JP2743195B2 - 構造物の振動低減方法 - Google Patents

構造物の振動低減方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は構造物の振動低減方法に関するものであり、
詳しくは橋梁・船舶・車両等から発生する振動を低減さ
せることにより、振動疲労防止と騒音低減を目的とした
振動低減方法に関する。
〔従来の技術〕
近年、都市の過密化と交通機関の発達に伴い振動・騒
音の問題が公害として社会問題化するようになり、振動
・騒音を規制する方向にある。このような動向に対応し
て、既設構造物から新規構造物に至るまで各種振動低減
方法が試みられている。
一般的な振動低減方法としては、ゴム、バネを利用
した振動絶縁方法、各種制振材料を利用した振動吸収
方法、振動部分にマスを付加する方法、これらを組
み合わせた方法があるが、実際にはとが主に使用さ
れている。
〔発明が解決しようとする課題〕
船舶関係では、船の外板の内側に防振塗料を厚く塗り
エンジンからの振動防止に努めているが低周波域では効
果を見いだせるが、騒音として問題となる1(kHz)以
上の高周波域の振動に付いて効果が無く、しかも施工費
が高い欠点がある。
また鉄橋では、列車通過時の振動のうち低周波成分は
付近の建物を振動させ、高周波成分は騒音を発生させる
ためレールの下にゴムパッドを敷いたり吸音材を貼った
りしているが、効果が今一歩足りないうえに維持管理が
大変難しい。
小型構造物である、エアコンやコンプレッサー等でも
同じような状況にある。
このように、船舶・橋梁の大型構造物からエアコン・
コンプレッサーの小型構造物にいたるまで、低周波域か
ら高周波域迄の振動を効率よく安価に低減する方法が無
い状況にある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は上記の欠点を除去するために提案されたもの
で、構造物の全体または一部を基板とし、この基板にそ
れぞれのガラス転移温度がTg(A)、Tg(B)である2
種類の粘弾性高分子材料であって、構造物の使用温度の
下限以下にTg(A)、構造物の使用温度上限以上にTg
(B)があるものを、ガラス転移温度Tg(A)の粘弾性
高分子材料−鋼板−ガラス転移温度Tg(B)の粘弾性高
分子材料−鋼板の順に基板に貼り合わせることにより、
低周波域から高周波域までの振動を効率よく低減出来る
ことを見いだして本発明に至った。
本発明の目的は、大型構造物から小型構造物迄、疲労
強度上問題となる低周波域から騒音として問題となる高
周波域迄の振動を、安価で効率よく低減できる方法を提
供することにある。
〔作 用〕
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者等は、従来より振動を低減する材料の1つと
して、2つの剛性のある基板の中間に粘弾性高分子材料
からなる粘弾性中間層を挟み込んだ3層構造を有する
“制振鋼板”と呼ばれる複合型制振材料を提案してお
り、例えば剛性のある基板が鋼板である場合、自動車の
ダッシュボード・フロアーパネル、搬送設備のストッパ
ー、家電製品、金属加工機械の振動低減部材や振動防止
が望まれる精密機械の構造部材等に採用されている。
こうした実績を踏まえ、粘弾性高分子材料のガラス転
移温度と振動低減効果の関係を鋭意検討した結果、第2
図に示すような関係を発見した。
2枚の鋼板を特定のガラス転移温度を有する粘弾性高
分子材料で挟み込んだ複合型制振材料(以下“制振鋼
板”と呼ぶ)の振動低減効果はガラス転移温度を境にし
て、低温側では高周波域が効果があり高温側では逆に低
周波域が効果がある知見を得た。この知見をガラス転移
温度の異なる2つの粘弾性高分子材料A、Bについて、
それぞれ高周波域と低周波域に分けて振動低減量を示す
と第2図になり、2つのガラス転移温度Tg(A)とTg
(B)の間で低周波域から高周波域迄、振動低減効果が
大きいことがわかる。
即ち、対象とする構造物の使用温度範囲がわかればそ
の温度の上限と下限に相当するガラス転移温度を有する
2つの粘弾性高分子材料を選び、対象とする構造物の基
板に低いガラス転移温度Tg(A)を有する粘弾性高分子
材料Aを塗布し、鋼板2を介して高いガラス転移温度Tg
(B)を有する粘弾性高分子材料Bを塗布し更に鋼板3
を貼合わせた5層構造で、構造物の低周波域から高周波
域までの振動を低減出来ることが判明した。
ここで、鋼板2と鋼板3を粘弾性高分子材料Bで貼合
わせた部分は、制振鋼板となったものをそのまま使用し
ても何等差し支えないが、鋼板2を除去し粘弾性高分子
材料AとBを直接貼合わせた構造にすると、粘弾性高分
子材料A、B間に剛性のあるものが無く、基板1の鋼板
3でサンドイッチされた3層構造の制振鋼板となり、そ
れぞれのガラス転移温度Tg(A)、Tg(B)を有効に利
用した5層構造の振動低減材料とはなり得ず、従って低
周波域から高周波域迄の振動低減効果は期待できない。
また、粘弾性高分子材料AとBは、構造物の基板側に
貼っても鋼板2と鋼板3の間に貼っても振動低減効果は
同じであるが、基板となる構造物の表面状況が複雑であ
ることや粘弾性高分子材料Aのガラス転移温度が粘弾性
高分子材料Bより低いため接着剤としての塗布機能を発
揮しやすいこと、鋼板2と鋼板3でサンドイッチされた
粘弾性高分子材料Bは制振鋼板4として製造しやすいこ
とから、粘弾性高分子材料Aを構造物の基板に貼る方法
が安価で施工が簡単である。
次に、構造物の使用温度範囲は使用場所や季節によっ
ての違いはあるが、2種類の粘弾性高分子材料A、Bの
それぞれのガラス転移温度Tg(A)、Tg(B)が構造物
の使用温度の下限以下にTg(A)があり、構造物の使用
温度以上にTg(B)があれば、大概の環境で低周波域か
ら高周波域迄振動低減効果が発揮出来る。
また粘弾性高分子材料のガラス転移温度は高分子材料
の製造方法や種類によって決まるが、高分子材料に合っ
た可塑剤を添加すれば希望とするガラス転移温度は容易
に得られる。
〔実施例〕
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に
説明する。
実施例は大型構造物の常温に於ける振動低減方法を主
目的としており、基板となる鋼板の厚さを14(mm)と
し、この鋼板にガラス転移温度が−20℃にあり常温でも
貼合わせが可能な水酸基末端液状ジエン系ゴムを主成分
とする主剤に、イソシアネート系硬化剤を混合撹拌した
ものを3(mm)厚塗布し、更にその上にガラス転移温度
が+40℃にあるポリエステル系樹脂を中間層とする制振
鋼板を貼合わせた5層構造のものを使用し、実施例は
基板より薄い制振鋼板、実施例は基板と同じ厚さの制
振鋼板を使用した場合である。
ここで低温側粘弾性高分子材料Aの厚さを3(mm)と
したのは、基板に厚板を使用すると鋼板の平坦度が悪く
なり未接着部が発生するのを防止するためである。
比較例として14(mm)厚の普通鋼板、比較例とし
て従来から構造物の振動部分に使用されてきた防振塗料
を普通鋼板上に10(mm)厚塗布したもの、及び実施例
の中で制振鋼板の部分を普通鋼板に置き換えた3層構造
についても用意した。
振動低減量は機械インピーダンス法により、大型構造
物で疲労強度上問題となる70(Hz)前後の低周波域から
騒音として問題となる5(kHz)位の高周波域迄共振レ
ベルを20℃で測定し、普通鋼板との共振レベル差で評価
した。その結果を第1表に示す。
実施例〜では、いずれの場合も低周波域から高周
波域迄の振動低減量が大きい。また、基板と制御鋼板と
の板厚比が1:1から1:4.5と差があっても振動低減量には
ほとんど差が無く、実施例を採用すれば施工時に僅か
の重量増加で構造物の振動低減対策が可能となり、この
結果効率よく安価な構造物の振動低減方法が実現する。
次に、従来から施工されてきた比較例は、低周波域
では効果があるが高周波域では効果が小さく、施工費が
高くつく割には総合効果は小さい。
また、本発明を2つに分けた3層構造同士の比較例
とは、評価温度よりガラス転移温度が低い比較例は
高周波域で振動低減効果が劣り、逆に評価温度よりガラ
ス転移温度が高い比較例は低周波域の振動低減効果が
劣っており、本発明の基になった知見が再確認された。
以上の結果より、ガラス転移温度を異なる2つの粘弾
性高分子材料を、基板と2枚の鋼板に挟み込んだ5層構
造を構造物に施す方法により、低周波域から高周波域迄
の振動を効率よく低減出来ることが判明した。
〔発明の効果〕 本発明である構造物の振動低減方法は、ガラス転移温
度が異なる2つの粘弾性高分子材料を3枚の金属板に挟
み込んだ5層構造により、構造物の疲労強度に悪影響を
及ぼす低周波振動から騒音として問題となる高周波振動
迄を効率よく低減できる方法であり、産業上極めて有用
である。
さらに、本発明は基板に構造物をそのまま利用するた
め、構造物の強度や剛性を損なう事なく施工出来る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の構成説明図。 第2図は、粘弾性高分子材料のガラス転移温度前後に於
ける振動低減量と振動周波数域の関係を示す図である。 1:基板となる鋼板 2:鋼板 3:鋼板 4:制振鋼板(2+B+3) A:ガラス転移温度Tg(A)を有する粘弾性高分子材料 B:ガラス転移温度Tg(B)を有する粘弾性高分子材料

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】構造物の全体または一部を基板とし、この
    基板にそれぞれのガラス転移温度がTg(A)、Tg(B)
    である2種類の粘弾性高分子材料であって、構造物の使
    用温度の下限以下にTg(A)、構造物の使用温度上限以
    上にTg(B)があるものを、ガラス転移温度Tg(A)の
    粘弾性高分子材料−鋼板−ガラス転移温度Tg(B)の粘
    弾性高分子材料−鋼板の順に基板に重ねて貼り合わせる
    ことを特徴とする構造物の振動低減方法。
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JPS51106190A (ja) * 1975-03-14 1976-09-20 Nippon Steel Corp Boshinyofukugokinzokuban
CA1098542A (en) * 1977-06-06 1981-03-31 Joseph A. Kuczkowski Substituted diphenylamines

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