JP2712958B2 - 薄板連続鋳造用ロール - Google Patents

薄板連続鋳造用ロール

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JP2712958B2
JP2712958B2 JP3319068A JP31906891A JP2712958B2 JP 2712958 B2 JP2712958 B2 JP 2712958B2 JP 3319068 A JP3319068 A JP 3319068A JP 31906891 A JP31906891 A JP 31906891A JP 2712958 B2 JP2712958 B2 JP 2712958B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、各種の鋼や合金の薄
板、特にステンレス鋼の薄板を溶湯から直接連続鋳造法
によって製造する場合に使用するロールに関する。
【0002】
【従来の技術】溶湯から直接薄板を製造する連続鋳造に
は、図4に示すようないくつかの方法がある。図4の
(a)は単ロール法と呼ばれるもので、回転するロール
Rに溶湯Mを連続的に供給して急冷し鋳片(薄板)Sを
製造する。(b)および(c)は双ロール法と呼ばれる
方法で、いずれも二つのロールの間に溶湯を供給する方
式である。
【0003】上記のような連続鋳造法に使用するロール
は、高温の溶湯に接触するものであるから、特別な物性
が要求される。通常、この種のロールは中子(軸芯)と
スリーブとからなり、その間に冷却水を通す、いわゆる
冷却ロールである。スリーブの材料としては銅または銅
合金が使用されることが多い。これは、熱伝導率が大き
く、溶湯および鋳片の冷却効率が高いからである。
【0004】例えば特開平2−55645 号公報には、熱伝
導率:0.5 cal/cm・ s・℃以上で、400 ℃での 0.2%耐
力が30kgf/mm2 以上、硬度(Hv)が 150以上、引張強さが
40kgf/mm2 以上、伸びが5%以上の材料からなる銅合
金製の冷却ロールが提案されている。しかし、銅または
銅合金のスリーブには、冷却能が大きすぎるために、特
に 0.5mm以上の鋳片を鋳造する場合に、鋳片に平坦度不
良や割れのような欠陥が出やすいという問題がある。こ
れらの問題を避けるために、炭素鋼やステンレス鋼のス
リーブを使用することもある。これらは銅合金よりも安
価であり、熱伝導率が小さく冷却が穏やかであるから前
記のような鋳片の欠陥は出にくい。しかし、鋳造時に表
面温度が非常に高くなり、塑性変形をおこしたり、熱応
力によって表面亀裂が発生し、耐久性に乏しいという難
点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記のよう
な連続鋳造法に使用する冷却ロールであって、平坦度等
の品質に優れた鋳片(薄板)を製造することができ、し
かも使用時の塑性変形が小さく、耐久性に優れたNi基
合金のスリーブを有するロールを提供することを目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記のロール
を要旨とする。
【0007】(1)600℃までの物性が、熱伝導率:0.01〜
0.1 cal/cm・ s・℃、耐力:100kgf/mm 2 以上、引張強
さ:110 kgf/mm 2 以上、硬度(Hv):200 以上で、鋳造幅
に対応する部分の肉厚が3〜10mmのスリーブを有し、こ
のスリーブと中子との間に通水して内部から水冷できる
構造であって、スリーブの材料が、重量%で、Ni:50〜
55%、Cr:17〜21%、Nb:4.75〜5.50%、Mo: 2.8〜3.
3 %、Ti:0.65〜1.15%、Al: 0.2〜0.8 %、Fe:17〜
21%、C:0.08%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.35%以
下、P:0.015 %以下、S:0.015 %以下の化学組成を
もつ時効処理された合金である薄板連続鋳造用ロール。
【0008】(2)600℃までの物性が、熱伝導率:0.01〜
0.1 cal/cm・ s・℃、耐力:100kgf/mm 2 以上、引張強
さ:110 kgf/mm 2 以上、硬度(Hv):200 以上で、鋳造幅
に対応する部分の肉厚が3〜10mmのスリーブを有し、こ
のスリーブと中子との間に通水して内部から水冷できる
構造であって、スリーブの材料が、重量%で、Ni:50〜
55%、Cr:17〜21%、Nb:4.75〜5.50%、Mo: 2.8〜3.
3 %、Ti:0.65〜1.15%、Al: 0.2〜0.8 %、Fe:17〜
21%、C:0.08%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.35%以
下、P:0.015 %以下、S:0.015 %以下、さらにB:
0.006 重量%以下とCu:0.3 重量%以下の1種または2
種を含むの化学組成をもつ時効処理された合金である薄
板連続鋳造用ロール。
【0009】図1は本発明のロールの構造の1例を示す
図で、(a)はロール中央部の横断面図、(b)はロー
ルの上半分の拡大縦断面図である。なお、冷却ロールの
構造はこの例以外にも種々あるが、いずれに対しても本
発明は適用できる。
【0010】図1に示すロールは、スリーブ1、ロール
軸2および中子3とを有し、スリーブ1と中子3の間に
補強材を兼ねたスペーサー4がある。スペーサー4はロ
ールの軸方向に長く延びたもので、4〜72個が周方向に
等間隔に配置されている。このスペーサーによってスリ
ーブと中子の間に冷却水通路5が形成される。
【0011】(b)図に示すように冷却水はロール軸の
一端から導入され、通路5を通って他端に排出される。
スリーブ1とロール軸2とはOリング6を介して水密
に、かつ、使用時の熱膨張によってスリーブが軸方向に
延びても水密が保てるように連結されている。(b)図
に示す7は溶湯を保持するサイドダム、Sは鋳片であ
る。スリーブ1の厚さは、少なくとも鋳片Sの幅に対応
する範囲において3〜10mmでなければならない。
【0012】ロール軸および中子は使用中にも高温には
ならないから一般構造用鋼(例えばJIS SS41 )製でよ
い。本発明のロールの特徴は、スリーブの物性を特定し
たところにある。以下、その理由を説明する。
【0013】
【作用】600℃までの物性を問題にするのは、本発明の
水冷構造のロールでも、薄板鋳造時にロール表面温度が
最大 600℃に達する可能性があるからである。
【0014】 熱伝導率: スリーブ材質の熱伝導率は、薄板鋳造時の抜熱量と深く
関連し、鋳片品質および鋳造時のロール強度を決定する
重要な因子であって、その値を適正な範囲にする必要が
ある。熱伝導率が0.01cal/cm・s ・℃未満の場合には、
薄板鋳造時にロール表面温度が非常に高温となり、ロー
ル内部に発生する応力により(応力が耐力を超えるた
め)ロールが塑性変形する。また、抜熱が不十分となる
ので生産性が悪くなる。一方、熱伝導率が 0.1cal/cm・
s・℃より大きい場合には、冷却能が大きすぎるため、
薄板の鋳造中に成長途中の凝固シェルが熱応力により変
形し、製造される鋳片に平坦度不良や割れのような欠陥
が出やすい。
【0015】 耐力および引張強さ: 薄板鋳造の際にロール表面温度は最大 600℃に達し、こ
の時、ロール内部に発生する応力は、Ni基合金の場合に
ついて有限要素法による三次元熱応力解析を行った結果
では最大100kgf/mm2となる。従って、耐力が100kgf/mm2
以上、引張強さが110kgf/mm2以上であればロールにかか
る応力に十分に耐えることができるが、耐力が100kgf/m
m2未満、引張強さが110kgf/mm2未満では塑性変形が起こ
り、鋳造後のロール形状が負クラウン状に変形したり、
表面に亀裂が生じることがある。 硬度(Hv): 鋳造時にはロールと鋳片およびロールと摺動耐火物(サ
イドダム) の間には摩擦が生じるが、ロール材質の硬さ
がHvで 200以上であれば、摩擦による損耗や引っかきに
よる表面疵の発生を防止できる。
【0016】 スリーブの肉厚: ロール(スリーブ)には、鋳造時の熱応力のほか、摺動
耐火物の押付力やロール間の押付力が作用するのでスリ
ーブ全体としての剛性が必要である。肉厚が3mm以上で
あれば、これらの押付力に耐える剛性を十分に確保でき
る。また、極端に肉厚が薄くなると冷却能が大きくなり
すぎて鋳片品質を劣化させる。
【0017】肉厚が10mmを超えると内部冷却の効果がロ
ール(スリーブ)表面まで十分に伝わらず、ロール表面
温度が 600℃を超える。この場合、ロール内部に発生す
る熱応力がロール材質の持つ耐力よりも大きくなり、ロ
ールが塑性変形する。
【0018】次に本発明において、スリーブの化学組成
を前記のように限定した理由を、その作用とともに述べ
る。なを以下において、%は重量%を意味する。
【0019】Ni:50〜55% Niは、オーステナイト相を安定化し、耐食性を向上さ
せるのに必須の元素である。また、製造過程での時効処
理時に、Ti、AlおよびNbの添加元素と反 応してN
3 Nb等の金属間化合物が析出硬化相として生成し、
高温強度を高めるには50%以上が必要である。しか
し、55%を超えてもその効果は変わらないので経済性
を考慮して上限を55%とした。
【0020】Cr:17〜21% Crは、材料の表面に強固な酸化皮膜を形成し、高温酸
化を抑制するためには必須の元素である。この高温酸化
を抑制するには17%以上が必要である。しかし、添加
し過ぎると脆化相(δ相)が析出し、靱性が劣化するの
で上限を21%とした。
【0021】Nb:4.75〜5.50% Nbは、時効処理時にNiとN 3 Nb等の金属間化合物
を析出硬化相として生成し、高温強度を高めるには4.
75%以上が必要である。しかし、添加し過ぎると鍛造
性等が劣化するので上限を5.50%とした。
【0022】Mo:2.8〜3.3% Moは、不動態化電流密度を小さくし、不動態を非常に
安定化して耐食性を向上させるためには2.8%以上が
必要である。しかし、添加し過ぎると加熱によってδ相
を析出し、耐食性を低下させるので上限を3.3%とし
た。
【0023】Ti:0.65〜1.15% Tiは、Niと反応して金属間化合物が析出硬化相とし
て生成し、高温強度を高めるには0.65%以上が必要
である。しかし、添加し過ぎると靱性を劣化させるので
上限を1.15%とした。
【0024】Al:0.2〜0.8% Alは、Nbと同様に時効処理時にNiと反応して析出
硬化相となる金属間化合物を生成し、高温強度を高める
には0.2%以上が必要である。しかし、添加し過ぎる
と鍛造性等の製造性が劣化するので上限を0.8%とし
た。
【0025】Fe:17〜21% Feは、Ni、Crとともにマトリックスを形成する安
価な元素であるが、21%を超えるとNiまたはCrの
添加量が減少し、上記のNiとCrの効果が得られな
い。17%以下では、NiとCrの添加量が多くなり製
造コストが上昇するので好ましくない。また、17〜2
1%の範囲外では、NiとCrとの元素比のバランスが
崩れて、目的とする低熱伝導率と高温高強度が得られな
くなる。
【0026】B:0.006%以下 Bは、微量の添加で熱間加工性を改善するが、0.00
6%以上添加してもその効果は変わらないので上限を
0.006%以下とした。
【0027】Cu:0.3%以下 Cuは、微量の添加で加工性を改善するが、0.3%以
上添加してもその効果は変わらないので上限を0.3%
以下とした。
【0028】C:0.08%以下 Cは、固溶化処理時にTi、Nbと反応して炭化物を生
成し、結晶粒の粗大化を抑制するが、0.08%を超え
ると時効処理時にCrと反応して有害なCr炭化物を析
出し、高温で粒界酸化を生ずるので上限を0.08%以
下とした。
【0029】Si:0.35%以下、Mn:0.35%
以下 Si、Mnは、溶製時の脱酸材として使用するが、添加
量が多くなると靱性が劣化するので、それぞれ上限を
0.35%以下とした。
【0030】P:0.015%以下、S:0.015%
以下 P、Sは、熱間加工性を劣化させる元素なので、それぞ
れ上限を0.015%以下とした。
【0031】本発明のロールのスリーブの材料として、
前記のNi基合金が好適である。この合金は、時効処理を
施した状態で常温から高温まできわめて高強度であり、
前述の熱伝導率、強度等の物性を十分に満足する。従っ
て、鋳造の際の熱負荷に耐え、表面の亀裂発生や高温下
での塑性変形がなく、長時間、多数回の鋳造に十分な耐
久性をもつ。本発明のロールを使用して連続鋳造を行う
場合には、ロールの冷却水の流速を0.5 〜10 m/sにする
のが望ましい。流速が 0.5 m/s未満では冷却効果が不十
分となり、鋳造時にロール表面温度が 600℃を超え、ロ
ール内部に発生する熱応力がロールの耐力を超えてロー
ルが塑性変形する。一方、冷却水の流速が 10 m/s を超
えても冷却効果の向上は小さく不経済である。
【0032】
【実施例】図1に示す構造のロールを作製し、図4の
(a)の単ロール方式の連続鋳造を行った。ロールの仕
様および鋳造の条件は下記のとおりである。
【0033】〔ロール仕様〕 1.スリーブ (1) 材料 C:0.04%、Si:0.20%、Mn:0.20%、Cr:18.6%、Mo:3.1 % Nb:5.0 %、Al:0.40%、Ti:0.90%、Fe:18.5%、Ni:53.0% の合金。
【0034】 (2) 製法 1000 ℃で鍛造し、980 ℃×1 hr保持し空
冷、 980℃×8 hr保持し炉冷、 621℃×18hr保持し空冷 (時効処理) 。
【0035】 (3) 寸法(鋳造幅に対応する部分) 肉厚: 5 mm 、軸方向長さ:400 mm、外径:600 mm (4) 物性 (常温〜 600℃まで) 熱伝導率: 0.027〜0.050 cal/cm・ s・℃ 耐力: 115〜102 kgf/mm2 、引張強さ: 140〜116 kgf/
mm2 硬さ: Hv 390 〜300 2. 軸芯および中子: SS41 製 〔鋳造条件〕 (1) 鋳造材料 :SUS 304 (オーステナイトステ
ンレス鋼) (2) 鋳造温度 : 1500 ℃ (3) 鋳片寸法(目標):幅 300 mm 、厚さ1 mm (4) 鋳造速度 :20 m/min (5) 鋳造時間 : 5 min (6) ロール冷却水流速: 5 m/s 図2は、上記の実施例で得られた鋳片 (薄板) の幅方向
の厚さ分布の測定結果である(実線)。目標の板厚1mm
に対して、幅方向の偏差は極くわずかである。図中に破
線で示すのは、同じ仕様でスリーブ材料をSUS 304 とし
たロールで、同じ条件で鋳造を行った例(比較例1)の
板厚分布である。また、一点鎖線で示すのは、同じくス
リーブを銅合金製にした例(比較例2)での板厚分布で
ある。前者は比較的偏差は小さいが、鋳造終了後のスリ
ーブ表面には亀裂が発生していた。後者は、図示のよう
に板厚偏差がきわめて大きい。
【0036】図3は、使用後 (鋳造終了後、室温まで冷
却) のロール半径の変化を示す図である。SUS 304 製の
スリーブを用いた比較例1のロールは負のクラウンが生
じて大きく変形しているが、本発明のロール(実施例)
と銅合金製ロール(比較例2)では変形は殆ど見られな
い。
【0037】
【発明の効果】本発明のロールは、それ自身が変形や亀
裂を起こしにくく使用寿命が長いだけでなく、これを使
用して鋳造した鋳片(薄板)の品質向上にも大きく役立
つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明ロールの中央部の横断面図、
(b)は同じく上半分の縦断面図である。
【図2】本発明ロールを使用して鋳造した鋳片の幅方向
の厚さ分布(実線)、スリーブをSUS 304 としたロール
で鋳造した鋳片の幅方向の厚さ分布(破線)、およびス
リーブを銅合金製にしたロールで鋳造した鋳片の幅方向
の厚さ分布(一点鎖線)である。
【図3】本発明ロール(実線)、スリーブがSUS 304 の
ロール(破線)およびスリーブが銅合金製のロール(一
点鎖線)の使用後の変形を示す図である。
【図4】薄板の連続鋳造法のいくつかを例示した図であ
る。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】600℃までの物性が、熱伝導率:0.01〜0.1
    cal/cm・ s・℃、耐力:100 kgf/mm 2 以上、引張強
    さ:110 kgf/mm 2 以上、硬度(Hv):200 以上で、鋳造幅
    に対応する部分の肉厚が3〜10mmのスリーブを有し、こ
    のスリーブと中子との間に通水して内部から水冷できる
    構造であって、スリーブの材料が、重量%で、Ni:50〜
    55%、Cr:17〜21%、Nb:4.75〜5.50%、Mo: 2.8〜3.
    3 %、Ti:0.65〜1.15%、Al: 0.2〜0.8 %、Fe:17〜
    21%、C:0.08%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.35%以
    下、P:0.015 %以下、S:0.015 %以下の化学組成を
    もつ時効処理された合金である薄板連続鋳造用ロール。
  2. 【請求項2】600℃までの物性が、熱伝導率:0.01〜0.1
    cal/cm・ s・℃、耐力:100 kgf/mm 2 以上、引張強
    さ:110 kgf/mm 2 以上、硬度(Hv):200 以上で、鋳造幅
    に対応する部分の肉厚が3〜10mmのスリーブを有し、こ
    のスリーブと中子との間に通水して内部から水冷できる
    構造であって、スリーブの材料が、重量%で、Ni:50〜
    55%、Cr:17〜21%、Nb:4.75〜5.50%、Mo: 2.8〜3.
    3 %、Ti:0.65〜1.15%、Al: 0.2〜0.8 %、Fe:17〜
    21%、C:0.08%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.35%以
    下、P:0.015 %以下、S:0.015 %以下、さらにB:
    0.006 重量%以下とCu:0.3 重量%以下の1種または2
    種を含むの化学組成をもつ時効処理された合金である薄
    板連続鋳造用ロール。
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