JP2718261B2 - 磁性合金およびその製造方法 - Google Patents

磁性合金およびその製造方法

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、磁気特性に優れ、特にトランスの磁心材
料等に好適なFe基磁性合金であって、微細結晶相、また
は微細結晶相と非晶質相との混合組織からなる合金に関
する。
(従来の技術) 従来、トランスの磁心材料としては方向性ケイ素鋼板
が使用されてきた。方向性ケイ素鋼板は、著しく高い飽
和磁束密度を有するが、鉄損が大きく、また、製造が難
しいという難点がある。そのため、鉄損の小さいFe基非
晶質合金が注目され、一部では実用化されている。
Fe基非晶質合金は主成分がFe−Si−Bで、これにC、
Cr、等の元素が添加されたものである。このFe基非晶質
合金は低鉄損であるため省エネルギーの点から有利であ
り、製造法が簡単で大量生産が可能であること、保磁力
が小さいためトランス動作時の有効磁束密度が高いこと
等の利点がある。しかし、非晶質合金は、高温で作動す
ると構造緩和を起こし、鉄損が時間とともに増大し、ま
た透磁率も劣化する。即ち、非晶質合金は熱的な安定性
に劣っている。
特開昭64−79342号公報には、一般式で、 (Fe1−a100−x−y−z−αCuSi
M′α と表される組成を有し、結晶粒径1000Å以下の微細bcc
結晶粒からなる軟磁性材料が開示されている。これは低
鉄損材料であり、かつ結晶質であるため熱的安定性にも
優れている。しかし、その代表的な組成はFe−Cu−Nb−
Si−Bで表されものであり、比較的高価なBを必須成分
とするため、価格的に不利であるばかりでなく、磁束密
度も充分に大きいとは言えない。従って、低周波数域で
使用される柱上トランス等の磁心材料には不向きであ
る。
(発明が解決しようとする課題) 現在知られている磁心材料の中で特に優れた磁気特性
を有すると考えられる前記特開昭64−79342号公報のFe
−Cu−Nb−Si−B系の結晶質合金でもなお高価であり、
また、磁心材料としてはさらに高い飽和磁束密度を有す
る材料が要求されている。
本発明の目的は、従来の材料に匹敵する鉄損値を持
ち、飽和磁束密度が従来水準を超え、かつ、低価格のFe
基磁性合金を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明は「一般式、Fe100-x-y-zCuxPyCzで表され、平
均粒径が500Å以下の微細な結晶粒と非晶質相との混合
組織であるFe基磁性合金」を要旨とする。
但し、上記一般式のx,y,およびzは原子%で、 0.1≦x≦3、1≦y≦23、0.1≦z≦15、10≦y+z≦
25である。
上記の一般式で表される組成中のFeは、その一部を次
の原子で置換することができる。なお、下記の各元素の
原子%は、合金全体を100原子%とした場合の原子%で
ある。
原子%で、それぞれ3%以下のMo、Zr、Nb、W、Cr、
TiおよびVの中の1種以上の元素。但し、これら7元素
の中の2種以上を使用する場合は、その合計含有量を3
原子%以下とする。
原子%で、5%未満のSi、それぞれ5%以下のGe、G
a、およびRu、ならびに3%以下のAlの中の1種以上。
但し、2種以上の場合はその合計含有量は5原子%以下
とする。
さらに上記およびの両群から選択した原子でFeを
置換することもできる。このような本発明合金を一般式
で示すと下記のとおりである。
(1)Fe100-x-y-z-aCuxPyCzMba (2)Fe100-x-y-z-cCuxPyCz (3)Fe100-x-y-z-a-cCuxPyCzMda (4)Fe100-x-y-z-dCuxPyCzMdd (5)Fe100-x-y-z-a-dCuxPyCzMbaMdd (6)Fe100-x-y-z-d-cCuxPyCzMdd (7)Fe100-x-y-z-a-d-cCuxPyCzMbaMdd ただし、 Mbは、Mo、Zr、Nb、W、Cr、TiおよびVの1種または
2種以上、Mdは、Si、Ge、Ga、Ru、Alの1種または2種
以上を意味する。そして、添字のx,y,z,a,cおよびdは
全て原子%であり、 0.1≦x≦3、1≦y≦23、0.1≦z≦15、10≦y+z≦
25、aは3以下であり、dは、MdがSiの場合は5未満、
Ge、Ge、Ruの場合は5以下、Alの場合は3以下である。
上記の本発明合金は、一旦実質的に非晶質相からなる
合金を製造し、これを320〜500℃の温度域で熱処理して
結晶化させる方法で製造することができる。
(作用) 前述のFe−Cu−Nb−Si−B系の結晶質合金は、一旦非
晶質合金として製造したものを熱処理して結晶化させた
ものであり、その結晶は平均粒径で1000Å以下の微細粒
である。非晶質合金製造のための基本組成はFe−Si−B
であり、Cu、Nbの添加は非晶質から微細結晶粒を析出さ
せるのに必須である。磁気特性の向上にはこのような結
晶粒の微細化が必要であると考えられている。
本発明の合金は、基本的には非晶質合金であるFe−P
−CにCuを添加したFe−Cu−P−C系と言うべきもので
あるが、この系においてもCuが上述の系と同様に非晶質
から微細結晶粒を析出させるのに有効である。しかも微
細結晶粒を含むFe−Cu−P−C系合金はFe−Cu−Nb−Si
−B系の結晶質合金よりも磁束密度が高い。また、Bよ
りも安価なP、Cを原料とするため経済的にも有利であ
る。さらに、Fe−P−C系合金はFe−Si−B系合金より
も非晶質形成能が高く、磁性合金の製造が容易であり、
大量生産に適している。
以下、前記のように組成および組織を限定した理由を
説明する。なお、特にことわりのない限り%は原子%を
意味する。
Fe: 高い飽和磁束密度を確保するためFeを主体とする組成
とする。
Cu: 非晶質から磁気特性の優れた微細結晶粒を析出させる
のに寄与する。Cuが0.1%未満では微細結晶粒が十分に
晶出せず、3%を超えると最初の非晶質化が困難にな
る。従って、適正なCu量は0.1%以上、3%以下であ
る。即ち、前記一般式において0.1≦x≦3とするのが
よい。
PおよびC: これらの元素は、結晶化に先だって非晶質合金を製造
する際にその非晶質化に寄与する。これらの元素の合計
含有量が10%未満ではこの目的は達成されない。また、
合計含有量が25%を超えると飽和磁束密度の著しい低下
を招く。従って、前記一般式において、10≦y+z≦25
としなければならない。
なお、Pは1〜23%、Cは0.1〜15%の範囲とするの
がよい。即ち、前記一般式において、1≦y≦23、0.1
≦z≦15とし、この範囲で10≦y+z≦25となるように
調整する。
Mo、Zr、Nb、W、Cr、TiおよびV: これらの元素は、非晶質相から析出する結晶粒の微細
化に寄与する。この効果を得るためには、それぞれ3%
以下の範囲でFeと置換するのがよい。しかし、Mo、Cr、
Tiがそれぞれの上限値を超えると飽和磁束密度が低下
し、Zr、Nb、Wがそれぞれの上限値を超えると粗大な結
晶粒の金属間化合物が生成して微細結晶相への結晶化が
困難になる。またVが3%を超えると最初の非晶質化が
困難になる。
これらの元素は1種でも、また2種以上組み合わせて
でも使用できる。2種以上を用いる場合は、その合計含
有量を3%以下としなければならない。合計含有量が3
%を超えると飽和磁束密度が低下するからである。
Si、Ge、Al、GaおよびRu: これらは、結晶磁気異方性を減少させるのに寄与す
る。ただし、Siが5%以上になると飽和磁束密度の低下
を招く。また、Ge、Ga、Ruがそれぞれ5%を超えた場合
も飽和磁束密度が低下する。一方、Alが3%を超えると
非晶質化が困難になる。
これらの元素も二種以上複合添加してよいが、その場
合、合計含有量は5%以下でなければならない。5%を
超えると飽和磁束密度が低下する。
本発明合金は、平均粒径が500Å以下の微細結晶粒と
その周囲の非晶質相との混合組織から成る。微細結晶粒
とは、bcc相のFe固溶体を主体とするものであるが、Fe3
P、添加元素の酸化物、炭化物、各種の金属間化合物が
含まれる場合がある。これら金属間化合物等は磁気特性
を悪くする場合があるから、できるだけ存在しない方が
よいが、それらの粒径が小さく、かつ少量であれば存在
も許容される。
上記の本発明合金の組織は、非晶質相から適切な熱処
理によって微細結晶相を析出させることによって得られ
る。その析出の程度によって、結晶相と非晶質相の混合
比率が異なってくる。結晶相の比率が高い程、磁気特性
は向上するが、結晶相がおよそ30体積%以上であれば、
実用上十分な特性が得られる。なお、最終的に到達し得
る結晶相よりも低い温度において出現する結晶相、即
ち、非晶質相から結晶化が進行していく中間段階で得ら
れる結晶相を準安定bcc相と呼ぶことがある。
本発明の合金を構成する結晶相は、その平均粒径が50
0Å以下でなければならない。500Åを超えると、結晶粒
界等による磁壁のピニングのために磁気特性がわるくな
るからである。
これまでに述べた組成と組織をもつ本発明合金は、次
のようにして製造することができる。
まず、所定の組成の溶湯から単ロール法、双ロール法
等の液体急冷法によって非晶質の薄帯を製造する。ある
いは、スパッタリング法、蒸着法等の気相急冷法で非晶
質薄膜を得る。次にこれらの非晶質合金を、窒素、Arの
ような不活性ガス中もしくは真空中で熱処理して微細結
晶相を析出させる。熱処理の温度は、組成によって定ま
る結晶化開始温度(Tx)を測定しておき、その温度近傍
とする。Txは昇温速度によっても異なり、例えば20℃/
分の昇温速度の場合、Txは320〜420℃である。この温度
以上であれば結晶化が速やかに進行するが、低温域では
結晶化に時間がかかり、また、析出した結晶粒も大きく
なるから、高温域で短時間の処理を行う方が望ましい。
ただし、500℃を超える温度になると金属間化合物が析
出し保磁力が大きくなるから、熱処理温度の上限は500
℃までとするのがよい。望ましい温度範囲は370〜500℃
である。
熱処理のヒートパターンとしては、一定温度での保
持、所定温度までの加熱−冷却(一定温度での保持な
し)等、種々の形態をとりうる。一定温度で保持する場
合は、その保持温度までの昇温速度を100℃/分以上に
すると極めて微細な結晶粒が得られる。これより遅い冷
却速度でもCuなどの添加成分の効果によって、微細結晶
粒がえられ、この場合は、敢えて一定温度での保持は必
要としない。また、一定温度で保持する場合、その時間
が長すぎると結晶が粗大化するから、24時間以内にとど
めるべきである。
上記の熱処理は回転磁場中、または静止磁場中で行う
こともできる。回転磁場中熱処理は、熱処理中の磁区固
着を防ぐとともに、急冷により導入された誘導磁気異方
性を消去することにより軟磁性の向上に寄与する。一
方、動作時の磁化方向がある一方向に限定された特別な
用途に使用される場合には、むしろ、その特定方位の磁
気異方性を付加することが望ましく、これは静止磁場中
での熱処理で実現される。
〔実施例1〕 第1表に示す種々の非晶質薄帯を単ロール法により作
製し、示差熱分析(10℃/min)測定により結晶化開始温
度(Tx)を求めた。その後、これらの非晶質薄帯を真空
中で結晶化開始温度+10℃まで10℃/minの昇温速度で加
熱し、1分間保持して急冷した。
熱処理後の各薄帯の平均結晶粒径、結晶化度(結晶相
の割合、%)、鉄損、および飽和磁束密度を第1表に併
記する。平均結晶粒径は、透過型電子顕微鏡観察を行
い、50個以上の結晶粒を抽出して測定し平均して求め
た。結晶化度は、X線回折のピーク強度比から求めた。
鉄損および飽和磁束密度は試料をトロイダルに巻いて測
定した。
第1表の比較例は、従来材のFe−Cu−Nb−Si−B結晶
質材料である。本発明合金はこの従来材よりも高い飽和
磁束密度を示している。
〔実施例2〕 第2表に示す組成の非晶質薄帯を単ロール法により作
製し、実施例1と同様の方法で結晶化開始温度(Tx)を
求めた。その後、これらの非晶質薄帯を真空中で結晶化
開始温度+30℃まで100℃/minの昇温速度で加熱し、60
分間保持して急冷した。熱処理後の各薄帯の平均結晶粒
径、結晶化度、鉄損、および飽和磁束密度を実施例1と
同じ方法で測定した。その結果を第2表に示す。
第2表の比較例も、従来材のFe−Cu−Nb−Si−B結晶
質材料である。本発明合金はこれよりも高い飽和磁束密
度を示す。
第1図は、Fe81.5Cu0.5P16C2合金の熱処理後のX線回
折図形である。熱処理後の相は、非晶質相、bcc相およ
びFe3P相の共存相であることがわかる。
〔実施例3〕 単ロール法によって、組成が本発明で定める範囲にあ
るFe79Cu0.5Mo0.5Si2P16C2の幅10mm、厚さ30μmの非晶
質薄帯を作成した。示差熱分析により15℃/minの昇温速
度で結晶化温度を測定したところ、bcc相への結晶化開
始温度は、350℃、Fe3PおよびFe3Cの析出温度は538℃で
あった。そこで、この非晶質薄帯を種々の温度まで15℃
/minの昇温速度で加熱し、すぐ冷却して保磁力を調べ
た。その結果を第2図に示す。
薄帯は、bcc相へ結晶化することにより、低保磁力を
示す。一方、Fe3P、Fe3C等が析出すると、再び保磁力は
増加する。即ち、本発明合金はbcc相に結晶化すること
により優れた磁性を有するに到ることがわかる。
〔実施例4〕 Fe78Cu1P12C5Nb1Si3なる組成の非晶質薄帯を単ロール
法によって作製した。薄帯の幅は10mm、厚さは30μmと
した。この薄帯を種々の温度で30分間保持して熱処理し
た後、実施例1と同じ方法で鉄損、平均結晶粒径、析出
する結晶相、結晶化度および飽和磁束密度を測定した。
その結果を第3表に示す。300℃での熱処理では結晶化
が起こらず、550℃での熱処理では結晶化はほぼ100%で
あるが、結晶が粗大化して鉄損が著しく大きくなってい
る。本発明の製造条件である350〜450℃の範囲で熱処理
したものは、比較例として示した従来材のFe−Cu−Nb−
Si−B結晶質合金に較べて高い磁束密度を有している。
〔実施例5〕 Fe80Cu0.5P13C5Si1.5なる組成の非晶質薄帯を単ロー
ル法によって作製した。薄帯の幅は10mm、厚さは30μm
とした。この薄帯を450,400,350℃の各温度まで200℃/m
inの昇温速度で真空中で加熱し、それらの温度で時間を
変えた保持してた。このように熱処理した後、実施例1
と同じ方法で平均結晶粒径、鉄損および飽和磁束密度を
測定した。その結果を第4表から第6表に示す。なお、
第7表は、従来材のFe−Cu−Nb−Si−B結晶質合金の55
0℃×10分の熱処理材についての測定結果である。
第4〜6表から、熱処理の保持時間が長すぎる場合に
は結晶粒が粗大となり、鉄損が大きくなることがわか
る。また、第7表の従来合金と較べて本発明合金は飽和
磁束密度が高いことも明らかである。
〔実施例6〕 第8表に示す組成の非晶質薄帯を単ロール法により作
製し、下記(イ)および(ロ)の二種類の処理を施し
た。
(イ)第8表に示す熱処理温度まで真空中で200℃/min
の昇温速度で加熱し、10分間保持して急冷。
(ロ)第8表に示す熱処理温度まで窒素ガス中で20℃/m
inの昇温速度で加熱し直ちに急冷。
これらの熱処理後の各薄帯の平均結晶粒径、鉄損およ
び飽和磁束密度(測定方法は実施例1と同じ)を第8表
に掲げる。
第8表の比較例も、従来材のFe−Cu−Nb−Si−B結晶
質材料である。本発明合金はこれよりも高い飽和磁束密
度を示している。
(発明の効果) 実施例にも示したように、本発明の磁性合金は飽和磁
束密度が高く、かつ低保磁力である。この合金は結晶相
を含むから熱的安定性にも優れている。また、この合金
は高価な元素を必須成分としておらず、前述の製造方法
で比較的容易に量産することができるので経済性にも優
れている。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明合金の結晶化熱処理後のX線回折図形
である。 第2図は、本発明合金の熱処理温度と保磁力との関係を
示す図である。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式、Fe100-x-y-zCuxPyCzで表される組
    成を有し、平均粒径が500Å以下の微細な結晶粒と非晶
    質相との混合組織であることを特徴とする磁性合金。 但し、x,y,およびzは原子%で、 0.1≦x≦3、1≦y≦23、0.1≦z≦15、10≦y+z≦
    25である。
  2. 【請求項2】Feの一部が、原子%でそれぞれ全体の3%
    以下のMo、Zr、Nb、W、Cr、TiおよびVの1種以上(た
    だし、2種以上の場合は、合計で3%以下)で置換され
    た組成を有し、微細な結晶粒と非晶質相との混合組織で
    あることを特徴とする請求項(1)に記載の磁性合金。
  3. 【請求項3】Feの一部が、原子%で全体の5%未満のS
    i、それぞれ5%以下のGe、GaおよびRuならびに3%以
    下のAlの1種以上で置換されており、Si、Ge、Ga、Ruお
    よびAlの合計含有量が5原子%以下である組成を有し、
    微細な結晶粒と非晶質相との混合組織であることを特徴
    とする請求項(1)または(2)に記載の磁性合金。
  4. 【請求項4】実質的に非晶質相からなる合金を320〜500
    ℃の温度域で熱処理して微細結晶粒を析出させることを
    特徴とする請求項(1)から(3)までのいずれかに記
    載した磁性合金の製造方法。
  5. 【請求項5】100℃/分以上の昇温速度で320〜500℃の
    間の所定温度に加熱し、その温度で24時間以内保持する
    請求項(4)の磁性合金の製造方法。
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