JP2739505B2 - 光学活性3,4―デヒドロピロリジン化合物の製造方法 - Google Patents

光学活性3,4―デヒドロピロリジン化合物の製造方法

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JP2739505B2 JP1252575A JP25257589A JP2739505B2 JP 2739505 B2 JP2739505 B2 JP 2739505B2 JP 1252575 A JP1252575 A JP 1252575A JP 25257589 A JP25257589 A JP 25257589A JP 2739505 B2 JP2739505 B2 JP 2739505B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、単為生殖性の原生動物による疾病の治療
や、植物例えば豆類のうどんこ病などのかびによる被害
の防除に有用な抗生物質アニソマイシンおよびその誘導
体を製造するために有用な反応中間体である 一般式 (式中、Arは置換または無置換のアリール基、Zはアミ
ノ基の保護基、*は光学活性炭素をそれぞれ意味する) で示される光学活性3,4−デヒドロピロリジン化合物お
よびそのN−遊離の化合物の製造方法に関する。
[従来技術および解決すべき課題] 一般式[I]で示される上記光学活性化合物の製造に
関しては、つぎの反応経路1で示すように、D−チロシ
ンを出発原料とする方法(Tetrahedron Lett.,29.4419,
1988,S.ジェーガム(S.Jegham),B.C.ダス(B.C.Da
s))が知られている。
(上記各式中、Arは4−メトキシフェニル、Bocはt−
ブチルオキシカルボニル、Meはメチルをそれぞれ意味す
る)。
しかし、この反応経路の方法では中間体[V]がラセ
ミ化しやすく、そのため最終製品である光学活性化合物
[I]の光学純度に問題があった。またこの方法ではAr
が4−メトキシフェニルに限定されており、上記化合物
[I]の同族体は未だ開発されていなかった。
本発明は、上記の如き実情に鑑み、アニソマイシンお
よびその同族体を製造する上で有用な光学活性3,4−デ
ヒドロピロリジン化合物[I]およびそのN−遊離の化
合物の新規製造方法を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明による光学活性3,4−デヒドロピロリジン化合
物の製造方法は、 一般式 で示されるヒドロキシピロリジン化合物を脱水して、 一般式 (上記各式中、Arは置換または無置換のアリール基、Z
はアミノ基の保護基、*は光学活性炭素をそれぞれ意味
する) で示される光学活性3,4−デヒドロピロリジン化合物を
得、必要に応じてそのN−保護基を除去して同化合物
[I]をN−遊離の化合物に導くことを特徴とする。
ヒドロキシピロリジン化合物[XXI]を脱水して化合
物[I]を得るには、(i)ヒドロキシピロリジン化合
物[XXI]に二硫化炭素ついで一般式R1X2で示される化
合物を反応させて、 一般式 (上記各式中、Ar、Zおよび*は上記定義のものと同じ
意味を有し、R1はアルキル基またはアラルキル基、X2
ハロゲン原子またはスルホニルオキシ基、Y′はOCS2R1
をそれぞれ意味する) で示されるキサンテート化合物を得、ついで同化合物
[XXII]を脱離反応に付する方法、(ii)ヒドロキシピ
ロリジン化合物[XXI]を酸処理する方法、(iii)ヒド
ロキシピロリジン化合物[XXI]の水酸基をハロゲン、
p−トルエンスルホン酸エステル基またはアセチルオキ
シ基で置換し、得られた化合物を脱離反応に付する方法
などがある。
上記方法に使用するヒドロキシピロリジン化合物[XX
I]を製造するには、 一般式 で示されるアシルオキシピロリジン化合物のアミノ基を
保護試剤で保護して 一般式 (上記各式中、Ar、Zおよび*は上記定義のものと同じ
意味を有し、Ar′は置換または無置換のアリール基をそ
れぞれ意味する) で示されるN−置換ピロリジン化合物を得、ついで同化
合物[XX]のアシルオキシ基を加水分解する。
上記方法に使用するアシルオキシピロリジン化合物
[XIX]を製造するには、 一般式 (式中、Ar、Ar′および*は上記定義のものと同じ意味
を有する) で示されるベンズアミド化合物を臭素、塩化ヨウ素、ヨ
ウ素、ピリジンのHBr3塩、N−ブロモコハク酸イミドよ
り成る群から選ばれた環化試剤で処理する。
上記方法に使用するベンズアミド化合物[XVIII]を
製造するには、 一般式 で示されるアリルアミン化合物を一般式Ar′COX1または
Ar′CO2COAr′(上記各式中、Ar、Ar′および*は上記
定義のものと同じ意味を有し、X1はハロゲン原子を意味
する)で示されるアミド化試剤で処理する。
上記方法に使用するアリルアミン化合物[XVII]を製
造するには、 一般式 (式中、Arおよび*は上記定義のものと同じ意味を有
し、YはNHCO2t−Bu、NHCO2Bn(Bnはベンジル基を意味
する)、BnONCO2Bn、o−C6H4(CO)2N、NC(C
6H4、HCONH、p−Me(C6H4)SO2NHまたはC6H5SO2NH
を意味する) で示される含窒素化合物を塩基で処理するか、または上
記一般式においてYがN3である含窒素化合物[XVI]を
水素化反応に付する。
上記方法に使用する含窒素化合物[XVI]を製造する
には、 一般式 で示されるアリルアルコール化合物を、一般式R2O2CN=
NCO2R2で示されるジアゾカルボン酸ジアルキルおよび一
般式P(R3(上記各式中、Arおよび*は上記定義の
ものと同じ意味を有し、R2はアルキル基、R3はアリール
基またはアルキル基をそれぞれ意味する)で示される三
級ホスフィン化合物の存在下、一般式YH(Yは上記定義
の基のうちN3以外のものを意味する)で示される化合物
と反応させるか、または(C6H5O)2PON3と反応させる。
上記方法に使用するアリルアルコール化合物[XV]を
製造するには、 一般式 で示されるエポキシプロパン化合物をリチウムアセチリ
ドと反応させて 一般式 (上記各式中、Arおよび*は上記定義のものと同じ意味
を有する) で示されるエチニルアルコールとし、これを部分還元す
る。
本発明方法の出発原料である1−アリール−2,3−エ
ポキシプロパン化合物[X]の調製方法を反応経路2に
示し、また上述した本発明による光学活性3,4−デヒド
ロピロリジン化合物の製造方法を反応経路3に示す。
本発明方法において、上記一般式で示される各化合物
の定義について上記反応経路3つの反応順に説明する。
エポキシプロパン化合物[X]のアリール基Arとして
は、フェニル、ナフチル、インドリル、ビフェニルなど
の無置換アリール基、および芳香環にフッ素、塩素。臭
素、ヨウ素などのハロゲン原子や、メチル、エチル、プ
ロピル、イソプロピル、ブチルなどの炭素数1〜4のア
ルキル基、メトキシ、エトキシなどの炭素数1〜4のア
ルコキシ基、ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ
基、シアノ基、トリフルオロメチル基などの置換基を有
するフェニル、ナフチル、インドリル、ビフェニルなど
の置換アリール基が例示される。また、同化合物[X]
の*は光学活性炭素を示す。
アリルアルコール化合物[XV]から含窒素化合物[XV
I]を得る反応で使用するジアゾカルボン酸ジアルキルR
2O2CN=NCO2R2のアルキル基としては、メチル、エチ
ル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどの炭素数1〜
4のアルキル基が例示され、三級ホスフィンP(R3)の
R3基としてはフェニルのようなアリール基、n−ブチル
のようなアルキル基が例示される。
アリルアミン化合物[XVII]のアミド化試剤Ar′COX1
またはAr′CO2COAr′におけるアリール基Ar′として
は、フェニル、ナフチルなどの無置換アリール基、およ
び芳香環にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン
原子や、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブ
チルなどの炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ、エト
キシなどの炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基、ニ
トロ基、アセチル基、ベンゾイル基などの置換基を有す
るフェニル、ナフチルなどの置換アリール基が例示され
る。また、同アミド化試剤におけるハロゲンX1としては
塩素、臭素などが例示される。
アシルオキシピロジン化合物[XIX]のアミノ基保護
のためのカルバメート化またはアミド化に使用される保
護試剤としては、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸ベンジ
ル、クロロ炭酸t−ブチルなどのクロロ炭酸アルキル、
クロロ炭酸アラルキル、ハロゲン化アセチル、無水酢
酸、ハロゲン化ベンゾイル、無水安息香酸などが例示さ
れる。したがって、アミノ基の保護基としてのZは、ベ
ンジルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル
などのオキシカルボニル基、アセチル、ベンゾイルなど
のアシル基のように容易に除去可能な置換基である。
キサンテート化合物[XXII]のY′がOCS2R1である場
合、R1としては、メチル、エチルなどのアルキル基、ベ
ンジルなどのアラルキル基が例示される。
つぎに、上記反応経路2および3の各反応の条件につ
いて反応順に説明する。
(A)まず、本発明方法の出発原料であるエポキシプロ
パン化合物[X]の製造について上記反応経路2に従っ
て説明する。
反応経路2の出発原料である2,3−エポキシプロパン
誘導体[XIII]において、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨ
ウ素などのハロゲン、またはメタンスルホニルオキシ、
トリフルオロメタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホ
ニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、3−ニト
ロベンゼンスルホニルオキシなどのスルホニルオキシ
基、ベンジルオキシ、ジフェニルウメチルオキシ、トリ
チルオキシなどのアラルキルオキシ基、アリリオキシ基
などの容易に脱離可能な置換基を示す。
まず、2,3−エポキシプロパン誘導体[VIII]を不活
性溶媒中で−100℃〜−10℃の低温下で一価の銅塩0.005
〜2.0モル当量の存在下にアリールリチウムと反応させ
る。不活性溶媒としては、例えばヘキサン、ペンタン、
ヘプタン、トルエンなどの炭化水素、エーテル、テトラ
ヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルな
どのエーテル類あるいはこれらの混合溶媒が使用され
る。銅塩としてはCu2(CN)、Cu2I2などを用いること
ができる。アリールリチウムとしては、先に定義したア
リール基(Ar)を有するものが適宜選択されて使用され
る。通常はリチウムキュープレート試剤を用いる。この
際、(i)化合物[VIII]の置換基Xがハロゲンである
時は、化合物[VIII a]からハロヒドリン[IX a]が得
られ、(ii)Xがトルエンスルホニルオキシなどのスル
ホニルオキシ基である時は、化合物[VIII b]からエポ
キシプロパン化合物[X]が得られ、(iii)Xがアラ
ルキルオキシやアリルオキシなどである場合は、化合物
[VIII c]から化合物[IX b]が得られる。
(i)の方法では、ハロヒドリン[IX a]に極性溶媒
中で塩基を反応させるか、あるいは非極性溶媒と上記塩
基の水溶液との二層系で相関移動触媒を用いて化合物
[IX a]と塩基を反応させることによって、上記化合物
[X]を得ることができる。塩基としては、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウ
ムなどが使用され、極性溶媒としては、水、メタノー
ル、アセトン、エーテルなどが使用され、非極性溶媒と
してはヘキサン、エーテル、ジクロロメタンなどが使用
される。
また(iii)の方法では、化合物[IX b]から公知の
方法、例えばパラジウム触媒を用いた水素化分解あるい
はオレフィンの異性化を伴う酸分解により保護基を除
き、化合物[IX b]をジオール[XI]とし、さらにこれ
を本発明者らにより開発された方法、即ち、p−トルエ
ンスルホン酸などの酸触媒存在下ベンズアルデヒドでア
セタール化して化合物[XII]とした後、これを臭素あ
るいはN−ブロモコハク酸イミドを用いてブロモヒドリ
ンのベンゾイルエステル[XIII]とし、さらにこれを塩
基で処理してエポキシプロパン化合物[X]を得ること
ができる(Synthesis,1985,503参照)。塩基としては、
やはり水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリ
ウム、炭酸カリウムなどが使用される。
(B)つぎに、本発明による光学活性3,4−デヒドロ
ピロリジン化合物[I]およびそのN−遊離の化合物
[XXIV]の製造について、上記反応経路3に従ってさら
に詳しく説明する。
a) まず、反応経路2を経て製造されたエポキシプ
ロパン化合物[X]を不活性溶媒中でリチウムアセチリ
ドと反応させて、エチニルアルコール化合物[XIV]を
得る。リチウムアセチリドとしては市販のリチウムアセ
チリドのエチレンジアミン錯体を用いるか、またはブチ
ルリチウム、フェニルリチウムなどのリチオ化試剤の不
活性溶媒中にアセチレンガスを導入して調整したものを
用いる。不活性溶媒は、エーテル、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサンなどのエーテル類、トルエン、ヘキサン
のどの炭化水素、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチル
ホスアミドなどの非プロトン系極性溶媒およびこれらの
混合物から適宜選んで使用する。リチウムアセチリドは
エポキシプロパン化合物[X]に対して1〜5モル当量
用いられ、同化合物[X]に−70℃〜80℃の温度範囲で
反応させられる。
b) エチニルアルコール化合物[XIV]を部分還元
してアリルアルコール化合物[XV]を得る。この部分還
元はリンドラー触媒を用い、1〜5気圧の水素雰囲気で
アセトン、メタノール、クロロホルム、酢酸エチル、酢
酸などの溶媒中で反応を行なうことにより達成できる。
c) アリルアルコール化合物[XV]を光延反応(Mi
tsunobu,Synthesis,1981,1参照)により、ジアゾカルボ
ン酸ジアルキル(R2O2CN=NCO2R2)および三級ホスフィ
ン化合物P(R3の存在下、一般式YHで示される化合
物と反応させて、アリルアルコール化合物[XV]とは立
体配置が反転した含窒素化合物[XVI]を得る。アリル
アルコール化合物[XV]に反応させられる化合物YHとし
ては、上記定義の基Yを有するものが適宜使用される。
ただし、YがN3である含窒素化合物[XVI]を得るにはY
Hの代わりに(C6H5O)2PON3を用いる。光延反応は、基
質であるアリルアルコール化合物[XV]に、基質に対し
てYHまたは(C6H5O)2PON3、ジアゾカルボン酸ジアルキ
ルおよび三級ホスフィンを各々1〜5モル当量反応させ
ることにより達成できる。ここでジアゾカルボン酸ジア
ルキルとしては上記定義のアルキル基R2を有するものが
適宜使用され、三級ホスフィンとしては上記定義の基R3
を有するものが適宜使用される。反応溶媒としてはエー
テル、テトランヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレン
グリコールジメチルエーテルなどのエーテル類を用いる
ことができる。反応温度は−78℃〜室温の範囲である。
d) 含窒素化合物[XVI]を水酸化カリウム、水酸
化ナトリウム、ヒドラジンなどの塩基で処理してアリル
アミン化合物[XVII]とする。ただし含窒素化合物[XV
I]中のYがN3であるときは、パラジウム、白金などを
用いる水素化反応で含窒素化合物[XVI]をアリルアミ
ン化合物[XVII]とする。
e) アリルアミン化合物[XVII]を一般式Ar′COX1
またはAr′CO2COAr′(式中、Ar′は先に定義した意味
を有し、X1は塩素、臭素のようなハロゲン原子を意味す
る)で示されるアミド化試剤と反応させて、ベンズアミ
ド化合物[XVIII]とする。
f) ベンズアミド化合物[XVIII]を含水溶媒たと
えば水−アセトリニトリル混合溶媒中で環化試剤で処理
して、C−4位のエピマー混合物としてアシルオキシピ
ロリジン化合物[XIX]を得る。環化試剤としては、先
に定義したものから適当なものを選んで使用する。同環
化試剤としてヨウ素を使用する場合には、これをベンズ
アミド化合物[XVIII]に1〜3当量反応させる。
g) アシリオキシピロリジン化合物[XIX]のアミ
ノ基を塩基の存在下に一般式ZHで示される化合物と反応
させてN−置換ピロリジン化合物[XX]を得、ついでこ
れを加水分解してヒドロキシピロリジン化合物[XXI]
とする。一般式ZHで示される化合物としては、先に定義
したZを有するものが適宜使用される。塩基としては、
炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸
化ナトリウムなどの無機塩基、トリエチルアミン、ピリ
ジンなどの有機塩基が適宜使用される。N−置換ピロリ
ジン化合物[XX]のベンゾイル基の加水分解は、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基の存在下に行な
う。
h) ヒドロキシピロリジン化合物[XXI]を脱水処
理してデヒドロピロリジン化合物[I]に導く。ヒドロ
キシピロリジン化合物[XXI]の脱水方法としては、
(i)同化合物[XXI]をキサンテート化合物[XXII]
に変換し、ついで同化合物(XXII]を脱離反応に付する
方法、(ii)ヒドロキシピロリジン化合物[XXI]を硫
酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸などの酸で処理す
る方法、(iii)ヒドロキシピロリジン化合物[XXI]の
水酸化を塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、p−
トルエンスルホン酸エステル基、アセチルオキシ基など
に変換した後、得られた化合物を塩基の存在下に脱離反
応に付する方法などがある。
一例としてキサンテート化合物[XXII]を経由する方
法(i)をさらに詳しく説明する、ヒドロキシピロリジ
ン化合物[XXI]を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム
などの無機塩基の存在下に二硫化炭素と反応させて、ジ
チオカルボン酸塩とし、これを一般式R1X2(式中、R1
先の定義と同じ意味を有し、X2は塩素、臭素、ヨウ素な
どのハロゲン原子またはp−トルエンスルホニルオキ
シ、ベンゼンスルホニルオキシ、メタンスルホニルオキ
シ、トリフルオロメタンスルホニルオキシなどのスルホ
ニルオキシ基を意味する)で示されるアルキル化もしく
はアラルキル化試剤と反応させて、キサンテート化合物
[XXII]を得る。このキサンテート化合物[XXII]をo
−ジクロルベンゼン、ニトロベンゼン、メジチレン、キ
シレンなどの高沸点溶媒中で加熱還流すると、3,4−デ
ヒドロピロリジン化合物[I](Zは先に定義したもの
のうち水素以外の基)と4,5−デヒドロピロリジン化合
物[XXIII]の混合物が得られる。この反応において例
えばZがベンジルオキシカルボニル基であり、R1がメチ
ル基でありキサンテート化合物[XXII]をo−ジクロル
ベンゼン中で加熱還流すると、化合物[I]と化合物
[XXIII]が6.2:1の混合物として得られる。3,4−デヒ
ドロピロリジン化合物[I]はシリカゲルなどを用いて
クロマトグラフィーで混合物から分離することができ
る。
i) 3,4−デヒドロピロリジン化合物[I]はそれ
自体マニソマイシン合成に有用な中間体であるが、必要
に応じて、アルカリ加水分解、あるいはパラジウムを用
いる水素化分解などそれ自体公知の方法により、3,4−
デヒドロピロリジン化合物[I]の保護基Zを除去し
て、N−遊離の3,4−デヒドロピロリジン[XXIV]とし
て用いることもできる。
上記一連の反応によってそれぞれ中間的に得られる化
合物は、通常は単離した後つぎの工程に使用するが、必
ずしも単離を行なわなくてもよい。
[発明の効果] 本発明による光学活性3,4−デヒドロピロリジン化合
物の製造方法は、以上の通り構成されているので、本書
冒頭で述べた従来法のように中間体がラセミ化しやす
く、そのため最終製品である光学活性化合物の光学純度
が低いといった問題を生じることなく、高純度の光学活
性物質を製造することができる。また、本発明の方法に
よって、一般式[I]で示される3,4−デヒドロピロリ
ジン化合物に属する種々の同族体を得ることができる。
[実 施 例] 本発明の技術的特徴を例証するために、以下に実施例
および参考例をいくつか挙げる。ただし、これらは本発
明を限定するものではない。これら実施例および参考例
において、上述説明でローマ数字[I]〜[XXIV]で示
した化合物群にそれぞれ属する具体的化合物を、上記ロ
ーマ数字に対応するアラビア数字[1]〜[24]で示
す。また、割合を示す%はすべて重量%を示す。
まず、本発明方法の出発原料[X]の1つであるS−
(+)−1−(4−メトキシフェニル)−2,3−エポキ
シプロパ[10]の合成について参考例として説明する。
参考例1 R−1−ベンジルオキシ−2,3−エポキシプロパ[8c]
からの上記[10]の合成 4−ブロモアニソール3.03ml(24.2mM)のテトラヒド
ロフラ10ml溶液をアルゴン気流下−78℃に冷却し、n−
ブチルリチウム15%ヘキサン溶液14.8ml(23.0mM)を滴
下し、混合液を30分撹拌し、反応を遂行させた。この反
応液を−78℃でシアン化第一銅1.03g(11.5mM)のテト
ラヒドロフラン10ml懸濁液にキャヌラを用いて加え、同
温度でさらに30分間撹拌を行なった。こうしてリチウム
キュープレート試剤の懸濁液を調製した。
別途に、特開昭61−132196号公報記載の方法によって
得られた光学純度の高いR−(−)−エピクロルヒドリ
ン[8a]を原料として光学純度の高いR−(−)−1−
ベンジルオキシ−2,3−エポキシプロパン[8c](96%e
e)を合成した。
上記リチウムキュープレート試剤の懸濁液に、−78℃
でR−(−)−ベンジルオキシ−2,3−エポキシプロパ
ン[8c]1.20(7.3mM)のテトラヒドロフラン溶液を滴
下し、混合液を3時間同温度で撹拌した後、さらに−25
℃で1時間撹拌した。反応液に飽和食塩水20mlおよびエ
ーテル100mlを加えて抽出を行ない、エーテル層を飽和
食塩水20mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、
減圧下で溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲル12
0gでカラムクロマトグラフィーを付し、エーテル:ヘキ
サン=1:2の溶媒によるフラクションより無色油状のS
−(+)−アルコール[9b]1.97g(収率98%)を得
た。
[α]23 D:+7.0(C=3.11,MeOH) NMR(CDCl3)δ:1.80(1H,d,J=4.5Hz,D2Oで消失),
2.75(2H,d,6.3Hz),3.20−3.60(2H,m),3.80(3H,
s),3.90−4.10(1H,m),4.55(2H,s),6.70−7.20(4
H,m),7.33(5H,s) IR(neat)cm-1:3450,1620,1520,1240 MS m/e:273(M+1),121(100%)。
S−(+)−アルコール[9b]1.75g(6.45mM)のメ
タノール30ml溶液に活性炭に担持した20%水酸化パラジ
ウム50mgを加え、同溶液を水素ガス1気圧雰囲気下で16
時間撹拌した。反応液をセライト濾過した後、減圧下で
溶媒を留去し、S−ジオール[11]1.19g(収率99%)
を得た。これをエタノール+ヘキサンの混合液で再結晶
して、板状晶を得た。
mp:74−75℃ NMR(CDCl3)δ:2.30(2H,br s,D2Oで消失),2.65(2
H,d,J=6.4HZ),3.25−4.0(3H,m),3.70(3H,s),6.80
(2H,d,J=8.6Hz),7.10(2H,d,J=8.6Hz) IR(neat)cm-1:3400,1610,1510,1240,1130 MS m/e:182(M+),121(100%)。
S−ジオール[11]1.17g(6.4mM)のベンゼン溶液10
mlにベンズアルデヒド0.65ml(6.4mM)およびp−トル
エンスルホン酸水和物30mg(2M%)を加え、反応器にデ
ィーン・スターク装置を取り付けて5時間加熱還流を行
なった。反応液にエーテル50mlを加えて抽出を行ない、
エーテル層を飽和重曹水20mlおよび飽和食塩水20mlで順
次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ついで減
圧下溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲル70gでカ
ラムクロマトグラフィーに付し、エーテル:ヘキサン=
1:10の溶媒によるフラクションよりアセタール[12]1.
65(収率95.5%)を得た。
NMR(CDCl3)δ:2.65−3.25(2H,m),3.75(3H,s),
3.60−4.60(3H,m),5.70(0.6H,s),5.95(0.4H,s),
6.80(2H,d,J=8.6Hz),7.10(2H,d,J=8.6Hz),7.30−
7.50(5H,m) IR(neat)cm-1:1620,1520,1250 MS m/e:270(M+),149(100%)。
アセタール[12]1.31g(4.85mM)の四塩化炭素15ml
溶液にN−ブロモコハク酸イミド917mg(5.01mM)を加
え、室温で20時間撹拌を行なった。生じた沈澱物をセラ
イト濾過し、濾液を飽和重曹水10mlおよび飽和食塩水10
mlで順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。つ
いで溶液を減圧下に留去し、黄色の油状物としてS−ブ
ロモベンゾエート[13]1.87gの粗生成物を得た。
この粗生成物をメタノール10ml溶液とし、これに炭酸
カリウム850mg(6.15mM)を加え、5時間室温で撹拌を
行なって、溶媒の大部分を減圧下で留去した。この残留
物にエーテル30mlを加えて抽出を行ない、エーテル層を
飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し
た。ついで減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲル50
gでカラムクロマトグラフィーに付し、エーテル:ヘキ
サン=1:9の溶媒によるフラクションよりS−(+)−
1−(4−メトキシフェニル)−2,3−エポキシプロパ
ン[10]546mg(収率81.2%)を得た。
[α]28 D:+1.0゜(C=1.0,CHCl3) NMR(CDCl3)δ:2.50(1H,dd,J=2.44,4.88Hz),2.70
−2.85(2H,m),3.0−3.20(1H,m),3.80(3H,s),6.80
(2H,d,J=8.55Hz),7.10(2H,d,8.55Hz) IR(neat)cm-1:1610,1515,1240 MS m/e:164(M+),121(100%)。
参考例2 S−(+)−エピクロヒドリン[8a]からの[10]の合
4−ブロモアニソール1.25ml(10mM)のテトラヒドロ
フラン5ml溶液にアルゴン雰囲気下−78℃でn−ブチル
リチウム15%ヘキサン溶液6.1ml(9.5mM)を滴下し、20
分撹拌を行なった。得られた淡黄色溶液を−78℃でシア
化第一同488mg(5mM)のテトラヒドロフラ10ml懸濁液に
キャヌラを用いて加え、混合液を同温度で30分撹拌した
後、−45℃で20分撹拌した。こうしてリチウムキュープ
レート試剤の懸濁液を調製した。
この懸濁液に特開昭62−6697号公報記載の方法で得ら
れた光学純度の高いS−(+)−エピクロルヒドリン
[8a]463mg(5mM)のテトラヒドロフラン溶液を滴下
し、同溶液を室温に戻した後、2.5時間撹拌した。つい
で飽和塩化アンモニウム水溶液10mlおよびエーテル30ml
を加えて抽出を行ない、エーテル層を飽和重曹水10mlお
よび飽和食塩水10mlで順次洗浄した後、無水硫酸マグネ
シウムで乾燥した。
減圧下で溶媒を留去し、粗S−(+)−クロルヒドリ
ン[9a]1.36gを得た。これをテトラヒドロフラン15ml
に溶解し、粉末状水酸化ナトリウム600mg(15mM)を加
え、溶液を11時間室温で撹拌した。ついでエーテル15ml
を加えて抽出を行ない、エーテル層を飽和食塩水で洗浄
液が中性になるまで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾
燥し、減圧下で溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカ
ラムクロマトグラフィーに付し、エーテル:ヘキサン=
1:10の溶媒によるフラクションよりS−(+)−1−
(4−メトキシフェニル)−2.3−エポキシプロパン[1
0]609mg(収率74%)を得た。
つぎに本発明の実施例を示す。
実施例1 S−(+)−1−(4−メトキシフェニル)−2,3−
エポキシプロパ[10] 610mg(3.72mM)のジメチルス
ルホキシド5ml溶液に90w/w%のリチウムアセチリド・エ
チレンジアミン錯体520mg(5.1mM)を徐々に加えた後、
混合液を1時間室温で撹拌した。
飽和食塩水3mlを注意深く加えた後、エーテル50mlを
加えて抽出を行ない、エーテル層を飽和食塩水で洗浄
し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下溶媒を
留去した。得られた残渣をシリカゲル35gでカラムクロ
マトグラフィーに付し、エーテル:ヘキサン=1:3溶媒
によるフラクションよりR−(+)−エチニルアルコー
ル[14]578mg(収率82%)を得た。
[α]23 D:+3.84゜(C=1.04,CHCl3) NMR(CDCl3)δ:2.00(1H,brs),2.05(1H,t.J=2.6H
z),2.35(2H,dd,J=2.44,5.4Hz),2.80(2H,m),3.80
(3H,s),3.80−4.10(1H,m),6.80(2H,d.J=8.5Hz),
7.10(2H,d.J=8.55Hz) IR(neat)cm-1:3450,3300,2150,1615,1515 MS m/e:190(M+),121(100%)。
実施例2 R−(+)−エチニルアルコール[14]405mg(2.13m
M)の酢酸エチル10ml溶液にリンドラー触媒(鉛で被毒
された5%パラジウム−炭酸カルシウム)6mgを加え、
混合物を水素雰囲気下室温で1時間撹拌した。反応液を
セライト濾過し、濾液を減圧下溶媒留去し、残渣をシリ
カゲル12gでカラムクロマトグラフィーに付し、エーテ
ル:ヘキサン=1:3の溶媒によるフラクションよりR−
(−)−アリルアルコール[15]383mg(94%)を得
た。
[α]22 D:−11.1゜(C=1.06,CHCl3) NMR(CDCl3)δ:1.65(1H,brs),2.0−2.40(2H,m),
2.45−2.90(2H,m),3.80(3H,s),3.70−4.00(1H,
m),5.00−5.30(2H,m),5.60−6.10(1H,m),6.80(2
H,d.J=8.55Hz),7.10(2H,d,J=8.55Hz) IR(neat)cm-1:3400,1610,1520,1240 MS m/e:192(M+),121(100%)。
実施例3 R−(−)−アリルアルコール[15]2.03g(10.6m
M)、トリフェニルフォスフィン3.33g(12.7mM)および
フタルイミド1.87g(12.7mM)のテトラヒドロフラン溶
液の混合物を−20℃に冷却し、この混合物に撹拌下ジイ
ソプロピルアゾジカルボン酸エステル2.5ml(12.7mM)
を20分かけて滴下し、さらに同温で12時間撹拌を行なっ
た。反応液を室温に戻し、シリカゲル20gを加え、減圧
下溶媒を留去した。残った粉状残渣をシリカゲル100gで
カラムクロマトグラフィーに付し、エーテル:ヘキサン
=1:7の溶媒によるフラクションより無色油状物として
アリルアミンのフタルイミド誘導体S−(+)−[16]
2.89g(収率85%)を得た。
[α]26 D:+147.7゜(C=1.01,CHCl3) NMR(CDCl3)δ:2.40−3.50(4H,m),3.71(3H,m),
4.30−4.70(1H,m),4.70−5.15(2H,m),5.50−6.00
(1H,m),6.80(2H,d,J=8.55Hz),7.10(2H,d,J=8.55
Hz),7.55−7.80(4H,m) IR(neat)cm-1:1780,1710,1520,1400 MS m/e:321(M+),174(100%)。
実施例4 アリルアミンのフタルイミド誘導体S−(+)−[1
6]2.83g(8.8mM)のエタノール100ml溶液にヒドラジン
の一水和物0.66g(13.2mM)を加え、5時間加熱還流を
行なった。溶媒を減圧下に留去し、クロロホルムを加
え、セライトで濾過し、濾液を減圧下に溶媒留去し、ク
ーゲロールで蒸留して無色油状のS−(+)−アリルア
ミン[17]1.57g(収率93%)を得た。
bp:140℃/0.8mmHg [α]26 D:+23.1゜(C=1.07,CHCl3) NMR(CDCl3)δ:1.50(2H,brs),1.80−3.15(5H,
m),3.80(3H,s),5.00−5.20(2H,m),5.60−6.10(1
H,m),6.80(2H,d,J=8.55Hz),7.10(2H,d,J=8.55H
z)。
実施例5 S−(+)−アリルアミン[17]500mg(2.62mM)の
ジクロルメタン10ml溶液に0℃でトリエチルアミン0.44
ml(3.1mM)および塩化ベンゾイル0.34ml(2.88mM)を
加え、1時間撹拌を行なった。反応液を室温に戻した
後、ジクロルメタン10mlを加え、有機層を水および飽和
食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し
た。溶媒を減圧下に留去し、S−(−)−ベンズアミド
[18]880mgを無色針状晶として得た。エタノール+ヘ
キサンの混合液で再結晶を行なって純粋なS−[18]80
0mg(収率94%)を得た。
mp:110−112℃ [α]22 D:−6.66゜(C=0.36,CHCl3) NMR(CDCl3)δ:2.10−2.50(2H,m),2.90(2H,d,J=
6.6Hz),3.79(3H,s),4.20−4.60(1H,m),5.00−5.20
(2H,m),5.60−6.15(2H,m),6.80(2H,d,J=8.55H
z),7.10(2H,d,J=8.55Hz),7.35−7.55(3H,m),7.60
−7.80(2H,m) IR(neat)cm-1:3310,2920,1630。
実施例6 S−(−)−ベンズアミド[18]120mg(0.41mM)の
アセトニトリル:水=1:1(v/v)6ml溶液にヨウ素310mg
(1.23mM)を加え、室温で3日間撹拌を行なった。反応
液に飽和重曹水および5%亜硫酸ナトリウム水溶液5ml
を加え、ヨウ素の色が消えたのを確認した後、ジクロル
メタン20mlを加えて抽出を行なった。有機層を飽和食塩
水で洗浄した後無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下
溶媒を留去し、残渣をシリカゲル5gでカラムクロマトグ
ラフィーに付し、メタノール:クロロホルム=3:97の溶
媒によるフラクションより2−メトキシフェニルメチル
−4−ベンゾイルオキシピロリジン[19]114mg(収率9
0%)を得た。
NMR(CDCl3)δ:1.50−2.55(3H,m,1HはD2Oで消失),
2.80(2H,t,J=7.1Hz),2.90−3.70(3H,m),5.30−5.6
0(1H,m),6.80(2H,d,J=8.55Hz),7.10(2H,d,J=8.5
5Hz),7.30−7.70(3H,m),7.90−8.10(2H,m) IR(neat)cm-1:3350,1710,1270,1240。
実施例7 ピロリジン[19]390mg(1.25mM)のジクロルメタン5
ml溶液に0℃でトリエチルアミン0.27ml(1.63mM),ク
ロロ炭酸ベンジル0.21ml(1.5mM)を加え、室温で12時
間撹拌を行なった。減圧下大部分の溶媒を留去した後、
残渣にエーテル50mlを加えて抽出を行ない、エーテル層
を飽和重曹水および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸
マグネシウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去し、カル
バメートすなわち2−メトキシフェニルメチル−4−ベ
ンゾイルオキシ−N−ベンジルオキシカルボニルピロリ
ジン[20]628mgを粗生成物として得た。
実施例8 上記カルバメート[20]628mgの粗生成物をメタノー
ル10mlに溶かし、炭酸カリウム190mg(1.38mM)を加
え、室温で2時間撹拌を行なった。ついで、減圧下で大
部分の溶媒を留去し、エーテル30mlを加えて抽出を行な
った。エーテル層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸
マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去し、残渣をシ
リカゲル12gでカラムクロマトグラフィーに付し、エー
テル:ヘキサン=4:1の溶媒によるフラクションよりヒ
ドロキシカルバメートすなわち2−メトキシフェニルメ
チル−4−ヒドロキシ−N−ベンジルオキシカルボニル
ピロリジン[21]388mg(収率91%)を得た。
NMR(CDCl3)δ:1.60−2.00(4H,m),2.50−3.70(4
H,m),3.80(3H,s),3.90−4.50(2H,m),5.20(2H,br,
s),6.80(2H,m),7.10(2H,br d),7.35(5H,s) IR(neat):3400,1690,1515cm-1
実施例9 ヒドロキシカルバメート[21]148mg(0.43mM)のベ
ンゼン3ml溶液にテトラブチルアンモニウムハイドロゲ
ンサルファート148mg(0.43mM)および二硫化炭素34ml
(0.56mM)を加え、10分間撹拌後、50%水酸化ナトリウ
ム水溶液1mlを加え、25分室温で撹拌を続けた。こうし
てジチオカルボン酸塩を生成せしめた後、ヨードメタン
33ml(0.52mM)を加え、3時間激しく撹拌を行なった。
反応液にエーテル30mlを加えて抽出を行ない、エーテル
層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥
し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣190mgをシリ
カゲル8gでカラムクロマトグラフィーに付し、エーテ
ル:ヘキサン=1:2の溶媒によるフラクションよりキサ
ンテート[22]182mg(収率90%)を得た。
NMR(CDCl3)δ:2.0−2.30(2H,m),2.50(2H,s),2.
65(1H,s),2.65−3.50(4H,m),3.80(3H,s),4.00−
4.45(1H,m),5.20(2H,m),5.60−5.80(0.66H,m),5.
80−6.10(0.33H,m),5.70−7.20(4H,m),7.40(5H,
s) IR(neat)cm-1:1700,1605,1520,1410,1250,1200,110
0。
実施例10 キサンテート[22]123mg(0.26mM)の0−ジクロル
ベンゼン10ml溶液を200℃で1.5時間加熱した。ついで、
減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマト
グラフィーに付し、エーテル:ヘキサン=1:7の溶媒に
よるフラクションよりR−(−)−2−メトキシフェニ
ルメチル−N−ベンジルオキシカルボニル−3,4−デヒ
ドロピロリジン[1]59.5mg(86%)を得た。
mp:49−50℃(エーテル+ヘキサンの混合液より再結
晶) [α]26 D−190.4゜(C=1.0,CHCl3) MMR(CDCl3)δ:2.60−3.30(2H,m),3.77(3H,s),
3.60−3.90(2H,m),4.05−4.30(1H,m),4.60−4.90
(1H,m),5.20(2H,m),5.70(2H,m),6.75−7.10(4H,
m),7.40(5H,s) IR(neat)cm-1:1700,1600,1510,1410 MS m/e:323(M+),121(100%)。
実施例11 R−(−)−N−ベンジルオキシカルボニル−3,4−
デヒドロピロリジン[1]117mg(0.36mM)のエチレン
グリコール3ml溶液に水酸化ナトリウム1.0g(25mM)を
加え、120℃で14時間加熱撹拌を行なった。塩化メチレ
ンを加えて抽出を行ない、有機層を飽和食塩水で洗浄し
た後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下
で留去し、残渣をシリカゲル5gでカラムクロマトグラフ
ィーに付し、メタノール:クロロホルム=5:95の溶媒に
よるフラクションよりR−(−)−2−メトキシフェニ
ルメチル−3,4−デヒドロピロリジン[24]72mg(収率8
9%)を得た。
[α]24 D:−101.2゜(C=1.44,テトラヒドロフラ
ン),文献値[α]D:−89.3゜(C=1.26,テトラヒド
ロフラン)(前掲のTetrahedron Lett.,29,4419,1988) NMR(CDCl3)δ:2.15(1H,br s,D2Oで消失),2.44(2
H,d.J=6.8Hz),2.60−2.95(2H,m),3.79(2H,s),4.0
0−4.35(1H,m),5.65−5.95(2H,m),6.80(2H,d,J=
8.55Hz),7.10(2H,d,J=8.55Hz) IR(neat)cm-1:33
00,1610,1515,1240,1180。
NMRおよびIRの各スペクトル値は文献値と一致した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07C 271/10 C07C 271/10 C07D 207/12 C07D 207/12

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 で示されるヒドロキシピロリジン化合物を脱水して、 一般式 (上記各式中、Arは置換または無置換のアリール基、Z
    はアミノ基の保護基、*は光学活性炭素をそれぞれ意味
    する) で示される光学活性3,4−デヒドロピロリジン化合物を
    得、必要に応じてそのN−保護基を除去して同化合物
    [I]をN−遊離の化合物に導くことを特徴とする光学
    活性3,4−デヒドロピロリジン化合物の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の方法において、ヒドロキシ
    ピロリジン化合物[XXI]に二硫化炭素ついで一般式R1X
    2で示される化合物を反応させて、 一般式 (上記各式中、Ar、Zおよび*は請求項1のものと同じ
    意味を有し、R1はアルキル基またはアラルキル基、X2
    ハロゲン原子またはスルホニルオキシ基、Y′はOCS2R1
    をそれぞれ意味する) で示されるキサンテート化合物を得、ついで同化合物
    [XXXII]を脱離反応に付することによって、ヒドロキ
    シピロリジン化合物[XXI]の脱水を行なうことを特徴
    とする方法。
  3. 【請求項3】請求項1記載の方法において、ヒドロキシ
    ピロリジン化合物[XXI]を酸処理して脱水を行なうこ
    とを特徴とする方法。
  4. 【請求項4】請求項1記載の方法において、ヒドロキシ
    ピロリジン化合物[XXI]の水酸基をハロゲン、p−ト
    ルエンスルホン酸エステル基またはアセチルオキシ基で
    置換し、得られた化合物を脱離反応に付することによっ
    て、ヒドロキシピロリジン化合物[XXI]の脱水を行な
    うことを特徴とする方法。
  5. 【請求項5】請求項1から4のうちいずれか1記載の方
    法において、ヒドロキシピロリジン化合物[XXI]を製
    造するに当たり、 一般式 で示されるアシルオキシピロリジン化合物のアミノ基を
    保護試剤で保護して 一般式 (上記各式中、Ar、Zおよび*は請求項1のものと同じ
    意味を有し、Ar′は置換または無置換のアリール基をそ
    れぞれ意味する)で示されるN−置換ピロリジン化合物
    を得、ついで同化合物[XX]のアシルオキシ基を加水分
    解することを特徴とする方法。
  6. 【請求項6】請求項5記載の方法において、アシルオキ
    シピロリジン化合物[XIX]を製造するに当たり、 一般式 (式中、Ar、Ar′および*は請求項5のものと同じ意味
    を有する) で示されるベンズアミド化合物を臭素、塩化ヨウ素、ヨ
    ウ素、ピリジンのHBr3塩、N−ブロモコハク酸イミドよ
    り成る群から選ばれた環化試剤で処理することを特徴と
    する方法。
  7. 【請求項7】請求項6記載の方法において、ベンズアミ
    ド化合物[XVIII]を製造するに当たり、 一般式 で示されるアリルアミン化合物を一般式Ar′COX1または Ar′CO2COAr′(上記各式中、Ar、Ar′および*は請求
    項6のものと同じ意味を有し、X1はハロゲン原子を意味
    する)で示されるアミド化試剤で処理することを特徴と
    する方法。
  8. 【請求項8】請求項7記載の方法において、アリルアミ
    ン化合物[XVII]を製造するに当たり、 一般式 (式中、Arおよび*は請求項7のものと同じ意味を有
    し、YはNHCO2t−Bu、NHCO2Bn(Bnはベンジル基を意味
    する)、BnONCO2Bn、o−C6H4(CO)2N、NC(C
    6H4、HCONH、p−Me(C6H4)SO2NHまたはC6H5SO2NH
    を意味する) で示される含窒素化合物を塩基で処理するか、または上
    記一般式においてYがN3である含窒素化合物[XVI]を
    水素化反応に付することを特徴とする方法。
  9. 【請求項9】請求項8記載の方法において、含窒素化合
    物[XVI]を製造するに当たり、 一般式 で示されるアリルアルコール化合物を、一般式R2O2CN=
    NCO2R2で示されるジアゾカルボン酸ジアルキルおよび一
    般式P(R3(上記各式中、Arおよび*は請求項8の
    ものと同じ意味を有し、R2はアルキル基、R3はアリール
    基またはアルキル基をそれぞれ意味する)で示される三
    級ホスフィン化合物の存在下、一般式YH(Yは請求項8
    の基のうちN3以外のものを意味する)で示される化合物
    と反応させるか、または(C6H5O)2PON3と反応させるこ
    とを特徴とする方法。
  10. 【請求項10】請求項9項の方法において、アリルアル
    コール化合物[XV]を製造するに当たり、 一般式 で示されるエポキシプロパン化合物をリチウムアセチリ
    ドと反応させて 一般式 (上記各式中、Arおよび*は請求項9のものと同じ意味
    を有する) で示されるエチニルアルコールとし、これを部分還元す
    ることを特徴とする方法。
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