JP2526615B2 - 光磁気記録媒体 - Google Patents

光磁気記録媒体

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、磁気光学効果を利用してレーザー光等によ
り情報の記録・再生を行う光磁気記録媒体に関し、特に
耐蝕性および磁気光学特性に優れる光磁気記録媒体に関
する。
〔発明の概要〕
本発明は、CoとPdおよび/またはPtとが交互に積層さ
れた人工格子膜を記録層とする光磁気記録媒体におい
て、該記録層をZnS下地膜を介して基板上に形成するこ
とにより、保磁力および磁気カー曲線の角形を向上さ
せ、読出し時のS/N比を高めることを可能とするもので
ある。
〔従来の技術〕
近年、書換え可能な高密度記録方式として、半導体レ
ーザー光等により記録・再生を行う光磁気記録方式が注
目されている。
この光磁気記録方式に使用される記録材料としては、
Gd,Td,Dy等の希土類元素とFe,Co等の遷移元素とを組み
合わせた非晶質合金が従来の代表例である。しかし、こ
れらの非晶質合金薄膜を構成している希土類元素やFeは
非常に酸化され易く、空気中の酸素とも容易に結合して
酸化物を形成する性質がある。このような酸化が進行し
て腐食や孔食に至ると信号の脱落を誘起し、また特に希
土類元素が酸化されると、保磁力と残留磁気カー回転角
の減少に伴ってS/N比が劣化する。このような問題は、
光磁気記録媒体の記録層の材料に希土類元素が使用され
ている限り避けられないものである。
これに対し本発明者らは先に、希土類元素を含有せ
ず、耐蝕性に優れ、しかも500Å以下の膜厚にて良好な
磁気光学特性を有する光磁気記録媒体として、Co層とPt
層および/またはPd層とを積層した超格子金属膜を記録
層とする光磁気記録媒体を特願昭62−211569号明細書等
において開示している。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、光磁気記録媒体を今後実用化するにあ
たっては、より一層の保磁力、磁気カー回転角、磁気カ
ー曲線における角形の向上等が必要である。
そこで本発明は、かかる光磁気記録媒体の磁気光学特
性のより一層の改善を目的とし、特に保磁力と磁気カー
曲線の角形の向上を目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者等は、前述の目的を達成すべく鋭意研究を重
ねた結果、ZuSを光磁気記録媒体の下地膜として積層す
ることにより、保磁気および磁気カー曲線の角形が大幅
に向上することを見出した。本発明にかかる光磁気記録
媒体はかかる知見にもとづいて完成されたものであっ
て、CoとPdおよび/またはPtとが交互に積層された人工
格子膜を記録層とし、該記録膜がZnS下地膜を介して基
板上に形成されてなるものである。
まず、本発明にかかる光磁気記録媒体において記録層
として利用できる人工格子膜は、Co層とPt層とを積層し
たCo−Pt系人工格子膜、Co層とPd層とを積層したCo−Pd
系人工格子膜、Co層とPt−Pd合金層を積層するかあるい
はCo層,Pt層,Pd層の三者を積層したCo−Pt−Pd系人工格
子膜である。ここで、各Co層は0.2〜2.5原子層、Pt層、
Pd層、Pt−Pd層は1〜7原子層とすることが好ましい。
これら各層の原子層数の範囲は磁気光学特性を最適化す
る観点から設定されたものであり、いずれの場合も上記
範囲外では面内磁化成分が発生して磁気光学特性が劣化
する。さらに、記録層の全厚は50〜500Åであることが
好ましい。
なお、上述の人工格子膜を構成する各金属層の界面
は、異種金属原子が互いに入り乱れずに平坦に形成さ
れ、いわゆる超格子構造とされていることが理想的であ
るが、界面にやや乱れを生じながらも全体としては一定
の周期を保って組成が変動する、いわゆる変調構造(組
成変調構造)を有するものであっても良い。
上記人工格子膜はスパッタリング,真空蒸着あるいは
分子線エピタキシー(MBE)等によって形成することが
できる。
また上記人工格子膜には、キュリー点を下げる等の目
的でAl,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,R
u,Rh,Ag,In,Sn,Sb,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Au,Pb,Buの元素の
うち少なくとも1種を適宣添加しても良い。
本発明にかかる光磁気記録媒体においては、上述のよ
うな記録層を形成するに先立って、ガラス等の適当な基
板の上にまずZnS下地膜がスパッタリング,真空蒸着あ
るいはMBE等により形成される。このZnS下地膜の膜厚は
5〜5000Åの範囲で選ばれる。上記範囲より小さい場合
には下地膜としての所望の効果が得られず、また上記範
囲より大きい場合には磁気光学特性の劣化が生ずる虞れ
があり、また生産性・経済性の観点からも実用的とは言
えない。より好ましい範囲は5〜1000Åである。
このような光磁気記録媒体の基本的な構成を第1図に
示す。ここでは、基板(1)の上にZnS下地膜(2)を
介して記録層(3)が形成されている。しかし、実用上
は第2図に示すように上記記録層(3)の上にさらにA
l,Au,Pt,Cu等の金属反射膜(4)を設けるのが一般的で
ある。さらに磁気光学特性を改善する目的で、第3図に
示すように上記記録層(3)の上に別の誘電体層(5)
を設けても良い。このときの誘電体層(5)の材料とし
てはZuSを使用しても良いが、Al2O3,Ta2O5,MgO,SiO2,Ti
O2,Fe2O3,ZrO2,Bi2O3等の酸化物系誘電体、あるいはZr
N,TiN,Si3N4,AlN,BN,TaN,NbN等の窒化物系誘電体等も使
用できる。このような場合にも、実用上は第4図に示す
ようにさらに上記誘電体層(5)の上に金属反射膜
(4)が設けられることが望ましい。
上述のような構成を有する光磁気記録媒体の記録層へ
の書込み方法は、光ビームの他、針型磁気ヘッド、熱ペ
ン、電子ビームなど、反転磁区を生じさせるのに必要な
エネルギーを供給できるものであれば、いかなるもので
も良いことは言うまでもない。
〔作用〕
本発明にかかる光磁気記録媒体は、記録層に希土類元
素を含まないため耐蝕性に優れる。さらに該記録層がZn
S下地膜を介して基板上に形成されているため、保磁力
および磁気カー曲線の角形が向上する。このように保磁
力および磁気カー曲線の角形が向上すれば、記録時のビ
ットの形状がよりシャープになり、読出し時のS/N比が
向上する。さらに、上記ZnS下地膜の膜厚が最適に選択
された場合には、干渉による磁気カー回転角の増大(エ
ンハンスメント効果)も期待できる。
〔実施例〕
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照しな
がら説明する。
本実施例は、Co−Pt系人工格子膜を記録層とし、該記
録層がガラス基板上にZnS下地膜を介して形成されてな
る光磁気記録媒体の例である。
まず、高真空蒸着装置内にZnS焼結タブレットを載置
し、2×10-6Torrの真空下でガラス基板上に種々の膜厚
のZnS下地膜を披着形成した。
次に、マグネトロン・スパッタリング装置内に100mm
径のCoおよびPtの各ターゲットを設置し、これらのター
ゲットと対向させた水冷装置付きの回転基台にZnS下地
膜を形成した上記ガラス基板を載置した。ここでガス圧
5×10-3Torrのアルゴン雰囲気中において二元同時マグ
ネトロン・スパッタリングを行い、上記ZnS下地膜の上
に記録層となるCo−Pt系人工格子膜を形成した。この装
置によれば、各ターゲットへの投入電流や投入電力、あ
るいはガラス基板を載置した回転基台の回転数を変化さ
せることにより、人工格子膜の周期を任意に決定するこ
とができる。本実施例ではCoターゲットに対しては投入
電流0.40Aの直流スパッタリング、Ptターゲットに対し
ては投入電力400Wの高周波スパッタリングを行い、回転
基台の回転数を16rpmとして全厚100ÅのCo−Pt系人工格
子膜を作成し、各光磁気記録媒体の各サンプルを調整し
た。
なお、作成されたCo−Pt系人工格子膜の周期は、X線
小角散乱におけるピーク角度から求めた。
また比較のために、ZnS下地膜を設けない光磁気記録
媒体も同様に作成した。
これらの各光磁気記録媒体の磁気光学特性を基板側か
ら磁気カー曲線測定装置を使用して測定した結果を第5
図(A)および第5図(B)に示す。第5図(A)は60
0ÅのZnS下地膜を設けた場合、第5図(B)は比較例と
してZnS下地膜を設けなかった場合に相当し、図中の縦
軸は磁気カー回転角θ(゜)、横軸は磁化の強さH
(Oe)をそれぞれ表す。まず、ZnS下地膜を設けなかっ
た場合の磁気カー回転角θは0.58゜,保磁力は162.5O
eである。これに対し、ZnS下地膜を設けた場合には保磁
力および磁気カー回転角が増大するのみならず、角形も
向上していることが明らかである。
第6図には同じ光磁気記録媒体におけるZnS下地膜の
膜厚と保磁力との関係を示す。図中、縦軸は保磁力(O
e)、横軸はZnS下地膜の膜厚(Å)をそれぞれ表す。こ
の図より、ZnS下地膜は50Å程度に薄く設けられた場合
にすでに十分な保磁力の増大効果を有していることがわ
かる。
第7図にはさらに、同じ光磁気記録媒体におけるZnS
下地膜の膜厚と磁気カー回転角との関係を示す。図中、
縦軸は保磁力(Oe)、横軸はZnS下地膜の膜厚(Å)を
それぞれ表す。この図をみると、第5図(A)に示した
場合に相当する膜厚600Å付近において磁気カー回転角
が極大値を示し、ZnS下地膜の膜厚が最適に選ばれた場
合には磁気カー回転角の増大効果が期待できることを示
唆している。
なお、同様の効果はCo−Pd系人工格子膜を記録層とす
る光磁気記録媒体においても観察された。
さらに上記ZnS下地膜は、Co−Pt−Pd系人工格子膜を
記録層とする光磁気記録媒体にも適用可能である。
〔発明の効果〕
以上の説明からも明らかなように、本発明にかかる光
磁気記録媒体においては保磁力および磁気カー曲線の角
形が向上しているため、記録時のビットの形状がよりシ
ャープになり、読出し時のS/N比が向上する。さらに、
上記ZnS下地膜の膜厚が最適に選択された場合には、干
渉による磁気カー回転角の増大(エンハンスメント効
果)も期待できる。したがって、高品質かつ高密度の光
磁気記録が可能となる。
また、上記人工格子膜には今後世界的に供給が逼迫す
ると予想される希土類元素が使用されていないため、光
磁気記録媒体の安定かつ経済的な供給が期待できる。
このような光磁気記録媒体を、たとえば光ビームを用
いて書込み、磁気カー効果を利用して読出しを行ういわ
ゆるビーム・アドレッサブル・ファイル・メモリ等の光
磁気メモリの貯蔵媒体として使用すれば、極めて高密度
でS/N比が大きく、かつ長期にわたって高い信頼性を保
つメモリ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明にかかる光磁気記録媒体の最も基本的な
構成を示す概略断面図である。第2図ないし第4図は本
発明にかかる光磁気記録媒体の他の構成例を示す概略断
面図であり、第2図は記録層の上に金属反射膜を設けた
例、第3図は記録層の上に誘電体層を設けた例、第4図
は記録層の上に誘電体層および金属反射膜をこの順序で
設けた例をそれぞれ表す。第5図(A)および第5図
(B)はガラス基板上にCo−Pt系人工格子膜が形成され
た光磁気記録媒体におけるZnS下地膜の有無による磁気
光学特性の変化を示す磁気カー曲線であり、第5図
(A)は膜厚600ÅのZnS下地膜を有する場合、第5図
(B)はZnS下地膜を有しない場合をそれぞれ表す。第
6図は同じ磁気記録媒体におけるZnS下地膜の膜厚によ
る保磁力の変化を示す特性図である。第7図は同じ光磁
気記録媒体におけるZnS下地膜の膜厚による磁気カー回
転角の変化を示す特性図である。 1……基板 2……ZnS下地膜 3……記録層 4……金属反射膜 5……誘電体層

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】CoとPdおよび/またはPtとが交互に積層さ
    れた人工格子膜を記録層とし、該記録膜がZnS下地膜を
    介して基板上に形成されてなる光磁気記録媒体。
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