JP2716886B2 - Ti―Al系金属間化合物の製造方法 - Google Patents

Ti―Al系金属間化合物の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】この発明は、Ti−Al系金属間
化合物の製造方法に関するものである。さらに詳しく
は、この発明は、通常の焼結技術で簡便かつ容易に緻密
なTi−Al系金属間化合物を製造することのできる新
しいTi−Al系金属間化合物の製造方法に関するもの
である。
【従来の技術とその課題】従来より、Ti−Al系金属
間化合物については、一般的に、溶製法により製造して
きているが、金属や合金などに比べて展延性が劣るため
に、複雑形状部品や薄板などの製造には多くの問題があ
ることが指摘されている。そこで、このようなTi−A
l金属間化合物の展延性についての欠点を改善し、その
加工性を向上すべく多くの研究がなされてきているが、
未だ充分な成果が得られていないのが実情である。一般
に、複雑形状部品や薄板などの製造には、焼結法が有利
であることが知られていることから、最近、焼結法によ
りこのTi−Al系金属間化合物を製造することが試み
られている。この場合の原料粉としては、たとえばチタ
ン粉とアルミニウム粉の混合粉、またはTiAl,Ti
3 Al等の金属間化合物粉が用いられている。しかしな
がら、これらの原料粉はいずれも難焼結性であるため、
複雑形状部品や薄板などを緻密な焼結材として容易に製
造することはほとんど不可能である。すなわち、混合粉
より金属間化合物TiAlを製造する場合には、焼結過
程でアルミニウム粉が溶融すると、自己発熱による強い
燃焼反応が起こり、多量のガス発生とともに焼結材が膨
張して多孔質となる。一旦多孔質となった金属間化合物
を通常の焼結技術により緻密にすることはきわめて困難
である。また、Ti3Alは燃焼反応を起こさないため
に膨張しないものの、アルミ粉溶融による膨張が避けら
れない。チタン粉自体は優れた焼結性を有し緻密になる
傾向を示すものの、この膨張により相殺され、TiAl
の場合と同様に緻密な焼結材を得ることは難しくなる。
さらに、2相金属間化合物TiAl/Ti3 Alにおい
ては、TiAl側では燃焼反応による膨張が生じ、かつ
Ti3 Al側ではアルミニウム粉溶融による膨張が生じ
るため、上記したようなTiAlなどの場合と同様に緻
密な焼結材を作ることが困難となる。一方、金属間化合
物粉を用いてTi−Al系金属間化合物を製造する場合
には、金属間化合物粉自体が難焼結性であるため、通常
の成形−焼結のみの工程により緻密で健全な焼結材を得
ることはきわめて困難である。これを改善し、健全な焼
結材とするためにはサブミクロンの微粉が望まれること
になるが、Ti−Al系の化合物粉は活性であり、微粒
化にともない酸素量が顕著に増加するとともに、このよ
うな微粉を直接大気に曝すと自己発熱により燃焼もしく
は爆発が生ずる危険性がある。また、この種の微粉は成
形性が劣ってもいるため、プレス成形する上で問題とな
る。以上のように、焼結法によるTi−Al系金属化合
物の製造には、原料粉の成形性や焼結性などに問題があ
り、通常の焼結技術によっては緻密な焼結材を作ること
が不可能であるために、HIP法、ホットプレス法、パ
ック鍛造法などの高温圧縮技術の応用が検討されてい
る。しかしながら、これらの方法では、工程が複雑とな
り、製品が高価になるのみならず、複雑形状部品や薄板
などの製品の量産が困難で、焼結法の特徴を充分に生か
すことができないという欠点がある。この発明は、以上
の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来法の欠
点を解消し、高温圧縮法を用いずに、通常の焼結技術に
より緻密な焼結材を簡便かつ容易に製造することのでき
る新しいTi−Al系金属化合物の製造方法を提供する
ことを目的としている。
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、金属間化合物TiAlまたはT
3 Al,あるいはこれらの2相金属間化合物TiAl
/Ti3 Alの製造に際し、チタン粉または水素化チタ
ン粉と、チタンを30〜70質量%含有するアルミニウ
ム母合金粉とを、各々、所定の金属間化合物組成となる
ように混合し、成形した後に焼結することを特徴とする
Ti−Al系金属間化合物の製造方法を提供する。この
発明の方法において、チタンを30〜70質量%含有す
るアルミニウム母合金粉を用いるのは、混合により緻密
な焼結材が得られることと、この組成のものは脆く粉末
を作りやすいなどの利点があるためである。チタンが3
0%の場合には、金属間化合物TiAl3 とアルミニウ
ムの2相組織となるが、これより少ないと延性に富むア
ルミニウムの増加により急激に粉末を作りにくくなり、
しかもこのような組成のものを粉末にしようとすると酸
素量が急増し、原料粉末として不適当なものとなる。ま
た、30%より少ないと、アルミニウムが原子比で80
%を超えるために、TiAlやTiAl/Ti3 Alの
焼結においては、強い燃焼反応が生じて密度が低下す
る。したがって、チタン量は30質量%以上とする。一
方、チタンが70%より多い組成では、延性に富むTi
3 Alの増加により粉末を作りにくくなる。しかもこの
場合には、混合するチタン粉または水素化チタン粉の量
が少なくなり、混合粉の成形性が低下してしまう。した
がって、アルミニウム母合金粉中のチタン量は70質量
%以下であることが望ましい。また、この発明の方法に
おいては、原料粉の一つとして水素化チタンを用いるこ
とができることも特徴の一つである。焼結材の密度を真
密度の95%以上とするには、使用するチタン粉の粒度
調整が必要となる場合が多い。このような粒度調整は、
チタン粉のミリング等によって行うこともできるが、チ
タン粉より脆い水素化チタンまたは水素化チタン粉のミ
リングの方が有利であり、チタン粉の粒度調整が容易と
なる。一方、水素化チタン粉を混合した原料混合粉につ
いては、脱水素処理が必要となる。この処理は成形前の
混合粉または成形後の成形体について行うことができ
る。より優れた成形性が要求される場合には、成形前の
混合粉について処理することが望ましい。またこの発明
の方法においては、原料粉末を混合する際に、必要に応
じてワックス、樹脂等の潤滑剤あるいは結合剤を添加・
混合することができる。この場合、焼結に先立ちこれら
を除去することが好ましい。また、機械的性質、耐酸化
性および耐食性を改善するために、アルミニウム母合金
粉にはその30質量%以内でたとえばマンガン、リン、
炭素、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウ
ム、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、希土類
元素を添加することも有効である。これらの、添加元素
の内、マンガン、リン、バナジウム、ニオブ、クロムお
よびモリブデンは金属間化合物の延性を向上させる作用
がある。また、炭素、ジルコニウム、バナジウム、ニオ
ブ、クロム、モリブデン、タングステン、ハフニウム、
イットリウムおよび希土類元素には、強度を向上させる
作用がある。リン、イットリウムおよび希土類元素は、
耐酸化性の向上に有効である。焼結は、真空または不活
性ガス雰囲気中で行うことができる。焼結温度は金属間
化合物によっても異なるが、たとえば1200〜1500℃程度
が緻密な焼結材を得るのに適した温度として例示され
る。さらにこの発明の方法においては、焼結した後の焼
結材を常温または高温で圧縮処理することを好ましい態
様として包含してもいる。この焼結後の圧縮処理により
焼結後にも残留する空隙が除去され、より緻密で強靭な
焼結材の製造が可能となる。たとえば複雑形状部品を製
造する場合には、その密度が真密度の95%以上のもの
については、キャンニングすることなくたとえばHI
P,擬HIP法などで圧縮処理することができ、薄板の
場合には圧延、鍛造などで行うことができる。
【実施例】以下、実施例を示し、この発明のTi−Al
系金属間化合物の製造方法についてさらに詳しく説明す
る。実施例1〜2 表1に示した試料No.1チタン粉41.2%に、表2に示した
試料No.1のアルミニウム母合金粉を58.8%添加したもの
(実施例1)と、表1に示した試料No.2の水素化チタン
粉42.8%に、表2に示した試料No.1のアルミニウム母合
金粉を58.8%添加したもの(実施例2)を、各々、ボー
ルミルで1時間混合し、チタンを63.3質量%含有するT
iAl組成の混合粉を調製した。この混合粉を3トン/
cm2 で成形し、実施例1では真空中で脱水素後、真空中
1370℃で1時間焼結した。焼結材の組織はいずれも金属
間化合物TiAlの単相であった。
【表1】
【表2】 焼結前後の密度物性は、各々、図1の値(1)(実施例
1)および値(1′)(実施例2)に示した通りであっ
た。後述する比較例1〜2との対比からも明らかなよう
に、この発明の方法により緻密なTiAl金属間化合物
を製造することが可能であることが確認された。焼結材
の密度物性は、図1に示したように、この発明の方法に
よる焼結密度は真密度の96%以上にも達するのに対
し、従来法では高々87%であった。比較例1〜2 表1の試料No.2の水素化チタン粉65.7%に表1の試料N
o.3のアルミニウム粉を36.7%添加し、実施例2とほぼ
同様な組成と粒度を有する混合粉を調製した後、実施例
2と同様に、順次、成形、脱水素および焼結を行った。
得られた焼結材の組織は実施例1および2と同様であっ
た(比較例1)。また、次の表3に示した試料No.1の実
施例1とほぼ同様な組成のTiAl金属間化合物粉を同
様にして成形、焼結した。この焼結材の組織も実施例1
および2と同様であった(比較例2)。
【表3】 これらの焼結材の焼結前後の密度物性は、各々、図1の
値(2)(比較例1)および値(3)(比較例2)の通
りであった。緻密なTiAl金属間化合物は得られず、
この図1からも明らかなようにこれらの焼結材の密度は
低かった。実施例3〜4 前記表1の試料No.2の水素化チタン粉75.4%に表2の試
料No.1のアルミニウム母合金粉を27.4%添加したもの
(実施例3)と、表1の試料No.2の水素化チタン粉55.2
%に表2の試料No.2のアルミニウム母合金粉を46.8%添
加したもの(実施例4)を、各々、ボールミルで1時間
混合し、チタンを82.9質量%含有するTi3 Al組成の
混合粉を調製した。この混合粉を3トン/cm2 で成形
し、真空中で脱水素後、真空中1370℃で1時間焼結し
た。焼結材の組織はいずれも金属間化合物Ti3 Alと
少量のTi相との混合組織であった。焼結前後の密度物
性は、各々、図2の値(1)と値(1′)に示した通り
であった。後述する比較例3〜4との対比からも明らか
なように、この発明の方法により緻密なTiAl金属間
化合物を製造することが可能であることが図2より確認
される。比較例3〜4 表1の試料No.2の水素化チタン粉86.1%に表1の試料N
o.3のアルミニウム粉を17.1%添加し、実施例3とほぼ
同様な組成と同様な粒度を有する混合粉を調製した後、
実施例3と同様に、順次、成形、脱水素および焼結を行
った。焼結材の組織は実施例3と同様であった(比較例
3)。一方、表3に示した試料No.2の実施例3とほぼ同
様な組成のTi3 Al金属間化合物粉を同様な手順で成
形、焼結した。この焼結材の組織も実施例3と同様であ
った(比較例4)。これらの焼結前後の密度物性は、各
々、図2の値(2)(比較例3)および値(3)(比較
例4)の通りであった。しかしながら、緻密なTi3
l金属間化合物は得られなかった。実施例5 表1の試料No.2の水素化チタン粉54.4%に表2の試料N
o.1のアルミニウム母合金粉47.6%を添加し、ボールミ
ルで1時間混合した後、チタンを70.3質量%含有するT
iAl/Ti3 Al組成の混合粉を調製した。この混合
粉を3トン/cm2成形し、真空中で脱水素後、真空中137
0℃で1時間焼結した。焼結材の組織はTiAlとTi
3 Alの混合組織であった。焼結前後密度の物性は図3
の値(1)に示した通りであった。後述する比較例5〜
6との対比からも明らかなように、この発明の方法によ
り緻密なTiAl金属間化合物を製造することが可能で
あることが図3より確認される。比較例5〜6 表1の試料No.2の水素化チタン粉73.0%に表1の試料N
o.3のアルミニウム粉29.7%添加し、実施例5とほぼ同
様な組成と粒度を有する混合粉を調製した後、実施例5
と同様に、順次、成形、脱水素および焼結を行った。焼
結材の組織は実施例5と同様であった(比較例5)。一
方、表3に示した試料No.3の実施例5とほぼ同様な組成
のTiAl/Ti3Al金属間化合物粉を同様な手順で
成形、焼結した。焼結材の組織は実施例5と同様であっ
た(比較例6)。これらの密度物性は、各々、図3の値
(2)(比較例5)および値(3)(比較例6)の通り
であった。緻密なTiAl/Ti3 Al金属間化合物は
得られなかった。実施例6 実施例1で焼結した図1の値(1)および値(1′)に
示される焼結材について、キャンニングすることなくア
ルゴン雰囲気中、1350℃,100MPa,1時間の条件で
熱間静水圧プレス(HIP)処理を行った。HIP処理
後の密度物性は、各々、図4の値(1)および値
(1′)に示した通りであった。後述する比較例7〜8
との対比からも明らかなように、焼結−圧縮材の密度物
性は、この発明の方法による金属間化合物の場合にはほ
ぼ100%になるのに対し、従来法では92%以下となっ
た。緻密な焼結材を製造するのには、この発明の方法が
格段に優れていることが確認される。比較例7〜8 実施例1で焼結した図1の値(2)および値(3)に示
される焼結材について、実施例6と同様のHIP処理を
行った。HIP処理後の密度物性は、各々、図4の値
(2)(比較例7)および値(3)(比較例8)に示し
た通りであった。これらの密度は、この発明の方法によ
り製造された金属間化合物より著しく低かった。 もち
ろんこの発明は、以上の例によって限定されるものでは
ない。組成比や、潤滑剤、結合剤および添加元素の種類
や添加量等の細部については様々な態様が可能であるこ
とはいうまでもない。
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って、通常の焼結技術により密度が真密度の95%以上
の焼結材を簡便かつ容易に製造することができる。高性
能な複雑形状部品や薄板などの製品の量産も可能とな
る。また、たとえばチタンを35〜40質量%有するア
ルミ母合金粉を原料粉として用いた場合には、1340℃よ
りも高温で液相焼結することができ、短時間焼結での緻
密な焼結材の製造が可能となる。さらには、チタン粉ま
たは水素化チタン粉の混合により、混合粉の成形性など
が改善される。水素化チタン粉はチタン粉に比べて安価
であるため、水素化チタン粉の使用により原料粉を安価
とすることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属間化合物TiAlについての焼結前後の密
度をこの発明の方法と従来法とで比較した密度表示図で
ある。
【図2】金属間化合物Ti3 Alについての焼結前後の
密度をこの発明の方法と従来法とで比較した密度表示図
である。
【図3】2相間化合物TiAl/Ti3 Alについての
焼結前後の密度をこの発明の方法と従来法とで比較した
密度表示図である。
【図4】金属間化合物TiAlについて、熱間静水圧プ
レス(HIP)処理前後の密度をこの発明の方法と従来
法とで比較した密度表示図である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属間化合物TiAlまたはTi3
    l,あるいはこれらの2相金属間化合物TiAl/Ti
    3 Alの製造に際し、チタン粉または水素化チタン粉
    と、チタンを30〜70質量%含有するアルミニウム母
    合金粉とを、各々、所定の金属間化合物組成となるよう
    に混合し、成形した後に焼結することを特徴とするTi
    −Al系金属間化合物の製造方法。
  2. 【請求項2】 成形前または成形後に必要に応じて脱水
    素処理する請求項1の製造方法。
  3. 【請求項3】 焼結後に焼結材を常温または高温で圧縮
    する請求項1または2の製造方法。
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