JP2728226B2 - 半導体電子放出素子 - Google Patents

半導体電子放出素子

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は半導体電子放出素子に関し、特に負の電子親
和力状態の表面を有する半導体電子放出素子に関する。
本発明は、特にディスプレイやEB(エレクトロンビー
ム)描画装置、真空管、電子線プリンターなどに好適に
用いられる電子放出素子に関する。
[従来の技術] 従来、半導体電子放出素子のうち、負の電子親和力
(Negative Electron Affinity;以下「NEA」と略す)を
利用したものは、例えば特公昭54−30274号公報及び特
公昭60−25858号公報に記載されているものが知られて
いる。
この半導体電子放出素子は、半導体基板上にn型半導
体層とp型半導体層とを形成し、該p型半導体層表面に
セシウムなどの低仕事関数の材料による層を形成させて
表面の仕事関数を低下させることによりNEA状態の表面
を持つ電子放出部を形成したものであり、n型半導体層
とp型半導体層とにより形成されたダイオードに順バイ
アス電圧を印加し、p型半導体部に電子を供給して、電
子放出部より電子を放出するものである。
[発明が解決しようとする課題] 上記の様に、従来の負の電子親和力を利用した順バイ
アス半導体電子放出素子では、半導体自体の仕事関数が
大きいため、そのままでは順バイアスによる電子放出を
起こすことはできなかった。よって、従来は表面に仕事
関数を低下させるための低仕事関数の材料の層を形成
し、負の電子親和力の表面を持つ様にしなければならな
かった。
この様な低仕事関数の材料としては、半導体のエネル
ギーバンドギャップの広さからセシウム等の材料が用い
られていた。
また、この様な仕事関数低材料を用いる従来の半導体
電子放出素子では、順バイアスによるn型半導体層中の
電子がp型半導体層内を通過して電子放出部表面に達す
る構造となっているために、p型半導体層中に注入され
た電子が孔子と再結晶したりフォノン散乱されたりしな
い様にするためには、p型半導体層の孔子数を減らして
p型半導体層を薄くすることが電子放出効率を上げるた
めに必要であるが、この場合には以下の様な問題点があ
った。
即ち、p型半導体層の抵抗が高くなるため、p型半導
体層の局所的発熱が起こる。一般に、半導体電子放出素
子から電子を放出させる特に多くの電子放出電流を得よ
うとすれば、非常に多くの電流を素子にかけねばならな
い。この電流投入により、素子が発熱する。セシウム等
の化学的にあまり安定でない低仕事関数材料の場合、こ
れらの材料の蒸発及びマイグレーションなどが生じ、こ
のため電子放出領域の不均一が生じたりして特性が不安
定となったり、寿命が著しく制限されたりした。
更に、該セシウム材料は化学的に極めて活性なため、
10-7Torrよりも更に高い真空度の下で使用しなければ安
定な動作が期待できず、寿命及び効率が真空度によって
変化するという難点があった。
そこで、仕事関数低下材料を用いずに負の電子親和力
状態の表面をもつ電子放出素子が望まれており、また仕
事関数低下材料を用いるとしても、セシウム及びセシウ
ム酸化物等の材料に代えて比較的安定な材料をも使用し
得る様な電子放出素子が望まれていた。
[発明の目的] 本発明は、以上の様な課題に鑑みて、仕事関数低下材
料層を形成しなくとも負の電子親和力状態の表面をもつ
電子放出素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、局所的発熱の少ない電子放出素子を
提供することを目的とする。
更に、本発明は、仕事関数低下材料として比較的安定
な材料をも使用し得る様な電子放出素子を提供すること
を目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結
果、完成に至ったものであり、本発明による半導体電子
放出素子は、 半導体基板上に形成されたn型半導体層と、前記n型
半導体層と接合して形成されたp型半導体層とを有し、 前記p型半導体層とn型半導体層との間に順バイアス
電圧を印加して前記p型半導体層側から電子放出を行
う、負の電子親和力状態の表面を有する半導体電子放出
素子において、 前記p型半導体層にダイヤモンド層を用いていること
を特徴とするものである。
本発明においては、前記p型半導体層上にダイヤモン
ドのエネルギーバンドギャップの幅以下の仕事関数を持
つ金属または金属化合物の層を有する態様がある。
また、本発明においては、前記n型半導体層を構成す
る材料としてダイヤモンドと異なる低抵抗の材料を用い
前記p型半導体層との間にヘテト接合を形成する態様が
ある。
[作用] 以上の様な本発明においては、p型半導体層としてダ
イヤモンド層を用いており、該ダイヤモンド自体の仕事
関数が小さいために、低仕事関数材料の層を表面に付さ
なくても電子放出を行わせることが可能となる。
また、以上の様な本発明においては、ダイヤモンド層
を用いるために、熱伝導性が極めて良好であり、素子の
発熱があっても、放熱が良好である。このため、低仕事
関数材料の層を用いる場合においても、該材料は熱の影
響を少ししか受けないので、安定した電子放出と長寿命
化が達成できる。
以下、本発明の半導体電子放出素子の作用についてエ
ネルギーバンド図を用いて説明する。
第4図(A),(B)は本発明の素子におけるエネル
ギーバンド図である。図において、nはn型半導体層を
示し、pはp型半導体層を示し、Tは低仕事関数の材料
の層を示す。第4図(A)はpn接合がダイヤモンド層の
みからなる場合を示している。
尚、本発明におけるp型及びn型の半導体層は、特に
断らないかぎり不純物を高濃度に含んだ、いわゆるp+
n+をも意味するものとする。
先ず、第4図(A)について説明する。
ダイヤモンドは、そのバンドギャップが5.4eVと大き
く、またホウ素を不純物とした場合のp型半導体では、
活性化エネルギーが0.37eVであるため、電子放出部表面
材料の仕事関数が5.0eV以下であれば、電子放出側の半
導体の伝導帯準位よりも真空準位が低い状態即ちNEAのN
EA状態の表面を持つことになり、電子放出が可能であ
る。ダイヤモンドの仕事関数は4.8eVと小さいため、電
子放出を行わせることができる。更に、p型ダイヤモン
ド表面に仕事関数の低い金属または金属化合物等の層を
形成する場合には、ダイヤモンドのバンドギャップが5.
4eVと大きいことから、従来に比べ広い範囲の仕事関数
の材料の中から適当な材料を選択することができる。特
に、先に述べた様に半導体不純物としてホウ素を用いる
場合、5.0eV以下の仕事関数を持つ材料を選択すること
ができる。この様な構成とした後に、p型半導体層とn
型半導体層との接合部に順バイアス電圧Vbを印加する
と、n型ダイヤモンド層からp型ダイヤモンド層へと電
子が注入され、NEA状態の表面からの電子放出が可能と
なる。
上記第4図(A)ではpn接合を構成している半導体材
料としてダイヤモンドを用いているが、ダイヤモンド以
外のn型半導体を用いてヘテロ接合を行った電子放出素
子においても、第4図(A)の場合と同様に表面にNEA
状態を形成し、且つp型ダイヤモンド層とn型半導体層
との間に順バイアス電圧を印加することにより、表面か
ら電子放出を行うことができる。この様なヘテロ接合の
場合のエネルギーバンド図を示したのが第4図(B)で
ある。
ヘテロ接合を用いた電子放出素子も、ダイヤモンドpn
接合の電子放出素子と同様の効果が得られる。更に、ダ
イヤモンドの様なバンドギャップの大きな材料は、伝導
帯の有効状態密度が小さいために半導体の抵抗値を不純
物ドープによって十分に低下させることは困難である
が、n型半導体層としてバンドギャップの小さい半導体
層を用い高濃度の不純物ドープを行ってキャリア電子数
を増やせば、低抵抗となり放出素子数を増加させること
が可能となって、ダイヤモンドの特徴を更に活かした電
子放出素子を得ることができる。
[実施態様例] 本発明素子におけるダイヤモンド層の形成には、公知
の熱フィラメントCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、有
磁場マイクロ波プラズマCVD法、直流プラズマCVD法、RF
プラズマCVD法、燃焼炎法等の気相合成法を用いること
ができる。
炭素原料としては、メタン、エタン、エチレン、アセ
チレン等の炭化水素ガス、アルコール、酸素、アセトン
等の液体有機物、一酸化炭素ガスなどを用いることがで
き、さらに適宜、水素、水などを添加してもよい。
p型ダイヤモンド層の作成のための不純物としては、
ホウ素等の周期律表第III族の元素を用いることができ
る。ホウ素の添加方法としては、原料ガス中にホウ素含
有化合物を添加する方法及びイオン注入法等を用いるこ
とができる。
n型半導体層としてダイヤモンド層を用いる場合に
は、ダイヤモンド中に不純物として窒素、リン等の周期
律表第IV族の元素及びリチリムなどを添加して形成する
ことができる。これらの不純物添加方法としては、原料
ガス中にこれらの不純物含有ガスを添加する方法及びイ
オン注入法等を用いることができる。n型半導体層とし
て、ダイヤモンド以外の半導体を用いる場合には、Si,G
e、更にIn,As,P等の周期律表第II族、第III族、第V
族、第VI族の半導体材料及びこれらを組合わせたもの、
更にはアルモファスシリコンやアモルファスカーバイド
を用いることができる。これらの材料は1×1020atom/
cm3以上の不純物を添加することが可能で、n型半導体
層の比抵抗値を10-4Ω・cm程度と低くすることができ
る。
本発明素子において、p型半導体層上に形成される材
料としては、ダイヤモンドのエネルギーバンドギャップ
の広さ(5.4eV)から不純物元素をドープした場合の活
性化エネルギーを減じたエネルギー以下の仕事関数を持
つ材料を使用することができる。不純物としてホウ素を
用いた場合に使用し得る材料としては、周期律表第1A族
〜第7A族、同じく第2B族〜第4B族の元素のうち5.0eV以
下の仕事関数を持つ材料、周期律表第8族、第1B族の元
素のうちIr,Pt,Au等の元素、更に種々の金属シリサイ
ド、金属ホウ化物、金属炭化物も使用可能である。これ
らの中でも、特にAl,Ag,Cu,Rh等の元素を好ましく用い
ることができる。また、これら上記の元素及び材料を組
合わせた材料でもよい。
これらの材料は、電子ビーム蒸着法等で極めて制御性
よく半導体上に堆積することが可能である。100Å以
下、より好ましくは単原子層から数原子層の厚さに堆積
することにより、電子がエネルギーを大きく失うことな
しに、これらの低仕事関係を持つ材料の層を通過させる
ことができ、安定した電子放出を行うことができる。
これらの低仕事関数を持つ材料のうち、タングステ
ン、タンタル、モリブデン等の高融点金属や種々の金属
シリサイド、金属ホウ化物、金属炭化物等は従来の半導
体電子放出素子の表面に形成されているセシウム等の低
仕事関数材料に比べて化学的に安定であり、比較的低い
真空度(10-3Torr程度)でも安定して電子放出が可能で
ある。また、銀においては、化学的に安定である上に低
抵抗であるために、好ましく用いることができる。
[実施例] 以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明す
る。
実施例1: 第1図は本発明の第1の実施例に係る半導体電子放出
素子を示す図であり、第1図(A)は平面図であり第1
図(B)はそのA−A断面図である。
図において、101はn+型半導体基板であり、本実施例
ではSi(100)を用いた。102はn型ダイヤモンド層であ
り、103はp型ダイヤモンド層であり、104は絶縁性選択
堆積用マスクであり、ここではSiO2層を用いた。105はp
+型ダイヤモンド層である。106はオーミックコンタクト
用のチタン(Ti)電極であり、107は絶縁層であり、108
は引き出し電極である。109は上記Si基板101の裏面にAl
を蒸着したオーミックコンタクト用電極である。110は
電極106と電極109との間に順バイアス電圧Vbを印加する
ための電源であり、111は電極106と引き出し電極108と
の間に引き出し電圧Vgを印加するための電源である。
以上の素子は、次の様な方法により製造した。
(1)n+型Si基板101上に、熱フィラメントCVD法により
2μm厚のn型ダイヤモンド層102を形成した。形成条
件は、基板温度を1000℃、圧力を100Torr、ガス流量をH
2:200SCCM、CH4:1SCCM、1000ppmPH3(水素希釈):1SCC
M、フィラメント温度を2100℃とした。
(2)次に、p型ダイヤモンド層103を熱フィラメントC
VD法により2000Å厚に形成した。形成条件は、基板温度
を1000℃、圧力を100Torr、ガス流量をH2:200SCCM、C
H4:1SCCM、100ppmB2H6(水素希釈):1SCCM、フィラメン
ト温度を2100℃とした。
(3)次に、フォトリソグラフィーのレジスタプロセス
により、所定の位置にSiO2マスク104を形成した。
(4)次いで、p+型ダイヤモンド層105を熱フィラメン
トCVD法により1000Å厚に形成した。形成条件は、ガス
流量をH2:200SCCM、CH4:1SCCM、100ppmB2H6(水素希
釈):5SCCMとした以外は上記(2)と同様とした。
p+型ダイヤモンドはSiO2マスク104上には析出せず、
該マスクの開口部(ダイヤモンド層103の露出部)にの
み選択的に析出した。
(5)次に、フォトリソグラフィー技術を用いてチタン
電極106、SiO2絶縁層107及びポリシリコン引き出し電極
108を、いずれも所定の形状に形成した。
以上の様にして製造した半導体電子放出素子の電極10
6と109との間に順バイアス電圧Vbを印加すると、n型ダ
イヤモンド層102からp型ダイヤモンド層103へ電子が注
入され、注入電子はp+型ダイヤモンド層105を通り抜
け、真空領域にしみ出し、更に引き出し電極108と電極1
06との間に引き出し電圧Vgを印加することによって、電
子を素子外部へ放出させることができた。
本実施例によれば、ダイヤモンド自体の仕事関数が4.
8eVであり、表面がNEA状態となるために、仕事関数低下
材料を使用することなく、電子放出を行わせることがで
きた。また、高い熱伝導性をもつダイヤモンド層を用い
ていることにより、素子の局所的発熱が抑制され、安定
性のよい電子放出を得ることができた。
実施例2: 本実施例は、p+型半導体層の表面に更に仕事関数の低
下を図るために仕事関数低下材料層を形成したものであ
る。
第2図は本実施例に係る半導体電子放出素子を示す図
であり、第2図(A)は平面図であり第2図(B)はそ
のA−A断面図である。
図において、201はn+型半導体基板であり、本実施例
ではSi(100)を用いた。202はn型ダイヤモンド層であ
り、203はp型ダイヤモンド層であり、204は絶縁性選択
堆積用マスクであり、ここではSiO2層を用いた。 205
はp+型ダイヤモンド層である。206はオーミックコンタ
クト用のチタン(Ti)電極であり、207は絶縁層であ
り、208は引き出し電極である。209は上記Si基板201の
裏面にA1を蒸着したオーミックコンタクト用電極であ
る。210は電極206と電極209との間に順バイアス電圧Vb
を印加するための電源であり、211は電極206と引き出し
電極208との間に引き出し電圧Vgを印加するための電源
である。212は低仕事関数材料のAg(仕事関数:4.26eV)
層である。
以上の素子は、上記実施例1におけると同様な方法に
より製造した。但し、上記(5)において、フォトリソ
グラフィー技術を用いて銀層22を所定の形状に形成し
た。
以上の様にして製造した半導体電子放出素子の電極20
6と209との間に順バイアス電圧Vbを印加すると、n型ダ
イヤモンド層202からp型ダイヤモンド層203へ電子が注
入され、注入電子はp+型ダイヤモンド層205及び銀層212
を通り抜け、真空領域にしみ出し、更に引き出し電極20
8と電極206との間に引き出し電圧Vgを印加することによ
って、電子を素子外部へ放出させることができた。
本実施例によれば、高い熱伝導性をもつダイヤモンド
層を用いていることにより、素子の局所的発熱が抑制さ
れ、安定した電子放出特性が得られた。更に、p型半導
体層の表面に低仕事関数の材料として化学的に不安定な
セシウムやセシウム酸化物を用いる必要がなく、化学的
に安定な銀を使用でるきため、比較的低い真空度(本実
施例では、2×10-5Torr)で安定した電子放出特性を得
ることができた。
実施例3: 本実施例は、上記実施例1,2のダイヤモンドpn接合に
よる半導体電子放出素子とは異なり、p型ダイヤモンド
層とダイヤモンド以外のn型半導体材料とのヘテロ接合
を利用したものである。
第3図は本実施例に係る半導体素子放出電子を示す断
面図である。
図において、301はn+型半導体基板であり、本実施例
ではSi(100)にリン(P)を約1×1020atom/cm3ドー
プし、比抵抗値を約1×10-4Ω・cmとしたものを用い
た。303はp型ダイヤモンド層であり、Si基板301との間
でヘテロ接合を形成している。304は絶縁性選択堆積用
マスクであり、ここではSiO2層を用いた。305はp+型ダ
イヤモンド層である。306はオーミックコンタクト用の
チタン(Ti)電極であり、307は絶縁層であり、308は引
き出し電極である。309は上記Si基板301の裏面にA1を蒸
着したオーミックコンタクト用電極である。310は電極3
06と電極309との間に順バイアス電圧Vbを印加するため
の電源であり、311は電極306と引き出し電極308との間
に引き出し電圧Vgを印加するための電源である。312は
低仕事関数の材料であるA1(仕事関数:4.28eV)の層で
ある。
以上の素子は、次の様な方法により製造した。
(1)n+型Si基板301上に、熱フィラメントCVD法により
5000Å厚のp型ダイヤモンド層303を形成した。形成条
件は、基板温度を1000℃、圧力を100Torr、ガス流量をH
2:200SCCM、CH4:1SCCM、100ppmB2H6(水素希釈):1SCC
M、フィラメント温度を2100℃とした。
(2)次に、フォトリソグラフィーのレジストプロセス
により、所定の位置にSiO2マスク304を形成した。
(3)次いで、p+型ダイヤモンド層305を熱フィラメン
トCVD法により1000Å厚に形成した。形成条件は、ガス
流量をH2:200SCCM、CH4:1SCCM、100ppmB2H6(水素希
釈):5SCCMとした以外は上記(1)と同様とした。
p+型ダイヤモンドはSiO2マスク304上には析出せず、
該マスクの開口部(ダイヤモンド層303の露出部)にの
み選択的に析出した。
(4)次に、フォトリソグラフィー技術を用いてチタン
電極306、アルミニウム層(100Å厚)312、SiO2絶縁層3
07及びポリシリコン引き出し電極308を、いずれも所定
の形状に形成した。
本実施例においてn型半導体層としてシリコンを用い
たが、この材料に限定されることなく、n型のアルモフ
ァスカーボンやアルモファスシリコンを用いてもよい。
以上の様にして製造した半導体電子放出素子の電極30
6と309との間に順バイアス電圧Vbを印加すると、n型ダ
イヤモンド層302からp型ダイヤモンド層303へ電子が注
入され、注入電子はp+型ダイヤモンド層305及びアルミ
ニウム層312を通り抜け、真空領域にしみ出し、更に引
き出し電極308と電極306との間に引き出し電圧Vgを印加
することによって、電子を素子外部へ放出させることが
できた。
本実施例によれば、高い熱伝導性をもつダイヤモンド
層を用いていることにより、素子の局所的発熱を抑制す
ることができ、安定した電子放出特性が得られた。更
に、n+型半導体材料としてダイヤモンドではなく、エネ
ルギーバンドギャップが小さく、高濃度に不純物をドー
プして抵抗値を小さくしたシリコンを用いているため、
キャリア電子数を増すことができ、効率よく電子放出を
行わせることができた。また、表面に化学的に不安定な
セシウムやセシウム酸化物の層を形成する必要がなく、
化学的に安定なアルミニウム層を使用しているので、比
較的低い真空度(本実施例では、2×10-5Torr)で安定
した電子放出特性を得ることができた。
尚、本実施例ではn+型半導体基板上に直接ダイヤモン
ドのp型層を形成しているが、n+型半導体基板とp型半
導体層との間にダイヤモンドと異なるエネルギーバンド
ギャップの小さいn型層を形成してもよい。
[発明の効果] 以上説明した様に、本発明の半導体電子放出素子によ
れば、少なくともp型の半導体層にダイヤモンド半導体
を用いている。該ダイヤモンド半導体はエネルギーバン
ドギャップが広く低仕事関数であるため、表面がNEA状
態となる。このため、p型半導体層表面に仕事関数低下
材料層を形成することなしに電子放出が可能となる。
また、高い熱伝導性をもつダイヤモンド半導体層を用
いているため、素子の局所的な発熱が抑制され、安定し
た電子放出特性が得られる。
更に、広いバンドギャップのため、仕事関数が比較的
大きく化学的に安定な材料をも仕事関数低下材料として
用いることが可能であり、信頼性の高い素子の作成が可
能となる。
従って、本発明の半導体電子放出素子によれば、信頼
性の高いディスプレイ、EB描画装置、真空管、電子線プ
リンター、メモリーなどを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1の実施例に係る半導体電子放出素
子を示す図であり、第1図(A)は平面図であり第1図
(B)はそのA−A断面図である。 第2図は本発明の第2の実施例に係る半導体電子放出素
子を示す図であり、第2図(A)は平面図であり第2図
(B)はそのA−A断面図である。 第3図は本発明の第3の実施例に係る半導体電子放出素
子を示す断面図である。 第4図は本発明の半導体電子放出素子におけるエネルギ
ーバンドの模式図であり、第4図(A)はp型半導体層
とn型半導体層にダイヤモンドを用いた場合のエネルギ
ーバンドの模式図で、第4図(B)はヘテロ接合を用い
た場合のエネルギーバンドの模式図である。 101,201,301:n+型半導体基板、102,202:n型ダイヤモン
ド層、103,203,303:p型ダイヤモンド層、104,204,304:
絶縁性選択堆積用マスク、105,205,305:p+型ダイヤモン
ド層、106,206,306:オーミックコンタクト用電極、108,
208,308:引き出し電極、109,209,309:オーミックコンタ
クト用電極、212,312:仕事関数低下材料層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 信男 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 奥貴 昌彦 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ャノン株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−67527(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】半導体基板上に形成されたn型半導体層
    と、前記n型半導体層と接合して形成されたp型半導体
    層とを有し、 前記p型半導体層とn型半導体層との間に順バイアス電
    圧を印加して前記p型半導体層側から電子放出を行う、
    負の電子親和力状態の表面を有する半導体電子放出素子
    において、 前記p型半導体層にダイヤモンド層を用いることを特徴
    とする半導体電子放出素子。
  2. 【請求項2】前記p型半導体層上にダイヤモンドのエネ
    ルギーバンドギャップの幅以下の仕事関数を持つ金属ま
    たは金属化合物の層を有する、請求項1に記載の半導体
    電子放出素子。
  3. 【請求項3】前記n型半導体層を構成する材料としてダ
    イヤモンドと異なる低抵抗の材料を用い前記p型半導体
    層との間にヘテロ接合を形成する、請求項1に記載の半
    導体電子放出素子。
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