JP2004319643A - 面発光レーザ素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1300nm帯の面発光レーザ素子において、ディチューニング量を14〜20nmの範囲内に設定するか、またはマッチング温度を60〜75℃の範囲内に設定する。また、1550nm帯の面発光レーザ素子において、ディチューニング量を16〜25nmの範囲内に設定するか、またはマッチング温度を60〜85℃の範囲内に設定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長1260nm以上の長波長帯の面発光レーザ素子に関し、特に温度特性に優れた面発光レーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser 以下、単に面発光レーザ素子と称する。)は、その名の示す通り、光の共振する方向が基板面に対して垂直であり、光インターコネクションをはじめ、通信用光源として、また、その他の様々なアプリケーション用デバイスとして注目されている。従来の端面発光型レーザ素子と比較して、素子の2次元配列が容易に形成できること、ミラーを設けるために劈開する必要がないのでウエハレベルでテストできること、活性層の体積が小さく極低閾値で発振できるために消費電力が小さいこと等がその理由である。
【0003】
また、面発光レーザ素子は、半導体基板と、一対の半導体多層膜反射鏡と、その一対の半導体多層膜反射鏡の間に位置する活性層とを基本的な構成要素とするが、近年では、半導体基板をGaAsで形成し、半導体多層膜反射鏡をGaAs/AlGaAsのペアで形成して、さらに活性層をGaxIn1 ‐ xNyAs1 ‐ y量子井戸構造または量子ドット構造とすることで、1200nm〜1300nm帯の長波長発振が実現されている。特にこの長波長発振を可能にした面発光レーザ素子は、データ通信分野で使用する光通信装置の光源に有用であるとして注目されている。
【0004】
このような面発光レーザ素子は、端面発光型の分布帰還型(DFB:Distributed feedback )レーザ素子や分布反射型(DBR:Distributed Bragg Reflector)レーザ素子と同様に、電流対光出力特性(I−L特性)が共振器長(前記DFBレーザおよび前記DBRレーザにおいてはブラッグ波長)で定まる発振波長λcと活性層材料やその組成によって定まる利得ピーク波長λgとの差分に応じて決まる。ここで、発振波長λcと利得ピーク波長λgはそれぞれ異なる温度依存性を有しているため、上記I−L特性は、環境温度や高出力時の発熱状態に応じて変化する。
【0005】
図4は、発振波長と利得ピーク波長との関係を説明するための説明図である。図4において、G1は、温度25℃における利得カーブであり、その利得ピーク波長は、λ1である。また、G2は、温度85℃における利得カーブであり、その利得ピーク波長はλ2である。また、C1は、温度25℃における発振波長λ3を示し、C2は、温度85℃における発振波長λ2を示している。
【0006】
図4によれば、温度25℃での面発光レーザ素子の発振波長λ3は、利得カーブG1の利得ピーク波長λ1よりも長いため、利得ピークであるA1よりも小さい利得A3でレーザ光発振が起こることになる。これに対して、温度45℃では、面発光レーザ素子の発振波長となる発振波長と利得カーブG2の利得ピーク波長とが波長λ2で一致しているため、利得カーブG2の利得ピークA2のレーザ光発振が起こる。このように、レーザ発振が起こる利得が温度に応じて変化することは、しきい値電流や量子効率等もまた温度依存性を有することを意味する。換言すれば、発振波長λcと利得ピーク波長λgを一致させる温度をどの温度に設定するかによって、レーザ発振特性の温度依存の度合いを決定することができる。
【0007】
例えば、850nm帯の面発光レーザ素子を例にとって説明する。ここで、25℃における利得ピーク波長λgが842.25nmに設定され、発振波長λcが847nmに設定されて、さらにその場合の利得ピーク波長λgの温度依存性が0.3nm/℃であり、発振波長λcの温度依存性が0.06nm/℃で表わされるとする。これら条件によると、この面発光レーザ素子は、45℃において利得ピーク波長λgと発振波長λcが848.20nmでマッチングすることになる。
【0008】
また、図4に示す利得カーブG1とG2を比較してもわかるように、温度に応じて決まる各利得カーブの利得の値は、温度上昇とともに全体的に小さくなる。よって、図4に示した例とは逆に、低温側でマッチングさせるように利得ピーク波長λgと発振波長λcを設定した場合、高温側では、利得カーブ自体の利得が低下するだけでなく、利得ピーク波長λgと発振波長λcとのミスマッチングによる利得の低下も加わることになる。すなわち、この場合、しきい値電流の増大など、高温時の発振特性が悪くなる。
【0009】
そこで、通常は、図4に示したように、低温側で意図的にマッチングをずらすことにより発振特性を悪くさせ、温度上昇とともにマッチングが合うようにすることで、高温時の利得カーブ自体の利得の低下を補っている。これにより、面発光レーザ素子の発振特性の温度依存性を、見かけ上小さくすることができる。これは、利得ピーク波長λgが温度に対して約0.3〜0.5nm/℃でシフトするのに対し、発振波長λcは温度に対して約0.06〜0.1nm/℃でシフトする現象を利用したものである。
【0010】
このような波長のマッチングを考慮した設計においては、上記した低温時での利得ピーク波長λgと発振波長λcの差分をどのような値に設定するかが重要となる。この差分は、ディチューニング量と呼ばれており、その値を適宜設定することで、所望の温度範囲(例えば0〜85℃とか、−40〜85℃)における発振特性の温度依存性を小さくすることができる。なお、上記した低温時の低温として、例えば、平均的な室温である25℃が採用される。また、利得ピーク波長の測定には、同じ活性層構造を有するファブリペロー型レーザの発振波長が用いられる。
【0011】
図5は、850nm帯の面発光レーザ素子におけるしきい値電流の温度依存性を示すグラフ図である。なお、図5に示すグラフ図を得た条件として、室温(25℃付近)での利得ピーク波長λgを842.2nmに設定し、発振波長λcを847nmに設定し、ディチューニング量を4.8nmに設定している。また、この場合の利得ピーク波長λgの温度依存性は0.3nm/℃であり、発振波長λcの温度依存性は0.07nm/℃である。図5では、複数の任意のサンプル(面発光レーザ素子)についてのグラフが異なる線種で示されているが、いずれのサンプルにおいても、0〜85℃の温度範囲での発振特性の温度依存性は比較的小さい。
【0012】
このように、850nm帯や980nm帯の面発光レーザ素子では、適切なディチューニング量がほぼ確立されており、ほぼ意図したとおりの発振特性が得られている(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
【特許文献1】
米国5274655号特許公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上記した850nm帯で得られる利得ピーク波長λg、発振波長λc、利得ピーク波長λgの温度依存性、発振波長λcの温度依存性およびディチューニング量の相互の関係から、長波長帯である1300nm帯と1550nm帯のディチューニング量を見積もることを考える。表1は、上記した850nm帯での利得ピーク波長λg、発振波長λc、利得ピーク波長λgの温度依存性、発振波長λcの温度依存性およびディチューニング量と、1300nm帯および1550nm帯での上記各値の見積もりを示す表である。
【0015】
【表1】
【0016】
なお、この表1では、45℃で発振波長λcと利得ピーク波長λgがマッチングするようにディチューニング量を設定している。また、表1に示すように、ディチューニング量が波長帯によって異なるのは、発振波長λcの温度係数が波長帯によって変化が小さいのに対し、利得ピーク波長λgの温度係数は波長帯によって大きく変化するためである。
【0017】
ところが、本発明者らが、上記表1に示す各値に従って、1300nm帯および1550nm帯の面発光レーザ素子を試作して、それらのしきい値電流の温度依存性を測定したところ、図5に示したような広い温度範囲に亘った良好な発振特性を得ることができなかった。この理由として、1200nm、特に1260nm以上の長波長帯では、オージェ再結合や価電子帯間吸収により利得自体の温度依存性(劣化)が顕著となり、特にその劣化が高温側で大きくなるためであると考えられる。すなわち、1260nm以上の長波長帯の面発光レーザ素子では、利得自体の温度依存性が850nm帯の面発光レーザ素子と異なるため、最適なディチューニング量を新たに見出す必要がある。
【0018】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、温度特性に優れた最適なディチューニング量で設計された、波長1260nm以上の長波長帯の面発光レーザ素子を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる面発光レーザ素子は、下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡とで共振器を構成するとともに、該下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡の間に活性層が配置された1300nm帯の面発光レーザ素子において、前記共振器の長さで定まる発振波長と前記活性層の組成で定まる利得ピーク波長との差分が第1の温度で14〜20nmであり、前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記発振波長と前記利得ピーク波長が一致することを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、1300nm帯の面発光レーザ素子において、いわゆるディチューニング量を14〜20nmの範囲内に設定することにより、0〜85℃の実用的な温度範囲で、変化の小さいしきい値電流などの良好な発振特性を得ることができる。
【0021】
また、請求項2にかかる面発光レーザ素子は、下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡とで共振器を構成するとともに、該下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡の間に活性層が配置された1300nm帯の面発光レーザ素子において、前記共振器の長さで定まる発振波長と前記活性層の組成で定まる利得ピーク波長との差分が所定温度で所定量あり、前記所定温度よりも高い60〜75℃の範囲内で前記発振波長と前記利得ピーク波長が一致することを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、1300nm帯の面発光レーザ素子において、いわゆるマッチング温度を60〜75℃の範囲内に設定することにより、0〜85℃の実用的な温度範囲で、変化の小さいしきい値電流などの良好な発振特性を得ることができる。
【0023】
また、請求項3にかかる面発光レーザ素子は、下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡とで共振器を構成するとともに、該下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡の間に活性層が配置された1550nm帯の面発光レーザ素子において、前記共振器の長さで定まる発振波長と前記活性層の組成で定まる利得ピーク波長との差分が第1の温度で16〜25nmであり、前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記発振波長と前記利得ピーク波長が一致することを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、1550nm帯の面発光レーザ素子において、いわゆるディチューニング量を16〜25nmの範囲内に設定することにより、0〜85℃の実用的な温度範囲で、変化の小さいしきい値電流などの良好な発振特性を得ることができる。
【0025】
また、請求項4にかかる面発光レーザ素子は、下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡とで共振器を構成するとともに、該下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡の間に活性層が配置された1550nm帯の面発光レーザ素子において、前記共振器の長さで定まる発振波長と前記活性層の組成で定まる利得ピーク波長との差分が所定温度で所定量あり、前記所定温度よりも高い60〜85℃の範囲内で前記発振波長と前記利得ピーク波長が一致することを特徴としている。
【0026】
この発明によれば、1550nm帯の面発光レーザ素子において、いわゆるマッチング温度を60〜85℃の範囲内に設定することにより、0〜85℃の実用的な温度範囲で、変化の小さいしきい値電流などの良好な発振特性を得ることができる。
【0027】
また、請求項5にかかる面発光レーザ素子は、上記発明において、GaAs基板上に形成されるとともに、前記活性層がGaInNAs井戸層を有する単一または多重量子井戸構造であることを特徴としている。
【0028】
また、請求項6にかかる面発光レーザ素子は、上記発明において、GaAs基板上に形成されるとともに、前記活性層がGaInNAsSb井戸層を有する単一または多重量子井戸構造であることを特徴としている。
【0029】
また、請求項7にかかる面発光レーザ素子は、上記発明において、GaAs基板上に形成されるとともに、前記活性層がGaAsSb井戸層を有する単一または多重量子井戸構造であることを特徴としている。
【0030】
また、請求項8にかかる面発光レーザ素子は、上記発明において、GaAs基板上に形成されるとともに、前記活性層がInAs単一または多重量子ドット構造であることを特徴としている。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる面発光レーザ素子の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、ここでは、1260nm以上の長波長発振を実現させるために、活性層をGaxIn1 ‐ xNyAs1 ‐ y量子井戸構造とした場合を例に挙げる。
【0032】
図1は、実施の形態にかかる面発光レーザ素子の断面斜視図である。図1において、面発光レーザ素子100は、p−GaAs基板11上に、順に、下部半導体多層膜反射鏡(以下、下部DBRミラーと称す。)12と、電流・光閉込め層13と、p−GaAsクラッド層14(下部クラッド層)と、発振波長1260nm以上のGaxIn1 ‐ xNyAs1 ‐ y井戸層を有する単一または多重量子井戸構造の活性層15と、n−GaAsクラッド層16(上部クラッド層)と、上部半導体多層膜反射鏡(以下、上部DBRミラーと称す。)17と、n−GaAsコンタクト層18とが積層された構造のメサポスト20を有している。
【0033】
ここで、下部DBRミラー12は、例えばp−GaAs/p−Al0.9Ga0.1Asを1ペアとして、それを35ペア分積層した構造である。また、上部DBRミラー17は、例えばn−GaAs/n−Al0.9Ga0.1Asを1ペアとして、それを25ペア分積層した構造である。なお、下部DBRミラー12および上部DBRミラー17を形成する各半導体層の厚さはλ/4n(λ:発振波長、n:屈折率)である。また、電流・光閉込め層13は、メサポスト中央部に位置するとともに電流注入領域として機能するAlAs層21と、その電流注入領域の外側に電流狭窄領域として機能するAl酸化層22とを有している。
【0034】
また、n−GaAsコンタクト層18上には、そのn−GaAsコンタクト層18と電気的接続を果たすリング状のn側電極24が形成され、n側電極24に対向するp−GaAs基板11の裏面にはp側電極26が形成されている。さらに、メサポスト20のn側電極24を除いた表面には、図示するように、保護膜として機能するSiN膜23が形成されており、このSiN膜23とn側電極24の表面には、n側電極24の引き出し線として機能する配線層25が形成されている。
【0035】
このような構造において、面発光レーザ素子100は、配線層25とp側電極26との間に適当な電圧が印加されることにより、n側電極24のリング中央部からメサポスト20の上方に向けて発振波長1260nm以上のレーザを出射することができる。
【0036】
この実施の形態1にかかる面発光レーザ素子100において、従来と異なるところは、そのディチューニング量が従前の1260nm未満で設定されていたディチューニング量からは推測できない値で設計されている点である。換言すれば、そのような特別なディチューニング量を実現するような組成で活性層15が設計されている。以下においては、1260nmの長波長帯の例として、1300nm帯と1550nm帯の面発光レーザ素子について順に説明する。
【0037】
まず、本実施の形態にかかる1300nm帯の面発光レーザ素子の特徴は、室温時(ここでは25℃とする。)での発振波長λgが1310nmとなる共振器長を有し、かつその室温を基準としてディチューニング量が14〜20nmとなる活性層15を有していることである。すなわち、活性層15は、利得ピーク波長λgが1290〜1296nmとなる組成比のGaxIn1 ‐ xNyAs1 ‐ y井戸層を有している。
【0038】
本発明者らは、上記ディチューニング量を見出すにあたり、25℃における発振波長λcを1310nmに設定し、ディチューニング量をそれぞれ約10nm、約15nm、約20nm、約25nmとした4つの面発光レーザ素子のサンプルについて、しきい値電流の温度依存性を測定した。なお、各サンプルの利得ピーク波長λgの温度依存性は0.45nm/℃であり、発振波長λcの温度依存性は0.08nm/℃である。
【0039】
図2は、1300nm帯の面発光レーザ素子におけるしきい値電流の温度依存性を示すグラフである。図2をみてわかるように、実用的な温度範囲である0〜85℃においては、ディチューニング量15nm、20nmの各サンプルの温度依存性が小さい。ディチューニング量15nm、20nmは、マッチングする温度に換算すると、それぞれ約64℃、約78℃である。
【0040】
この結果から、発明者らは、1300nm帯の面発光レーザ素子は、ディチューニング量を14〜20nmの範囲で設計することが、広い温度範囲において安定した発振特性を有するということと結論付けた。また、マッチングする温度で表わした場合にも、マッチング温度60〜75℃の温度範囲で設計すれば、広い温度範囲において安定した発振特性を有する1300nm帯の面発光レーザ素子を得ることができることも見出した。特に、ディチューニング量では17nm程度、マッチング温度では70℃程度が最適値であることがわかった。
【0041】
これらディチューニング量やマッチング温度は、表1に示したような既知の850nm帯の面発光レーザ素子の設計パラメータからは推測できるものではなく、実用的な1300nm帯の面発光レーザ素子を提供するに際して重要なものである。
【0042】
つぎに、本実施の形態にかかる1550nm帯の面発光レーザ素子について説明する。本実施の形態にかかる1550nm帯の面発光レーザ素子の特徴は、室温時(ここでは25℃とする。)での発振波長λgが1550nmとなる共振器長を有し、かつその室温を基準としてディチューニング量が16〜25nmとなる活性層15を有していることである。すなわち、活性層15は、利得ピーク波長λgが1525〜1534nmとなる組成比のGaxIn1 ‐ xNyAs1 ‐ y井戸層を有している。
【0043】
本発明者らは、上記ディチューニング量を見出すにあたり、25℃における発振波長λgを1550nmに設定し、ディチューニング量をそれぞれ約10nm、約15nm、約20nm、約25nm、約30nmとした5つの面発光レーザ素子のサンプルについて、しきい値電流の温度依存性を測定した。なお、各サンプルの利得ピーク波長λgの温度依存性は0.5nm/℃であり、発振波長λcの温度依存性は0.08nm/℃である。
【0044】
図3は、1550nm帯の面発光レーザ素子におけるしきい値電流の温度依存性を示すグラフである。図3をみてわかるように、実用的な温度範囲である0〜85℃においては、ディチューニング量15nm、20nm、25nmの各サンプルの温度依存性が小さい。ディチューニング量15nm、20nm、25nmは、マッチングする温度に換算すると、それぞれ約60℃、約72℃、約83℃である。
【0045】
この結果から、発明者らは、1550nm帯の面発光レーザ素子は、ディチューニング量を16〜25nmの範囲で設計することが、広い温度範囲において安定した発振特性を有するということと結論付けた。また、マッチングする温度で表わした場合にも、マッチング温度60〜85℃の温度範囲で設計すれば、広い温度範囲において安定した発振特性を有する1550nm帯の面発光レーザ素子を得ることができることも見出した。特に、ディチューニング量では19nm程度、マッチング温度では75℃程度が最適値であることがわかった。
【0046】
これらディチューニング量やマッチング温度についてもまた、表1に示したような既知の850nm帯の面発光レーザ素子の設計パラメータからは推測できるものではなく、実用的な1550nm帯の面発光レーザ素子を提供するに際して重要なものである。
【0047】
なお、以上に示した1300nm帯と1550nm帯の面発光レーザ素子についてのディチューニング量やマッチング温度はそれぞれ端面発光型のブロードエリアレーザ素子(共振器長600μm)と面発光レーザ素子の発振波長から見積もった値であり、測定に用いるサンプルの状態や評価の条件により変動することから、最適なディチューニング量も若干の誤差範囲をもつ。また、マッチング温度は面発光レーザのしきい値電流の温度依存性を測定することでも求めることができる。また、所望の動作温度範囲により、設定値も若干の変動がある。
【0048】
以上に説明したとおり、実施の形態にかかる面発光レーザ素子によれば、1300nm帯の面発光レーザ素子において、ディチューニング量を14〜20nmの範囲内に設定するか、またはマッチング温度を60〜75℃の範囲内に設定することによって、0〜85℃の実用的な温度範囲において発振特性を良好にすることができる。
【0049】
また、実施の形態にかかる面発光レーザ素子によれば、1550nm帯の面発光レーザ素子において、ディチューニング量を16〜25nmの範囲内に設定するか、またはマッチング温度を60〜85℃の範囲内に設定することによって、0〜85℃の実用的な温度範囲において発振特性を良好にすることができる。
【0050】
なお、以上に説明した実施の形態において、活性層15をGaInNAs系の材料で形成するとしたが、GaInNAsSb系の井戸層を有する単一または多重量子井戸構造、GaAsSb井戸層を有する単一または多重量子井戸構造、InAs単一または多重量子ドット構造などであってもよい。
【0051】
また、1550nm帯の面発光レーザ素子の場合、InP基板上に形成したAlGaInAsやGaInAs(P)系半導体材料によって構成される量子井戸活性層を有する面発光レーザ素子に適用することも可能である。また、他の方法により作製した面発光レーザ素子にも適用可能である。
【0052】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明にかかる面発光レーザ素子によれば、1300nm帯の面発光レーザ素子において、ディチューニング量を14〜20nmの範囲内に設定するか、またはマッチング温度を60〜75℃の範囲内に設定することによって、0〜85℃の実用的な温度範囲で良好な発振特性を得ることができるという効果を奏する。
【0053】
また、本発明にかかる面発光レーザ素子によれば、1550nm帯の面発光レーザ素子において、ディチューニング量を16〜25nmの範囲内に設定するか、またはマッチング温度を60〜85℃の範囲内に設定することによって、0〜85℃の実用的な温度範囲で良好な発振特性を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態にかかる面発光レーザ素子の断面斜視図である。
【図2】1300nm帯の面発光レーザ素子におけるしきい値電流の温度依存性を示すグラフである。
【図3】1550nm帯の面発光レーザ素子におけるしきい値電流の温度依存性を示すグラフである。
【図4】発振波長と利得ピーク波長との関係を説明するための説明図である。
【図5】850nm帯の面発光レーザ素子におけるしきい値電流の温度依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
11 p−GaAs基板
12 下部半導体多層膜反射鏡
13 電流・光閉込め層
14 p−GaAsクラッド層
15 活性層
16 n−GaAsクラッド層
17 上部半導体多層膜反射鏡
18 n−GaAsコンタクト層
20 メサポスト
21 AlAs層
22 Al酸化層
24 n側電極
25 配線層
26 p側電極
27 円筒状溝
30 自然酸化膜
31 酸化膜
100 面発光半導体レーザ素子
Claims (8)
- 下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡とで共振器を構成するとともに、該下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡の間に活性層が配置された1300nm帯の面発光レーザ素子において、
前記共振器の長さで定まる発振波長と前記活性層の組成で定まる利得ピーク波長との差分が第1の温度で14〜20nmであり、前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記発振波長と前記利得ピーク波長が一致することを特徴とする面発光レーザ素子。 - 下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡とで共振器を構成するとともに、該下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡の間に活性層が配置された1300nm帯の面発光レーザ素子において、
前記共振器の長さで定まる発振波長と前記活性層の組成で定まる利得ピーク波長との差分が所定温度で所定量あり、前記所定温度よりも高い60〜75℃の範囲内で前記発振波長と前記利得ピーク波長が一致することを特徴とする面発光レーザ素子。 - 下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡とで共振器を構成するとともに、該下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡の間に活性層が配置された1550nm帯の面発光レーザ素子において、
前記共振器の長さで定まる発振波長と前記活性層の組成で定まる利得ピーク波長との差分が第1の温度で16〜25nmであり、前記第1の温度よりも高い第2の温度で前記発振波長と前記利得ピーク波長が一致することを特徴とする面発光レーザ素子。 - 下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡とで共振器を構成するとともに、該下部半導体多層膜反射鏡と上部半導体多層膜反射鏡の間に活性層が配置された1550nm帯の面発光レーザ素子において、
前記共振器の長さで定まる発振波長と前記活性層の組成で定まる利得ピーク波長との差分が所定温度で所定量あり、前記所定温度よりも高い60〜85℃の範囲内で前記発振波長と前記利得ピーク波長が一致することを特徴とする面発光レーザ素子。 - GaAs基板上に形成されるとともに、前記活性層がGaInNAs井戸層を有する単一または多重量子井戸構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
- GaAs基板上に形成されるとともに、前記活性層がGaInNAsSb井戸層を有する単一または多重量子井戸構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
- GaAs基板上に形成されるとともに、前記活性層がGaAsSb井戸層を有する単一または多重量子井戸構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
- GaAs基板上に形成されるとともに、前記活性層がInAs単一または多重量子ドット構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の面発光レーザ素子。
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