JP2727582B2 - 垂直磁化膜 - Google Patents

垂直磁化膜

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JP2727582B2 JP22182288A JP22182288A JP2727582B2 JP 2727582 B2 JP2727582 B2 JP 2727582B2 JP 22182288 A JP22182288 A JP 22182288A JP 22182288 A JP22182288 A JP 22182288A JP 2727582 B2 JP2727582 B2 JP 2727582B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体の記録
層として有用な垂直磁化膜に関する。
〔従来の技術〕
近年、磁気記録の分野における短波長化,狭トラック
化による記録密度の向上には目覚ましいものがあり、よ
り一層の高密度記録化に対応するものとして垂直磁気記
録方式が提案されている。
あるいは、前記垂直磁気記録方式と同様、書換え可能
な高密度記録方式であり、しかも半導体レーザー等のレ
ーザー光により非接触記録・再生が可能な光磁気記録方
式も注目されている。
これらの記録方式においては、磁気モーメントが膜面
に垂直に配向した垂直磁化膜が使用され、たとえば垂直
磁気記録媒体の記録層としてはCo−Cr合金膜等が、光磁
気記録媒体の記録層としてはTbFeCoに代表されるような
希土類元素と遷移金属元素とを組み合わせた非晶質合金
膜等が、それぞれ実用化に向けて各方面で盛んに研究さ
れている。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、これまでに研究されている垂直磁化膜は、
ある程度の垂直磁気特性や光磁気特性を示すものの、特
に耐久性や耐蝕性の実用特性の点で問題が多く、未だ実
用に至っていないのが実情である。
たとえば、垂直磁気記録媒体の記録層として期待され
るCo−Cr合金膜は、非常に硬質であることからクラッチ
の発生やヘッド磨耗等の問題を起こし易い。また、この
合金膜を記録層とする垂直磁気記録媒体の磁気特性を測
定しても、たとえば垂直方向の角形比は0.3〜0.4に過ぎ
ず、理想的な値である1には遠く及ばない。
一方、光磁気記録媒体の記録材料である前記非晶質合
金は、希土類元素やFeを含むことから、空気中の酸素と
容易に結合して酸化物となる性質があり、酸化が進行し
て腐食や孔食に至ると信号の脱落を誘起するという問題
を有する。特に上記希土類元素が選択的に酸化を受ける
と、保磁力や残留磁気カー回転角が減少し、C/N比が劣
化するという問題が生ずる。
このような状況から、本願出願人は先に特願昭63−17
8135号明細書においてCo−Pt系人工格子膜が所定の組成
および層厚において良好な垂直磁気特性あるいは磁気光
学特性を示し、垂直磁気記録媒体あるいは孔磁気記録媒
体の記録層として有用であることを開示した。このCo−
Pt系人工格子膜は、磁気カー回転角が大きく磁化曲線の
角形に優れるが、保磁力が数十〜200Oeと比較的小さい
ために記録再生装置内の漏洩磁場の影響を受ける虞れが
あった。
上記Co−Pt系人工格子膜の保磁力を向上させるため、
Ptをはじめとする各種の金属薄膜を下地膜として被着形
成することも提案されている。しかし、一般に光磁気記
録媒体からの記録情報の読み出しが基板側から行われる
ことを考えると、たとえばPt下地膜は780nmにおける吸
収係数αおよそ50×104cm-1と高く不透明であるため、
光磁気記録媒体の下地膜としては使用しにくいという欠
点があった。
本発明はかかるCo−Pt系人工格子膜よりなる垂直磁化
膜のより一層の特性改善を図るもので、耐蝕性,耐久性
遠の実用特性に優れるとともに、良好な垂直磁気特性,
磁気光学特性を発揮する垂直磁化膜を提供することを目
的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは上述の目的を達成するために鋭意検討を
行った結果、先のCo−Pt系人工格子膜の下にFe,Co,Niの
いずれかの酸化物あるいは任意の組合せによる複合酸化
物からなる下地膜を所定の層厚に設けることにより垂直
磁気特性および磁気光学特性が向上すること、さらに上
述のような下地膜を有するCo−Pt系人工格子膜の上にさ
らに該下地膜と同様の材料からなる上部誘電層を設けて
も良好な特性が得られることを見出し、本発明に至った
ものである。
すなわち、本発明にかかる垂直磁化膜は、Fe,Co,Niの
いずれかの酸化物あるいは任意の組合せによる複合酸化
物からなる層厚50〜3000Åの下地膜の上に全厚50〜800
ÅのCo−Pt人工格子膜が積層されてなることを特徴とす
るものである。
まず、本発明で使用される下地膜は、Fe,Co,Niの各酸
化物あるいはこれらの複合酸化物である。これらの材料
は、主として光磁気記録媒体の下地膜としての使用を念
頭におき、吸収系数αあるいは消衰係数kを考慮して選
ばれたものである。
ここで消衰係数kとは、多層構造を有する光磁気記録
媒体の磁気カー回転角のエンハンスメント効果を論ずる
際に常用される数値である。一般に光磁気ディスク等の
光磁気記録媒体では、記録層に書き込まれた情報を基板
側から読み出しているため、基板と記録層の間に下地層
が形成されている場合は、該下地膜を通して記録層を見
ることになる。したがって、光学的に不透明な材料は下
地膜として不適切である。消衰係数kは、吸収係数αと
次式のような関係にある。
ただし、λは光の波長である。
本発明者らは、Co−Pt人工格子膜を記録層とする光磁
気記録媒体について期待される磁気カー回転角の増大効
果(エンハンスメント効果)を計算機シミュレーション
により検討した結果、消衰係数kが0.1以下であれば良
好な効果が得られることを見出した。したがって、吸収
係数αの好適な範囲は1.6×104cm-1以下となる。吸収係
数αは各下地膜の成膜時の酸素分圧によって変化する
が、780nmにおける測定値はおおよそFe3O4で、0.6×104
cm-1,CoOで0.1×104cm-1,NiOで0.06×104cm-1であり、
いずれも透明度の高い良好な下地膜となり得ることがわ
かる。
また、50〜300Åという上述の層厚の範囲は、Co−Pt
人工格子膜と積層された場合の垂直磁気特性あるいは磁
気光学特性を最適化し、また実用的な透明度を維持する
観点から選ばれたものであり、上記範囲より小さい場合
には下地膜としての効果が不十分となり、また上記範囲
を越えると保磁力が飽和に達するためにこれ以上の効果
は望めない上、光学特性も劣化する虞れがある。
上記Co−Pt人工格子膜は、スパッタリング,真空蒸
着,分子線エピタキシー(MBE)等の手法によりCo層とP
t層とを原子層レベルで積層したものである。上記Co層
は2〜8Å,Pt層は3〜40Å,全厚は50〜800Åとするこ
とが望ましく、かかる範囲で良好な垂直磁気異方性を発
揮する。上記範囲外では面内磁化成分が発生し、垂直方
向の角形比等が劣化する。
なお、Co−Pt人工格子膜を構成するCo層およびPt層の
界面は、互いに入り乱れずに平坦に形成され、いわゆる
超格子構造とされてることが理想的であるが、界面にや
や乱れを生じながらも全体としては一定の周期を保って
組成が変動するいわゆる変調構造(組成変調構造)を有
するものであっても良い。
また上記Co−Pt人工格子膜には、熱安定性を高めたり
キュリー点を下げる等の目的で各種元素を添加元素とし
て適宜添加しても良い。この場合、Co層とPt層のどちら
に添加するかによって、添加元素の種類や添加量がやや
異なる。
まずCo層に添加元素を加える場合、当該Co層の組成は
Co100-xMx(ただし、xは置換量を原子%で表し、Mは
添加元素を表す。)で表され、添加元素MとしてはB,C,
Al,Si,P,Ti,V,Fe,Ni,Cu,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,In,Sn,Sb,Gd,T
b,Dy,Taの少なくとも一種であることが好ましい。最適
な置換量は添加元素によって若干異なり、M=Alの場合
0.1≦x≦7,M=Zrの場合0.1≦x≦14,M=Si,Mo,Taの場
合0.1≦x≦20,M=Feの場合0.1≦x≦25,M=B,C,Ti,V,C
u,Ga,Ge,Nb,I,Snの場合0.1≦x≦30,M=Pの場合0.1≦
x≦35,M=Gd,Tb,Dyの場合0.1≦x≦40,M=Sbの場合0.1
≦x≦45,M=Niの場合0.1≦x≦70である。
上記各添加元素の置換量xの下限は0.1原子%とされ
ているが、これより低い場合にはキュリー点の低減効果
が現れない。また、上限は添加元素によって7〜40原子
%とされているが、これらの値より高い場合には垂直磁
気特性あるいは磁気光学特性をかえって劣化させる虞れ
がある。
一方、上述の添加元素をPt層に添加し、当該Pt層の組
成Pt100-xMx(ただし、xは置換量を原子%で表し、0
≦x≦15であり、Mは添加元素を表す。)とすることが
考えられるが、この場合は垂直磁気特性,磁気光学特性
あるいは熱安定性を改善することを目的とするのではな
く、むしろキュリー点の調節を主目的とすべきである。
それは、添加元素をPt層に添加すると、一部の例外を除
いてキュリー点が上昇するとともに磁気カー回転角が低
下するからである。ただし、キュリー点は記録情報の保
護の観点から無制限に低ければ良いという性質のもので
はないので、もともと記録層のキュリー点が著しく低い
場合はこのような手段により実用的な範囲までこれを高
めることが可能である。上記Pt層に添加し得る元素とし
ては、Co層に添加できる元素の他、Cr,Mn,Co,Zn,Y,Rh,A
g,La,Nd,Sm,Eu,Ho,Hf,W,Ir,Au,Pb,Bi等が挙げられる。
さらには、上記Pt層は任意の割合でPdに置き換わってい
ても良い。
上述のような下地膜およびCo−Pt人工格子膜から構成
される垂直磁化膜は、ガラス,ポリカーボネート,PMMA
(ポリメチルメタクリレート)等の基板の上に成膜され
て垂直磁気記録媒体あるいは光磁気記録媒体として使用
されるが、上記Co−Pt人工格子膜の上にさらに下地膜と
同じ材料を使用して上部誘電層を形成しても良い。これ
は、本発明で使用される下地膜の材料が概して高い屈折
率を有しており、このような材料が記録層の上でさらに
積層されることによりエンハンスメント効果が期待され
るからである。
さらに、上述のような垂直磁化膜には必要に応じて最
上部に金属反射膜等を設けても良い。
このような垂直磁化膜に対する書き込み方法として
は、光ビームの他、針型磁気ヘッド,熱ペン,電子ビー
ム等、反転磁区を生じさせるのに必要なエネルギーを供
給できるものであれば、いかなるものでも良いことは言
うまでもない。
〔作用〕
本発明にかかる垂直磁化膜は、Co−Pt系人工格子膜の
下にFe,Co,Niのいずれかの酸化物あるいは任意の組合せ
による複合酸化物からなる下地膜が設けられており、磁
化曲線の角形を劣化させることなく高い保磁力が達成さ
れている。これら下地膜の材料は、実用上十分な透明度
を有しているため、Pt等の不透明な金属下地膜を使用す
る場合と比べてエンハンスメント効果を得るのに有利で
ある。さらに、これらの材料は概して大きな屈折率を有
しており、上部誘電層として記録層の上に積層された場
合にもエンハンスメント効果を期待することができる。
上記垂直磁化膜を構成する下地膜,Co−Pt人工格子
膜,上部誘電層はいずれも層厚が極めて薄いので、書き
込み,読み出し,オーバライト等の速度の向上に極めて
有効である。
〔実施例〕
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照しな
がら説明する。
実施例1 本実施例は、Co−Oからなる下地膜の上にCo−Pt人工
格子膜を積層した垂直磁化膜の例である。
上記垂直磁化膜は、以下のようにして作成した。
まず、高周波マグネトロンスパッタリング装置のチャ
ンバー内に10cm径の純Coターゲットを設置し、このター
ゲットと対向配置された水冷装置付きの基台にガラス基
板を載置した。次に、純アルゴンガスと10%酸素含有ア
ルゴンガスをそれぞれ流量50SCCM,17SCCMにて上記チャ
ンバー内に導入し、ガス圧4mTorr(すなわち酸素分圧は
0.1mTorr)、投入パワー300W,堆積速度7.5Åにて反応ス
パッタリングを行い、所定の層厚のCo−O下地膜を形成
した。
次に、同一チャンバー内に10cm径のCoおよびPtの各タ
ーゲットを設置し、Co−O下地膜が形成された上記ガラ
ス基板をこれらのターゲットの上に交互に移動させなが
ら、ガス圧4mTorrのアルゴンガス雰囲気中における二元
同時マグネトロンスパッタリングを行った。このとき、
Coについては直流スパッタリング(投入パワー:0.40
A)、Ptについては高周波スパッタリング(投入パワー:
360W)を行い、層厚6.3ÅのCo層と層厚11.8ÅのPt層を
交互に5層ずつ積層して全厚90ÅのCo−Pt人工格子膜を
積層し、垂直磁化膜を作成した。
なお、上記Co−Pt人工格子膜の周期は、X線小角散乱
におけるピーク角度から求めた。
このようにして作成された垂直磁化膜について、カー
曲線測定装置により最大印加磁界3kOe、測定波長780nm
にてガラス基板側から磁気光学特性を評価した。この結
果を第1図(A)ないし第1図(C)に示す。図中、縦
軸は磁気カー回転角(゜)、横軸は外部磁界の強さ(kO
e)表し、第1図(A)はCo−O下地膜の層厚が100Åの
場合、第1図(B)は500Åの場合、第1図(C)は比
較例としてCo−O下地膜を設けなかった場合に該当す
る。これらの図によると、Co−O下地膜を設けなかった
場合の保磁力が170Oeであるのに対し、層厚100ÅのCo−
O下地膜を設けた場合は420Oe、500ÅのÅ場合は820Oe
と保磁力が大幅に向上し、しかも角形は良好に維持され
ていた。
このように保磁力がCo−O下地膜の層厚に依存して変
化する様子をより詳しく調べた結果を第2図に示す。図
中、縦軸は保磁力(Oe)、横軸はCo−O下地膜の層厚
(Å)を表す。これより、垂直磁化膜の保磁力はCo−O
下地膜の層厚の増大にともなって800Oe付近まで増加す
るが、その変化は層厚400Å付近までが特に顕著であ
り、その後は徐々に飽和に向かう傾向が明らかとなっ
た。
次に、Co−O下地膜の作成時の酸素分圧による諸特性
の変化について調べた。
すなわち、ガス圧4mTorr,投入パワー460W,堆積速度25
〜28Åの条件下で酸素分圧を変化させて反応スパッタリ
ングを行い、層厚400〜600ÅのCo−O下地膜を形成し
た。ここで、堆積速度にある程度の幅があるのは、酸素
分圧によって若干の変動があるからである。
まず、Co−O下地膜自身の780nmにおける屈折率nお
よび吸収係数αの変化について調べた結果を第3図に示
す。図中、縦軸は屈折率nあるいは吸収係数αを、また
横軸は酸素分圧(mTorr)を表し、黒丸(●)のプロッ
トは屈折率nを、白丸(○)のプロットは吸収係数をそ
れぞれ表す。この図より、Co−O下地膜は酸素分圧0.29
〜0.33mTorrで作成された場合に透明度が特に高くな
り、下地膜として極めて好適であることが分かる。ま
た、屈折率が概して大きく、酸素分圧依存性もそれほど
顕著でないことから、このCo−O下地膜を後述の上部誘
電層として使用する上でも有利である。
さらに、上記Co−O下地膜の上に前述と同一の組成,
全厚を有するCo−Pt人工格子膜を積層して垂直磁化膜を
作成し、その保磁力を測定した結果を第4図に示す。図
中、縦軸は保磁力(kOe)、横軸はCo−O下地膜作成時
の酸素分圧(mTorr)を表す。この図によると、保磁力
は概して400Oe以上に増大している。これは、Co−O下
地膜を設けなかった場合〔たとえば第1図(C)参
照。〕に保磁力が150〜250Oeであったのに比べて顕著な
増大である。特に、酸素分圧0.29〜0.33mTorr付近で得
られた透明度の高い下地膜を使用した場合には、保磁力
が800〜1000Oeと高く、このような酸素分圧の領域は良
好な光学特性と磁気特性の両方が達成できる実用上有効
な適正領域であると言える。
しかし、上述のような酸素分圧の適正領域は普遍的な
ものではなく、実際は種々の条件によって変化する。た
とえば、上述の第4図のデータを得るために採用された
条件は投入パワー460W,堆積速度25〜28Å/秒であった
が、投入パワーを300Wとした場合には堆積速度が7Å/
秒となり、透明でかつ保磁力を大きく増大させ得る下地
膜は酸素分圧0.10mTorrで得られた。これは、投入パワ
ーが大きくなると単位時間当たりに基板に飛来する金属
原子の数が多くなり、それらを十分に酸化するためには
高い酸素分圧が必要になるからであると説明される。こ
の他、ガス圧や電極間距離等によっても最適な酸素分圧
が存在する。
実施例2 本実施例は、実施例1におけるCo−O下地膜の代わり
にFe−O下地膜を有する垂直磁化膜の例である。
Fe−O下地膜は、10cm径の純Feターゲットを用い、投
入パワー300W、アルゴン中における酸素分圧0.18mTor
r、ガス圧4mTorr、堆積速度14.5Å/秒にて高周波スパ
ッタリングを行うことにより、ガラス基板の上に所定の
層厚に作成した。
上記Fe−O下地膜の上には、さらに実施例1に記載し
た条件にしたってCo−Pt人工格子膜を積層し、垂直磁化
膜を作成した。
まず、Fe−O下地膜の層厚による垂直磁化膜の保磁力
の変化について検討した結果を第5図に示す。図中、縦
軸は保磁力(Oe)、横軸はFe−O下地膜の層厚(Å)を
示す。この図により、保磁力はFe−O下地膜の層厚が40
0〜800Åである場合に著しく向上することがわかる。
そこで、上記Fe−O下地膜の層厚を600Åに固定し、
作成時の酸素分圧を変化させた場合の垂直磁化膜の保磁
力の変化について検討した。なお、このときの堆積速度
は酸素分圧の変化に伴って8〜14.5Å/秒と変化した。
この結果を第6図に示す。図中、縦軸は保磁力(Oe)、
横軸は酸素分圧(mTorr)を示す。この図より、垂直磁
化膜の保持力は下地膜の作成条件に依存することが明ら
かであり、酸素分圧0.18mTorr付近で極大値を示した。
実施例3 本実施例は、実施例1におけるCo−O下地膜の代わり
にNi−O下地膜を有する垂直磁化膜の例である。
Ni−O下地膜は、10cm径の純Niターゲットを用い、投
入パワー300W、アルゴン中における酸素分圧0.088mTor
r、ガス圧4mTorr、堆積速度5.5Å/秒にて高周波スパッ
タリングを行うことにより、ガス基板の上に所定の層厚
に作成した。
上記Ni−O下地膜の上には、さらに実施例1に記載し
た条件にしたがってCo−Pt人工格子を積層し、垂直磁化
膜を作成した。
まず、Ni−O下地膜の層厚による垂直磁化膜の保磁力
の変化について検討した結果を第7図に示す。図中、縦
軸は保磁力(Oe)、横軸はNi−O下地膜の層厚(Å)を
示す。この図より、保磁力はNi−O下地膜の増加にした
がって増大しており、検討された範囲では飽和に達して
いない。
次に、上記Ni−O下地膜の層厚を500Åに固定し、作
成時の酸素分圧を変化させた場合の垂直磁化膜の保磁力
の変化について検討した。なお、このときの堆積速度は
酸素分圧の変化に伴って4.2〜5.7Å/秒と変化した。こ
の結果を第8図に示す。図中、縦軸は保磁力(Oe)、横
軸は酸素分圧(mTorr)を示す。この図より、垂直磁化
膜の保磁力は下地膜の作成条件に依存しているが、その
程度はFe−O下地膜を使用した場合ほど顕著ではなかっ
た。
実施例4 本実施例は、上述の実施例1に示した垂直磁化膜の上
にさらに下地膜と同一の材料を使用して上部誘電層を形
成した垂直磁化膜の例である。
この上部誘電層は、多層構造を有する垂直磁化膜内に
おける光の多重反射と干渉を利用するため設けられるも
のである。これらの効果を十分に発揮させ、かつ垂直磁
化膜全体としての反射率を高めるために、従来は透明な
誘電体材料についてのみ検討が行われており、たとえば
本発明者らは先にAl2O3,SiO2,Ta2O5等の酸化物系化合
物、およびSi3N4,ZrN,NB,AlN,TiN等の窒化物系化合物に
ついて検討を行ってきた。本発明において上部誘電層と
して使用される材料は、これらの化合物に比べるとやや
光吸収は高いものの、Pt等の金属よりは1〜3桁低い。
また、これらの物質は従来検討されてきた材料に比べて
大きな屈折率を有しているので、Co−Pt人工格子膜の上
に堆層された場合により薄い層厚で磁気カー回転角の増
大効果が得られるものと期待される。
このような垂直磁化膜は、以下のように作成した。
まず、純アルゴンガスと10%酸素含有アルゴンガスを
それぞれ流速20SCCM,18SCCMにてチャンバー内に導入
し、ガス圧1.5mTorr,投入パワー300W,堆積速度7.5Åに
て反応スパッタリングを行い、層厚400ÅのCo−O下地
膜を形成した。
次に、実施例1に記載した条件にしたがって層厚90Å
のCo−Pt人工格子膜を作成した。
さらに、上記Co−Pt人工格子膜の上に上述のCo−Pt下
地膜と同一の作成条件にてCo−O上部誘電層を所定の層
厚に作成した。
ここで、Co−O上部誘電層の層厚を種々変化させた場
合の垂直磁化膜の磁気カー回転角の変化について検討し
た結果を第9図に示す。図中、縦軸は磁気カー回転角
(゜)、横軸はCo−O上部誘電層の層厚(Å)を示す。
この図より、磁気カー回転角はCo−O上部誘電層の層厚
600Åにて1.35゜と極めて高い値を示した。
第10図には、Co−O上部誘電層の層厚が600ÅのÅ倍
の磁気カー曲線を示す。この垂直磁化膜は角形,保磁
力,磁気カー回転角ともに優れていることが明らかであ
る。
〔発明の効果〕
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、
耐蝕性,耐久性等の実用特性に優れるとともに、垂直磁
気特性,磁気光学特性に優れる垂直磁化膜を提供するこ
とが可能である。
このような垂直磁化膜を垂直磁気記録媒体あるいは光
磁気記録媒体に適用すれば、高密度かつ高品質の磁気記
録が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図(A)ないし第1図(C)はCo−O下地膜の層厚
による垂直磁化膜の保磁力の変化を示す磁気カー曲線で
あり、第1図(A)はCo−O下地膜の層厚が100Åの場
合、第1図(B)は500Åの場合、第1図(C)は比較
としてCo−O下地膜を設けなかった場合にそれぞれ該当
する。第2図は同じ垂直磁化膜について保磁力とCo−O
下地膜の層厚との関係を示す特性図である。第3図およ
び第4図はCo−O下地膜作成時の酸素分圧による諸特性
の変化を表す特性図であり、第3図は該Co−O下地膜の
屈折率と吸収係数の変化、第4図は該Co−O下地膜を有
する垂直磁化膜の保磁力の変化をそれぞれ示す。第5図
はFe−O下地膜を有する垂直磁化膜において保磁力と該
Fe−O下地膜の層厚の関係を示す特性図であり、第6図
は同じ垂直磁化膜における保磁力とFe−O下地膜作成時
の酸素分圧との関係を示す特性図である。第7図はNi−
O下地膜を有する垂直磁化膜において保磁力と該Ni−O
下地膜の層厚の関係を示す特性図であり、第8図は同じ
垂直磁化膜における保磁力とNi−O下地膜作成時の酸素
分圧との関係を示す特性図である。第9図はCo−O下地
膜とCo−O上部誘電層を有する垂直磁化膜における磁気
カー回転角とCo−O上部誘電層の層厚との関係を示す特
性図であり、第10図は同じ垂直磁化膜においてCo−O上
部誘電層の層厚を600Åとした場合の磁気カー曲線であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阿蘇 興一 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソ ニー株式会社内 (56)参考文献 特開 昭61−194625(JP,A) 特開 昭60−64413(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Fe,Co,Niのいずれかの酸化物あるいは任意
    の組合せによる複合酸化物からなる層厚50〜3000Åの下
    地膜の上に全厚50〜800ÅのCo−Pt人工格子膜が積層さ
    れてなる垂直磁化膜。
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