JP2740541B2 - 皮膚保護剤組成物 - Google Patents

皮膚保護剤組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、シリコーン/アクリル共重合体及び媒体か
ら成る皮膚保護剤組成物に関する。シリコーン/アクリ
ル共重合体は、アルコールなどの汎用の溶剤及び弱アル
カリ水溶液に溶解する非架橋性のものである。共重合体
によって形成された皮膜は優れた特性を示す。
[従来の技術] ヒトの皮膚を化学薬品やその他の刺激性物質などから
守る為の保護被覆剤が知られている。保護被覆剤は皮膚
表面に塗布又はスプレーすることにより、皮膜を形成
し、もって皮膚の保護を図るものである。しかし、アセ
トン、酢酸エチルなどの有機溶剤が皮膚を刺激したり、
皮膜を皮膚から除去するのが容易でないなどの問題があ
った。
本発明者らは先に、中性洗剤を使用する家庭、レスト
ラン、病院、美容院などにおける食器、器具の洗浄者の
皮膚を保護被覆しうる、アクリル酸エチルとメタクリル
酸との共重合体及びエチルセルロースから成る皮膚保護
剤を提案した(特開昭63−104909号公報)。この皮膚保
護剤は、多くの刺激物質を有効に遮断するが、一部の低
分子刺激物質を透過するという欠点を持っていた。
本発明者等は先に、産業用のシリコーン/アクリル共
重合体組成物を提案している(特願昭63−151551号)。
[発明が解決しようとする課題] 本発明の目的は、著しく優れた刺激物質遮断効果を有
し、容易に除去できる皮膜を形成する皮膚保護剤組成物
を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明の要旨は、 (A)一般式: [式中、Xはラジカル重合性基、 R1は、同一又は異なって、炭素数1〜20の炭化水素基
もしくはハロゲン化炭化水素基又はY(但し、Yは (R3は、同一又は異なって、炭素数1〜20の炭化水素
基又はハロゲン化炭化水素基、pは5〜100の数。)で
あり、全てのR1の中でYである基の数は、0、1又は2
個である。)、 R2は炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水
素基、 mは1〜10の数、 nは5〜100の数である。] で示されるけい素化合物1〜15重量%、 (B)アクリル酸アルキル30〜70重量%、 (C)メタクリル酸アルキル0〜30重量%、 及び (D)カルボキシル素含有モノエチレン性不飽和単量体
5〜45重量% を重合させて得られたシリコーン/アクリル共重合体並
びに媒体から成る皮膚保護剤組成物に存する。
成分(A)は、一般式: [上記式中、X、R1、R2、m及びnは前記と同意義で
ある。] で示される。
Xは、例えば、 などである。特に好ましいXは、メタクリロキシ基、ア
クリロキシ基などである。
mは1〜10の数、好ましくは1〜6の数、より好まし
くは3である。mが10よりも大きい場合に、シリコーン
(オルガノポリシロキサン)の効果を妨げる。
R1が炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基である例
は、メチル基、エチル基、フェニル基、トリフルオロプ
ロピル基などであり、好ましくはメチル基である。R1
Yである例は、 (p=5〜100、好ましくは5〜50) などである。
nは、5〜100の数、好ましくは5〜50の数である。
オルガノポリシロキサンが少なければ、官能性、潤滑
性、撥水性などの特徴が発揮されず、多過ぎれば造膜
性、溶解性、他物質との密着性を失う。
R2は、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、ト
リフルオロプロピル基などであり、メチル基であること
が好ましい。
成分(A)は、例えば、 である。
成分(A)を共重合体に含有させることによって、皮
膚上に塗布する場合の塗りひろげやすさと、塗る時、塗
布した後の感触の良さが得られる。成分(A)の量は、
成分(A)〜(D)の合計重量に対して、1〜15重量
%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは3〜6重
量%である。成分(A)の量が1重量%よりも少ない場
合には、皮膜において充分な潤滑性が得られず、15重量
%よりも多い場合には、刺激物質透過防止効果を低減す
る。
成分(B)は、アクリル酸アルキル、好ましくは炭素
数1〜6のアルキルのアクリル酸エステル、特に好まし
くはアクリル酸エチル、アクリル酸プロピル及びアクリ
ル酸ブチルである。成分(B)の量は成分(A)〜
(D)の合計重量に対して30〜70重量%、好ましくは50
〜65重量%である。成分(B)の量が30重量%よりも少
ない場合に、皮膜の柔軟度が不足し、通常溶剤には溶け
にくくなり、70重量%よりも多い場合に、皮膜形成が不
充分である。
成分(C)は、メタクリル酸アルキル、好ましくは炭
素数1〜6のアルキルのメタクリル酸エステル、特に好
ましくはメタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルで
ある。成分(C)の量は成分(A)〜(D)の合計重量
に対して0〜30重量%である。成分(C)の量が、30重
量%よりも多い場合、皮膜が硬くなる。
アクリル酸アルキルは柔軟で、メタクリル酸アルキル
は硬質であるので両者成分の併用で皮膜の剛柔軟性を広
く調節出来る。
成分(D)はカルボキシル基含有モノエチレン性不飽
和単量体であり、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン
酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸半
エステル、フマル酸半エステルなどが例示され、成分
(D)は、皮膚への接着力を更に増し、帯電性を低め、
アミン、アンモニア水などの弱アルカリへの膨潤又は分
散性を与えることにより、共重合体の除去を更に容易に
する。成分(D)の量は、成分(A)〜(D)の合計重
量に対して5〜45重量%、好ましくは10〜40重量%、よ
り好ましくは10〜20重量%である。成分(D)の量が5
重量%よりも少ない場合、皮膜の除去が容易でない。45
重量%よりも多い場合、撥水性及び耐水性が低下し、皮
膜が硬くなる。
シリコーン/アクリル共重合体には、前記成分以外の
他の単量体を共重合させることもできる。他の単量体の
例は、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレー
ト、N−ビニルピロリドンなどのビニル単量体である。
他の単量体の量は、本発明の効果を損なわないように、
成分(A)〜(D)の合計重量100重量部に対して20重
量部以下であることが好ましい。
シリコーン/アクリル共重合体の重量平均分子量は、
GPC法により測定して、通常、5万〜130万、好ましくは
10万〜80万である。
シリコーン/アクリル共重合体は、前記単量体から通
常知られた重合方法により容易に製造することができ
る。
重合方法は、溶液重合、乳化重合いずれの方法でもよ
い。一例として溶液重合は、媒体の存在下、単量体を重
合開始剤の存在下加熱攪拌して行う。媒体は、例えば、
メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセト
ン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、エ
チレングリコールモノアルキルエーテルなどである。重
合開始剤は、例えば、ジベンゾイルパーオキサイド、キ
ュメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオ
キシジカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなど
の油溶性重合開始剤である。
乳化重合は、水、乳化剤、水溶性重合開始剤及び単量
体から成る分散液を加熱攪拌して行う。乳化剤は、アニ
オン性又は非イオン性の界面活性剤が好ましく、例え
ば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルザルコシンナ
トリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、モノ
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、セスキオレ
イン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリン、しょ
糖脂肪酸エステルなどである。水溶性重合開始剤は、例
えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水
素、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどであり、時
には更に亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸な
どの還元剤を併用してもよい。
共重合体溶液又は共重合体乳化液はそのまま皮膚保護
剤組成物としてもよいが、好ましくは溶液重合液へは、
水、エチレングリコール、炭化水素系溶剤(例えば、n
−ヘキサン)などを添加し、乳化重合液へは酸、硫酸ナ
トリウム、塩化カルシウムなどの塩類水溶液などを添加
して共重合体を析出し、洗浄、精製、乾燥後、共重合体
に媒体を添加し、皮膚保護剤組成物とする。
本発明の皮膚保護剤組成物は、シリコーン/アクリル
共重合体及び媒体から成る。皮膚保護剤組成物は、溶
液、クリーム、又はスプレー液であってよい。媒体は通
常溶剤であることが好ましく、通常溶剤は、低級アルコ
ール、その他一般塗布剤、クリーム、スプレー液などに
通常使用される溶剤であってよい。特に好ましい媒体
は、エタノールもしくはイソプロパノール又はそれらの
水との混合媒体である。皮膚保護剤組成物は溶液である
ことが好ましく、溶液において共重合体の濃度は、通
常、1〜30重量%、好ましくは5〜10重量%である。水
/アルコールの溶液とする場合、水/アルコールの組成
は広く変更できる。
皮膚保護剤組成物には他の樹脂の配合も容易で、セル
ロース系誘導体、例えば、エチルセルロース、ヒドロキ
シプロピルセルロースなどの添加はフイルム特性の改善
に有用である。
共重合体によって形成された皮膜は、食用油、油ミス
ト、食品(例えば、ケチャップ、ソース、醤油)、イン
キ、クレヨン、マジックインキなどの汚れがつきにく
く、あるいは除去しやすい。皮膜は弱アルカリ水又はエ
タノールなどで完全に除去できる。
[発明の効果] 本発明の皮膚保護剤組成物は、刺激物質、例えば、ペ
リラアルデヒド、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリ
ウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシ
ジンに対する透過防止効果が著しく高い。
本発明皮膚保護剤は、極小量を皮膚に塗布することに
より、極めて薄い皮膜を形成する。形成された皮膜は十
分に耐水性及び耐酸性があり、汚染されず、伸びがあっ
て且つ柔軟で、皮膚に違和感を与えることなく、よく密
着する。更に刺激性が少なく、著しく優れた刺激物質透
過防止効果があるので皮膚に対して極めて安全である。
皮膜は石鹸水などの弱アルカリ水溶液又はアルコールな
どで極めて容易かつ完全に除去出来る。
[発明の好ましい態様] 以下、実施例、比較例及び試験例を示し、本発明を具
体的に説明する。
実施例1 酢酸エチル中の溶液重合で、ジイソプロピルパーオキ
シジカーボネートを触媒として、下記の単量体組成で共
重合体を製造した。攪拌機付密閉型反応器を窒素置換
し、酢酸エチル75重量部を仕込み反応器内を55℃に調節
したのちジイソプロピルパーオキシジカーボネート1.0
重量部を添加し、ついで下記の単量体の混合物 けい素化合物A 10重量部 メタクリル酸メチル(MMA) 15〃 アクリル酸エチル(EA) 60〃 メタクリル酸(MAA) 15〃 及び0.5%ジイソプロピルパーオキシジカーボネート酢
酸エチル溶液100重量部を反応器内を55℃に維持しなが
ら4時間にわたって添加した。反応器内を55℃で2時
間、更に77℃で3時間攪拌を続け反応を完結させ室温ま
で冷却した。
ミキサーに上記反応溶液を入れ、せん断攪拌しながら
n−ヘキサン1000重量部を徐々に添加して共重合体を析
出させ、濾過、n−ヘキサンで洗浄、乾燥した。共重合
体の収率は94%であった。共重合体のGPCによる重量平
均分子量は12.2×104であった。この共重合体をエタノ
ールに30%の濃度で溶解させ、透明な溶液を得た。
実施例2〜6 第1表に示す単量体を使用する以外は、実施例1と同
様の手順を繰り返して共重合体を調製し、共重合体の30
%エタノール溶液を得た。単量体組成及び共重合体の重
量平均分子量を第1表に示す。
実施例7 エタノールに代えてエタノール/水混合溶剤(重量比
70/30)を使用する以外は、実施例1と同様の手順を繰
り返して、共重合体の30%溶液を得た。
実施例8 けい素化合物A3重量部、メタクリル酸メチル25重量
部、アクリル酸ブチル57重量部及びアクリル酸15重量部
を使用する以外は、実施例1と同様の手順を繰り返して
共重合体の30%エタノール溶液を得た。
比較例1及び2 第1表に示す単量体を使用する以外は、実施例1と同
様の手順を繰り返して共重合体を調製し、共重合体の30
%エタノール溶液を得た。単量体組成及び共重合体の平
均分子量を第1表に示す。
なお、けい素化合物の構造式は次のとおりである。
試験例 実施例1〜6と比較例1及び2で得られた溶液を用い
て次の試験を行った。
1)皮膜透過性 テーブルコーターを用いて溶液から厚さ約50μmの皮
膜を作成し、この皮膜について薬物の透過防止効果をin
vitroにて評価した。透過面積10cm2のフランツ型セル
に、0.45μmメンブランフィルターをサポートとして皮
膜を装着し、レセプター部に精製水を満たした後、薬物
の1%水溶液1mlをドナー部に添加し、レセプター部に
透過する薬物量を経時的に測定することによって、薬物
の累積透過量を求めた。分子量の異なる刺激物質のモデ
ルである薬物として、ベンジルアルコール、安息香酸ナ
トリウム、塩化ベンザルコニウム及びグルコン酸クロル
ヘキシジンを使用した。薬物の累積透過量を第1図〜第
6図に示す。
実施例1〜6から得られた皮膜は、比較例1及び2で
得られた皮膜よりも透過防止効果が著しく良好である。
本発明の皮膚保護剤組成物が、著しく良好な刺激物質の
透過防止効果を有する皮膜を形成することがわかる。
実施例1及び実施例4の溶液にエチルセルロース(E
C)を溶液に対して0.5重量%、1.0重量%及び2.0重量%
添加して得られた溶液から皮膜を形成し、ベンジルアル
コールの透過防止効果を評価した。累積透過量の結果を
第7図及び第8図に示す。エチルセルロースを添加して
も透過防止効果がほとんど低下しないことがわかる。
2)造膜性 清浄なポリエチレングリコールテレフタレート(略称
PET)フイルムにドクターナイフをもちい、固形分5g/m2
になるよう溶液を塗布して、常温で自然乾燥した。全て
の溶液が、透明で粘着感なく、滑性あり光沢あるちみつ
で良好な皮膜を形成した。
3)耐ブラッシング性 上記PETフイルム塗布品について耐摩耗試験機によ
り、綿金巾3号摩耗子(荷重200g)を50回往復させて皮
膜の状態を観察した。いずれの皮膜にも異常はみられな
かった。
4)塗布膜の除去性 上記PETフイルム塗布品に、2%アンモニア水、エタ
ノールを滴下し、皮膜の除去性を観察した。
いずれの皮膜もアンモニア水では2分後に皮膜が剥離
膨潤し布で容易に完全除去できた。エタノールには2分
後に溶解し、布で完全に除去できた。
なお、実施例2、実施例3及び実施例1の溶液から形
成された皮膜(厚さ26μm)の物性を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第8図は、ベンジルアルコール、安息香酸ナト
リウム、塩化ベンザルコニウム及びグルコン酸クロルヘ
キシジンの皮膜透過性を示すグラフである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)一般式: [式中、Xはラジカル重合性基、 R1は、同一又は異なって、炭素数1〜20の炭化水素基も
    しくはハロゲン化炭化水素基又はY(但し、Yは (R3は、同一又は異なって、炭素数1〜20の炭化水素基
    又はハロゲン化炭化水素基、pは5〜100の数。)であ
    り、全てのR1の中でYである基の数は、0、1又は2個
    である。)、 R2は炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素
    基、 mは1〜10の数、 nは5〜100の数である。] で示されるけい素化合物 1〜15重量%、 (B)アクリル酸アルキル 30〜70重量%、 (C)メタクリル酸アルキル 0〜30重量%、 及び (D)カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和単量体
    5〜45重量% を重合させて得られたシリコーン/アクリル共重合体並
    びに媒体から成る皮膚保護剤組成物。
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