JP2727235B2 - 高純度ヘマタイト粒子粉末の製造法 - Google Patents

高純度ヘマタイト粒子粉末の製造法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、Naイオン及びSO4イオンを可及的に除くこ
とが出来、且つ、SiO2の吸着を可及的に抑制することが
出来る高純度ヘマタイト粒子粉末の製造法に関するもの
である。
本発明に係るNaイオン及びSO4イオンとSiO2とがとも
に少ない高純度ヘマタイト粒子粉末の主な用途は、フェ
ライト用原料粉末である。
〔従来の技術〕
酸化第二鉄粒子粉末又は含水酸化第二鉄粒子粉末は、
フェライト用原料粉末として現在広く使用されている。
即ち、フェライトは、酸化第二鉄粒子粉末又は含水酸化
第二鉄粒子粉末等の主原料とBa、Sr若しくはPb化合物
等、又はZn、Mn、Ni、Mg若しくはCu化合物等の副原料と
を混合し、加熱焼成、粉砕することにより製造されてい
る。
フェライトの製造にあたって、主原料である酸化第二
鉄粒子粉末及び含水酸化第二鉄粒子粉末の純度が高けれ
ば高い程、最終製品であるフェライトの性能が向上する
為、酸化第二鉄粒子粉末又は含水酸化第二鉄粒子粉末の
純度が高いことが強く要求されている。この現象につい
ては、例えば、特公昭49−15360号公報の「酸化第2鉄
中には、‥‥不純物が蓄積され、高性能化小型化が要求
される磁性体、特に、ソフト系のマンガン亜鉛系或いは
マンガン・マグネシウム系等の複合フェライトには全く
使用が出来ず‥‥」なる記載からも明らかである。
従来、酸化第二鉄粒子粉末又は含水酸化第二鉄粒子粉
末は、第一鉄塩水溶液とアルカリ性水溶液又はアンモニ
アガスとを反応させて得られた水酸化第一鉄を含む反応
水溶液に酸素含有ガスを通気することにより水溶液中か
ら得ており、これら粒子は、原料である硫酸第一鉄水溶
液、アルカリ性水溶液及び当該両化合物の反応によって
生成したNa2SO4等の副生塩等に起因する水溶性のNaイオ
ン及びSO4イオンを不純物として必然的に含んでいる。
そこで、これら不純物を洗浄除去する方法として、一
般には大量の水を用い、長時間かけて水洗する方法がと
られている。更に、この方法の改良方法として反応母液
中から生成した粒子を別後、イオン交換水、蒸留水、
アルカリ性水溶液で洗浄する方法(特開昭63−222019号
公報、特開昭62−36026号公報)、水媒体中で生成粒子
をイオン交換樹脂と接触させる方法(特開昭62−252328
号公報)等が提案されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
純度の高い酸化第二鉄粒子粉末又は含水酸化第二鉄粒
子粉末は、現在最も要求されているところであるが、前
出公知の方法による場合には、未だ純度の高い酸化第二
鉄粒子粉末又は含水酸化第二鉄粒子は得られていない。
この事実について説明する。
水溶液中からマグネタイト粒子粉末又は含水酸化第二
鉄粒子を生成させる方法として酸性水溶液中から生成さ
せる方法及びアルカリ性水溶液中から生成させる方法が
あるが、前者の方法は高価なアルカリ性水溶液の使用量
が少なくてすみ経済的である為、フェライト用原料粉末
の製造法として常用されている方法であるが、一方、原
料である硫酸第一鉄水溶液、アルカリ性水溶液及び当該
両化合物の反応によって生成したNa2SO4等の副生塩等に
起因する水溶性のNaイオン、SO4イオンを不純物として
多量に含むとともに難溶性の含流鉄塩RFe3(SO4(O
H)(R=K+、Na+、NH4 +)を含むものである。
不純物を除去する前出公知方法による場合には、水溶
性のNaイオン、SO4イオンを除去することができても難
溶性の含硫鉄塩を除去することが出来ない為、この含硫
鉄塩中のNaイオン及びSO4イオンがそのまま不純物とし
て粒子中に残存することになる。
そこで、難溶性の含硫鉄塩RFe3(SO4(OH)
加熱分解した後洗浄することによって不純物を除去する
方法として、マグネタイト粒子粉末又は含水酸化第二鉄
粒子粉末を空気中で高温加熱してヘマタイト粒子とした
後、該ヘマタイト粒子を水性液媒を用いて洗浄する方法
(特公昭54−37680号公報)が知られている。
しかしながら、この方法は、Naイオン及びSO4イオン
を洗浄除去することは出来ても、難溶性鉄塩の加熱分解
物を洗浄除去するに際して使用する洗浄水中に含有され
るフェライト原料としては致命的なSiO2がヘマタイト粒
子に吸着するという欠点があった。不純物のうち、特に
SiO2が最終製品であるソフトフェライト製品に悪影響を
及ぼすという事実は、前出特公昭49−15360号公報の
「‥‥酸化第2鉄中には‥‥不純物が蓄積され、高性能
化小型化を要求される磁性体、特にソフト系のマンガン
・亜鉛系或いはマンガン・マグネシウム系等の複合フェ
ライトには全く使用が出来ず、其の最大原因は酸化第2
鉄中に含有される微量の硅酸(SiO2)の作用に従って、
フェライト粒子の結晶が粗大化し、且つ抵抗値及びμ・
Q特性が低減する‥‥」なる記載の通りである。
そこで、本発明は、Naイオン及びSO4イオンとSiO2
がともに少ない高純度ヘマタイト粒子粉末を製造するこ
とを技術的課題とするものである。
〔課題を解決する為の手段〕
本発明者は、Naイオン及びSO4イオンとSiO2とがとも
に少ない高純度ヘマタイト粒子粉末を製造する方法につ
いて種々検討を重ねた結果、本発明に到達したものであ
る。
即ち、本発明は、酸性水溶液中から生成したマグネタ
イト粒子又は含水酸化第二鉄粒子を別、水洗した後、
空気中700〜900℃の温度範囲で加熱することによりヘマ
タイト粒子とし、次いで、当該ヘマタイト粒子を酸性水
溶液を用いて粒子中に含有されるNaイオン量が平衡に達
するまで洗浄した後、当該洗浄粒子をイオン交換水を用
いて粒子中に含有されるSO4イオン量が平衡に達するま
で洗浄することからなる高純度ヘマタイト粒子粉末の製
造法である。
〔作用〕
先ず、本発明において最も重要な点は、酸性水溶液中
から生成したマグネタイト粒子又は含水酸化第二鉄粒子
を別、水洗した後、空気中700〜900℃の温度範囲で加
熱することによりヘマタイト粒子とし、次いで、当該ヘ
マタイト粒子を酸性水溶液を用いて粒子中に含有される
Naイオン量が平衡に達するまで洗浄した後、当該洗浄粒
子をイオン交換水を用いて粒子中に含有されるSO4イオ
ン量が平衡に達するまで洗浄した場合には、Naイオン及
びSO4イオンを可及的に除くことが出来、しかも、SiO2
の吸着を可及的に抑制することが出来ることによってNa
イオン及びSO4イオンとSiO2とがともに少ない高純度ヘ
マタイト粒子粉末が得られるという事実である。
今、本発明者が行った数多くの実験例からその一部を
抽出して説明すれば次の通りである。
図1乃至図3は、本発明の方法によって洗浄した場合
のヘマタイト粒子中に含まれるNaイオン及びSO4イオン
の変化並びにSiO2の吸着量の変化と前出特公昭54−3768
0号公報に記載の方法によって洗浄した場合のヘマタイ
ト粒子へのSiO2の吸着量の変化を示したものである。即
ち、図1乃至図3中の曲線A、B及びCは、それぞれ、
pH5.8の酸性水溶液中から生成したマグネタイト粒子粉
末を800℃で120分間加熱して得られたヘマタイト粒子粉
末1000gをpH2.0の硫酸水溶液を用いて5/時の割合で
5時間洗浄した後、イオン交換水を用いて3/時の割
合で2時間洗浄した時の粒子中のNaイオン、SO4イオン
及びSiO2の含有量の変化を示したものである。また、図
3中の曲線D及び曲線Eは、それぞれ上記と同一のヘマ
タイト粒子粉末1000gをpH7.2の中性の工業用水を用いて
5/時の割合で2時間、イオン交換水を用いて5/
時の割合で4時間洗浄した場合の粒子中のSiO2含有量の
変化を示したものである。
図1乃至図3に示される通り、本発明においては、Na
イオン及びSO4イオンを可及的に除去することが出来、
且つ、SiO2の吸着を可及的に抑制することが出来ること
によってNaイオン及びSO4イオンとSiO2とがともに少な
いヘマタイト粒子が得られることが認められた。
次に、本発明実施にあたっての諸条件について述べ
る。
本発明におけるマグネタイト粒子又は含水酸化第二鉄
粒子を生成させる水溶液は、pH3〜8の範囲の酸性水溶
液である。
本発明におけるマグネタイト粒子又は含水酸化第二鉄
粒子を生成させる為の第一鉄塩水溶液としては、硫酸第
一鉄水溶液等を使用することができ、アルカリ性水溶液
としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等を
用いることができる。
本発明の空気中における加熱温度は、700〜900℃であ
る。700℃未満である場合には、難溶性の含硫鉄塩の分
解が不十分である。900℃を超える場合には、得られる
ヘマタイト粒子の平均径が大きくなりすぎる為、フェラ
イト用原料粉末として好ましくない。
本発明における酸性水溶液としては、硫酸水溶液、塩
酸水溶液等を用いることができる。酸性水溶液のpHは1.
5〜3.0である。pH1.5未満の場合には、材質の寿命の問
題が生起したり、また、マグネタイト粒子又は含水酸化
第二鉄粒子中の鉄分が溶出し始める為、収量が減少し経
済的ではなく、そして、粒子に吸着した多量の酸を除去
する為第2段階における洗浄に長時間を要し、SiO2の吸
着もふえる等の問題が生起する。pH3.0を超える場合に
は、酸性水溶液中のSiO2がヘマタイト粒子に吸着する。
本発明におけるイオン交換水としては、電導度1μs
程度のもの等を用いることができるが、SiO2含有量は、
一般に1mg/以下の水溶液を使用するのが好ましい。
本発明による場合には、Naイオン含有量が0.015wt%
以下及びS04イオン含有量が0.3wt%以下であってSiO2
有量が0.0080wt%以下であるヘマタイト粒子を得ること
ができる。
〔実施例〕
次に、実施例並びに比較例により、本発明を説明す
る。
尚、前出実験例並びに以下の実施例及び比較例におけ
る粒子中のNaイオン量はICAPにより、SO4イオン及びSiO
2は、蛍光X線分析により測定した値で示した <ヘマタイト粒子の生成> 実施例1〜5 比較例1、2; 実施例1 pH5.7の酸性水溶液中から生成したBET比表面積18.3m2
/gの粒状マグネタイト粒子粉末(Naイオン含有量0.080w
t%、SO4イオン含有量1.75wt%、SiO2含有量0.0055wt
%)1000gを空気中800℃で120分間加熱処理して粒状ヘ
マタイト粒子を得た。
実施例2〜5、比較例1、2 出発原料であるマグネタイト粒子粉末又は含水酸化第
二鉄粒子の種類並びに加熱処理温度及び時間を種々変化
させた以外は実施例1と同様にしてヘマタイト粒子を得
た。
この時の主要製造条件及び諸特性を表1に示す。
<洗浄処理工程> 実施例6〜13 比較例3〜6; 実施例6 実施例1で得られた粒状ヘマタイト粒子を10の水を
用いて十分に撹拌してスラリー化した。このスラリーを
ブフナーロートを用いて過し、ひき続きpH2.0の硫酸
水溶液を用いて5/時の割合で5時間洗浄して上記ヘ
マタイト粒子から水可溶性分を除去した。一部を120℃
で乾燥して得られた粒状ヘマタイト粒子は、Naイオン含
有量が0.013wt%、SO4イオン含有量が0.42wt%であっ
て、且つ、SiO2含有量が0.0057wt%であった。
次いで、上記洗浄後の粒状ヘマタイト粒子400gをpH6.
8のイオン交換水(SiO2含有量0.5mg/)を用いて、3
/時の割合で2時間洗浄した後、別し120℃で乾燥
した。
得られた粒状ヘマタイト粒子は、Naイオン含有量が0.
0125wt%、SO4イオン含有量が0.28wt%であって、且
つ、SiO2含有量が0.0068wt%であった。
実施例7〜13、比較例3〜6 ヘマタイト粒子の種類、1段階目の洗浄処理工程にお
ける酸性水溶液の種類、pH並びに2段階目の洗浄処理工
程における洗浄水の種類及び時間を種々変化させた以外
は、実施例6と同様にして洗浄した。
主要製造条件及び諸特性を表2に示す。
〔発明の効果〕 本発明方法による場合には、前出実施例に示した通
り、Naイオン及びSO4イオンを可及的に除くことが出
来、且つ、SiO2の吸着を可及的に抑制することが出来る
ことによって、Naイオン及びSO4イオンとSiO2とがとも
に少ない高純度ヘマタイト粒子粉末を得ることが出来る
ので現在、最も要求されている高性能フェライト用原料
粉末として好適である。
尚、本発明における高純度ヘマタイト粒子粉末は、純
度が高いことによって色調が鮮明である為、塗料用顔料
粉末、ゴム・プラスチック用着色剤としても有効に使用
できるものである。
【図面の簡単な説明】
図1乃至図3は、それぞれ、ヘマタイト粒子を洗浄した
場合の該ヘマタイト粒子中に含まれるNaイオン及びSO4
イオンの変化並びにSiO2の吸着量の変化を示す図であ
る。 図中、線A、B、Cは、本発明の方法によって洗浄した
場合であり、線D、Eは、特公昭54−37680号公報に記
載の方法により洗浄した場合である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸性水溶液中から生成したマグネタイト粒
    子又は含水酸化第二鉄粒子を別、水洗した後、空気中
    700〜900℃の温度範囲で加熱することによりヘマタイト
    粒子とし、次いで、当該ヘマタイト粒子を酸性水溶液を
    用いて粒子中に含有されるNaイオン量が平衡に達するま
    で洗浄した後、当該洗浄粒子をイオン交換水を用いて粒
    子中に含有されるSO4イオン量が平衡に達するまで洗浄
    することを特徴とする高純度ヘマタイト粒子粉末の製造
    法。
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