40%以上の冷間圧延
    を施して、表面で観察した金属間化合物の最大径が30
    μm以下のアルミニウム合金圧延板からなる蓋材を得、
    一方Mg0.8〜1.8wt%、Cu0.3〜0.7w
    t%、Mn0.8〜1.4wt%、Fe0.1〜0.7
    wt%、Si0.1〜0.5wt%を含有し、かつMn
    とFeの合計量が1.0〜1.8wt%の範囲内にあ
    り、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニ
    ウム合金をDC鋳造法により鋳造した後、鋳塊を530
    〜600℃で15時間以下加熱して、鋳塊中の無析出物
    帯の領域が鋳塊断面の平均面積率で40%未満となりか
    つ析出物帯の析出物の平均径が0.1〜0.5μmの範
    囲内となるように調整し、その後所要の板厚となるまで
    圧延した後、600℃/hr以下の昇温速度で370〜
    500℃の温度域に加熱して1時間以上の保持後20℃
    /hr以上の降温速度で200℃以下まで冷却する中間
    焼鈍を施し、その後圧延率60%以上の冷間圧延を施し
    て、表面で観察した金属間化合物の最大径が30μm以
    下であって、しかも表面における1.0μm以上の金属
    間化合物の数が0.2mm当り800〜2000個の
    範囲内にあるアルミニウム合金圧延板からなる胴材を
    得、前記蓋材および胴材を組合せて缶体を製造すること
    を特徴とするアルミニウム2ピース缶体の製造方法。
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