JP2735295B2 - 平面インダクタ - Google Patents

平面インダクタ

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JP2735295B2 JP1169635A JP16963589A JP2735295B2 JP 2735295 B2 JP2735295 B2 JP 2735295B2 JP 1169635 A JP1169635 A JP 1169635A JP 16963589 A JP16963589 A JP 16963589A JP 2735295 B2 JP2735295 B2 JP 2735295B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は平面インダクタに関する。
(従来の技術) 従来よりスパイラル状又はつづら折れ状の導体コイル
の両面を絶縁層を介して強磁性体層で挟んだ構造の平面
インダクタが知られている。第1図(A)及び(B)に
このような平面インダクタの一例を示す。なお、同図
(A)はこの平面インダクタの平面図であり、同図
(B)は同図(A)のA−A′線に沿う断面図である。
第1図(A)及び(B)において、平面状導体コイル
1は絶縁層3bの両面にスパイラルコイル2a、2bを設け、
これらスパイラルコイル2a及び2bをスルーホール4で電
気的にかつ各スパイラルコイル2a、2bに同方向の電流が
流れるように接続した構造を有している。ここで、第2
図(A)中の実線及び破線はそれぞれ絶縁層3bの表面側
及び裏面側にあるスパイラルコイル2a、2bの中心の軌跡
を表わしている。この平面状導体コイル1の両面を絶縁
層3a、3cを介して強磁性薄帯又は強磁性薄膜5a、5bで挟
むことにより平面インダクタが構成されている。以上の
各部材からなる平面インダクタの端子6a、6b間にインダ
クタンスが形成される。
(発明が解決しようとする課題) 前述した平面インダクタは例えばDC−DCコンバータな
どの出力側のチョークコイルに適用される。この場合、
平面インダクタには直流が重畳された高周波電流が流れ
るので、良好な直流重畳特性が要求される。
ところが、従来の平面インダクタは、直流重畳特性が
悪いという問題があった。これは、従来使用されている
強磁性薄帯の磁気特性が不適当なためである。すなわ
ち、第1図の平面インダクタにおいては、磁束は両面の
強磁性薄帯5a、5bの面内方向を流れ、高インダクタンス
を得るためには高透磁率強磁性薄帯が用いられる。しか
しながら、高透磁率強磁性薄帯の飽和磁化が低い場合に
は、小さな直流磁場が重畳されても磁束密度が飽和して
インダクタンスが低下し、直流重畳特性が悪くなる。例
えば、高透磁率強磁性体としてはCo系非晶質合金が知ら
れているが、その飽和磁化はフェライトよりも高いもの
の充分ではなく、直流重畳特性は悪い。
なお、強磁性薄帯としてCo系非晶質合金を用いる場合
でも、これを積層すれば直流重畳特性をある程度改善す
ることができる。しかし、非晶質合金を積層すれば、そ
れだけ平面インダクタの厚さが増すため、平面インダク
タの薄形化という目的からすると好ましくない。
このように平面インダクタの直流重畳特性が悪いと、
インダクタンスが低下し、制御が困難になってDC−DCコ
ンバータの効率が低下するため、そのままではDC−DCコ
ンバータなどへ適用することは不適当である。したがっ
て、直流重畳特性の改善には、高透磁率強磁性薄帯の飽
和磁化が高いことが要求される。
更に、インダクタンスの直流重畳特性を改善できたと
しても、これら平面インダクタを適用したDC−DCコンバ
ータの効率に関しては、強磁性薄帯の高周波損失のため
に、その向上には限度がある。したがって、従来のフェ
ライト製インダクタを使用した場合に匹敵する高効率を
得るためには、高磁性薄帯の高周波損失を少なくする必
要がある。
なお、強磁性薄帯として用いられる非晶質合金は正の
飽和磁歪を有するものが多い。このように正の飽和磁歪
を有する非晶質合金を一般のトロイダル状磁心にして用
いる場合には、曲げ応力による逆磁歪効果により歪取り
熱処理時に複雑な磁気異方性が発生し、実効透時率など
の軟磁気特性は劣化する。一方、これらの非晶質合金を
平面インダクタに適用する場合には、これらの薄帯を平
面状態で使用するため、前述した逆時歪効果による軟磁
気特性の劣化は少なく、これら合金の軟磁気特性を充分
に活用することができる。したがって、トロイダル状磁
心と平面インダクタとでは、強磁性体を同様に取り扱う
必要はない。
しかし、本発明に係る平面インダクタは、実際には外
装用モールド樹脂でモールド被覆された状態で使用され
る。このため、非晶質合金薄帯が正の飽和磁歪を有する
場合、液状のモールド樹脂を表面に被覆して硬化させる
際に、モールド樹脂の収縮に伴って強磁性薄帯にも圧縮
応力が加わり、逆磁歪効果により実効透磁率が低下し、
インダクタンスが低下するという問題点が生じる。
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので
あり、直流重畳特性の良好な平面インダクタを提供する
ことを目的とする。また、強磁性薄帯の高周波損失を少
なくし、DC−DCコンバータに適用されてもその効率を低
下させることのない平面インダクタを提供することを目
的とする。更に、モールド被覆されても、インダクタン
スの低下を防止できる平面インダグタを提供することを
目的とする。
[発明の構成] (課題を解決するための手段と作用) 本発明の平面インダクタは、平面状導体コイル又はこ
れらの積層体の両面を絶縁層を介して強磁性薄帯又はそ
の積層体で挟んだ平面インダクタにおいて、前記強磁性
薄帯として、飽和磁化4πMSが4πMS≧10kGであり、厚
さが100μm以下のものを用いたことを特徴とするもの
である。
本発明の平面インダクタにおける平面状導体コイルと
は、通常、例えば第1図に示されるように絶縁層の表面
及び裏面にスパイラルコイルを設けて各スパイラルコイ
ルをスルーホールを通して接続した構造のスパイラル状
2層導体コイルを指す。なお、端子の取出しに支障が生
じなければ、スパイラル状導体コイルとしてはスパイラ
ルコイルが1層だけのものでもよい。また、スパイラル
状導体コイルを積層するとインダクタンスが増大する
が、この場合スパイラル状導体コイル間には絶縁層のみ
を介在させ、強磁性薄帯を介在させないことが望まし
い。これは、スパイラル状導体コイル間に強磁性薄帯を
介在させてもインダクタンスの増大にはほとんど寄与せ
ず、かえって平面インダクタ全体の厚さを増大させて単
位体積当りのインダクタンスを低下させるためである。
本発明において、強磁性薄帯の飽和磁化4πMSを10kG
以上としたのは、4πMSが10kG未満では直流重畳特性が
悪くなるためである。
本発明において、強磁性薄帯(積層体の場合には各層
の強磁性薄帯)の厚さを100μm以下としたのは以下の
ような理由による。すなわち、一般に平面インダクタを
DC−DCコンバータなどに適用し10kHz以上の周波数帯で
使用することを前提とした場合、強磁性薄帯の厚さが10
0μmを超えると表皮効果によって磁束は内部まで入ら
なくなり、強磁性薄帯の厚さが増加した割にはインダク
タンスは増加せず、単位体積当りのインダクタンスはか
えって低下するためである。なお、強磁性薄帯の厚さは
4μm以上であることが望ましい。これは、強磁性薄帯
の厚さが4μm未満であると、スパイラル状導体コイル
に電流が流れることによって生じる磁束がすべて通るの
に必要な断面積が得られないために漏れ磁束が多くなっ
てインダクタンスが著しく低下し、単位体積当りのイン
ダクタンス値が低下するためである。
本発明において、前記強磁性薄帯としては、10kHzに
おける実効透磁率μ10kがμ10k≧1×104であるものが
望ましい。このような強磁性薄帯を用いれば、高インダ
クタンスの平面インダクタを得ることができる。
本発明において用いられる強磁性薄帯としては、例え
ば一般式 (Fe1-aMa100-bXb (ただし、MはTi、V、Cr、Mn、Co、Ni、Zr、Nb、Mo、
Hf、Ta、W、Cuのうち少なくとも1種、XはSi、B、
P、C、Ge、Alのうち少なくとも1種、0≦a≦0.15、
12≦b≦30)で表わされる非晶質合金薄帯が用いられ
る。
この非晶質合金薄帯を構成する各元素の作用及び組成
について説明する。
Mは高周波領域における透磁率の向上及び結晶化温度
の上昇に寄与する成分である。Mはごく微量添加するだ
けで前記作用を発揮するが、実用上はa≧0.01であるこ
とが望ましい。なお、a>0.15の場合にはキュリー温度
が低くなりすぎ、実用上好ましくない。
Xは非晶質化に必須の元素である。ただし、実用上熱
安定性を考慮した場合、SiとBとの組み合わせが好まし
い。なお、b<12及びb>28では非晶質化が困難となる
ため、12≦b≦28が好ましく、更に15≦b≦25が好まし
い。Siは2〜13%、好ましくは2〜8%が良好である。
このような組成を有する非晶質合金の大部分は10kG以
上の飽和磁化を有し、最適歪取り熱処理によって、1×
104以上の実効透磁率が得られる。
本発明の目的を達成するためには、飽和磁化及び透磁
率がともに高い強磁性薄帯を用いることが特に望まし
い。このような高透磁率、高飽和磁化を有する磁性薄帯
として、例えば Fe73.5Cu1Nb3Si13.5B9 なる組成の非晶質合金を結晶化温度よりも高い温度で熱
処理することにより得られる超微細結晶粒合金薄帯が挙
げられる。この磁性合金は高透磁率(10kHzにおける実
効透磁率μ10k=5×104)、高飽和磁化(4πMS=13.5
kG)を有する。このような磁性合金薄帯を用いることに
より、高インダクタンス値を有し、直流重畳特性の良好
な平面インダクタが得られる。
本発明において、平面インダクタを構成する強磁性薄
帯又はその積層体は複数の部分に分割することが望まし
い。強磁性薄帯又はその積層体は複数の部分に分割する
ことにより、高周波損失を減少することができ、このよ
うな平面インダクタを用いて製造されるDC−DCコンバー
タの効率が向上する。これは以下のような理由による。
一般に、インピーダンスZの実抵抗分Rは、 R=2πf・L・tanδ で表わされる。ここで、fは周波数、Lはインダクタン
ス、tanδは高周波損失である。この式から明らかなよ
うに、Rはtanδに比例した値となる。そして、強磁性
薄帯又はその積層体を複数の部分に分割すると、渦電流
損tanδが減少し、Rが低下する。また、例えば出力側
にインダクタンスを有する非絶縁・降圧形DC−DCコンバ
ータの効率ηは、近似的にη=100RL/(RL+R)(%)
(ただし、RLは負荷抵抗)で表わされる。したがって、
Rが小さいほうがDC−DCコンバータの効率が向上する。
本発明に係る平面インダクタは、通常、その全体を外
装用モールド樹脂で被覆した形態で使用される。この場
合、平面インダクタを構成する強磁性薄帯又はその積層
体の両面に、モールド樹脂の収縮力緩和層として、例え
ばモールド樹脂の硬化温度よりも熱変形温度が高い有機
高分子フィルムを積層し、平面インダクタの側面を接着
剤で塞いだ状態で、全体をモールド樹脂で被覆すること
が望ましい。このように強磁性薄帯又はその積層体の両
面に、モールド樹脂の硬化温度よりも熱変形温度が高い
有機高分子フィルムを積層しておけば、モールド樹脂が
硬化して収縮する際に生じる収縮力を緩衝することがで
き、収縮力が強磁性薄帯又はその積層体に伝わるのを防
止して、逆磁歪効果によるインダクタンスの低下を防ぐ
ことできる。
収縮力緩和層として用いられる熱変形温度が高い有機
高分子フィルムとしては、例えばポリフェニレンサルフ
ァイド(PPS)が挙げられる。なお、同様の効果が得ら
れれば、収縮力緩和層は有機高分子フィルムに限らない
ことはいうまでもない。このような収縮力緩和層の厚さ
は20μm以上であることが望ましい。これは、収縮力緩
和層の厚さが20μm未満であると、しわが入りやすくな
り、モールド樹脂が硬化して収縮する際に生じる収縮力
を緩衝することができず、収縮力が強磁性薄帯又はその
積層体に伝わって、逆磁歪効果によるインダクタンスの
低下を防ぐことができなくなるためである。
(実施例) 以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
実施例1〜4、比較例1、2 実施例1〜4、比較例1、2においては、第1図
(a)、(b)に示すのと同様な単層タイプの平面イン
ダクタを作製した。
25μm厚のポリイミドフィルム(絶縁層3b)の両面に
35μm厚のCu箔を両張りして中央部のスルーホール4を
通して接続した両面FPC板(フレキシブルプリント回路
板)を用意し、両面のCu箔をエッチングして外周部の寸
法が20mm×20mm、コイル線幅250μm、コイルピッチ500
μm、コイル巻線数40回(各面20回)のスパイラルコイ
ル2a、2bに加工して、スパイラル状導体コイル1を作製
した。このスパイラル状導体コイル1の両面を7μm厚
のポリイミドフィルム(絶縁層3a、3c)を介して、1辺
の長さ25mmの正方形の強磁性薄帯(強磁性薄帯5a、5b)
で挟むことにより平面インダクタを作製した。
実施例1 単ロール法により作製された、 (Fe0.95Nb0.0582Si6B12 なる組成を有し、平均厚さ16μm、幅25mmの非晶質合金
薄帯から1辺の長さ25mmの正方形に切り出したものを強
磁性薄帯として用いた。この非晶質合金薄帯について
は、10kHzにおける実効透磁率μ10k=1×104、飽和磁
化4πMS=12.3kGである。
実施例2 単ロール法により作製された、 Fe78Si9B13 なる組成を有し、平均厚さ16μm、幅25mmの非晶質合金
薄帯から1辺の長さ25mmの正方形に切り出したものを強
磁性薄帯として用いた。この非晶質合金薄帯について
は、10kHzにおける実効透磁率μ10k=2000、飽和磁化4
πMS=15.6kGである。
実施例3 単ロール法により作製された、 Fe73.5Cu1Nb3Si13.5B9 なる組成を有し、平均厚さ18μm、幅25mmの非晶質合金
薄帯を窒素雰囲気中、550℃で1時間熱処理することに
より得られた超微結晶粒合金薄帯から1辺の長さ25mmの
正方形に切り出したものを強磁性薄帯として用いた。こ
の合金薄帯については、10kHzにおける実効透磁率μ10k
=5×104、飽和磁化4πMS=13.5kGである。
比較例1 単ロール法により作製された、 (Co0.88Fe0.06Nb0.02Ni0.0475Si10B15 なる組成を有し、平均厚さ16μm、幅25mmの非晶質合金
薄帯から1辺の長さ25mmの正方形に切り出したものを強
磁性薄帯として用いた。この非晶質合金薄帯について
は、10kHzにおける実効透磁率μ10k=2×104、飽和磁
化4πMS=6.7kGである。
実施例1〜3、比較例1の平面インダクタについて、
直流重畳電流とインダクタンスとの関係を調べた結果を
第5図〜第7図に示す。なお、インダクタンス値は50kH
zで測定した。
第5図〜第7図に示されるように、実施例1〜3の平
面インダクタは比較例1の平面インダクタよりも直流重
畳特性が大幅に改善されている。
実施例4 実施例1と同一の組成、平均厚さ、幅を有する非晶質
合金薄帯から25mm×25mmの正方形に切り出したものを5
枚積層した積層体を作製した。これらの積層体に歪取り
熱処理を施した後、これらを強磁性薄帯として用いた。
比較例2 比較例1と同一の組成、平均厚さ、幅を有する非晶質
合金薄帯から25mm×25mmの正方形に切り出したものを5
枚積層した積層体を作製した。これらの積層体に歪取り
熱処理を施した後、これらを強磁性薄帯として用いた。
実施例4及び比較例2の各平面インダクタについて、
直流重畳電流とインダクタンスとの関係を調べた結果を
第8図に示す。なお、インダクタンス値は50kHzで測定
した。
第8図に示されるように、実施例4の平面インダクタ
は比較例2の平面インダクタよりも直流重畳特性が大幅
に改善されている。
次に、飽和磁化の値が異なる強磁性薄帯を用いて作製
された同一構造の平面インダクタを、出力電圧5V、2W級
の非絶縁降圧形DC−DCコンバータに適用した場合の効率
について説明する。
空心インダクタンス54μH、コイル抵抗1.8Ωのスパ
イラル状導体コイル(約1mm厚)の両面を7.5μm厚のポ
リイミドフィルムを介してCo系又はFe系の非晶質合金薄
帯(約15μm厚)の5層積層体で挟んで構成される平面
インダクタを適用してDC−DCコンバータを作製した場合
の、非晶質合金薄帯の飽和磁化4πMSと、入力電圧15
V、出力電圧5V、出力電流0.4Aの条件におけるDC−DCコ
ンバータの効率ηとの関係を第9図に示す。
第9図より、4πMS≧10kGの非晶質合金薄帯を用いた
場合の効率ηは約70%のほぼ一定の値を有するが、4π
MS<10kGの非晶質合金薄帯を用いた場合にはインダクタ
ンスの直流重畳特性は悪くなり、効率ηは低下する。
実施例5、6、参考例1〜3 実施例5、6、参考例1〜3においては、以下のよう
な積層タイプの平面インダクタを作製した。
25μm厚のポリイミドフィルムの両面に100μm厚のC
u箔を両張りして中央部のスルーホールを通して接続し
た両面FPC板を用意し、両面のCu箔をエッチングして外
周部の寸法が20mm×20mm、コイル線幅250μm、コイル
ピッチ500μm、コイル巻線数40回(各面20回)のスパ
イラルコイルに加工し、スパイラル状導体コイルを作製
した。このスパイラル状導体コイル2個を7μm厚のポ
リイミドフィルムを介して積層し、電気的に並列に接続
した積層コイルを作製した。更に、この積層コイル2個
を7μm厚のポリミイドフィルムを介して積層し、電気
的に直列に接続した積層コイル(4層積層コイル)を作
製した。この積層コイルの両面を7μm厚のポリイミド
フィルムを介して、複数枚を組み合わせることにより又
は1枚で1辺の長さ25mmの正方形をなす5層の強磁性薄
帯で挟むことにより平面インダクタを作製した。
実施例5 実施例1と同一の組成、平均厚さ、幅を有する非晶質
合金薄帯から25mm×12.5mmの矩形状に切り出したものを
5枚積層した積層体を作製した。第2図に示すように、
これらの積層体11に歪取り熱処理を施した後、一つの面
について2個の積層体11を同一平面上に隙間なす横に並
べて1辺25mmの正方形とし、これらを強磁性薄帯として
用いた。
実施例6 実施例1と同一の組成、平均厚さ、幅を有する非晶質
合金薄帯から25mm×25mmの正方形に切り出したものを5
枚積層した積層体を作製した。これらの積層体に歪取り
熱処理を施した後、これらを強磁性薄帯として用いた。
実施例5及び6の平面インダクタについて、各種特性
を調べた。第10図は直流重畳電流とインダクタンスとの
関係を示す。第11図は直流重畳電流と鉄損との関係を示
す。第12図は直流重畳電流とインピーダンスの実抵抗分
との関係を示す。第13図はこれらの平面インダクタを用
いて構成された、出力5V、2W級の非絶縁降圧型DC−DCコ
ンバータについての、出力電流と効率ηとの関係を示
す。
第10図〜第13図から明らかなように、強磁性薄帯が2
つの部分に分割されている実施例5の平面インダクタ
は、強磁性薄帯が分割されていない実施例6の平面イン
ダクタと比較して、インダクタンスが若干改善され、更
に鉄損が減少することによりインピーダンスの実抵抗分
が減少する。この結果、実施例5の平面インダクタを用
いた非絶縁降圧型DC−DCコンバータは、実施例6の平面
インダクタを用いたものよりも効率が高くなる。
なお、実施例5、6では強磁性薄帯として、4πMS
10kGという条件を満たすものを用い、強磁性薄帯を分割
することにより、前述した効果が得られることを示し
た。ただし、この効果は、4πMS≧10kGという条件を満
たしていない強磁性薄帯を用いた場合にも同様に認めら
れる。このことを以下の参考例1〜3を参照して説明す
る。
参考例1 比較例1と同一の組成、平均厚さ、幅を有する非晶質
合金薄帯から12.5mm×12.5mmの正方形に切り出したもの
を5枚積層した積層体12を作製した。第3図に示すよう
に、これらの積層体12に歪取り熱処理を施した後、一つ
の面について4個の積層体12を同一平面上に隙間なく横
に並べて1辺25mmの正方形とし、これらを強磁性薄帯と
して用いた。
参考例2 比較例1と同一の組成、平均厚さ、幅を有する非晶質
合金薄帯から25mm×12.5mmの矩形状に切り出したものを
5枚積層した積層体11を作製した。第2図に示すよう
に、これらの積層体11に歪取り熱処理を施した後、一つ
の面について2個の積層体11を同一平面上に隙間なく横
に並べて1辺25mmの正方形とし、これらを強磁性薄帯と
して用いた。
参考例3 比較例1と同一の組成、平均厚さ、幅を有する非晶質
合金薄帯から25mm×25mmの正方形に切り出したものを5
枚積層した積層体を作製した。これらの積層体に歪取り
熱処理を施した後、これらを強磁性薄帯として用いた。
参考例1〜3の平面インダクタについて、各種特性を
調べた。第14図は直流重畳電流とインダクタンスとの関
係を示す。第15図は直流重畳電流と鉄損との関係を示
す。第16図は直流重畳電流とインピーダンスの実抵抗分
との関係を示す。第17図はこれらの平面インダクタを用
いて構成された、出力5V、2W級の非絶縁降圧型DC−DCコ
ンバータの効率ηと出力電流との関係を示す。
第14図〜第17図からも、前述した実施例5及び6につ
いての第10図〜第13図と同様な傾向が認められる。
実施例7、8 実施例7、8では、平面インダクタをモールド被覆し
た場合にインダクタンスについて調べた。
実施例7 第4図に示すように、実施例5、6で作製した4層積
層コイル及び外周部の寸法25mm×25mmの5層強磁性薄帯
を有する平面インダクタ20を用い、強磁性薄帯の外側両
面に外周部の寸法30mm×30mm、厚さ100μmのPPS(ポリ
フェニレンサルファイド樹脂)フィルム21を設け、積層
コイルの側面を接着剤22(セメダインスーパー、セメダ
イン株式会社製)で塞ぎ、次工程で液状のモールド樹脂
に浸した時にモールド樹脂がコイル及び強磁性薄帯に直
接触れないようにした。次に、これをモールド樹脂(セ
ラコート640−43、北陸塗装株式会社製)に浸した後、
取り出した。これを約1時間自然乾燥させた後、150℃
で1時間加熱してモールド樹脂23を硬化させ、モールド
平面インダクタを作製した。
実施例8 強磁性薄帯の外側両面にPPSフィルムを設ける工程、
及び積層コイルの側面を接着剤で塞ぐ工程を行わなかっ
た以外は、実施例7と全く同様にしてモールド平面イン
ダクタを作製した。
比較例3 実施例7と同一の構造、すなわち4層積層コイル及び
5層強磁性薄帯を有する構造であるが、強磁性薄帯が (Co0.88Fe0.06Nb0.02Ni0.0475Si10B15 なる組成を有し、平均厚さ16μm、幅25mmの非晶質合金
薄帯から1辺の長さ25mmの正方形に切り出したものから
なる平面インダクタ(すなわち、参考例3の平面インダ
クタ)を用い、実施例7と同様にしてモールド平面イン
ダクタを作製した。
実施例7及び8のモールド平面インダクタについて、
モールド前後における、直流重畳電流とインダクタンス
との関係を第18図に示す。実施例7及び比較例3のモー
ルド平面インダクタについて、モールド後における、直
流重畳電流とインダクタンスとの関係を第19図に示す。
第18図から明らかなように、強磁性薄帯の外側両面に
PPSフィルムを設けていない実施例8のモールド平面イ
ンダクタでは、モールド前と比較してモールド後のイン
ダクタンスは約20%低下している。これに対して、強磁
性薄帯の外側両面にPPSフィルムを設けている実施例7
のモールド平面インダクタでは、モールド前と比較して
モールド後のインダクタンスはわずかに約7%低下して
いるにすぎない。また、第19図から明らかなように、強
磁性薄帯として飽和磁化が充分でない非晶質合金薄帯が
用いられている比較例3のモールド平面インダクタで
は、実施例7のモールド平面インダクタと異なり、直流
重畳電流が0.3A以上になるとインダクタンスの低下が著
しい。
なお、以上の実施例では平面状導体コイルとしてスパ
イラル状導体コイルを用いた場合について述べたが、平
面状導体コイルはつづら折れ状コイルなど他の形状のも
のでもよい。
また、強磁性薄帯として、強磁性薄膜又はその積層体
を用いてもよい。
[発明の効果] 以上詳述したように本発明によれば、直流重畳特性が
改善され、強磁性薄帯の高周波損失を少なく、モールド
被覆されてもインダクタンスの低下を防止でき、DC−DC
コンバータなどに適用可能な平面インダクタを提供する
ことができ、その工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図(A)は本発明に係る平面インダクタの平面図、
同図(B)は同図(A)のA−A′線に沿う断面図、第
2図は本発明の実施例5における平面インダクタの平面
図、第3図は参考例1における平面インダクタの平面
図、第4図は本発明の実施例7における平面インダクタ
の断面図、第5図は本発明の実施例1及び比較例1の平
面インダクタについて直流重畳電流とインダクタンスと
の関係を示す特性図、第6図は本発明の実施例2及び比
較例1の平面インダクタについて直流重畳電流とインダ
クタンスとの関係を示す特性図、第7図は本発明の実施
例3及び比較例1の平面インダクタについて直流重畳電
流とインダクタンスとの関係を示す特性図、第8図は本
発明の実施例4及び比較例2の平面インダクタについて
直流重畳電流とインダクタンスとの関係を示す特性図、
第9図は本発明に係る平面インダクタを構成する強磁性
薄帯の飽和磁化とその平面インダクタを適用した非絶縁
降圧型DC−DCコンバータの効率との関係を示す特性図、
第10図は本発明の実施例5及び6の平面インダクタにつ
いて直流重畳電流とインダクタンスとの関係を示す特性
図、第11図は本発明の実施例5及び6の平面インダクタ
について直流重畳電流と鉄損との関係を示す特性図、第
12図は本発明の実施例5及び6の平面インダクタについ
て直流重畳電流とインピーダンスの実抵抗分との関係を
示す特性図、第13図は本発明の実施例5及び6の平面イ
ンダクタを用いて構成された非絶縁降圧型DC−DCコンバ
ータについて出力電流と効率との関係を示す特性図、第
14図は参考例1〜3の平面インダクタについて直流重畳
電流とインダクタンスとの関係を示す特性図、第15図は
参考例1〜3の平面インダクタについて直流重畳電流と
鉄損との関係を示す特性図、第16図は参考例1〜3の平
面インダクタについて直流重畳電流とインピーダンスの
実抵抗分との関係を示す特性図、第17図は参考例1〜3
の平面インダクタを用いて構成された非絶縁降圧型DC−
DCコンバータについて出力電流と効率との関係を示す特
性図、第18図は本発明の実施例7及び8のモールド平面
インダクタについてモールド前後の直流重畳特性とイン
ダクタンスとの関係を示す特性図、第19図は本発明の実
施例7及び比較例3のモールド平面インダクタについて
モールド後の直流重畳特性とインダクタンスとの関係を
示す特性図である。 1……スパイラル状導体コイル、2a、2b……スパイラル
コイル、3a、3b、3c……絶縁層、4……スルーホール、
5a、5b……強磁性薄帯、6a、6b……端子、11、12……非
晶質合金薄帯の積層体、20……平面インダクタ、21……
PPSフィルム、22……接着剤、23……モールド樹脂。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平面状導体コイル又はこれらの積層体の両
    面を絶縁層を介して強磁性薄帯又はその積層体で挟んだ
    平面インダクタにおいて、前記強磁性薄帯として、飽和
    磁化4πMSが 4πMS≧10kG であり、厚さが100μm以下のものを用いたことを特徴
    とする平面インダクタ。
  2. 【請求項2】強磁性薄帯として、10kHzにおける実効透
    磁率μ10kが μ10k≧1×104 であるものを用いたことを特徴とする請求項(1)記載
    の平面インダクタ。
  3. 【請求項3】強磁性薄帯又はその積層体が、複数の部分
    に分割されていることを特徴とする請求項(1)記載の
    平面インダクタ。
  4. 【請求項4】強磁性薄帯又はその積層体の両面に、モー
    ルド樹脂の収縮力緩和層を形成し、全体をモールド樹脂
    で被覆したことを特徴とする請求項(1)記載の平面イ
    ンダクタ。
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