JP2722860B2 - 舵角制御装置 - Google Patents

舵角制御装置

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JP2722860B2
JP2722860B2 JP3133279A JP13327991A JP2722860B2 JP 2722860 B2 JP2722860 B2 JP 2722860B2 JP 3133279 A JP3133279 A JP 3133279A JP 13327991 A JP13327991 A JP 13327991A JP 2722860 B2 JP2722860 B2 JP 2722860B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は舵角制御装置に関し、特
に前輪または後輪を補助操舵する車両における舵角制御
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両の舵角制御装置として、補助操舵機
構を有する車両での旋回時の加速、減速の場合に制御舵
角の補正をするよう制御する制御装置が提案されている
(特開昭63−121571号公報)。このものでは、
舵角補正により後輪舵角制御を切り換えて、旋回中の旋
回半径が大きくなる方向の変化や、小さくなる方向の変
化などの車両挙動を防止し、アンダーステア、タックイ
ンを解消しようとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかして、上記舵角制
御装置にあっては、アクセル開度によってかかる舵角補
正が行われるが、アクセル操作に対しそれに起因した車
両のアンダーステア特性等の挙動発生までには時間的な
遅れがあるため、アンダーステア低減等のための舵角補
正に際し、かようにアクセル操作量で後輪を動かすと、
前記車両のアンダーステアが発生する前に舵角が補正さ
れてしまい、該補正制御は過敏なものとなる。即ち、ア
クセル操作に即応すべく舵角修正すると、前記アンダー
ステア特性発生前に舵角を修正することになり、車両が
ピクピク動くような挙動の要因となる。よって、過敏な
舵角修正はこのために車両がふらつき安定性が低下する
などし、違和感の原因ともなる。
【0004】本発明の目的は、加速及び/又は減速時の
舵角補正を過敏なものとすることなく、かつ運転者の意
思ともよく適合するものとし、もって違和感のできるだ
け少ない制御で舵角補正の実効を上げることのできる舵
角制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的のため本発明舵
角制御装置は第1図に概念を示す如く、ステアリングホ
イールの操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、車両
の前輪あるいは後輪の少なくとも一方を補助操舵する操
舵機構と、アクセル操作を検出するアクセル操作検出手
段と、前記操舵状態検出手段の出力に基づき、前記操舵
機構により所定の制御則に応じた制御舵角をもって操舵
制御可能な制御手段であって、操舵状態検出手段とアク
セル操作検出手段からの信号により補助操舵信号を演算
し、アクセル開度の変化があった時で且つ操舵がなされ
ていることを検出した場合、補助操舵信号を遅延させ、
前記アクセル操作検出手段により検出されるアクセル操
作に対して該遅延手段による遅れをもたせて前輪補助舵
角または後輪舵角の補正をする補正手段を有する舵角制
御手段とを具備してなるものである。
【0006】
【作用】本発明舵角制御装置は、補助操舵機構を有する
車両において加減速時の舵角補正を過敏なものとするこ
とがないようにするため、アクセル開度の変化があった
時で且つ操舵がなされていることを検出した場合、補助
操舵信号を遅延させる手段を有し、舵角制御手段は、ス
テアリングホイールの操舵状態を検出する操舵状態検出
手段からの出力に基づき、前輪または後輪を補助操舵す
る操舵機構をして所定の制御則に応じた制御舵角をもっ
て操舵せしめるが、その舵角補正手段は、前輪補助舵角
または後輪舵角をアクセル操作に応じて補正するにあた
り、補正はこれをアクセル操作に対して該遅延手段によ
る遅れをもたせて行うよう、前輪または後輪の制御舵角
の補正をする。これにより、アクセル操作に伴いアンダ
ーステア特性が発生する場合でもその発生タイミングと
実際の舵角修正タイミングとを一致させることが可能
で、舵角補正は過敏なものとなるのが避けられ、車両の
ふらつきなどの変化を軽減し得て、旋回加速時のアンダ
ーステア低減を図る場合や、減速時のタックイン低減を
図る場合でも、これを違和感の少ない、かつ運転者の意
思に適合した適切な制御で実現することを可能ならしめ
る。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に
説明する。図2は本発明舵角制御装置の一実施例で、1
は前輪、2は後輪を夫々示す。本実施例では後輪のみな
らず前輪もアクティブに補助操舵する構成の場合を示
す。前輪1は夫々ステアリングホイール(ハンドル)3
への操舵入力をステアリングギヤ4を介して伝達するこ
とにより通常通り主操舵可能にすると共に、ステアリン
グギヤ4のケースを補助操舵機構中のアクチュエータ5
によりストロークさせることで主操舵角に対して最大α
度までの補助操舵を可能とする。また、後輪2は、補助
操舵機構中のアクチュエータ6のストロークにより最大
β度までの補助操舵を可能とする。ここで、本実施例で
は、α度<β度と仮定する。
【0008】前・後輪補助操舵系には、上記アクチュエ
ータ5,6の他に、両系統に共通な圧力源としてのオイ
ルポンプ7を設け、更に分流弁12、舵角制御弁14,
15を設ける。オイルポンプ7はリザーバ8内のオイル
を吸入して主回路9に吐出し、分流弁12はこれにより
主回路9上のオイルを前輪補助操舵回路10及び後輪補
助操舵回路11に分配する。
【0009】上記分流弁12は、シャトルスプール12
aをバネ12b,12cにより中立位置に弾支して構成
するものとし、スプール12aの両端には圧力室12
d,12eを画成する。これらの圧力室12d,12e
は、スプール12aに形成した径の異なるオリフィス1
2f,12gを経て主回路9に通じさせると共に、同じ
くスプール12aに形成した横孔12h,12i及び出
力ポート12j,12kを経て補助操舵回路11,10
に通じさせる。しかして、横孔12h,12iは夫々圧
力室12d,12eの圧力に応動するスプール12aの
ストロークに応じて出力ポート12j,12kとの連通
度を加減され、以下の分流機能を果たすものとする。
【0010】即ち、例えば回路10に着目すると、回路
10の要求流量Qfは、前輪補助操舵アクチュエータ5
のピストン受圧面積SA とピストン移動速度vとの積Q
f =SA ×vで表わされ、更にアクチュエータ5のスト
ロークをd、前輪操舵周波数をfとすれば、移動速度は
v=2π×f×dであるため、回路10の要求流量Qf
はQf =SA ×2π×f×dとなる。また、回路11の
要求流量Qr についても同様にして求まり、ポンプ7の
吐出量Qo をQo = Qf +Qr とすると、所要要求流量
f ,Qr を得る分配比は、前記オリフィス12g,1
2fの径をQf /Qo ,Qr /Qo に対応して設定する
ことで得られる。分流弁には、こうしてポンプ吐出量Q
o を回路10,11へ要求流量Qf ,Qr に分配して供
給することができる。更に、回路10、または回路11
が流量変化で圧力降下すると、分流弁12のスプール1
2aが図中右行または左行して横孔12iまたは12h
の開度を減じ、流量分配比がくずれるのを防止し得て一
系統の圧力変動が他系統に影響するのを防ぐことができ
る。舵角制御は、このように両系の圧力変動が相互に干
渉し合わないようになされた上記構成の下、舵角制御弁
14,15の制御によって行われる。
【0011】舵角制御弁14,15は、夫々圧力制御弁
から構成され、これらは補助操舵回路10,11及び共
通なドレン回路13と、アクチュエータ5,6との間に
介挿される。前輪補助操舵用の舵角制御弁14は、ソレ
ノイド14a,14bのオフ時(非通電時)図示の中立
位置となって回路10からのオイルを全量ドレイン回路
13に戻し、アクチュエータ5の両室5a,5bを無圧
状態に保つ。この時、アクチュエータ5は内蔵バネ5
c,5dにより中立位置にされ、ステアリングギヤ4を
前輪1が補助操舵されない位置に保つ。ソレノイド14
aのオン時(通電時)、弁14は室5aを加圧し、室5
bをドレインして、アクチュエータ5を伸長動作させ、
ステアリングギヤ4を図中右行させることにより前輪1
を前記α度以内で左転舵方向に補助操舵する。更に、弁
14は、ソレノイド14bのオン時(通電時)には、室
5bを加圧、室5aをドレインしてアクチュエータ5を
収縮動作させステアリングギヤ4を図中左行させること
により前輪1をα度以内で右転舵方向に補助操舵する。
該操舵は、後述の如き制御態様に従ってハンドル操作に
基づきなされる。前輪1は、このような機構によって補
助操舵される。
【0012】後輪補助操舵用の舵角制御弁15及びアク
チュエータ6の構成、並びにそれらの機能も、上記舵角
制御弁14及びアクチュエータ5についてのものと同様
である。即ち、舵角制御弁15はソレノイド15a,1
5bを備え、アクチュエータ6は室6a,6b及び内蔵
ばね6c,6dを備える。また、後輪側アクチュエータ
6のストロークを検出するストロークセンサ19が設け
られる。上記各ソレノイド15a,15bのいずれもオ
フの時(非通電時)には、弁15は両室6a,6bを無
圧状態にし、ソレノイド15aのオン時(通電時)には
室6aの加圧により、またソレノイド15bのオン時
(通電時)には室6bの加圧により、後輪2は前記β度
以内で夫々対応する方向に転舵せしめられる。後輪2
は、上述のように後輪を操舵する機構によって転舵され
る。
【0013】上記舵角制御弁14,15の各ソレノイド
14a,14b,15a,15bはコントローラ16に
よりオン/オフ制御し、このコントローラ16には、ス
テアリングホイール3の操舵角(ハンドル角)θを検出
する舵角センサ17からの信号、車速Vを検出する車速
センサ18からの信号、ストロークセンサ19からの信
号、アクセル開度THを検出するアクセルセンサ20か
らの信号、横加速度Yg を検出する横加速度センサ(横
gセンサ)21からの信号等を夫々入力する。横gセン
サは、これを横加速度に相当する横g相当物理量を検出
するものとすることができる。上記コントローラ16
は、入力検出回路と、演算処理回路と、該演算処理回路
で実行される舵角制御用のプログラム及び演算結果等を
格納する記憶回路と、舵角制御弁14,15に制御信号
を供給する出力回路等とで構成され、上記入力情報に基
づき、前後輪補助舵角を演算し、舵角制御弁14,15
の各ソレノイド14a,14b,15a及び15bをオ
ン、オフ制御する信号IFa, IFb, IRa及びIRbを出力
し、前後輪を個々に演算舵角となるように補助操舵す
る。
【0014】ここで、上記舵角演算については、基本的
には、ステアリングホイールの操舵状態(ハンドル角θ
やハンドル角速度dθ/dt等)、また更には車速Vに
応じて前後輪の制御舵角値δf , δr を演算するが例え
ばハンドル角速度dθ/dt(ハンドル操舵角速度)を
も操舵状態のパラメータとして使用する場合は夫々の演
算は次式を用いた方法で行うことができる。 δf =Kf (v) ×θ + Tf (V) ×dθ/dt … 1 δr =Kr (v) ×θ + Tr (V) ×dθ/dt … 2 ここに、Kf (v), Tf (V) は前輪舵角制御における制
御定数を構成し、Kr (V), Tr (V) は後輪舵角制御に
おける制御定数を構成する。具体的には、Kf (V), K
r (v) はθの乗算係数で、ここでは夫々車速に応じて変
化する比例定数、Tf (V), Tr (V) はdθ/dtの乗
算係数であって、同じくここでは夫々車速に応じて変化
する微分定数である。これら式1,2は、夫々第1項を
比例項、第2項を微分項とする制御演算式で、簡単に説
明すれば、操舵過渡期(θが小さくdθ/dtが大きい
期間)には微分項をきかして車両回頭性のシャープさを
得る一方、保舵期(θが大きくdθ/dtが小さい期
間)には比例項をきかして安定性を得るといった操舵特
性を実現する演算式である。
【0015】更に、後輪の舵角制御に関しては、コント
ローラ16は、前記後輪用の補助操舵機構をして、例え
ば所定ハンドル角までは前輪1と同位相方向に後輪舵角
を増加させ、所定ハンドル角以上では後輪2を逆位相方
向に増加させる(同位相状態にある時は同位相舵角を減
少させる)制御を実行することができる。
【0016】コントローラ16はまた、旋回中の加速時
及び/又は減速時に、後輪または前輪の少なくとも一方
を前記補助操舵機構により操舵制御する場合、かような
運転状態による舵角補正を過敏なものとすることなく、
かつ運転者の意思と一致したものとするように、旋回中
のアクセル操作に対して或る遅れをもたせて制御対象車
輪の操舵を行うよう制御する手段をも構成する。即ち、
コントローラ16は、かかる運転領域での旋回時に、前
輪補助転舵角または後輪転舵角をアクセル操作に応じて
補正するにあたり、該転舵角の補正はアクセル操作に対
して所定の遅れをもたせて行う。
【0017】好ましくは、制御対象輪が後輪の場合は、
アクセル開度との関係では、アクセル開度が大きくなる
と旋回内側に小回りする方向に後輪を操舵し、アクセル
開度が小さくなると旋回外側に小回りする方向に後輪を
操舵する。
【0018】更に、上記において、コントローラ16
は、好ましくは、補正量をアクセル開度の他、例えば横
g、車速等によって変化させる。例えば、車速によって
アクセル開度と後輪操舵角の関係を変えるものとし、ま
た、この場合、車速が増加する程アクセル開度に対する
後輪操舵角を大きくする。また、横g相当物理量を検出
し、横gによってアクセル開度に対する後輪操舵角の関
係を変える。この場合、横gが大きくなる程アクセル開
度に対する後輪舵角を大きくする。
【0019】好ましくはまた、コントローラ16は、旋
回の方向はこれをハンドル角の方向でなく横g相当物理
量の方向で判断する。
【0020】また、コントローラ16は、上記の後輪舵
角の補正に代えてまたはこれと共に、前輪補助転舵角に
ついての補正をなすことができる。この場合も、同様
に、旋回中の加減速をアクセル開度で検出し、アクセル
開度に対し或る遅れをもたせて前輪を補助操舵するもの
として、アクセル開度大で旋回内向きに前輪を切り増
し、逆にアクセル開度戻し時には旋回外向きに前輪を切
り戻すようになす。
【0021】図3は、旋回時における舵角補正処理のた
めの制御プログラムの一例を示すフローチャートであ
る。本プログラムは後輪の制御舵角の補正をするように
した場合の例であり、コントローラ16内において実行
される。
【0022】まず、ステップ100では旋回中かどうか
についてのチェックを行う。ここでは、旋回かの判断に
ついては、例えばハンドル角θ、車速Vに基づいて行う
ことができる。この場合は、該ステップ100実行時点
での車速センサ18、舵角センサ17からの信号に基づ
く車速値Vとハンドル角値θから予め設定したマップ上
の旋回領域にあるのか否かを検出することにより判別す
る。なお、旋回判断はこのようなマップでなくてもよ
く、車速、ハンドル角マップを用いずに、横加速度(横
g)の平均値を検出しこれを旋回判断に用いてステップ
100での旋回判断をするようにしてもよい。
【0023】上記判別の結果、答がNoで旋回中でなけ
れはそのまま本プログラムを終了する一方、答がYes
で旋回中と判断されたときは、次のステップ101にお
いて、旋回時での舵角補正を行うべき状態にあるかをみ
るためのアクセル開度の変化についてのチェックを実行
する。即ち、以下では、主として加速補正について説明
する(減速時補正の場合も同様の制御手順で行うことが
できるものである)が、かかる加速補正なら、アクセル
開度変化率について、値0あるいは予め設定した正のし
きい値を判別値として用いて、dTH/dtがそれを超
える状態が成立するか否かを判別する。ここに、変化率
は、アクセルセンサ20の出力を基に、制御プログラム
の演算サイクルで前の検出値と今回検出値との差分で求
めることができる。上記ステップ101では、こうして
旋回中の加速をアクセル開度で検出し加速判断を行うの
である。
【0024】ステップ101ではこのようなアクセル開
度の変化を監視し、その結果、Noの時はそのまま本プ
ログラムを終了する。従って、旋回中でない場合、及び
旋回中でも、上述の如くにステップ101を経てそのま
ま本プログラムを終了するときは、加速時補正のための
アクセル開度に対し所定の遅れをもたせた後輪の後述の
戻し補正から成る一連の補正処理はなされない。そのた
め、かかる場合、舵角制御は、例えば通常の制御則に従
って前後輪制御舵角δf , δr を演算する図示しない舵
角制御演算プログラムでの算出値がそのままδf 値、δ
r 値としてこれも不図示の前後輪舵角制御出力プログラ
ムに適用されて制御が実行されていくことになる。より
具体的にいえば、舵角補正は行われず、例えば前記式
1,2のような制御舵角値δr , δf をもって舵角制御
が行われていくことになる。
【0025】即ち、通常の制御では、前後輪の制御舵角
は、夫々式1,2に照らしラプラス演算子Sを用いて書
き直した次式で与えられる。 δf =(Kf +Tf S)θ … 3 δr =(Kr +Tr S)θ … 4 (Kf ,Kr :比例定数、Tf ,Tr :微分定数) 上記制御は直進状態でも旋回状態でも変わらない。な
お、上式の例では、車速変化による制御定数の変化の分
はこれを省略して示してある。かくして、補正を行わな
いときは通常の舵角制御が実行される。
【0026】これに対し、前記ステップ101での判断
の結果、加速と判断された場合(答がYesの場合)に
は加速時での戻すべき舵角量の設定処理を含めた加速時
舵角補正制御に切換えるべく処理をステップ102以下
へ進める。
【0027】旋回加速時の舵角制御に際し、該補正を施
すべき加速状態かどうかにつき、まず、それをアクセル
開度でみるものの、通常走行の場合から舵角制御を切換
えて制御舵角の補正をするにあたって、アクセル操作に
即応するべく舵角修正するのではなく、後述の如くアク
セル開度の変化に対して一定の遅れをもって後輪を戻す
(同相舵角を戻すことを含んで前輪と逆相方向に後輪を
戻す)ようにすることのできる本制御においては、加速
時のアンダーステア低減を、加速の意思をもってアクセ
ルペダルの踏み増しを行っているその運転者の意思に反
しないものとして適切に実行することもできる。旋回加
速時のアンダーステアの低減にあたり、これを舵角補正
によって行う場合、単にアクセル操作量で後輪を動かす
ものに比し、舵角補正を過敏なものとすることがなく、
よって、過敏であるが故に車両がふらつくなどする違和
感を軽減できるし、しかもその運転者にとってより違和
感のない制御で確実にアンダーステアを低減することが
できるのである。
【0028】以下、説明すると、本プログラムでは、前
記ステップ101からステップ102へ進むと、ここで
は補正舵角量設定処理を実行する。該処理の一例は、図
4に示す如きもので、本例では補正のため後輪を戻すそ
の戻し量は横g、車速によっても変化させるものとす
る。
【0029】まず、ステップ200では、同相舵角から
戻す舵角の最大値δmax をアクセル開度THに応じて設
定する。図5は、アクセル開度THと戻す後輪舵角の関
係の一例を示すもので、かかる特性のテーブル検索でδ
max 値を求める。該δmax は、補正時での後輪を操舵す
る(同相を戻す)最大操舵量(最大戻し量)を定めるも
ので、以下の処理での基本値として機能し、その値はア
クセル開度THに応じて大きくする(なお、その上限は
前記した図2のβの最大転舵可能範囲内のものとして選
ばれる)のが望ましいが、その場合、図5に示した如き
線形特性でなくてもよい。また、アクセル開度THに応
じたものとする場合に,アクセル開度0%から立ち上げ
るような特性のものとしてもよいが、図5のように所定
アクセル開度以上の範囲で値をもつ(0でない)特性の
ものとした方が運転者の意思により合うことが実験結果
より得られていることから、本例ではそのようにしてい
る。
【0030】舵角修正のための上記基本値たるδmax
を検索したら、次のステップ201では、横gの大きさ
g に応じてかかるδmax の何%までを戻すべき舵角量
とすべきかを設定するため、ゲインG1 の検索を行う。
図6は、この場合に適用できる特性の一例で、前記図5
で定めた戻すべき後輪舵角の大きさが横gでどのように
変化するかが示されている。図6に示す如く、ゲインG
1 は横gが大きくなる程大なる値をとるようにするのが
望ましい(これは、高g程アンダーステア特性が生じて
くることから、アンダーステア低減にあたりこれに対処
するべく、こうした特性のものとすることとする)。
【0031】ここで、該ゲインG1 も、横gが小さいと
きは0にしておくのが望ましく、従って所定Yg 値例え
ば0.6 g程度から立ち上げるような特性のものとするの
がよい。余り低gから立ち上げると、アクセル操作で車
両の動きが大きくなり違和感につながり易いが、上記の
ようにすることでかかる面での違和感の発生防止も図る
ことができる。また、図6では線形な特性のものとして
例示してあるが、この場合も同様、必ずしもテーブル特
性は線形でなくてもよい。
【0032】次のステップ202では、同様に車速Vに
応じても前記δmax の何%まで戻すかを設定するための
ゲインG2 を求める。図7も、横gに応じたゲインG1
のものと同様、車速Vに応じて戻す量を変える場合に、
前記図5で定めた戻すべき後輪舵角の大きさを車速Vで
どのように変化させるかについてのその特性を例示した
ものである。ここに、車速Vに応じたゲインG2 につい
ては、適用する車両のタイプに応じてその特性傾向を選
定することもできる。即ち、一般に通常車両の場合で
は、図7(イ)のように車速Vの増加に伴い増加させる
特性のものとすることが望ましいが、ミッドシップのよ
うに回頭性を楽しみ、小Rでもアンダーステアを嫌う車
両で、かつ高速のスタビリティを稼ぎたい場合には、同
図(ロ)のような特性に設定してかかるテーブルを用い
るようにしてもよい。また、車速に依存せずゲインG2
を一定としても特に差し支えはない。
【0033】しかして、上述のようにステップ200〜
202でδmax 値、G1 値、G2 値が決まれば、戻す舵
角(戻し量)が決まるので、続くステップ203におい
て、戻す舵角として補正舵角量δo を、次式 δo =δmax ×G1 ×G2 による演算で決定する。
【0034】具体的にいえば、例えば前記図5、図6及
び図7(通常の(イ)の場合)の特性例を用いた場合で
は、アクセル開度100%でδmax が例えば1度、ゲイ
ンG1 については例えば横gが0.8 gで80%、ゲイン
2 については例えば車速100Km/hで70%である
ときは、100Km/hで、横gが0.8 g、フルスロット
ル時の後輪舵角補正にあたり、ステップ203におい
て、後輪の戻すべき舵角は、 δo =1°×80%×70%=0.56° のように、演算されることになる。
【0035】図3に戻り、上述のように戻す舵角が決ま
ったら、ステップ102の次のステップ103では、か
かる戻し量をもった後輪舵角の補正はこれをアクセル操
作に対し所定の遅れをもたせて行うべく、本例の場合、
アクセル開度の変化に対して、1次遅れのフィルタをか
ける。即ち、前記の如く算出補正量をδo = δmax ×G
1 ×G2 とすれば、ここでのフィルタリングにより、戻
す舵角δ1 は、次式で表されるものとなる。 δ1 =δo /(1+τS) … 6 ここで、上記式6において、τはアクセル操作に対し後
輪の動きが敏感になりすぎないように入れた時定数で、
その値はかかる観点から選定するものとし、例えばτ=
100〜200msec程度がよい。
【0036】こうして、上記δ1 を用い制御対象舵角を
次の一般式で示される式7に従い補正して、アクセル開
度での検出態様とした場合でも、過敏性を除去し、安定
性を高めた舵角修正が可能となる。 δ=(K+TS)θ±δo /(1+τS) … 7 但し、上記は、通常の舵角制御則が(K+TS)θに
よる場合のもので、K,Tは、夫々前記式1,2、及び
式3,4に準じ比例定数、微分定数である。
【0037】従って、後輪舵角の場合は、ステップ10
4での補正時の後輪舵角は、 δr = (Kr +Tr S)θ±δO /(1+TS) … 8 のように書き表される。なお、ここでは、通常の後輪舵
角制御則が前記式4の如くのδr = (Kr +Tr S)θ
であることから、上記式8のようになるが、通常の制御
則(式8の第1項)は必ずしもこれに限定されるもので
はないことはいうまでもなく、他の制御則による場合で
も、式8の第2項による補正を適用して同様に実施でき
る。また、戻す方向は、横g方向で判断し、加速時には
旋回内側に小回わりする方向とする(通常の操舵状態で
は逆方向となる)。このように、ハンドル角ではなく横
gで旋回方向を判断するのは、例えば旋回時にカウンタ
ーステアをあてたような場合において後輪の舵角変化の
大きさを余り大きくしないようにするためであり、従っ
て横gで判断するときにはこうした利点も併せ得られ
る。
【0038】かくして、上記式8による舵角修正がなさ
れるときは、かかる補正制御舵角δr に基づき、後輪舵
角制御出力処理が実行される結果、加速時補正では、後
輪は逆相側へ向け切り戻されるよう補正操舵されるとこ
ろ、このとき、アンダーステア特性発生前に舵角が修正
されるのを適切に回避し得て、過敏すぎて車両がふらつ
き安定性が低下するのを避けることができる。即ち、式
8の第2項による補正を適用することで、アクセル操作
に伴うアンダーステア特性の発生タイミングと、その操
作に基づく実際の舵角修正タイミングとを一致させるこ
とができ、車両が舵角補正が要因でピクピク動くのを防
止することができる。この場合において、前記した時定
数Tの値について、これを例えば車速、横gで変えるよ
うにしてもよい(また、そのように変えなくても実施す
ることはできる)。また、本制御は、運転者の意思に反
しないものとするという意味で的確な制御となる。
【0039】4WSでのFR車、4WD車における旋回
加速時の車両挙動について、更に付言しておくと、これ
ら車両の場合、旋回時、後輪が同相に操舵されていると
きは、後輪の駆動力によって発生するヨーモーメントが
車両の旋回を妨げる方向に作用し、旋回を維持するため
にフロントタイヤの負担が増加し、強アンダーステアに
なる傾向がみられる。また、FF車の場合、FF車では
加速時にもともとフロントに駆動力がかかり、フロント
タイヤの負担が大きくアンダーステア特性が強くなりが
ちなところに加え、4WSでは後輪が同相に操舵される
ためヨー運動を打ち消す方向に力を出しているため、更
にアンダーステア特性が強くなってしまう(また、加速
をした時は車速増加を伴うので、後輪舵角の同相舵角が
増え上記傾向がより助長される)。
【0040】これに対し、本制御に従えば、旋回性向上
を狙って旋回加速時に、上述のようなアンダーステアを
適切にしてかつ的確な補正タイミングで解消することが
できる。即ち、旋回中の加速時、加速の判断においてこ
れをアクセル開度で検出し、所定の遅れをもたせて後輪
を逆位相方向に操舵することができるものであり、4W
D車、FR車での後輪駆動力によるプッシングアンダー
ステア、FF車での前輪駆動力発生による前輪コーナリ
ングフォース減少に伴うアンダーステアを解消し得、最
適なタイミングで所要のヨーレイトを発生させることが
可能である。ヨーレイト発生により、前輪の横すべり角
は減少し、後輪の横すべりは増加するため、フロントの
負担を減らし、リアはより大きなコーリングフォースを
出せるのであり、しかも、違和感のない状態で達成でき
るのである。
【0041】また、車速の変化率や、エンジン回転数の
変化率を検出し後輪の制御を切り換えることも考えられ
る(本出願人は、先に特願平2−243877号により
エンジン回転数の変化に応じて補正をする装置について
提案をしている)。ここで、車速やエンジン回転数を検
出する場合において、旋回時の内輪空転などを考慮する
とき、運転者の意思と検出量が必ずしも一致しない現象
が生ずる場合もあり、これが違和感の原因となることも
予想される。本制御では、こういう点からの違和感も軽
減されるものである。
【0042】なお、上記では主として加速時補正につい
て説明したが、減速時補正も同様にして行え、減速時は
加速時と逆方向の制御となるのでタックイン抑制効果が
ある。従って、旋回減速時でも、舵角補正を運転者の意
思に合致した、過敏なものとすることない特性で行え、
減速時のタックイン低減を違和感のない制御で適切に達
成することができる。なお、本発明は、加速補正を単独
で、もしくは減速補正を単独で実施することもでき、ま
た両者を実施することもできる。更に、それらの場合
に、舵角補正を前輪だけを対象とし、または後輪だけを
対象として、実施することもでき、前後輪両方を対象と
してもよい。
【0043】
【発明の効果】かくして本発明舵角制御装置は上述の如
く、前輪補助舵角または後輪舵角の少なくとも一方を操
舵制御する舵角制御において、アクセル操作に応じて制
御対象車輪の舵角を補正するにあたり、加減速時の舵角
補正を過敏なものとすることがないようにするため、ア
クセル開度の変化があった時で且つ操舵がなされている
ことを検出した場合、補助操舵信号を遅延させる手段を
有し、該補正はアクセル操作に対し該遅延手段による遅
れをもたせて行わしめるよう制御できる構成としたか
ら、舵角補正を過敏なものとすることをなくし得て車両
のふらつきなど違和感の少ない制御で舵角補正制御の実
効を上げることができ、旋回加速時や旋回減速時でアン
ダーステアの低減やタックインの低減を図る場合でも運
転者の意思に適合しかつ極力違和感のない特性で適切に
実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明舵角制御装置の概念図である。
【図2】本発明舵角制御装置の一実施例を示すシステム
図である。
【図3】同例でのコントローラの補正処理のための制御
プログラムの一例を示すフローチャートである。
【図4】同プログラムに適用できる旋回ロジックでの補
正舵角量決定のためのサブルーチンの一例を示す図であ
る。
【図5】同サブルーチンに適用できるアクセル開度と戻
し舵角量の関係の特性の一例を示す図である。
【図6】同じく戻し量を横加速度に応じて変化させる場
合の特性の一例を示す図である。
【図7】同じく戻し量を車速に応じて変化させる場合の
特性例を示す図である。
【符号の説明】
1 前輪 2 後輪 3 ステアリングホイール 4 ステアリングギヤ 5 前輪補助操舵アクチュエータ 6 後輪補助操舵アクチュエータ 7 オイルポンプ 12 分流弁 14, 15 舵角制御弁 16 コントローラ 17 舵角センサ 18 車速センサ 20 アクセルセンサ 21 横加速度センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B62D 113:00 117:00 127:00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステアリングホイールの操舵状態を検出
    する操舵状態検出手段と、 車両の前輪あるいは後輪の少なくとも一方を補助操舵す
    る操舵機構と、 アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、 前記操舵状態検出手段の出力に基づき、前記操舵機構に
    より所定の制御則に応じた制御舵角をもって操舵制御可
    能な制御手段であって、操舵状態検出手段とアクセル操
    作検出手段からの信号により補助操舵信号を演算し、ア
    クセル開度の変化があった時で且つ操舵がなされている
    ことを検出した場合、補助操舵信号を遅延させ、前記ア
    クセル操作検出手段により検出されるアクセル操作に対
    して該遅延手段による遅れをもたせて前輪補助舵角また
    は後輪舵角の補正をする補正手段を有する舵角制御手段
    とを具備してなることを特徴とする舵角制御装置。
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JPH075087B2 (ja) * 1985-10-21 1995-01-25 トヨタ自動車株式会社 前後輪操舵車の後輪転舵制御装置

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