JP2005290406A - 非鉄溶湯用部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐溶損性、耐熱衝撃性等に優れるとともに、溶湯と接する部分以外の高温に曝される部分が耐酸化性に優れた非鉄溶湯用部材を提供することを目的とする。
【解決手段】 非鉄溶湯に接触されて使用される部材であり、非鉄溶湯と接する内表面の少なくとも一部がハイス系合金で形成されるとともに、該部材の外側に耐酸化性に優れた金属材料からなる外層を嵌合したことを特徴とする。また、前記ハイス系合金の化学成分が質量比で、
C :1.0〜4.0% Si:0.1〜2.0%
Mn:0.1〜2.0% Ni≦4.5%
Cr≦10.0% Mo:0.1〜9.0%
W≦10.0% V :1.0〜15.0%
を含有し残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金等の非鉄金属製品用の溶解又は鋳造設備に用いられ、これらの合金溶湯に対し耐溶損性に優れるとともに、使用環境に対し優れた耐酸化性を兼ね備えた部材に関する。
非鉄金属の溶湯用部材には、堰入れ子、ストーク、中間ストーク、湯口ブッシュ、湯溜まり、溶鍛スリーブ、ダイカストスリーブ、ダイカスト金型、ピン、ガス吹き込み管等の各種部材がある。
従来の非鉄溶湯用部材として、SKD61に代表される熱間金型用合金鋼からなるものがある。しかしながら、これは非鉄合金溶湯に対して溶損し易く、頻繁に補修、交換が必要となり生産効率が低下するという問題点があった。近年、生産性の向上や品質向上の観点から、さらなる耐溶損性が要求され、各種の非鉄溶湯用部材が提案されている。
例えば、特許文献1には、化学成分が重量比で、
C :0.95〜1.5%、Si:0.1〜0.4%、Mn:0.2〜0.5%、Cr:3.0〜5.0%、Mo:4.5〜9.5%、V :1.5〜4.5%、W:1.5〜7.0%、
残部Feおよび不可避的不純物元素を含む鉄鋼材料の表層部に、あらかじめ窒化処理により窒素富化層を形成した後、Crを含む溶融塩に浸漬することにより、窒素富化層をCrの窒化物或いは炭窒化物を含む層に変化させて被覆層を形成してなることを特徴とする非鉄金属溶湯用部材が記載されている。
また、特許文献2には、アルミニウム合金溶湯を金型内へ導く部位に配置される鋳造用湯口部材において、セラミックスなどの耐溶損材料からなる焼結体の内層と耐酸化性に優れた金属材料からなる外層との間に、多孔質セラミックスの中間層を介在させることを特徴とする鋳造用湯口部材が記載されている。
また、特許文献3には、金属によって形成した外筒と、該外筒内に配置されたセラミックスによって形成したブッシュ本体との間に介在させたセラミックス系粉末状の充填剤とからなる湯口ブッシュが記載されている。
特開2002−60895号公報 特開平9−300060号公報 実開平5−13641号公報
特許文献2および特許文献3のように溶融金属と接触する部分をセラミックスで形成した場合、溶融金属に対する耐溶損性は格段に向上するものの、使用中に大きな熱衝撃がかかるので、セラミックスが本来有する脆性のため、局部的に損傷が発生し、結果的に短寿命であるという問題があった。
一方、特許文献1のようなハイス系材料を用いた非鉄溶湯用部材は、従来のSKD61鋼に比べて耐溶損性、耐摩耗性に優れ、また耐熱衝撃性および靭性に優れるため、セラミックスのような損傷が発生しにくいという利点がある。
しかしながら、ハイス系合金からなる非鉄溶湯用部材においても新たな課題が出てきた。すなわち、堰入れ子のように溶湯と接しない外表面がヒータ等により加熱して曝された場合、外表面が酸化されやすいという問題がある。
図3は従来例のアルミニウム溶湯用堰入れ子の概略断面図を示す。図3において、堰入れ子6はアルミニウム製エンジンブロック製造に用いられる低圧鋳造用堰入れ子である。堰入れ子6は中空筒状で、母材2がハイス系合金からなり、2aは溶湯と接する内面である。そして、湯道1にアルミニウム合金溶湯が通される。
鋳造の際、堰入れ子6の外表面2b(大気と接する部分)は加熱ヒータ3で高温に加熱される。このとき、母材2の外表面2bがハイス系合金の高合金であるがゆえに、高温域での酸化進行速度が速く、外表面2bが酸化され、酸化スケールが発生しやすかった。そこで、酸化スケールが著しく発生すると、それが加熱ヒータ3に触れて、ヒータ3が電気的にショートするという問題が起きた。
したがって、本発明は、前述の課題に鑑みて、耐溶損性、耐熱衝撃性等に優れるとともに、溶湯と接する部分以外の高温に曝される部分が耐酸化性に優れた非鉄溶湯用部材を提供することを目的とする。
非鉄溶湯に接触されて使用される部材であり、非鉄溶湯と接する内表面の少なくとも一部がハイス系合金で形成されるとともに、該部材の外側に耐酸化性に優れた金属材料からなる外層を嵌合したことを特徴とする。また、前記金属材料が、Fe基合金またはNi基合金、Co基合金およびAl基合金のうちいずれかからなることを特徴とする。
さらに、前記ハイス系合金の化学成分が質量比で、
C :1.0〜4.0% Si:0.1〜2.0%
Mn:0.1〜2.0% Ni≦4.5%
Cr≦10.0% Mo:0.1〜9.0%
W≦10.0% V :1.0〜15.0%
を含有し残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
前記ハイス系合金がさらに質量比で、Co≦10.0%、Nb≦10.0%のいずれか一種以上を含有することを特徴とする。また、非鉄溶湯と接する前記ハイス系合金の内表面に、窒化物からなる皮膜層を形成することを特徴とする。前記皮膜層の表面に、さらにCrの窒化物あるいはCrの炭窒化物からなる皮膜層を形成することを特徴とする。
本発明によればアルミニウム等の非鉄溶湯と接する部分をハイス系合金で形成することにより溶損を防止し、鋳造時の衝撃による損傷を防ぐことができる。また、特に非鉄溶湯部材の外側に耐酸化性に優れた金属材料からなる外層を嵌合することにより、加熱ヒータ等で高温に曝されても、その外層が保護層となり酸化することを防止できる。したがって、耐用寿命が長くかつ安定した鋳造を行うことができる。本発明の非鉄溶湯部材の外側に配置される耐酸化性に優れた金属材料としては、鋼系、鋳鉄系などのFe基合金や、Ni基合金、Co基合金、Al基合金などの非鉄系材料が好ましい。
本発明のハイス系材質の各元素の含有範囲(質量%)について、以下に説明する。
C:1.0〜4.0%
Cは、耐摩耗性向上のための炭化物の形成と、基地への固溶による焼入れ・焼戻し時の基地硬さの向上に必要である。Cは、耐摩耗性を付与すべきMC、M2C、M6C、M73、M43、M23系炭化物を生成する。Cが1.0%未満であると耐摩耗性を向上させるために有効な炭化物の晶出が少なく、さらに、基地に固溶するCが不足し、焼入れによっても十分な基地硬さが得られなくなると同時に高合金化が難しくなる。一方、4.0%を超えると炭化物が粗大化しその晶出量も過大となり必要な靭性が劣化するため上限を4.0%とした。より好ましい含有量は1.5を超え3.0%以下である。
さらに望ましい含有量は1.9〜2.5%である。
Si:0.1〜2.0%
Siの含有量は0.1〜2.0%が好ましい。Siは、脱酸剤として作用し、またM6C炭化物中に固溶してW、Moなどの元素を置換して含有されるため、W、Moなどの高価な元素の節減を図るために有効である。Siが0.1%未満では脱酸効果が不足して鋳造欠陥を生じやすい。また、2.0%を超えると脆化が生じやすい。より好ましい含有量は0.5〜1.5%である。
Mn:0.1〜2.0%
Mnの含有量は0.1〜2.0%が好ましい。Mnは、Siと同様に脱酸作用がある。また、不純物であるSをMnSとして固定する作用がある。Mnが0.1%未満では脱酸性に乏しい。また、2.0%を超えると残留オーステナイトが生じやすくなり、安定して十分な硬さを維持できない。より好ましい含有量は0.4〜1.5%である。
Ni≦4.5%
Niは焼入性を向上させ高硬度化させる効果を有する。Niの下限は0%である。4.5%を超えると残留オーステナイトが過剰となりかえって高硬度が得られなくなるためその上限を4.5%とした。より好ましいNi含有量は2.0%以下である。
Cr≦10.0%
CrはCと結合し炭化物を晶出生成し、また基地に固溶し基地硬さをあげることで、耐摩耗性を向上させる。Crが10.0%を超えると、常温での残留オーステナイトが多くなるので、焼戻し回数が多くなり不経済となる。さらに、Crは比較的硬さの低いM73やM236系炭化物を形成し、多量の添加はこれらの炭化物が過剰となり耐摩耗性が劣化する。しかしながら、添加量が少ないとその効果が十分確保できず、多すぎると炭化物が粗大化し靱性が低下する。そこで好ましい範囲は3.0%〜9.0%とした。
Mo:0.1〜9.0%
MoはCrと同様に硬質の炭化物が得られ、また高温で焼戻しを行う場合、その二次硬化に強く寄与する元素である。MoはCと結合して硬質のM2C、M6C系炭化物を生成するMoが0.1%未満ではその効果が小さい。また、9.0%を超えると、CとVとMoのバランスにおいてM2C、M6C系炭化物が多く晶出しすぎ、靭性が低下する。よってその適切な範囲を0.1%〜9.0%とした。より好ましいMo含有量は4.5を超え8.0%以下である。
W≦10.0%
Wは、Moと同様に焼入れ性の向上と基地の高温硬さを得るために必要である。また、WはCrやMoと同様に硬い炭化物を生成する為これらの元素に置換して添加することも有効である。さらに、基地の焼入れ性を上げ、Cと結合して硬質のM2C、M6C系炭化物を生成する。Wの下限は0%である。また、10.0%を超えると、M6C系炭化物が粗大化し脆性が劣化するため、その適切な範囲を10.0%以下とした。
V:1.0〜15.0%
Vは、耐摩耗性の向上に最も寄与する硬質な炭化物であるMC、M43を形成する。Vが1.0%未満では炭化物の生成が少なく耐摩耗性が劣化する。Vが15.0%を超えると、C含有量とのバランスにより、初晶としてオーステナイト、もしくはMC、M43系炭化物が晶出する。オーステナイトが初晶で晶出すれば硬さが不十分となる。また、MC、M43が初晶で晶出すれば凝固中に凝集し、使用した場合、硬質炭化物であるMC、M43の凝集偏析が脆性の劣化を引き起こすので好ましくない。より好ましいVの含有量は、4.5を超え8.0%以下である。
Co≦10.0%
Coは炭化物の生成とは無関係に基地に固溶し、強靭性を増すとともに高温硬さと耐摩耗性を向上する効果がある。Coの下限は0%である。Coが10.0%を超えるとその効果が飽和し、かつ高価になるのでその上限を10.0%以下とした。
Nb≦10.0%
NbはVと同様に、耐摩耗性の向上に最も寄与する硬質な炭化物であるMC、M43を形成する。Nbの下限は0%である。Nbが10.0%を超えると、靭性の低下とともにC含有量とのバランスにより、初晶としてオーステナイト、もしくはMC、M43系炭化物が晶出する。オーステナイトが初晶で晶出すれば硬さが不十分となる。また、MC、M43が初晶で晶出すれば凝固中に凝集し、使用した場合、硬質炭化物であるMC、M43の凝集偏析が脆性の劣化を引き起こすので好ましくない。また、NbはVと置換可能である。よって、より好ましいNbおよびVの含有量は、(Nb+V)≦2.0〜8.0%である。
また、溶融金属と接触するハイス系材質の内表面に窒化処理を施すことにより、主に窒化物からなる皮膜層を形成することで一層耐溶損性に優れる非鉄溶湯用部材が得られる。さらに、前記窒化物からなる皮膜層の表面に金属Cr粉末を含む溶融塩で浸漬処理を行い、Crの窒化物あるいはCrの炭窒化物からなる皮膜層(第2の皮膜層)を形成することで、なお一層耐溶損性に優れる非鉄溶湯用部材が得られる。
図1に、本発明の非鉄溶湯用部材の一例であるアルミニウム溶湯低圧鋳造用堰入れ子の概略断面図を示す。図1において、堰入れ子6は中空円筒状で、母材2がハイス系合金からなり、2aは溶湯と接する内面である。そして、湯道1にアルミニウム合金溶湯が通される。この母材2の外側に耐酸化性に優れた金属材料からなる円筒状の外層4を嵌合した。母材2を形成するハイス系合金の化学成分(質量%)は、C:1.9%、Si:0.8%、Mn:0.4%、Cr:4.7%、Mo:5.7%、V:6.5%、残部Feおよび不可避的不純物である。
作製方法を説明すると、まずハイス系合金からなる母材2を外径φ80mm、内径φ30mm、長さ100mmの中空体に加工した。そして、母材2の外周面にSKD61からなる円筒状の外層4を嵌合させた。なお、本発明においては、熱膨張差による影響を考慮して母材2の外面と外層4の内面との間に緩衝材を介在させてもよい。
このようにして製造した本発明の非鉄溶湯用部材を、加熱ヒータを備えた実機に装備し、アルミニウム溶湯の堰入れ子に供したところ、内表面は従来のSKD61鋼に比べ格段に耐溶損性が優れ、外表面は酸化スケールが発生せず、電気的ショートの問題も起こらず、長期間安定に使用することができた。
また、図2は本発明の他の形態の実施例を示す。図1の堰入れ子のさらに内表面に窒化物からなる皮膜層5を形成したものである。また、耐溶損性のさらなる向上のため、皮膜層5の表面層にCrの窒化物層あるいはCrの炭窒化物層を形成してもよい。
本発明の非鉄溶湯用部材によれば、耐溶損性、耐熱衝撃性等に優れ、溶湯と接する部分以外の高温に曝される部分は耐酸化性に優れるので、安定して長期間操業できる。このため、メンテナンスの工数、コストおよび時間を低減することができ、生産効率を向上する事ができる。
本発明の実施例であるアルミニウム溶湯用堰入れ子の概略断面図である。 本発明の他の形態のアルミニウム溶湯用堰入れ子の概略断面図である。 従来例のアルミニウム溶湯用堰入れ子の概略断面図である。
符号の説明
1 湯道、 2 母材、 3 加熱ヒータ、 4 外層、
5 皮膜層、 6 堰入れ子

Claims (7)

  1. 非鉄溶湯に接触されて使用される部材であり、非鉄溶湯と接する内表面の少なくとも一部がハイス系合金で形成されるとともに、該部材の外側に耐酸化性に優れた金属材料からなる外層を嵌合したことを特徴とする非鉄溶湯用部材。
  2. 前記金属材料が、Fe基合金からなることを特徴とする請求項1に記載の非鉄溶湯用部材。
  3. 前記金属材料が、Ni基合金、Co基合金およびAl基合金のうちいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載の非鉄溶湯用部材。
  4. 前記ハイス系合金の化学成分が質量比で、
    C :1.0〜4.0% Si:0.1〜2.0%
    Mn:0.1〜2.0% Ni≦4.5%
    Cr≦10.0% Mo:0.1〜9.0%
    W≦10.0% V :1.0〜15.0%
    を含有し残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜3に記載の非鉄溶湯用部材。
  5. 前記ハイス系合金がさらに質量比で、Co≦10.0%、Nb≦10.0%のいずれか一種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の非鉄溶湯用部材。
  6. 非鉄溶湯と接する前記ハイス系合金の内表面に、窒化物からなる皮膜層を形成することを特徴とする請求項4または5に記載の非鉄溶湯用部材。
  7. 前記皮膜層の表面に、さらにCrの窒化物あるいはCrの炭窒化物からなる皮膜層を形成することを特徴とする請求項6に記載の非鉄溶湯用部材
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