JP2740524B2 - アミラーゼ阻害物質n−61 - Google Patents

アミラーゼ阻害物質n−61

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JP2740524B2
JP2740524B2 JP63217223A JP21722388A JP2740524B2 JP 2740524 B2 JP2740524 B2 JP 2740524B2 JP 63217223 A JP63217223 A JP 63217223A JP 21722388 A JP21722388 A JP 21722388A JP 2740524 B2 JP2740524 B2 JP 2740524B2
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  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は,ストレプトマイセス(Streptomyces)属菌
から得られる新規アミラーゼ阻害物質N−61に関する。
(従来の技術) アミラーゼ阻害物質に関する研究は古くから行われて
おり,植物,微生物などに由来するペプチド系およびオ
リゴ糖系のいくつかのアミラーゼ阻害物質が知られてい
る。
植物由来のアミラーゼ阻害物質としては,コムギから
得られた耐熱性の塩基性タンパクが特に有名である。微
生物由来のアミラーゼ阻害物質としては,上田らのペプ
チド様物質(Agric.Biol.Chem.,37,2025(1973)),村
尾らのHaim(Agric.Biol.Chem.,44,1679(1980))およ
びPaim(Agric.Biol.Chem.,47,453(1983)),後藤ら
のX−2(特公昭第54−11395号公報),原田らのAI−
B(特公昭第59−10193号公報),宮川らのI−1001C
(特開昭第61−74587号公報),フォルカー エーディ
ングら(特公昭第62−36040号公報)などに記載のペプ
チド系の阻害物質が知られている。
アミラーゼ阻害物質は臨床診断のための各種分析用試
薬として有用である。例えば,急性膵炎時の臨床診断の
ために行われる血清アミラーゼの活性測定において,膵
臓アミラーゼのみを特異的に阻害するアミラーゼ阻害物
質が得られれば,膵臓アミラーゼと唾液アミラーゼとを
分別定量することが可能となり,臨床的な意義が大き
い。
従来知られている微生物起源の阻害物質のうち,ヒト
その他の動物由来の膵臓アミラーゼを選択的に失活さ
せ,唾液アミラーゼ,ならびに細菌由来およびカビ由来
のアミラーゼを失活させない阻害物質は,原田ら(前
出)のアミラーゼ阻害物質だけである。フォルカー エ
ーディング(前出)のアミラーゼ阻害物質は,膵臓アミ
ラーゼを強く阻害すると記載されているが,唾液アミラ
ーゼに対する作用については明らかにされていない。上
記原田ら(前出)の阻害物質はpH5.5〜10.0の間では安
定であるがpH4.0以下では37℃,1時間の処理で完全に失
活し,中性条件下においても100℃,30分の処理で完全に
失活する。そのため,種々のpHおよび温度で行われる臨
床検査の試薬として使用するためには,酸性条件下にお
ける安定性および熱安定性が十分ではない。従って,よ
り広いpH範囲および温度範囲で安定である阻害物質の開
発が望まれている。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は上記従来の課題を解決するものでありその目
的とするところは,動物由来の膵臓アミラーゼを選択的
に阻害し,唾液アミラーゼおよび細菌由来のアミラーゼ
をほとんどまたは全く阻害しないという作用特異性を有
し,広いpH範囲および温度範囲において作用しかつ安定
であるアミラーゼ阻害物質を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明のアミラーゼ阻害物質N−61は次の性質を有す
る。
作用:ヒト,ブタ,ネコ,ウマ,ヒツジ,ヤギ,ウ
シ,イヌおよびヘビの膵臓アミラーゼを阻害し;ヒト唾
液アミラーゼをほとんど阻害せず;ウサギおよびモルモ
ットの膵臓アミラーゼ,バチルス属菌由来のα−アミラ
ーゼ,ダイズおよびオオムギのβ−アミラーゼ,リゾプ
ス属菌由来のグルコアミラーゼ,シュウドモナス属菌由
来のイソアミラーゼ,ペプシン,トリプシンおよびα−
キモトリプシンを阻害しない, 安定pH範囲および熱安定性:pH2〜12で30℃において24
時間にわたり安定であり,pH3〜9で100℃において15分
間にわたり安定である, 分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による
分子量は約8,000である, 等電点:アンフォラインを担体として用いた等電点は
4.1である,および 紫外線吸収スペクトル:極大吸収は約277nmであり,
極小吸収は約252nmである。
本発明のアミラーゼ阻害物質N−61は,ストレプトマ
イセス(Streptomyces)属菌,特にストレプトマイセス
ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogen
es)に属する株により生産される。例えば,発明者らに
より土壌から分離された次の菌学的性質を有する菌株に
より生産される。ここで,培養温度は特に記載のない限
り30℃である。
1.形態 単純分枝であり,胞子は気菌糸上のみに10個以上がら
せん状に形成される。胞子表面は有刺型であり,胞子の
大きさは(1.0〜1.3)×(0.7〜0.8)μmである。胞子
嚢の形成は見られない。
2.各種培地での生育状況 1)イースト・麦芽寒天培地 発 育:オリーブイエロー 気菌糸:豊富で盛り上がり,綿状,灰色がかった
緑 可溶性色素:オリーブイエロー 2)オートミール寒天培地 発 育:明るい灰色 気菌糸:豊富で綿状,灰色がかった緑 3)スターチ・無機塩寒天培地 発 育:灰色がかった黄色 気菌糸:豊富で綿状,灰色がかった緑 4)グリセリン・アスパラギン寒天培地 発 育:灰色がかった黄色,貧弱 気菌糸:粉状でわずか,白色 5)チロシン寒天培地 発 育:灰色から濃い灰色がかった褐色 気菌糸:豊富で綿状,灰色がかった緑色 6)シュークロース・硝酸寒天培地 発 育:無色,貧弱 気菌糸:豊富で綿状,灰色がかった緑色, 7)グルコース・アスパラギン寒天培地 発 育:灰色がかった黄色,貧弱 気菌糸:なし 8)栄養寒天培地 発 育:灰色がかった黄色,わずかにしわがある 気菌糸:ほとんどなし,白色 9)ベネット寒天培地 発 育:オリーブ色からオリーブがかった濃褐
色,しわがある 気菌糸:綿状で豊富,灰色がかった緑色 10)スターチ合成寒天培地 発 育:灰色がかった黄色から灰色 気菌糸:豊富で綿状,灰色がかった緑色 11)ペプトン・イースト・鉄寒天培地 発 育:オレンジイエローから無色 気菌糸:なし 3.生理学的および生化学性質 1)生育温度範囲:16〜40℃で生育し,至適生育温度は3
7℃付近である 2)ゼラチンの液化:陽性(グルコース・ペプトン・ゼ
ラチン培地および単純ゼラチン培地) 3)スターチの加水分解:陽性(スターチ寒天培地) 4)脱脂牛乳の凝固:陰性 5)脱脂牛乳のペプトン化:陽性 6)メラニン様色素の生成:ペプトン・イースト・鉄寒
天培地およびトリプシン・イーストブロス寒天培地で陰
性であるが,チロシン寒天培地では陽性 7)硝酸塩の還元:陽性 4.炭素源の同化性(ブリドハム・ゴットリーブ寒天培
地) D−グルコース,D−キシロース,L−アラビノース,L−
ラムノース,D−フラクトース,D−ガラクトース,ラフィ
ノース,D−マンニトール,イノシトール,サリシンおよ
びマンノースを利用し,シュークロースを利用しない。
この菌株を,上記菌学的諸性質をもとにバージェイズ
マニュアル オブ ディタミネイティブ バクテリオ
ロジー第8版(1974)〔Bergey's Manual of Determina
tive Bacteriology,8th,Edd.(1974)〕に基づいて比較
すると,グリーンシリーズ(Green to grayish Green)
に属する菌に一致する。さらに,インターナショナル
ジャーナル オブ システマティック バクテリオロジ
ー(International Journal of Systematic Bacteriolo
gy)第18巻69−189頁(1968),同第18巻279−392頁(1
968),同第19巻391−512頁(1969)および同第22巻265
−394頁(1972);およびワクスマン(Waksman)著“ア
クチノマイセス(The Actinomycetes)”第2巻に基づ
いて比較すると,本菌株はストレプトマイセス ビリド
クロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)によ
く一致する。発明者らはこの菌株をストレプトマイセス
ビリドクロモゲネスN−61株と命令した(微工研菌寄第
10246号)。
培養条件 上記菌株の培地は格別である必要はなく,通常の培地
が用いられる。炭素源としては,デンプン,グリセリ
ン,グルコース,シュークロースなどが用いられる。窒
素源としては,ポリペプトン,肉エキス,ダイズタンパ
ク,総合アミノ酸などが用いられる。無機塩類として
は,食塩(NaCl),リン酸一カリウム,リン酸二カリウ
ム,硫酸マグネシウムなどが用いられる。その他,必要
によりビタミン類などの微量栄養素が加えられる。例え
ば,種培養およびアミラーゼ阻害物質生産用の培地とし
て次の組成の培地が好適に用いられる。
種培養を行うには,pH6〜8,好ましくは7.0,培養温度25
〜30℃,好ましくは25℃にて好気的に撹拌または振盪し
ながら約48時間培養を行う。次いで,この培養液をアミ
ラーゼ阻害物質生産のための生産用培地に接種し,培養
pH6〜8,好ましくは7.0,培養温度は25〜30℃,好ましく
は25℃にて好気的に攪拌または振盪しながら約42時間培
養を行う。本発明のアミラーゼ阻害物質は菌体外に分泌
され,培地中から回収され得る。
阻害物質の採取法 上記培養液から本発明のアミラーゼ阻害物質を採取・
精製するには既知の精製法が単独もしくは併用して利用
され得る。例えば,培養液を濾過または遠心分離にかけ
て菌体を除去し,濾液または上清液を得る。この濾液ま
たは上清液は,必要に応じて濃縮し,限外濾過または透
析を行なう。これをさらに,硫酸アンモニウム(硫安)
などにより塩析した後に透析し,次いで陰イオン交換セ
ルロース,陰イオン交換ゲルなどによるイオン交換クロ
マトグラフィー,疎水クロマトグラフィーなどの各種ク
ロマトグラフィー(例えば,DEAEセルロース,TEAEセルロ
ース,SP−セファデックスC−50,SP−トヨパール,セフ
ァデックスG−50など)を単独でもしくは組み合わせて
用いることによって精製を行う。精製法の一例を次に示
す。
(1)培養液から菌体を除去した後,硫安(80%飽和)
による塩析を行い,得られた沈澱を溶かし透析を行う。
これを,(2)DEAEセルロースカラムクロマトグラフィ
ー(pH6.0,0〜0.5M NaCl濃度勾配)にかけた後,透析を
行う。次いで,(3)TEAEセルロースカラムクロマトグ
ラフィー(ph6.0;0〜0.5M NaCl濃度勾配)にかけた後,
透析を行う。(4)透析内液をSP−セファデックスG−
50カラムクロマトグラフィー(pH3.0,0〜0.7M NaCl濃度
勾配)にかける。(5)硫安により塩析し,得られた沈
澱を溶かしセファデックスG−50カラムクロマトグラフ
ィーにかけた後,透析を行う。(6)透析内液をSP−ト
ヨパールカラムクロマトグラフィー(pH3.0,0〜1.0M Na
Cl濃度勾配)にかけ,アミラーゼ阻害活性を示す2つの
画分IおよびIIを得る(第3図)。(7)それぞれの画
分を凍結乾燥し,精製標品を得る。
このような方法で精製した2種類のアミラーゼ阻害物
質は,スラブ電気泳動でいずれも単一のバンドを示す。
以下に示すアミラーゼ阻害物質の性質は,このようにし
て画分Iから得た精製標品を用いて調べられた。
アミラーゼ阻害活性測定法 コントロールとなるアミラーゼ活性は次のようにして
測定される。
約2単位のブタ膵臓アミラーゼを含有する酵素溶液0.
2mlに精製水0.2mlを添加し,37℃で5分間プレインキュ
ベーションする。次いで,この溶液に1.5%可溶性デン
プン溶液(0.1Mトリス−塩酸緩衝液溶液;pH7.0)0.8ml
を添加し,37℃で10分間反応させる。この反応液に,0.5N
酢酸(CH3COOH)と0.5N塩酸(HCl)との5:1混合液2mlを
添加して振盪することによりアミラーゼ反応を停止させ
る。この溶液0.1mlを採取し,0.005%ヨウ素および0.05
%ヨウ化カリウムを含有する溶液5mlを添加して振盪
し,室温で20分間放置する。この溶液の660nmにおける
吸光度を測定し,この吸光度をCとする。別にブランク
として上記アミラーゼ酵素液の代わりに精製水を用いた
反応系を調製し,同様の操作を行って得られた吸光度を
Bとする。このようにして得られた吸光度CおよびBか
らアミラーゼ活性Aが次式(I)を用いて算出される。
このAの計算値が0.35であるときをアミラーゼ活性の1
単位とする。
A=(B−C)/B (I) 従って,阻害物質が存在しない場合のアミラーゼ活性
をA0とすると,A0は上記アミラーゼ活性測定と同様にし
て測定され,得られた吸光度をT0とすると,次式(II)
を用いて算出される。
A0=(B−T0)/B (II) アミラーゼ阻害物質の阻害活性は次のようにして測定
される。
上記アミラーゼ活性測定のための反応系中の精製水0.
2mlの代わりに,阻害物質の溶液0.2mlを用いた反応系を
調製し,同様の操作を行う。この操作によって得られた
吸光度をTiとする。阻害物質が存在する場合のアミラー
ゼ活性をAiとすると,Aiは次式(III)を用いて算出され
る。
Ai=(B−Ti)/B (III) 阻害物質が存在する時の阻害率(%)Iとすると,Iは
次式(IV)を用いて算出される。
I=(A0−Ai)×100/A0 (IV) 上記ブタ膵臓アミラーゼ活性の2単位を50%を阻害す
るアミラーゼ阻害物質の量を1阻害単位(1U)とする
と,以上の式(I)〜(IV)から,アミラーゼ阻害物質
の阻害活性は次式(V)を用いて算出される。
阻害活性=(A0/0.7)×(I/50) ×阻害物質の希釈倍数 (V) 阻害物質の性質 本発明のアミラーゼ阻害物質N−61の理化学的性質を
以下に示す。
作用 ブタ膵臓アミラーゼの代わりに種々のアミラーゼ,お
よびプロテアーゼを用い,アミラーゼ阻害活性測定法に
準じて測定を行った。反応条件はそれぞれのアミラーゼ
およびプロテアーゼの反応に適した条件とした。
その結果,ヒト,ブタ,ネコ,ウマ,ヒツジ,ヤギ,
ウシ,イヌおよびヘビの膵臓アミラーゼを阻害した(特
に,ヒト膵臓アミラーゼを強く阻害した)が,ヒト唾液
アミラーゼをほとんど阻害せず,ウサギおよびモルモッ
トの膵臓アミラーゼ,バチルス属菌由来のα−アミラー
ゼ,ダイズおよびオオムギのβ−アミラーゼ,リゾプス
属菌由来のグルコアミラーゼ,シュウドモナス属菌由来
のイソアミラーゼ,ペプシン,トリプシン,およびα−
キモトリプシンを阻害しないことがわかった。
このことから,本発明の阻害物質N−61はヒト,ブタ
などの多くの動物由来の膵臓アミラーゼを選択的に阻害
し,唾液アミラーゼをほとんど阻害せず,植物由来,細
菌由来およびカビ由来のアミラーゼを阻害しない阻害物
質であり,さらにプロテアーゼにも作用しないことが明
らかである。
安定pH範囲および熱安定性 本阻害物質N−61をpH2〜12の範囲の12種のpHの緩衝
液にそれぞれ溶解し,30℃で24時間保持した後,pHを1Mト
リス−塩酸緩衝液(pH7.0)を用いて中性域に調整し,
残存阻害活性を上記測定法に従って測定した。その結果
を第1図に示す。別に,各pHにおいて100℃で15分間保
持した後,同様にpHを中性域に調整し,残存阻害活性を
測定した。その結果を第1図に破線で示す。使用した緩
衝液は,pH2〜3では50mM塩酸−酢酸ナトリウム緩衝液
(図中○印),pH4〜6では50mM酢酸緩衝液(図中●
印),pH7〜8では50mMトリス−酢酸緩衝液(図中×
印),pH9〜11では50mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝
液(図中△印),pH12では50mM水酸化ナトリウム−リン
酸水素二ナトリウム緩衝液(図中□印)である。第1図
から,安定pH範囲は30℃でpH2〜12,そして100℃ではpH3
〜9であることがわかる。このように,本阻害物質N−
61は広いpH範囲において加熱条件下においても安定であ
り,特にpH3〜9において極めて安定である。
分子量 ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動によると単一のバンドが得られる。SDS
−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量は約8,
000である。
等電点 担体としてアンフォラインを用いて測定した等電点は
4.1である。
紫外線吸収スペクトル 極大吸収は277nm付近であり,極小吸収は252nm付近で
ある。この紫外線吸収スペクトルのチャートを第2図に
示す。
呈色反応 銅フォーリン法で青色を呈する。
阻害剤 本阻害物質N−61 25単位を含有する溶液(pH7.0)
に下記に示す化合物を存在させ,30℃で60分間処理した
後,アミラーゼ阻害活性測定法に準じて残存阻害活性の
測定を行なった。
その結果,本阻害物質N−61は,エチレンジアミン四
酢酸二ナトリウム(1mM),p−クロロマーキュリーベン
ゾエート(1mM),モノヨード酢酸(1mM),o−フェナン
スロリン(1mM),8−キノリノール(1mM),ドデシル硫
酸ナトリウム(1%)または塩酸グアニジン(4M)によ
り活性が失われないことがわかった。このように、本阻
害物質N−61は種々の阻害剤に対して安定である。
失活の条件 本阻害物質N−61を,1%2−メルカプトエタノール存
在下で100℃において15分間処理すると完全に失活す
る。
プロテアーゼの作用 本阻害物質N−61 130単位を含有する溶液に下記の
各種プロテアーゼをそれぞれ20Pu添加し,各プロテアー
ゼの至適pH(ペプシンはpH2.0,トリプシンおよびα−キ
モトリプシンはpH9.0,およびサーモリシンはpH7.0)に
て30℃で3時間作用させた。これを100℃で5分間の処
理をすることによってプロテアーゼを失活させ,pHを1M
トリス−塩酸緩衝液(pH7.0)を用いて中性付近に調整
し,アミラーゼ阻害活性測定法に準じてアミラーゼ活性
阻害の測定を行った。上記のプロテアーゼ処理を行わな
かった阻害物質N−61について同様に測定し,これをス
タンダードとした。
これにより,本阻害物質N−61は,トリプシンを作用
させても失活しないが,ペプシンにより著しく失活し,
α−キモトリプシンおよびサーモリシンによりわずかに
失活することがわかった。
アミノ酸組成 アミラーゼ阻害物質N−61のアミノ酸組成を,Spackma
nら(Anal.Chem.,30,1190(1958))の方法に従って,Hi
tachi 835型高速アミノ酸分析計(日立社)により測定
した。高速アミノ酸分析計のための試料の前処理は次の
ようにして行った:阻害物質N−61を,再蒸留した5.7N
HClと共にアンプルに入れて真空封管し,110℃で24,48,
および72時間加熱することにより加水分解する。シスチ
ン,メチオニンおよびトリプトファンはこの方法では測
定されないので,別の方法を採用した。すなわち,メチ
オニン,シスチン(およびシステイン)はSchramの方法
(Biochem.J.,57 33(1954))並びにMooreの方法(J.B
iol.Chem.,238,235(1963))に準じて過ギ酸酸化後,
加水分解を行い,メチオニンスルホン酸,システイン酸
として定量した。また,システインはEllmanの比色法
(Arch.Biochem.Biophys.,82 70(1959))に従い定量
した。そして,トリプトファンについてはEdelhochらの
方法(Biochemistry,,1948(1967))により測定し
た。
結果を分子量8000とした時の残基数で次の表に示す。
(実施例) 以下に本発明を実施例につき説明する。
実施例1 1%可溶性デンプン,0.5%肉エキス,0.5%ポリペプト
ンおよび0.3%NaClを含有する種培養用培地(pH7.0)10
0mlを500ml容の坂口フラスコに入れて滅菌した後,スト
レプトマイセス ビリドクロモゲネスN−61株を接種
し,30℃で48時間振盪培養することにより種培養を行っ
た。次いで,1%コーンスターチ,1%肉エキス,1%ポリペ
プトンおよび0.2%酵母エキスを含有する生産用培地(p
H7.0)20を30容のジャーファーメンターに入れて滅
菌した後,上記得られた種培養液のうちの400mlを接種
した。これを25℃,通気量12/分,および撹拌速度40
0rpmの条件下で42時間培養を行い,その後ブロスアウト
して培養液を取り出し,これを濾過して培養濾液を得
た。
このようにして得られた培養濾液を集めて47とし,
次いでこの濾液の硫安分画を行った。まず培養濾液に硫
安粉末を80%飽和となるまで添加し,4℃で1晩放置し
た。析出した沈澱をハイフロスーパーセルをひいたブフ
ナーロートで吸引濾過することにより集め,少量の蒸留
水に溶解して回収し,蒸留水に対して4℃で1晩透析し
て脱塩した。得られた透析内液を,10mMリン酸緩衝液(p
H6.0)で平衡化したDEAEセルロースカラム(9.5×40cm;
Brown社)にかけてアミラーゼ阻害物質を吸着させた。
次いで,同リン酸緩衝液で洗浄した後,該緩衝液中の食
塩(NaCl)濃度を0〜0.5Mまで直線的に増加させること
によってグラジエント溶出を行った。アミラーゼ阻害活
性を示す画分を回収し,10mMリン酸緩衝液(pH6.0)に対
して一晩透析した。この透析内液を,10mMリン酸緩衝液
(pH6.0)で平衡化したTEAEセルロースカラ(6.0×38c
m;Serva社)にかけてアミラーゼ阻害物質を吸着させ,
同緩衝液で洗浄した後,該緩衝液中の食塩濃度を0〜0.
5Mまで直線的に増加させることによってグラジエント溶
出を行った。得られたアミラーゼ阻害活性を示す画分
(NaCl濃度0.3〜0.36M)を回収し,蒸留水に対して1晩
透析した。この透析内液をクエン酸を用いてpH3.0に調
整し,20mMクエン酸緩衝液(pH3.0)で予め平衡化してお
いたSP−セファデックスC−50カラム(2.5×30cm;Phar
macia社)にかけてアミラーゼ阻害物質を吸着させた。
次いで,同クエン酸緩衝液で十分に洗浄した後,食塩濃
度を0〜0.7Mまで直線的に増加させることによってグラ
ジエント溶出を行った。得られたアミラーゼ阻害活性を
示す画分(NaCl濃度0.4〜0.55M)770mlに硫安粉末468g
を添加し,4℃で数時間放置することにより硫安分画を行
い,析出した沈澱を遠心分離により回収した。この沈澱
を少量の10mMリン酸緩衝液(pH6.0)に溶解し,20mMリン
酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したセファデックスG−50
(極微)カラム(2.5×60cm;Pharmacia社)にかけてゲ
ル濾過を行った。アミラーゼ阻害活性を示す画分を蒸留
水に対して5℃で1晩透析し,その後透析内液をクエン
酸を用いてpH3.0に調整した。この液を20mMクエン酸緩
衝液(pH3.0)で平衡化したSP−トヨパールカラム(2.5
×20cm;Tosoh社)に添加し,上記と同様にして阻害物質
を吸着させ,非吸着物質を洗浄除去をした。次いで緩衝
液中のNaCl濃度を0〜1.0Mまで直線的に増加させること
によって溶出を行った。溶出により得られる画分と吸光
度との関係,および得られる画分とアミラーゼ阻害活性
との関係を第3図に示す。第3図において,●印は0D
280nmにおける吸光度(タンパクによる吸収)を示し,
○印はアミラーゼ阻害活性(U/ml)を示す。アミラーゼ
阻害活性は2つのピークとして現れ,このピークに相当
する画分を集めてそれぞれ画分IおよびIIとした。この
活性画分IおよびII(Iは画分番号49〜54,そしてIIは
画分番号55〜58)を回収し,それぞれ水に対して十分に
透析した。この透析内液を凍結乾燥し,画分Iからは3
6.5mg,そして画分IIからは13.8mgの白色粉末精製品を得
た。このうち画分Iから得た精製標品のアミラーゼ阻害
活性は約5,000U/mgであった。これらの精製標品は,SDS
−ポリアクリルアミドゲルを用いたスラブ電気泳動を行
うといずれも単一バンドとなり,電気泳動的に単一の物
質であることが示され,これをアミラーゼ阻害物質N−
61と名付けた。
(発明の効果) 本発明によれば,このように,新規のアミラーゼ阻害
物質N−61が提供される。この阻害物質N−61はストレ
プトマイセス属菌から効果的に生産される。この阻害物
質N−61は,広いpH範囲および温度範囲において作用し
かつ安定であり,多くの動物由来の膵臓アミラーゼを選
択的に阻害するが,唾液アミラーゼをほとんど阻害せ
ず,かつ細菌由来のアミラーゼを阻害しないという作用
特異性を有する。そのため,この阻害物質N−61は,
(i)膵臓アミラーゼと,唾液アミラーゼおよび細菌由
来の各種アミラーゼとを簡単に分離・精製するためのア
フィニティークロマトグラフィー用のリガンドとして;
および(ii)急性膵炎などの臨床診断に用いられる血清
アミラーゼ活性の測定における膵臓アミラーゼと唾液ア
ミラーゼとの分別定量の手段として有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本阻害物質N−61の30℃および100℃における
安定pH範囲を示すグラフ,第2図は本阻害物質N−61の
紫外線吸収スペクトルを示すチャート,第3図は本阻害
物質N−61のSP−トヨパールカラムクロマトグラフィー
の溶出曲線を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:465) (72)発明者 西村 隆久 大阪府大阪市阿倍野区松崎町2丁目9番 4号 (72)発明者 清水 保広 滋賀県甲賀郡甲西町若竹町5

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の性質を有するアミラーゼ阻害物質N−
    61: 作用:ヒト,ブタ,ネコ,ウマ,ヒツジ,ヤギ,ウ
    シ,イヌおよびヘビの膵臓アミラーゼを阻害し;ヒト唾
    液アミラーゼをほとんど阻害せず;ウサギおよびモルモ
    ットの膵臓アミラーゼ,バチルス属菌由来のα−アミラ
    ーゼ,ダイズおよびオオムギのβ−アミラーゼ,リゾプ
    ス属菌由来のグルコアミラーゼ,シュウドモナス属菌由
    来のイソアミラーゼ,ペプシン,トリプシンおよびα−
    キモトリプシンを阻害しない, 安定pH範囲および熱安定性:pH2〜12で30℃において24
    時間にわたり安定であり,pH3〜9で100℃において15分
    間にわたり安定である, 分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による
    分子量は約8,000である, 等電点:アンフォラインを担体として用いた等電点は
    4.1である,および 紫外線吸収スペクトル:極大吸収は約277nmであり,
    極小吸収は約252nmである。
  2. 【請求項2】ストレプトマイセス(Streptomyces)属菌
    から得られる特許請求の範囲第1項に記載のアミラーゼ
    阻害物質N−61。
  3. 【請求項3】ストレプトマイセス ビリドクロモゲネス
    (Streptomyces viridochromogenes)N−61株から得ら
    れる,特許請求の範囲第1項に記載のアミラーゼ阻害物
    質N−61。
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