JP2721868B2 - 薄膜発光素子の製造方法 - Google Patents

薄膜発光素子の製造方法

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JP2721868B2 JP1014818A JP1481889A JP2721868B2 JP 2721868 B2 JP2721868 B2 JP 2721868B2 JP 1014818 A JP1014818 A JP 1014818A JP 1481889 A JP1481889 A JP 1481889A JP 2721868 B2 JP2721868 B2 JP 2721868B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は改良された薄膜発光素子の製造方法に関す
る。
(従来技術及び問題点) ある種の蛍光体材料を発光層として2つの電極間に鋏
み、交流あるいは直流の電界を印加することにより、電
界発光現象が観測されることがよく知られている。この
現象を利用した薄膜発光素子に関して、発光効率を高め
るための研究が従来から盛んに行なわれている。発光層
としてアントラセン誘導体やシアニン色素などの有機材
料を用いた研究が行なわれてきたが、近年、有機金属錯
体の中に無機蛍光体材料の特性を遥に凌ぐものがあるこ
とが見い出された(C.W.Tang and S.A.Vanslyke,Apll.P
hys.Lett,51(12),913−915(1987))。このような有
機蛍光体層を有する薄膜発光素子ではホール注入/移動
層が発光輝度や素子寿命を改良する上で重要である。通
常の薄膜発光素子ではアノード側に、酸化スズインジウ
ム膜、酸化スズ膜、酸化亜鉛膜といった透明導電膜を用
いて、アノード側から光を取り出すのが通例であるが、
これらの透明導電膜はn形の導電膜であり、有機蛍光体
へのホール注入/移動層としては不向きである。このた
め、ホール注入/移動層として二級および三級アミンが
用いられてきたが、ポリ(3−メチルチオフェン)のご
とき導電性高分子膜の利用が、高い電流密度と低いしき
い値電圧を得るのに有効であることが明らかにされてい
る(林省治、斉藤省吾、機能材料、7(12),36−42(1
987))。ホール注入/移動層としてアノード電極上に
上記導電性高分子薄膜を形成するには、アセニトリルな
どの有機溶媒中にモノマーとなる芳香族系化合物と通電
のための電解質とを溶解し、その中に該電極を対向電極
と共に浸漬し、両電極間に直流電圧を印加する電解重合
法が用いられている。
しかしながら、この方法で発光素子のホール注入/移
動層を製造するには、以下に述べるような種々の欠点が
ある。
まず第1に、上記の方法では、一般に生成する高分子
が電極上の複数の部分から成長した塊状の高分子の重合
体であるため、薄膜発光素子にとって致命的な欠点であ
るピンホールが生じる。さらに、大きな凹凸があるため
表面の高い平滑性が期待できず、素子の絶縁破壊が生じ
易い。また、大きな面積の電極では表面性状の影響を強
く受けて、島状の生成物が形成される例が多く、このた
め均質な膜を再現性良く得るには電極の表面の洗浄、処
理、電解重合などの制御に多大な労力を必要とし、大面
積の電極上に均質な電解重合膜を安価な製造プロセスで
得ることは実際上不可能である、などの問題がある。
第2に、電解重合反応により消費される芳香族系化合
物モノマーは電解溶液中に存在するもののごく一部であ
り、さらに、重合しても基板に固定されずに溶液中に溶
出する高分子の割合が大きく、溶液の汚染が大きい。こ
のため、電解溶液を頻繁に交換する必要があり、原料や
溶媒の経済的使用の面での問題がある。また、溶媒中の
モノマー組成や電解質組成が変化するため、再現性の良
い電解重合膜を得るには注意深く溶液組成を管理する必
要がある。
第3に、溶液からの電解重合法による導電性高分子の
析出を利用した薄膜の形成においては、電極上への析出
時に芳香族系化合物モノマーの重合反応と酸化反応の両
方が競合して起きている。この際に流れる電流は、両方
の反応に必要な電子数の和として観測される。従って、
薄膜の形成時に流れる電流をモニターしても、電極基板
上に析出する高分子薄膜の正確な膜厚を見積ることはで
きない。このため、一定のしきい値電圧や発光特性を持
つ素子製造に必要な膜厚管理を直接的に行なうことが困
難であるという問題がある。
第4に、薄膜発光素子のアノードには透明電極を用い
ることが一般的であるが、このような透明電極は通常数
十Ω/cm□以上の抵抗値を有しており、大面積のアノー
ド電極上では電極端子近傍とこれから離れた部分との間
に電圧降下が起こる。このため、アノード電極全面で一
定の電解重合電位を保つことが事実上不可能であり、広
い面積にわたって均質な膜厚の電解重合膜を得ることは
困難であるという問題がある。
本発明はこれらの欠点を除去するためになされたもの
であり、その目的は薄膜発光素子の製造方法において、
アノード電極上にピンホールを持たず、かつ、平滑性が
高いホール注入/移動層を、再現性良く、容易に作製す
る方法を提供することにある。
(問題点を解決するための手段) 本発明を概説すれば、本発明は薄膜発光素子の製造方
法の発明であって、アノード電極、ホール注入/移動
層、蛍光体層、電子注入層、カソード電極を順次積層し
てなる薄膜発光素子、またはアノード電極、ホール注入
/移動層、蛍光体層、カソード電極を順次積層してなる
薄膜発光素子の作製において、ホール注入/移動層の薄
膜の作製工程が、芳香族系化合物の薄膜を電解酸化する
工程を包含することを特徴とする。
従来の電解重合によるホール注入/移動層の作製が、
芳香族系化合物モノマーを溶液中に溶解して、これを電
解重合すると同時にアノード電極上に析出させてきたの
に対し、本発明では、あらかじめアノード電極上に平滑
な芳香族系化合物を含む薄膜を塗布法、真空蒸着法など
により作製する。次いで、例えば該芳香族系化合物を溶
解しない電解質溶液中に該薄膜を形成したアノード電極
を浸漬し、電解酸化により該芳香族系化合物の導電性薄
膜からなるホール注入/移動層を得るものである。な
お、この時に電解質溶液のかわりに固体電解質を用いて
も同様の効果が得られることは言うまでもない。本発明
の発明者らは、あらかじめ形成した芳香族系化合物を含
む薄膜を電解酸化して得られる導電性薄膜を用いること
により、大面積のアノード電極上にもピンホールがなく
平滑性が高いホール注入/移動層が形成され、高品質の
薄膜発光素子を効率的に、再現性良く、安価に製造でき
ることを見い出した。
本発明の方法では、ホール注入/移動層の原料となる
芳香族系化合物を含む緻密で平滑な薄膜が、アノード電
極上でそのまま高分子化される。このため、発光輝度の
上限を制限する絶縁破壊の原因となるピンホールや凹凸
の発生を防ぐことが可能となる。また、電解酸化反応は
アノード上の芳香族化合物が対象であるため、電解質溶
液の汚染がない。このため、電解溶液を頻繁に交換する
必要がなく、原料や溶媒の経済的使用ができる。ホール
注入/移動層の膜厚はあらかじめアノード電極上に形成
した芳香族系化合物薄膜の膜厚で決定されるため、素子
構成上のプロセス管理や素子性能の再現性がよい。大面
積のアノード電極上でも芳香族系化合物の均質な薄膜形
成が可能であり、電解酸化時に電極端子近傍とこれから
離れた部分での電圧降下の影響がなく、アノード電極全
面に同質かつ一定の膜厚のホール注入/移動層を形成で
きる。
上述のような本発明の薄膜発光素子の製造法方法にお
いて、芳香族系化合物として、電解酸化により重合して
高分子薄膜となる芳香族系モノマーを用いることができ
る。さらに芳香族系化合物として電解酸化によりイオン
対を形成する電子供与性化合物を使用することもでき
る。
また電解酸化により作製される高分子薄膜に脱ドープ
処理を施す工程を包含することもできる。
本発明の方法で作製されるホール注入/移動層は導電
性高分子薄膜で構成され、従来の電解重合法で作製され
るものと比較して以下の点で優位性がある。
従来の電解重合法で作製される導電性高分子薄膜は、
重合の成長点に溶液中のモノマーが拡散、反応して成長
するため繊維状の集合体となり、粗な膜しか得られな
い。これに対し、本発明の方法ではアノード電極上にあ
らかじめ作製された緻密なモノマー薄膜を用いるので、
緻密な導電性高分子薄膜が生成し、絶縁破壊電圧の高い
素子が得られる。
従来の電解重合法では電極上への導電性高分子の析出
が電極上の孤立した成長点から開始されるため、膜厚0.
1μm以下の薄膜を得ようとすると凹凸の大きい、また
は島状に付着した膜しか得られないが、本発明の方法で
は膜厚が小さい場合にも均質な導電性高分子薄膜が得ら
れる。
本発明の方法で使用できる芳香族系化合物の代表例を
挙げると以下となるが、本発明の方法はこれらのモノマ
ーに限定されるものではない。
下記一般式(I)で表されるチオフェン類。
(式中、R1,R2は水素原子、アルキル基、アラルキル
基、アルキルカルボニル基、アラルキルカルボニル基、
アルキルオキシ基、アラルキルオキシ基を示し、R1とR2
は同一でも異なってもよいが、同時に水素原子であって
はならない。) 下記一般式(II)で表されるチオフェンオリゴマー。
(式中、nは2〜20の整数を示し、R1,R2は水素原子、
アルキル基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、ア
ラルキルカルボニル基、アルキルオキシ基、アラルキル
オキシ基を示す。) 下記一般式(III)で表されるピロール類。
(式中、R1,R2,R3は水素原子、アルキル基、アラルキル
基、アルキルカルボニル基、アラルキルカルボニル基、
アルキルオキシ基、アラルキルオキシ基を示し、R1,R2,
R3は同一でも異なってもよいが、R1,R2,R3が同時に水素
原子であってはならない。) 下記一般式(IV)で表されるピロールオリゴマー。
(式中、nは2〜20の整数を示し、R1,R2,R3は水素原
子、アルキル基、アラルキル基、アルキルカルボニル
基、アラルキルカルボニル基、アルキルオキシ基、アラ
ルキルオキシ基を示す。) 下記一般式(V)で表されるカルバゾール類。
(式中、Rはアルキル基、アリール基、アラルキル基、
アルキルカルボニル基、アラルキルカルボニル基を示
す。) 下記一般式(VI)〜(VIII)で表される芳香族アミン
類。
(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6は、水素原子、アルキル
基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル
基、アラルキルカルボニル基、アルキルオキシ基、アラ
ルキルオキシ基を示しす。また、隣接する2つの置換基
が芳香族系の閉環構造を形成してもよい。) アミノ基のオルトー位またはパラー位で連結した、ア
ニリンユニット数3〜20のアニリンオリゴマー。
本発明は、上述の薄膜発光素子の製造方法において、
芳香族系化合物として電解酸化によりイオン対を形成す
る電子供与性芳香族系化合物を用いることも特徴とする
ものである。
以下に例示する電子供与性芳香族系化合物は、電解酸
化によりカチオンとなり、適当なアニオンと共に安定な
イオン対を形成して導電性を示すことが知られている。
これらの物質の単結晶育成は電解法を利用して行なわれ
ている。発明者は、あらかじめアノード電極上に作製し
たこれらの電子供与性芳香族系化合物の薄膜を電解酸化
することによっても、薄膜の形態を保持したまま単結晶
育成時と同様なイオン対を形成し、これがホール注入/
移動層として使用できることを見い出した。得られる薄
膜は、平滑性を持った緻密な膜であり前項の発明と同様
な効果が得られた。
本発明の方法で使用できる電子供与性芳香族系化合物
の代表例を挙げると以下となるが、本発明の方法はこれ
らの化合物に限定されるものではない。
カルコゲン原子を分子内に有するフルバレン類。
アントラセンなどの多核芳香族化合物類。
下記一般式(IX)〜(XV)で表される化合物。
(ただし、X1〜X4はカルコゲン原子を示す。R1〜R4は水
素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリー
ル基、アラルキル基のいずれか、または、隣接するもの
同志が不飽和基を含む環をなしていることを示す。な
お、X1〜X4およびR1〜R4は同一でも異なってもよい。) (ただし、X1,X2はカルコゲン原子を示す。R1〜R8は水
素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリー
ル基、アラルキル基のいずれか、または、隣接するもの
同志が不飽和基を含む環をなしていることを示す。な
お、X1,X2およびR1〜R8は同一でも異なってもよい。) (ただし、X1,X2はカルコゲン原子を示し、R1〜R8は水
素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリー
ル基、アラルキル基のいずれか、または、隣接するもの
同志が不飽和基を含む環をなしていることを示す。な
お、X1,X2およびR1〜R8は同一でも異なってもよい。) (ただし、X1,X2はカルコゲン原子を示し、R1〜R8は水
素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリー
ル基、アラルキル基のいずれか、または、隣接するもの
同志が不飽和基を含む環をなしていることを示す。な
お、X1,X2およびR1〜R8は同一でも異なってもよい。) (ただし、X1,X2はカルコゲン原子を示し、R1〜R8は水
素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリー
ル基、アラルキル基のいずれか、または、隣接するもの
同志が不飽和基を含む環をなしていることを示す。な
お、X1,X2およびR1〜R8は同一でも異なってもよい。) (ただし、X1〜X3はカルコゲン原子を示し、R1〜R6は水
素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリー
ル基、アラルキル基のいずれか、または、隣接するもの
同志が不飽和基を含む環をなしていることを示す。な
お,X1〜X3及びR1〜R6は同一でも異なってもよい。) (ただし、Xはカルコゲン原子を示し、R1 R9は水素、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール
基、アラルキル基のいずれか、または、隣接するもの同
志が不飽和基を含む環をなしていることを示す。なお、
R1〜R9は同一でも異なってもよい。) 以下、本発明の作製方法をより詳細に説明する。
本発明の薄膜発光素子を作製するに必要な芳香族系化
合物は常温で固体であり、電解酸化可能、かつ、高分子
化されたドープあるいは脱ドープ状態で効率的にホール
を輸送するもの、またはイオン対形成状態で効率的にホ
ールを輸送するものであれば特に限定されないが、好ま
しくは、硫黄原子の隣接位で連結したチオフェンオリゴ
マー、窒素原子の隣接位で連結したピロールオリゴマ
ー、3−位、または4−位が置換されたチオフェン類、
1−位、3−位、または4−位が置換されたピロール類
を用いることができる。中でも、ビチエニル(チオフェ
ン2量体)、ターチエニル(チオフェン3量体)、3−
メチルチオフェン3量体、3−オクタデシルチオフェ
ン、3−ドコシルチオフェン、3,4−ジドデシルチオフ
ェン、チオフェン−3−カルボン酸、オクタデシルエス
テル、3−オクタデシルピロール、3−ドコシルピロー
ル、1−オクタデシル−4−メチルピロール−3−カル
ボン酸、4−メチルピロール−3−カルボン酸、オクタ
デシルエステル等およびテトラチアフルバレン、テトラ
セレナフルバレン、テトラメチルテトラチアフルバレ
ン、テトラメチルテトラセレナフルバレン、ビスエチレ
ンジチオテトラチアフルバレン、ジベンゾテトラチアフ
ルバレンを用いた場合に、高い平滑性を有するホール注
入/移動層を得ることが可能であった。
電極基板上の芳香族系化合物を含む薄膜は、電解質溶
液中あるいは固体電解質を用いた電解酸化時に剥離しな
い程度の密着力でアノード電極基板上に付着していれば
よく、例えば、該芳香族系化合物をアノード電極基板上
に真空蒸着する、あるいは、芳香族系化合物を含む溶液
をアノード電極基板上にスピンコートしたのち乾燥す
る、あるいは、芳香族系化合物を含む溶液中にアノード
電極基板を浸漬したのち乾燥することにより作製するこ
とができる。発明者が調べた限りでは、膜の均質性、膜
厚のバラ付き、ピンホールの有無の点で、真空蒸着法が
最も良好な結果を与えたが、本発明において芳香族系化
合物を含む薄膜の作製方法は限定されるものではない。
アノード電極上に作製する芳香族系化合物薄膜は、単一
組成でも、複数の化合物の混合でもよい。また、複数の
化合物の積層したものでもよい。
アノード電極の基板としては、発光層からの光を透過
し、かつ、電解酸化時に電解質溶液に侵食されないもの
であれば特に限定されないが、例えば、ガラス、プラス
チックフィルムなどの透明絶縁性基板など通常用いられ
るもので充分である。アノード電極の材質も、充分な透
明性を有する導電性物質である酸化スズ、酸化インジウ
ム、酸化スズインジウム、金、ニッケルなどをコーティ
ングしたものを用いることができる。また、電極基板上
の導電性部分をパターン状に加工したものでもよく、こ
の時にはパターン状のホール注入/移動層が形成でき、
表示パターンのコントラストを高くすることができる。
上述の方法により作製された芳香族系化合物薄膜を有
するアノード電極を、例えば通電に必要な電解質を含む
電解反応溶液中に、対向電極と共に浸漬し、両電極間に
通電して電解酸化することにより、芳香族系導電性高分
子薄膜あるいは、芳香族系電子供与性化合物カチオンと
電解質アニオンのイオン対からなる導電性薄膜が形成さ
れる。この薄膜には電解溶液中の電解質アニオンが担持
されており、導電性高分子薄膜ではこの状態のままで、
あるいは、上記よりも低い電圧で電解還元を行なう脱ド
ープ処理により電解質アニオンを除去して、ホール注入
/移動層として用いることができる。また、その中間状
態でアニオン種のドープ、脱ドープ量の調整やアニオン
種の交換、混合などが可能であり、用いる蛍光体やアノ
ード電極の種類により適宜変えることも可能である。通
電時の電圧や電流は用いる芳香族化合物の物性値である
酸化電位やアノード電極の面積により異なるが、通常、
電圧に関してはアノード電極の電位が用いる芳香族系化
合物の酸化電位から、それよりも約20mV高い電位の範囲
になるよう両端の電圧を調整し、電流は数十μA〜数mA
の範囲になるよう調整することで良好な結果が得られ
る。通電に必要な電解質としては、例えば、アルカリ金
属やテトラアルキルアンモニウムのフルオロボレート、
パークロレート、サルフェート、スルフォネート、ハロ
ゲン化物、それらの誘導体などを用いうことができる。
このようにして得られたホール注入/移動層は、アノ
ード電極上に作製された芳香族系化合物を含む薄膜がそ
のまま高分子化され、あるいはイオン対となったもので
あり、ピンホールや凹凸のない良質の構造を有してい
る。また、電解酸化反応に必要な原料化合物としてはア
ノード電極表面に存在するものしか必要とせず、さら
に、電解反応中に溶液中に溶出する化合物の量を電解反
応溶液組成の選択により最小限度に抑えることが可能で
ある。したがって、アノード電極上に形成するホール注
入/移動層の量、膜厚等をあらかじめ設定しておくこと
が可能となる。
上述の方法により作製されたホー注入/移動層を有す
る電極基板上に、発光層材料の薄膜が形成される。発光
層材料は電界発光を示すものであれば特に制限されない
が、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレ
ン、クリセン、ペリレンなどの縮合芳香環化合物、各種
シアニン色素類、ピラゾリン誘導体、銅フタロシアニン
やニッケルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン
類、8−キノリノールの金属錯体などを用いることがで
きる。これらの材料の薄膜を形成するには、真空蒸着、
スパッタリング、溶液塗布、スクリーン印刷などの方法
を用いることができる。真空蒸着やスパッタリングを行
なう場合には、マスクの併用により、所望の形状の発光
層を形成することが可能である。すなわち、本発明にお
いて発光層の材料および作製方法は限定されるものでは
ない。
発光層の上に形成する背面電極は、電子を発光層に効
率良く注入するために、比較的小さい仕事関数を有す
る、アルミニウム、インジウム、銀、スズ、チタン、
鉛、マグネシウム、あるいはそれらの合金などを用いる
ことができる。それらの薄膜からなる陰極は、真空蒸
着、スパッタリング、必要な場合には多源蒸着などの方
法を用いて作製することができる。また、発光層の場合
と同様に、マスクの併用により陰極を所望の形状とする
ことも可能である。電子注入効率をさらに高めるため
に、陰極と発光層の間にペリレンテトラカルボン酸誘導
体などの電子注入層を、真空蒸着や溶液塗布などの方法
により設けることも可能である。すなわち、本発明は、
陰極材料や電子注入層、およびその作製方法を限定する
ものではない。
第1図に本発明による薄膜発光素子の代表的な構成の
概略図を示す。第1図において、符号1はアノード電極
基板、11は透明絶縁性基板、12は透明アノード電極、2
はホール注入/移動層、3は発光層、4は背面電極を意
味する。
第2図に本発明の方法の代表例を示す。すなわち、第
2図は本発明の方法の代表例の製作工程の一部の模式図
である。第2図において、符号5は芳香族系化合物の薄
膜、6は対向電極、7は電界質溶液を意味し、それ以外
の符号は第1図の場合と同じである。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する
が、本発明はそれらに限定されるものではない。
(実施例1) 透明絶縁性基板11上に透明アノード電極12を有する清
浄なネサガラス基板1上に真空蒸着法によりターチエニ
ル薄膜(膜厚:0.10μm)5を作製した。このターチエ
ニルを蒸着した基板1を正極とし、負極に網目状の白金
電極6を用いて、1.3Vの定電圧でターチエニルの電解酸
化を行なった。電解液7は、過塩素酸テトラエチルアン
モニウム0.3M水溶液とした。約1分の電圧印加により、
淡黄緑色であった電極基板上の薄膜は黒色に変化した。
次いで、−1.3の定電圧を約3分間印加して過塩素酸イ
オンを脱ドープすることにより、薄膜は淡白黄色に変化
した。このようにして作製したホール注入/移動層の上
に、真空蒸着法によりトリス(8−ヒドロキシノリナ
ト)−アルミニウム薄膜(膜厚:0.15μm)からなる発
光層を作製した。さらに、電子ビーム蒸着により、イン
ジウム薄膜(膜厚:0.10μm)からなる背面電極を設け
た。このようにして作製された薄膜発光素子において、
ネサガラス側が陽極となるように10Vの電圧を印加した
ところ、900cd/m2の輝度が得られた。
(実施例1〜18) 実施例1と同様に透明導電性基板に、カルバゾール
(実施例2)、N−フェニルピロール(実施例3)、チ
オフェン−3−カルボン酸オクタデシルエステル(実施
例4)、ピロール−3−カルボン酸オクタデシルエステ
ル(実施例5)、アズレン(実施例6)ジフェニルアミ
ン(実施例7)、N−フェニル−1,4−フェニレンジア
ミン(実施例8)、N−フェニル−1,2−フェニレンジ
アミン(実施例9)、15−ジアミノナフタレン(実施例
10)、1,8−ジアミノナフタレン(実施例11)、2,3−ジ
アミノナフタレン(実施例12)、N,N′−ジフェニルベ
ンジジン(実施例13)、2−アミノビフェニル(実施例
14)、イソチアナフテン(実施例15)、テトラチアフル
バレン(実施例16)、テトラメチルテトラセレナフルバ
レン(実施例17)、ジベンゾテトラチアフルバレン(実
施例18)の薄膜を溶液塗布法あるいは真空蒸着法により
作製した。これらの薄膜を有する基板を用いて、実施例
1と同様な手法で電解酸化を行ない、芳香族系高分子薄
膜、あるいは、イオン対からなる導電性薄膜を得た。電
解塩としては、パークロレート、フルオロボレート、フ
ルオロホスフェート等を使用した。このようにして作製
したホール注入層の上に、発光層材料の薄膜および背面
電極を作製した。作製したいずれの素子においても、高
輝度の発光が得られることが確認された。作製条件と結
果を第1表にまとめて示す。
(実施例19) ネサガラス上に作製するターチエニル薄膜の膜厚を15
0Å、トリス(8−ヒドロキシノリナト)−アルミニウ
ムからなる発光層の膜厚を200Å、インジウム−銀から
なる背面電極の膜厚を200Åとした以外は、すべて実施
例1と同じ方法で薄膜発光素子を作製した。この薄膜発
光素子において、ネサガラス側が陽極となるように4Vの
電圧を印加したところ、800cd/m2の輝度が得られ、発光
の低電圧化が可能であることが確認された。
(実施例20) 実施例1と同じ方法で薄膜発光素子を作製し、印加電
圧10Vにおける発光強度の経時変化を調べたところ、100
0時間の連続駆動を行なった後でも、初期の60%以上の
輝度が保たれていることが確認された。
(実施例21) 実施例1と同じ方法で薄膜発光素子を作製し、30Vの
電圧を印加したところ、約1500cd/m2の高輝度発光が観
測された。また、発光状態を1時間にわたって持続させ
ても素子の絶縁破壊は認められず、素子の高耐電圧性が
確認された。
(発明の効果) 以上説明したように、本発明にしたがって電極基板上
に芳香族系化合物の薄膜を作製し、電解酸化を行なうこ
とにより、ホール注入/移動層材料の使用を最小限に
し、電解溶媒の汚染を抑えて、良質のホール注入/移動
層を再現性良く効率的に作製することが可能であるとい
う格別顕著な効果が奏せられる。また、得られる薄膜発
光素子においては、ホール注入/移動層にピンホールが
なく高い平滑性を有しており、薄膜化が可能であること
から、薄膜発光素子駆動の低電圧化や長寿命化、耐電圧
性向上による高輝度化にも有効である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による薄膜発光素子の代表的な構成の概
略図、第2図は本発明の方法の代表例の作製工程の一部
の模式図である。 1……アノード電極基板、11……透明絶縁性基板、12…
…透明アノード電極、2……ホール注入/移動層、3…
…発光層、4……背面電極、5……芳香族系化合物薄
膜、6……対向電極、7……電解質溶液。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−295695(JP,A) 特開 平2−12795(JP,A) 特開 昭51−64885(JP,A) 特開 昭61−266566(JP,A) 特開 昭57−158622(JP,A) 特開 昭62−280724(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アノード電極、ホール注入/移動層、蛍光
    体層、電子注入層、カソード電極を順次積層してなる薄
    膜発光素子、またはアノード電極、ホール注入/移動
    層、蛍光体層、カソード電極を順次積層してなる薄膜発
    光素子の製造方法において、ホール注入/移動層の薄膜
    の作製工程が、芳香族系化合物の薄膜を電解酸化する工
    程を包含することを特徴とする薄膜発光素子の製造方
    法。
  2. 【請求項2】芳香族系化合物として、電解酸化によりイ
    オン対を形成する電子供与性化合物を用いることを特徴
    とする特許請求の範囲第1項記載の薄膜発光素子の製造
    方法。
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