JP2713244B2 - 面発光素子の製造方法 - Google Patents

面発光素子の製造方法

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JP2713244B2 JP17165995A JP17165995A JP2713244B2 JP 2713244 B2 JP2713244 B2 JP 2713244B2 JP 17165995 A JP17165995 A JP 17165995A JP 17165995 A JP17165995 A JP 17165995A JP 2713244 B2 JP2713244 B2 JP 2713244B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光情報処理や光コンピュ
ーティング等の分野において光インターコネクションを
実現するために用いられる面発光素子に関し、特に温度
調節器を用いることなく要求される温度特性を具備し、
周囲の環境温度に左右されることのない耐環境性を有す
る面発光素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に光のもつ並列性及び空間伝播性を
情報処理に応用するためには、面方向に素子を二次元的
に集積することが望ましい。この面発光素子について
は、1988年発行の「ジャーナル・オブ・カンタム・
エレクトロニクス」(Journal ofQuantum Electronic
s),伊賀他,第24巻,1845〜1855頁に記載
がある。このような面発光素子を高密度集積した場合に
は、複数の面発光素子が同時に駆動される際の発熱が問
題となる。特に、面発光素子は多層反射膜を有している
ため、端面発光素子に比べて素子抵抗が高くなり易く、
発熱が顕著なものとなり易い。この発熱を低減するため
に、素子の熱特性の向上が必要となり、それには、熱特
性の向上を進めることで、高温動作時にも一定の光出力
を一定の消費電力で供給できる、温度調節器等の高価な
制御装置の不要な低コストなシステム設計を可能とする
温度フリーの面発光素子を形成することが望まれる。
【0003】面発光素子の熱特性を向上させる方法とし
て、前記した素子抵抗を低減させる方法がある。素子抵
抗を低減する努力は交互に異なる材料を積層して構成さ
れる多層反射膜の材料どうしの界面にグレーデッド部を
導入する等して行われてきた。このような方法として
は、例えば、アプライド・フィジックス・レターズ(Ap
plied Physics Letters ),第62巻,1585〜15
87頁,第60巻,466〜468頁記載の論文、エレ
クトロニクス・レターズ(Electronics Letters),第
29巻,1771〜1772頁記載の論文に記載のもの
がある。
【0004】あるいは、このような素子抵抗の低減方法
の他に、面発光素子特有の性質、つまり共振器によって
決まる共振ピーク波長と活性層によって決まる利得ピー
ク波長とが温度上昇に対して各々独立して長波長側にシ
フトしていくという特性を利用した利得オフセット方法
がある。前者の共振ピークは0.07nm/℃、利得ピ
ークは0.3nm/℃の割合で長波長側にシフトしてい
く。これらが一致するときが素子特性の最も最適化され
る条件になるのであるが、室温でこれらを一致させてし
まうと、高温時にお互いが離れてしまい、素子特性が劣
化する。そこで、利得ピークを室温では共振ピークの短
波長側にオフセット状態に設定しておき、温度上昇時に
お互いが一致するようにしておけば、素子特性を劣化さ
せることなく広い温度範囲にわたって一定の素子特性を
実現できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな利得オフセット方法にもいくつかの制約がある。先
ず、最適なオフセット量を決めても結晶成長の性格上、
膜厚制御、ソースのフラックス制御には限界がある。例
えば、活性層にInGaAsを用いた場合、量子井戸の
厚さ、あるいはソースのフラックスのふらつき等により
利得ピークが設定値よりずれてしまう場合がでてくる。
また、共振器波長も設定値からずれる可能性もあり、オ
フセット量を設定通りにかけることが困難であった。
【0006】
【発明の目的】本発明の目的は、利得オフセットの方法
を採用した場合に、そのオフセット量を常に最適な量に
設定できるための面発光素子の製造方法を提供すること
にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の製造方法は、活
性層の結晶成長時に通常の成長基板温度よりも低温の基
板温度で成長を行う工程と、成長後に素子における共振
ピーク波長と利得ピーク波長の各情報を測定する工程
と、得られた情報から前記利得ピーク波長と前記共振ピ
ーク波長の間のオフセット量が所望の温度特性となるよ
うに素子を所定の温度で熱処理する工程とを含んでい
る。
【0008】本発明の製造方法の一例としては、GaA
s基板上に通常の成長基板温度でバッファ層、多層膜反
射鏡、クラッド層を形成する工程と、前記成長基板温度
よりも低温の基板温度で活性層、クラッド層の一部を形
成する工程と、これまで形成された素子に対して光を投
射しかつその反射率を測定することで当該素子における
共振ピーク波長と利得ピーク波長情報を測定する
程と、得られた情報から前記利得ピーク波長前記共振
ピーク波長の間のオフセット量が所定の温度特性となる
ように素子を所定の温度で熱処理する工程と、前記クラ
ッド層の残りの層、多層膜反射鏡を積層形成する工程を
含んでいる。
【0009】
【作用】本発明によれば、活性層を低温で成長するため
に、この成長時に不可避な膜厚分布やフラックスふらつ
き等による利得オフセット量の設計値からのずれを回避
することができる。そして、その後に熱処理により利得
オフセット量を設定しているため、常に最適なオフセッ
ト量に設定でき、面発光素子の温度特性が常に設計通り
の優れた特性となり、熱特性が安定で、かつ耐環境性を
改善することが可能となる。
【0010】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明す
る。図1は本発明の一実施例の面発光素子の断面図であ
る。この面発光素子は発振波長0.98μmの場合の例
を示しており、n型GaAs基板1上に厚さ0.4μm
のn型GaAsからなるバッファ層2を有し、その上に
n型半導体多層膜反射鏡3を有する。このn型半導体多
層膜反射鏡3は、n型AlAs層とn型GaAs層をそ
れぞれ厚さ81.2nm,68.1nmで交互に18.
5周期で積層形成したものである。また、この上に厚さ
0.29μmのAl0.25Ga0.75Asからなるn型クラ
ッド層4を有し、その上に活性層5を有する。この活性
層5は、厚さ10nmのIn0.15Ga0.85As量子井戸
を厚さ10nmのAl0.25Ga0.75Asバリア層で挟ん
で3層に形成したものである。
【0011】さらに、その上に厚さ0.29μmのAl
0.25Ga0.75Asからなるp型クラッド層6を有し、そ
の上にメサ状にp型半導体多層膜反射鏡7を有する。こ
のp型半導体多層膜反射鏡7は、p型AlAs層とp型
GaAs層をそれぞれ厚さ81.2nm,68.1nm
で交互に15周期で積層形成したものである。そして、
その上にGaAs位相補正層8が形成されており、後工
程でその上に形成される電極としての金膜との位相補正
を行っている。そして、n型前記クラッド層4、活性層
5、p型クラッド層6にわたってイオン注入により高抵
抗領域9が形成されている。この高抵抗領域9として
は、100KeV、ドーズ量5×1014cm-2でプロト
ンをイオン注入して形成してある。
【0012】このような構成の面発光素子では、例え
ば、トップのメササイズが6μm角で、50℃で利得ピ
ークと共振ピークとが一致し、室温から80℃にわたっ
て略一定の光出力を一定の消費電力で得ようとした場
合、活性層の利得ピーク波長を室温で960nm、共振
ピークを980nmに設定すると、略オフセット量は最
適となる。この温度範囲は実際のシステムで用いる際の
環境温度を考えても極めて妥当な範囲である。
【0013】図2は本発明の面発光素子の製造方法を工
程順に示す図である。先ず、図2(a)のように、n型
GaAs基板1上に、n型バッファ層2、n型多層膜反
射鏡3、n型クラッド層4を順次成長させる。このとき
の成長基板温度は620℃であり、各層の成長方法はこ
れまでの面発光素子で行われている方法がそのまま採用
できる。
【0014】次いで、図2(b)のように、前記n型ク
ラッド層4の上に活性層5を成長する。この活性層5の
成長の際には、成長基板温度をそれまでの620℃から
低温の300℃に低下させる。そして、V/III 比はA
sリッチの状態で15程度に設定する。この基板温度に
て量子井戸活性層を成長すると、通常の基板温度550
℃で成長したときに形成される結晶の格子定数に比べて
広がる。これに伴い、歪み量が変化し活性層5の利得ピ
ーク波長がずれることになる。こうした歪み量子井戸は
バリア層であるAlGaAs層によってその歪みが緩和
され、複数の量子井戸を構成することが可能となってい
る。さらに、前記活性層5の成長後、300℃の基板温
度を保った状態でp型クラッド層6−1を10nm程度
積層し、その上にp型GaAs層6−2を酸化防止のパ
ッシベーション膜として2nm程度の厚さに積層する。
【0015】このあと、図2(c)のように、基板温度
を室温まで下げ、前記工程まで形成されている素子に光
を投射してその波長に依存する反射率を測定する。得ら
れた反射率の特性は、例えば図3に示す特性となる。そ
して、この特性に基づき、InGaAsの励起子ピーク
及びn側共振器によりストップバンドから、計算シミュ
レーションとの整合により利得ピーク波長及び共振記共
鳴波長を得る。
【0016】この情報をもとに最適なオフセット量、例
えばここでは20nmとなるように利得ピーク波長をウ
ェハの熱処理によりシフトさせる。ここで、低温成長3
00℃により形成されたInGaAs量子井戸を熱処理
した際の熱処理温度と利得ピーク波長との関係は図4に
示す通りである。この関係にしたがってウェハを熱思慮
し、温度を制御することで所望の利得ピーク波長にシフ
トさせる。
【0017】この実施例では、例えば現在900nmに
利得ピークがあり、共振器共鳴波長が980nmである
と判ったとする。これから、オフセット量20nmを得
るには、利得ピークを960nmの初期設定通りにすれ
ばよいことが判るので、550℃で20分間熱処理すれ
ばよい。
【0018】この熱処理後は、図2(d)のように、基
板温度を550℃に保持したまま、残りのp型クラッド
層6を成長し、さらにその上にp型半導体多層膜反射鏡
7、位相補正層8を形成し、メサ形成した上で高抵抗領
域9を形成することにより、所望の温度特性を有する図
1に示した構造の面発光素子を得ることができる。
【0019】なお、熱処理温度がAlAsのようにAl
成分を多く含み、基板温度が500℃より低くなると結
晶の品質に問題が生じる場合は、p側の多層膜反射鏡7
をSiとSiO2 等の誘電体で置き換えればよい。
【0020】したがって、この製造方法においては、活
性層5を低温で成長し、その後に熱処理して最適なオフ
セット量を設定するため、成長時に不可避な膜厚分布や
フラックスふらつき等による利得オフセット量の設計値
からのずれを回避することができる。このため、面発光
素子の温度特性が常に設計通りの優れた特性となり、熱
特性が安定で、かつ耐環境性を改善することが可能とな
る。
【0021】ここで、前記実施例では、発振波長を98
0nmとしたが、材料系を変えれば発振波長は通信用に
用いられる1500nmや1300nm帯にすることが
できる。この場合にも、活性層は主にInGaAs等の
歪み系材料が用いられるので、本発明は有効となる。ま
た、前記実施例で説明した材料及び面発光素子の構造
は、これに限られるものではない。たたじ、活性層の材
料が変われば、図4に示した利得ピーク波長と熱処理温
度との関係も変わるので、それに応じて予備実験は必要
となる。また、こうした関係は、始めに成長した際の基
板温度にも影響を受けるので、基板温度を変更した場合
にも予備実験を行う必要はでてくる。低温成長の基板温
度には、ある程度の自由度があり、そうした情報に関し
ては、例えば、ジャーナル・オブ・エレクトロニック・
マテリアルズ(Journal of Electronic Matereals )第
22巻にまとめられている。
【0022】ここでは、温度特性を改善することを目的
として、利得オフセット量を考慮したが、常に室温付近
でしか用いないような場合には、連続発振することに伴
う温度上昇のみを考慮すればよく、オフセット量は5n
m程度で十分である。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、活性層を
低温で成長するために、その成長時に不可避な膜厚分布
やフラックスふらつき等による利得オフセット量の設計
値からのずれを回避することができ、またその後に熱処
理により利得オフセット量を設定しているため、常に最
適なオフセット量に設定できる。これにより、製造され
る面発光素子の温度特性が常に設計通りの優れた特性と
なり、所望の面発光素子を常に安定して得ることが可能
となる。こうした面発光素子は光集積回路として応用す
る上で、環境に左右されない光源となりうるものである
と同時に、温度制御装置等も不要となるので、低コスト
な光インターコネクションを実現する上でも極めて有効
なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法で製造された面発光素子の一
例の断面図である。
【図2】本発明の製造方法を工程順に示す断面図であ
る。
【図3】製造途中における面発光素子の反射率特性を示
す図である。
【図4】活性層における熱処理温度と利得ピーク波長の
シフト量との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 n型GaAs基板 2 n型バッファ層 3 n型多層膜反射鏡 4 n型クラッド層 5 活性層 6 p型クラッド層 7 p型多層膜反射鏡 8 位相補正層

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二つの多層膜反射鏡で構成された共振器
    と、前記各多層膜反射鏡で挟まれた活性層とを含む面発
    光素子の製造方法において、前記活性層の結晶成長時に
    通常の成長基板温度よりも低温の基板温度で成長を行う
    工程と、この成長後に前記共振器によって決まる共振ピ
    ーク波長と前記活性層によって決まる利得ピーク波長の
    情報を測定する工程と、得られた情報から前記利得ピ
    ーク波長と前記共振ピーク波長の間のオフセット量が所
    望の温度特性となるように素子を所定の温度で熱処理す
    る工程とを含むことを特徴とする面発光素子の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 GaAs基板上に通常の成長基板温度で
    バッファ層、多層膜反射鏡、クラッド層を形成する工程
    と、前記成長基板温度よりも低温の基板温度で活性層、
    クラッド層の一部を形成する工程と、これまで形成され
    た素子に対して光を投射しかつその反射率を測定するこ
    とで前記素子における共振ピーク波長と利得ピーク波長
    の各情報を測定する工程と、得られた情報から前記利得
    ピーク波長と前記共振ピーク波長の間のオフセット量が
    所定の温度特性となるように素子を所定の温度で熱処理
    する工程と、前記クラッド層の残りの層、多層膜反射鏡
    を積層形成する工程を含むことを特徴とする面発光素子
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 GaAs層からなるバッファ層と、Al
    As層とGaAs層を交互に積層した多層膜反射鏡と、
    AlGaAs層からなるクラッド層とを620℃で積層
    成長した後、InGaAs量子井戸をAlGaAsバリ
    ア層で挟んだ3層構造の活性層と、AlGaAs層のク
    ラッド層の一部を300℃で成長し、これよりも高い温
    度で熱処理してオフセット量を設定し、続いてこの温度
    でAlGaAs層のクラッド層の残りの層と、AlAs
    層とGaAs層を交互に積層した多層膜反射鏡とを成長
    する請求項2の面発光素子の製造方法。
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