以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
本明細書中、同一又は類似する部材については、同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。
以下、第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合を例に説明する。また、以下の説明において、n+、n、n−および、p+、p、p−の表記は、各導電型における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちn+はnよりもn型の不純物濃度が相対的に高く、n−はnよりもn型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p+はpよりもp型の不純物濃度が相対的に高く、p−はpよりもp型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n+型、n−型を単にn型、p+型、p−型を単にp型と記載する場合もある。
本明細書中、i型の半導体(アンドープ半導体)とは、真性半導体を意味する。いいかえれば、積極的にn型不純物またはp型不純物を導入していない半導体を意味する。半導体の製造に伴い不可避的に導入される不純物については、これを許容する概念とする。
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。以下に説明する実施形態は、以下に図示または説明された向きとは異なる向きで実施可能である。
(第1の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1導電型の第1のダイヤモンド半導体層と、第1のダイヤモンド半導体層上に設けられた第1導電型の第1の炭化珪素層と、第1の炭化珪素層上に設けられた第1の電極と、を備える。
図1は、本実施形態の半導体装置100の模式断面図である。本実施形態の半導体装置100は、PINダイオードである。
半導体装置100は、第2の電極10と、p型の半導体層12と、i型、n型又はp型の第2のダイヤモンド半導体層14と、n型の第1のダイヤモンド半導体層16と、n+型の第1の炭化珪素層18と、第1の電極20と、第2の炭化珪素層22と、第1の絶縁層24と、フィールドプレート電極40と、メサ構造60と、を備える。
第1のダイヤモンド半導体層16の導電型はn型である。ダイヤモンド半導体層に用いられるn型不純物は、例えばP(リン)である。第1のダイヤモンド半導体層16におけるn型不純物濃度は、オン抵抗低減するため1018atoms/cm3以上であることが好ましい。
第1の炭化珪素層18は、第1のダイヤモンド半導体層16上に設けられている。第1の炭化珪素層18の導電型は、n+型である。炭化珪素層に用いられるn型不純物は、例えばN(窒素)、As(ヒ素)、P(リン)又はSb(アンチモン)である。第1の炭化珪素層18のn型不純物濃度は、オン抵抗を低減するため、例えば1×1019atoms/cm3である。
第1の電極20は、第1の炭化珪素層18上に設けられている。第1の電極は、PINダイオードのカソード(陰極)である。第1の電極20は、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、Ru(ルテニウム)、WC(タングステンカーバイド)、Au(金)、Pd(パラジウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)又はRh(ロジウム)を含むことが、第1の炭化珪素層と良好な接合を形成する上で好ましい。特にNiは良好なオーミック接合を形成できるため好ましい。
第2のダイヤモンド半導体層14は、第1のダイヤモンド半導体層16の、第1の炭化珪素層18と反対側に設けられている。言い換えると、第1のダイヤモンド半導体層16は、第2のダイヤモンド半導体層14上に設けられている。第2のダイヤモンド半導体層14の導電型は、i型、n型又はp型である。ダイヤモンド半導体層に用いられるp型不純物は、例えばB(ボロン)である。第2のダイヤモンド半導体層14の不純物濃度は、高耐圧化のため5×1016atoms/cm3以下であることが好ましい。
半導体層12は、第2のダイヤモンド半導体層14の、第1のダイヤモンド半導体層16と反対側に設けられている。言い換えると、第2のダイヤモンド半導体層14は、半導体層12上に設けられている。半導体層12の導電型は、p型である。半導体層12の不純物濃度は、オン抵抗低減のため1018atoms/cm3以上であることが好ましい。
半導体層12は、ダイヤモンドを含むダイヤモンド半導体層であることが、第2のダイヤモンド半導体層14との間の格子歪みを低減させる上で好ましい。なお、半導体層12としては、Si(シリコン)基板等のSiを含む半導体層も、好ましく用いることができる。
メサ構造60は、第2のダイヤモンド半導体層14上に、第1のダイヤモンド半導体層16と第2のダイヤモンド半導体層14を含んで設けられている。メサ構造60の断面は、例えば台形状である。メサ構造60の側面である第2の面52は、第1のダイヤモンド半導体層16上及び第2のダイヤモンド半導体層14上に設けられている。メサ構造の上面である第3の面54は、第1の炭化珪素層18と接する第1のダイヤモンド半導体層16上に設けられている。第1の面50は、メサ構造60の側方の第2のダイヤモンド半導体層14の上面である。第1の面50の面方位と、第2の面52の面方位は、異なっている。ここで面方位はXRD(X−ray diffraction:X線回折)により評価することが出来る。
第2の炭化珪素層22は、第1の面50上及びメサ構造60(第1のダイヤモンド半導体層16及び第2のダイヤモンド半導体層14)上の第2の面52上に設けられている。第2の炭化珪素層22は、表面リーク電流低減のためアンドープ炭化珪素層であることが好ましい。
第1の絶縁層24は、第1の炭化珪素層18上及び第2の炭化珪素層22上に設けられている。第1の絶縁層24は、パッシベーション層である。第1の絶縁層24は、表面リーク電流低減のため酸化物、窒化物又はフッ化物を含む事が好ましい。第1の絶縁層24は、特に、酸化シリコンを含むことが、密着性の高い高品質な絶縁膜となるため好ましい。また、第1の絶縁層24は、第1の炭化珪素層18及び第2の炭化珪素層22を酸化することにより形成されることが、質の高い酸化シリコンを含む層が得られるため好ましい。
第2の電極10は、半導体層12に電気的に接続されている。第2の電極10は、半導体層12にオーミック接合されていることが好ましい。たとえば、Ti(チタン)/Pt(白金)/Au(金)からなる電極を電子ビームにより蒸着し、Ar(アルゴン)ガス雰囲気中で熱処理した電極は、ダイヤモンド半導体層に対して良いオーミック電極である。そのため、半導体層12がダイヤモンド半導体層である場合は、Ti(チタン)/Pt(白金)/Au(金)からなる電極は、第2の電極10として好ましく用いることができる。
フィールドプレート電極40は、第3の面54上の第1の絶縁層24上に設けられている。フィールドプレート電極40は、半導体装置100内の電界集中の緩和に用いられる。フィールドプレート電極40は、第1の電極20に電気的に接続されていることが、容易に電界集中の緩和を行うことができるため好ましい。
図2は、本実施形態の半導体装置100の製造方法を示す模式断面図である。
本実施形態の半導体装置100の製造方法は、p型の半導体層12上にi型、n型又はp型の第2のダイヤモンド半導体層14を形成し、第2のダイヤモンド半導体層14上にn型の第1のダイヤモンド半導体層16を形成し、第2のダイヤモンド半導体層14上に第1のダイヤモンド半導体層16と第2のダイヤモンド半導体層14を含むメサ構造60を形成し、第2のダイヤモンド半導体層14上及びメサ構造60上に第2の炭化珪素層22を形成し、第1のダイヤモンド半導体層16上にn+型の第1の炭化珪素層18を形成し、第1の炭化珪素層18上及び第2の炭化珪素層22上に第1の絶縁層24を形成し、第1の炭化珪素層18上に第1の炭化珪素層18と電気的に接続される第1の電極20を形成し、半導体層12に電気的に接続される第2の電極10を形成する。
まず、p型の半導体層12上にi型、n型又はp型の第2のダイヤモンド半導体層14を、例えばエピタキシャル成長法により形成する。半導体層12としては、例えばダイヤモンド半導体基板が好ましく用いられる。なおSi基板等を半導体層12として用いても良い。
本実施形態の製造方法におけるダイヤモンド半導体層のエピタキシャル成長には、マイクロ波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法が好ましく用いられる。
ダイヤモンド半導体において、不純物のドーピングをイオン注入や固相拡散で行うことは困難である。そのため、ダイヤモンド半導体層の形成においては、通常、ダイヤモンド半導体層の形成時にドーピングをおこなう。
本実施形態におけるp型のダイヤモンド半導体層を形成するための原料ガスとしては、H2(水素)ガスと、CH4(メタン)ガスと、p型不純物ガスとしてのB2H6(ジボラン)ガスと、を用いることが好ましい。また、本実施形態におけるn型のダイヤモンド半導体層を形成するための原料ガスとしては、H2(水素)ガスと、CH4(メタン)ガスと、n型不純物ガスとしてのPH3(ホスフィン)ガスと、を用いることが好ましい。また、CH4ガスとH2ガスとの比を制御してαパラメータを調整することが好ましい。
次に、第2のダイヤモンド半導体層14上に、n型の第1のダイヤモンド半導体層16を、例えばエピタキシャル成長法により形成する(図2(a))。
次に、第2のダイヤモンド半導体層14の一部と第1のダイヤモンド半導体層16の一部を、例えばフォトリソグラフィー法とRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法により除去し、第2のダイヤモンド半導体層14上に第1のダイヤモンド半導体層16と第2のダイヤモンド半導体層14を含むメサ構造60を形成する。(図2(b))。
次に、第2のダイヤモンド半導体層14上及びメサ構造60上に第2の炭化珪素層22を、例えばCVD法により形成する(図2(c))。第2の炭化珪素層22はアンドープ炭化珪素層であることが好ましい。なお、第2の炭化珪素層22を、張り合わせ法やMBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシー)法により形成しても良い。
次に、第1のダイヤモンド半導体層16上に、例えばイオン注入を第2の炭化珪素層22に行うことにより、n+型の第1の炭化珪素層18を形成する。これにより第1のダイヤモンド半導体層16上の第2の炭化珪素層22は消失し、第1のダイヤモンド半導体層16と第1の炭化珪素層18は直接接することが好ましい。
次に、第1の炭化珪素層18上及び第2の炭化珪素層22上に、例えばCVD法により、第1の絶縁層24を形成する。なお、第1の炭化珪素層18及び第2の炭化珪素層22を酸化することにより第1の絶縁層24を形成しても良い。
次に、例えばフォトリソグラフィー法とエッチング法により、第1の炭化珪素層18上の第1の絶縁層24を除去する。
次に、第1の炭化珪素層18と電気的に接続される第1の電極20を第1の炭化珪素層18上に、またフィールドプレート電極40を第1の炭化珪素層18上の第1の絶縁層24上に、Niを電子ビーム蒸着により堆積した後に1000℃で熱処理することにより形成する。
次に、半導体層12の、第2のダイヤモンド半導体層14と反対側に、半導体層12と電気的に接続される第2の電極10を、Ti/Pt/Auを電子ビーム蒸着により堆積した後に600℃で熱処理することにより形成し、本実施形態の半導体装置100を得る。
上記の方法により製造した半導体装置の不純物濃度をSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry:二次イオン質量分析法)により測定したところ、半導体層12として用いたダイヤモンド半導体基板中のp型不純物(B)濃度は5×1020cm−3、第1のダイヤモンド半導体層16中のn型不純物(P)濃度は1×1020cm−3、第1の炭化珪素層18中のn型不純物(N)濃度は1×1019cm−3、第2のダイヤモンド半導体層14中のn型不純物(B)及びp型不純物(P)の濃度は、SIMSの下限(1×1015cm−3)以下であった。この半導体装置のI−V特性を測定したところ、±10Vにおける整流比は10桁以上、5Vにおける順方向電流密度は1000A/cm2であった。また、逆方向の電圧は10kVまで加えてもブレークダウンは発生しなかった。
次に、本実施形態の半導体装置100の作用効果を説明する。
ダイヤモンド半導体においては、オーミック接合を形成することが困難であった。この点、炭化珪素のバンドギャップは4H−SiCで3.3eV、6H−SiCで2.9eV、3C−SiCで2.2eVであり、ダイヤモンドのバンドギャップ(5.47eV)より小さい。そのため、第1の炭化珪素層18は第1のダイヤモンド半導体層16と第1の電極20の中間に配置されるコンタクト層として作用し、良好なオーミック接合を提供することが可能になる。
また、炭化珪素の格子定数は0.309nm〜0.436nmであり、ダイヤモンド半導体の格子定数が0.357nmである。そのため、格子定数が互いに近いことから、歪みの小さく抵抗の低い炭化珪素層の形成が可能である。
さらに炭化珪素層のドーピングはイオン注入により容易に制御することが可能である。そのため、n型不純物を第1の炭化珪素層18に導入することにより、より良いオーミック接合を形成することが出来る。
特にn型ダイヤモンド半導体においては、ショットキー障壁が4eV以上と高く、かつ表面準位によりフェルミ準位が強固にピン止めされるため、オーミック接合を形成することが難しいという問題があった。第1の炭化珪素層18をn型ダイヤモンド半導体(第1のダイヤモンド半導体層16)と電極の間に設けることによりn型ダイヤモンド半導体と電極の間に生じていたフェルミ準位のピン止めを緩和することができるため、n型ダイヤモンド半導体と電極の間の障壁を小さくすることが出来る。特にNiを電極に用いることにより、良好なオーミック接合を形成することが出来る。
酸化物、窒化物又はフッ化物等を含む絶縁層はダイヤモンド半導体への密着性が悪く剥離しやすいため、半導体装置の高耐圧化に必要な膜厚を有する絶縁層を設けることは困難である。
本実施形態の半導体装置においては、第1のダイヤモンド半導体層16及び第2のダイヤモンド半導体層14上に第2の炭化珪素層22を設け、第2の炭化珪素層22上に第1の絶縁層24を設けている。これにより、密着性の高い絶縁層を得ることができるため、表面リーク電流が低減したパッシベーション膜を得ることができる。また、上記絶縁層上にフィールドプレート電極を設けることができるため、電界緩和の効果を用いてさらに高耐圧の素子を得ることができる。
酸化シリコンを含む第1の絶縁層24は、良好な酸化膜を得ることができるため本実施形態の半導体装置に特に好ましい。また、炭化珪素層を酸化して形成された酸化シリコンは、密着性がさらに高くなるため好ましく用いられる。
以上、本実施形態の半導体装置によれば、低いオン抵抗を有する半導体装置が提供される。
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第2のダイヤモンド半導体層上に設けられた、第1の炭化珪素層より第1導電型不純物濃度が低い第1導電型の第3の炭化珪素層をさらに備える点で、第1の実施形態と異なっている。ここで、第1の実施形態と重複する点については、その記載を省略する。
図3は、本実施形態の半導体装置200の模式断面図である。
第3の炭化珪素層26は、第2のダイヤモンド半導体層14上に設けられている。言い換えると、第3の炭化珪素層26は、第1のダイヤモンド半導体層16及び第2のダイヤモンド半導体層14と第1の絶縁層24の間に設けられている。言い換えると、第3の炭化珪素層26は、メサ構造60上に設けられている。第3の炭化珪素層26中のn型不純物濃度は、第1の炭化珪素層18中のn型不純物濃度より低い。第3の炭化珪素層26は、半導体装置200内に発生する電界の集中を緩和する。第3の炭化珪素層26への不純物の導入は、例えばイオン注入により行うことが出来る。
本実施形態の半導体装置200を製造して不純物濃度をSIMSにより測定したところ、半導体層12として用いたダイヤモンド半導体基板中のp型不純物(B)濃度は5×1020cm−3、第1のダイヤモンド半導体層16中のn型不純物(P)濃度は1×1019cm−3、第1の炭化珪素層18中のn型不純物(N)濃度は1×1019cm−3、第3の炭化珪素層26中のn型不純物(N)濃度は2×1017cm−3、第2のダイヤモンド半導体層中のn型不純物(B)及びp型不純物(P)の濃度は、SIMSの下限(1×1015cm−3)以下であった。この半導体装置のI−V特性を測定したところ、±10Vにおける整流比は10桁以上、5Vにおける順方向電流密度は1000A/cm2であった。また、逆方向の電圧は15kVまで加えてもブレークダウンは発生しなかった。
以上、本実施形態の半導体装置によれば、低いオン抵抗を有し逆方向電圧の高い半導体装置が提供される。
(第3の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1導電型の第1のダイヤモンド半導体層と、第1のダイヤモンド半導体層上に設けられた第1導電型の第1の炭化珪素層と、第1の炭化珪素層上に設けられた第1の電極と、第1のダイヤモンド半導体層の、第1の炭化珪素層と反対側に設けられたi型又は第2導電型の第2のダイヤモンド半導体層と、第2のダイヤモンド半導体層の、第1のダイヤモンド半導体層と反対側に設けられた第2導電型の半導体層と、第1の炭化珪素層の周囲の第1のダイヤモンド半導体層上に設けられた第2導電型の第3のダイヤモンド半導体層と、を備える。ここで、第1の実施形態及び第2の実施形態と重複する点については、記載を省略する。
図4は、本実施形態の半導体装置300の模式断面図である。本実施形態の半導体装置300は、バイポーラトランジスタである。
第1の電極20はバイポーラトランジスタのベース電極、第2の電極10はコレクタ電極、第3の電極36はエミッタ電極である。p+型の第3のダイヤモンド半導体層28はエミッタである。第2のダイヤモンド半導体層14の導電型は、i型又は第2導電型である。
第3の炭化珪素層32は第3のダイヤモンド半導体層28の周囲に設けられている。第3の炭化珪素層32は、表面リーク電流低減のためアンドープ炭化珪素層であることが好ましい。
第2の絶縁層34は、第1の炭化珪素層18上の、第3の炭化珪素層32と第1の電極20及び第1の炭化珪素層18の間に設けられている。第2の絶縁層34は、パッシベーション層である。第2の絶縁層34は、半導体装置300の保護のため酸化物、窒化物又はフッ化物を含む事が好ましい。また、第2の絶縁層34は、酸化シリコンを含むことが、密着性の高い高品質な絶縁膜となるため好ましい。また、第2の絶縁層34は、第2の炭化珪素層22を酸化することにより形成されることが、質の高い酸化シリコンを含む層が得られるため好ましい。
図5は、本実施形態の半導体装置300の製造方法を示す模式断面図である。
本実施形態の半導体装置300の製造方法は、半導体層12上にi型又はp型の第2のダイヤモンド半導体層14を形成し、第2のダイヤモンド半導体層14上にn型の第1のダイヤモンド半導体層16を形成し、第1のダイヤモンド半導体層16上にp型の第3のダイヤモンド半導体層28を形成し、第3のダイヤモンド半導体層28の一部を除去し、第2のダイヤモンド半導体層14上に第1のダイヤモンド半導体層16と第2のダイヤモンド半導体層14を含むメサ構造60を形成し、第2のダイヤモンド半導体層14及びメサ構造60及び第3のダイヤモンド半導体層28上に第2の炭化珪素層22を形成し、第2の炭化珪素層22上にn+型の第1の炭化珪素層18を形成し、第1の絶縁層24を第2の炭化珪素層22、第1の炭化珪素層18、第3の炭化珪素層32及び第3のダイヤモンド半導体層28上に形成し、第3のダイヤモンド半導体層28上に第3のダイヤモンド半導体層28と電気的に接続される第3の電極36を形成し、第1の炭化珪素層18上に第1の炭化珪素層18と電気的に接続される第1の電極20を形成し、半導体層12と電気的に接続される第2の電極10を形成する。
まず、p型の半導体層12上にi型又はp型の第2のダイヤモンド半導体層14をエピタキシャル成長法により形成する。半導体層12は、例えばダイヤモンド半導体基板が好ましく用いられる。なおSi基板等を半導体層12として用いても良い。
次に、第2のダイヤモンド半導体層14上に、n型の第1のダイヤモンド半導体層16を、例えばエピタキシャル成長法により形成する。
次に、n型の第1のダイヤモンド半導体層16上に、p型の第3のダイヤモンド半導体層28を形成する(図5(a))。
次に、第3のダイヤモンド半導体層28の一部を、例えばフォトリソグラフィー法とRIE法により除去する。次に、第2のダイヤモンド半導体層14の一部と第1のダイヤモンド半導体層16の一部を、例えばフォトリソグラフィー法とRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法により除去し、第2のダイヤモンド半導体層14上に第1のダイヤモンド半導体層16と第2のダイヤモンド半導体層14を含むメサ構造60を形成する。(図5(b))。
次に、第2のダイヤモンド半導体層14及びメサ構造60及び第3のダイヤモンド半導体層28上に第2の炭化珪素層22を、例えばCVD法により形成する(図5(c))。第2の炭化珪素層22はアンドープであることが好ましい。なお、第2の炭化珪素層22を、張り合わせ法やMBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシー)法により形成しても良い。
次に、第1のダイヤモンド半導体層16上の第2の炭化珪素層22上に、例えばイオン注入を行うことにより、n+型の第1の炭化珪素層18を形成する(図5(d))。これにより第1のダイヤモンド半導体層16上の第2の炭化珪素層22は消失し、第1のダイヤモンド半導体層16と第1の炭化珪素層18は直接接することが好ましい。
次に、第2の炭化珪素層22、第1の炭化珪素層18、第3の炭化珪素層32及び第3のダイヤモンド半導体層28上に、例えば、CVD法により、第1の絶縁層24を形成する。なお、第1の炭化珪素層18、第2の炭化珪素層22及び第3の炭化珪素層32を酸化することにより第1の絶縁層24を形成しても良い。
次に、例えばフォトリソグラフィー法とエッチング法により、第1の炭化珪素層18上及び第3のダイヤモンド半導体層28上の第1の絶縁層24を除去する(図5(e))。
次に、第3のダイヤモンド半導体層28上に、第3のダイヤモンド半導体層28と電気的に接続される第3の電極36を、Niを電子ビーム蒸着により堆積した後に1000℃で熱処理することにより形成する。
次に、第1の炭化珪素層18上に第1の炭化珪素層18と電気的に接続される第1の電極20を、また半導体層12と電気的に接続される第2の電極10を、Ti/Pt/Auを電子ビーム蒸着により堆積した後に600℃で熱処理することにより形成し、本実施形態の半導体装置300を得る。
上記の方法により製造した半導体装置300の不純物濃度をSIMSにより測定したところ、半導体層12として用いたダイヤモンド半導体基板中のp型不純物(B)濃度は5×1020cm−3、第1のダイヤモンド半導体層16中のn型不純物(P)濃度は1×1019cm−3、第1の炭化珪素層18中のn型不純物(N)濃度は1×1019cm−3、第3のダイヤモンド半導体層28中のn型不純物(N)濃度は1×1020cm−3、第2のダイヤモンド半導体層中のn型不純物(B)及びp型不純物(P)の濃度は、SIMSの下限(1×1015cm−3)以下であった。この半導体装置のI−V特性を測定したところ、±10Vにおける整流比は10桁以上、5Vにおける順方向電流密度は1000A/cm2であった。また、逆方向の電圧は15kVまで加えてもブレークダウンは発生しなかった。
以上、本実施形態の半導体装置によれば、低いオン抵抗を有する半導体装置が提供される。
(第4の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第2導電型の半導体層と、半導体層上に設けられたi型又は第2導電型の第2のダイヤモンド半導体層と、第2のダイヤモンド半導体層上に設けられた第1の電極と、第1の電極の周囲の第2のダイヤモンド半導体層上に設けられた第2の炭化珪素層と、を備える。ここで、第1の実施形態乃至第3の実施形態と重複する点については、記載を省略する。
図6は、本実施形態の半導体装置400の模式断面図である。本実施形態の半導体装置400は、ショットキーダイオードである。第1の電極20は、ショットキーダイオードのショットキー電極である。
図7は、本実施形態の半導体装置400の製造方法を示す模式断面図である。
本実施形態の半導体装置400の製造方法は、半導体層12上にi型又はp型の第2のダイヤモンド半導体層14を形成し、第2のダイヤモンド半導体層14上に第2の炭化珪素層22を形成し、第2の炭化珪素層22上に第1の絶縁層24を形成し、第2の炭化珪素層22の一部及び第1の絶縁層24の一部を除去し、第2のダイヤモンド半導体層14上に第2のダイヤモンド半導体層14と電気的に接続される第1の電極20を形成し、半導体層12と電気的に接続される第2の電極10を形成する。
まず、p型の半導体層12上にi型又はp型の第2のダイヤモンド半導体層14を、例えばエピタキシャル成長法により形成する(図7(a))。半導体層12としては、例えばダイヤモンド半導体基板が好ましく用いられる。なおSi基板等を半導体層12として用いても良い。
次に、第2のダイヤモンド半導体層14上に、第2の炭化珪素層22を、例えばCVD法により形成する(図7(b))。第2の炭化珪素層22はアンドープであることが好ましい。なお、第2の炭化珪素層22を、張り合わせ法やMBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシー)法により形成しても良い。
次に、第2の炭化珪素層22上に、例えばCVD法により、第1の絶縁層24を形成する。なお、第2の炭化珪素層22を酸化することにより、第1の絶縁層24を形成しても良い。
次に、例えばフォトリソグラフィー法とエッチング法により、第2の炭化珪素層22の一部及び第1の絶縁層24の一部を除去し、第2のダイヤモンド半導体層14の一部の表面を露出させる(図7(c))。
次に、半導体層12に電気的に接続される第2の電極10を、Ti/Pt/Auを電子ビーム蒸着により堆積した後に600℃で熱処理することにより形成する。次に、例えばNiを電子ビーム蒸着で堆積することにより第2のダイヤモンド半導体層14上に第1の電極20を形成する。これにより、本実施形態の半導体装置400を得る。
上記の方法により製造した半導体装置400の不純物濃度をSIMSにより測定したところ、半導体層12として用いたダイヤモンド半導体基板中のp型不純物(B)濃度は5×1020cm−3、第2のダイヤモンド半導体層14中のp型不純物(B)の濃度は1×1015cm−3であった。この半導体装置のI−V特性を測定したところ、±10Vにおける整流比は10桁以上、5Vにおける順方向電流密度は1000A/cm2であった。また、逆方向の電圧は6kVまで加えてもブレークダウンは発生しなかった。
n型ダイヤモンド半導体を用いたショットキーダイオードにおいては上述のとおりショットキー障壁が高いため高耐圧を維持できる。しかし、ショットキー障壁が4eV以上と高くかつn型ダイヤモンド半導体へのオーミック電極の作製が難しいため、主にp型ダイヤモンド半導体を用いたショットキーダイオードの開発が行われている。
酸化物、窒化物又はフッ化物等を含む絶縁層はダイヤモンド半導体への密着性が悪く剥離しやすいため、半導体装置の高耐圧化に必要な膜厚を有する絶縁層を設けることは困難である。
本実施形態の半導体装置においては、第2のダイヤモンド半導体層14上に第2の炭化珪素層22を設け、第2の炭化珪素層22上に第1の絶縁層24を設けている。これにより、密着性の高い絶縁層を得ることができるため、表面リーク電流が低減したパッシベーション膜を得ることができる。また、上記絶縁層上にフィールドプレート電極40を設けることができるため、電界緩和の効果を用いてさらに高耐圧の素子を得ることができる。
以上、本実施形態の半導体装置によれば、逆方向電圧の高い半導体装置が提供される。
以上述べた少なくとも一つの実施形態の半導体装置によれば、第1導電型の第1のダイヤモンド半導体層と、第1のダイヤモンド半導体層上に設けられた第1導電型の第1の炭化珪素層と、第1の炭化珪素層上に設けられた第1の電極と、を備えることにより、低いオン抵抗を有する半導体装置の提供が可能となる。
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態及び実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や実施例及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。