JP2709515B2 - 鉄心の加工性および耐熱性の優れる方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法 - Google Patents

鉄心の加工性および耐熱性の優れる方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法に係わ
り、特に鋼板表面皮膜の滑り性と耐熱性が良好で、変圧
器製造における鉄心の加工性が優れているとともに変圧
器製品の磁気特性を良好ならしめる方向性電磁鋼板の絶
縁皮膜形成方法に関する。
(従来の技術) 方向性電磁鋼板は、Siを、たとえば2〜4%含有する
珪素鋼スラブを熱間圧延し、焼鈍した後、1回或は中間
焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚とし、
次いで脱炭焼鈍した後MgOを主成分とする焼鈍分離剤を
塗布し、最終仕上焼鈍を施してゴス方位をもつ2次再結
晶粒を発達させ、さらにS、N等の不純物を除去すると
ともにグラス皮膜を形成し、次いで絶縁皮膜用のコーテ
ィング液を塗布し、焼付け処理を施して絶縁皮膜を形成
して最終製品とするプロセスによって製造される。
こうして得られる方向性電磁鋼板は、主として電気機
器、トランス等の鉄心材料として使用され、磁束密度が
高く鉄損値が低いものであることが要請される。
一方、方向性電磁鋼板がトランスの鉄心として用いら
れる場合、方向性電磁鋼板のフープは連続的に巻き解か
れながら剪断機で所定長さに切断された後、鉄心加工機
によって順次巻き重ね或は積み重ねられて巻鉄心や積み
鉄心とされる。巻鉄心の場合には圧縮成型、歪取焼鈍を
経てレーシングと呼ばれる巻線作業を行ってトランスと
される。
この鉄心製造過程においては、たとえば巻鉄心の場
合、巻加工、成型作業が円滑に行え、成型後の鋼板端面
やラップ部に凹凸を生ぜず、形状が優れていることなら
びに、鋼板表面の潤滑性が良好であることが必要であ
る。
また、歪取焼鈍時に鋼板の表面皮膜相互間で焼付きが
なく、レーシング作業がスムーズに行えることが、鉄心
加工能率の向上或は焼付きによる歪の誘起や皮膜性能の
劣化を防止するという観点から重要である。これらの問
題に対しては、方向性電磁鋼板表面の絶縁皮膜の性状が
大きく影響する処から、歪取焼鈍時に鋼板の表面皮膜相
互間で焼付きがなく、レーシング作業がスムーズに行え
る絶縁皮膜を開発することが、加工性の観点からのみな
らず、トランスの磁気特性を向上せしめる上からも強く
望まれている。
このようなトランス鉄心加工性を向上させるための手
段として、絶縁皮膜形成時の塗布剤の改良がなされてい
る。特開昭61−4773号公報には、コーティング剤として
第1燐酸塩に粒子径8nm以下の超微粒子コロイド状シリ
カ、クロム酸、クロム酸塩の1種または2種以上からな
る混合液を仕上焼鈍後の鋼板(ストリップ)に塗布し、
焼付け処理することにより、鋼板表面に形成する絶縁皮
膜のすべり性を改善する技術が開示されている。
近年、これらの絶縁皮膜の改善によって、方向性電磁
鋼板の鉄損、磁気歪み、絶縁特性とともに皮膜潤滑性が
改善されてきており、それなりの効果が得られている。
しかし、方向性電磁鋼板を用いてトランス等を製造す
るメーカーにおいては、鉄心に加工する際の加工成型機
の自動化や高速化が進み、前記改善された絶縁皮膜用コ
ーティング剤を以てする以上に加工上のトラブルの排除
や磁気特性面で一層改善された絶縁皮膜が望まれている
実情にある。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は、方向性電磁鋼板表面の絶縁皮膜のすべり性
ならびに、歪取焼鈍を行う際の耐熱性が良好で、鉄心の
加工性が優れた方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法を提
供することを目的としてなされた。
(課題を解決するための手段) 本発明の要旨とするところは、珪素鋼スラブを熱間圧
延し焼鈍した後、1回或は中間焼鈍を挟む2回以上の冷
間圧延を行って最終板厚とし、この材料を脱炭焼鈍し焼
鈍分離剤を塗布した後最終仕上焼鈍を施し、次いで絶縁
皮膜形成用塗布剤を塗布し焼付け処理した後ヒートフラ
ットニングを施す方向性電磁鋼板の製造方法において、
20nm以下の粒子径を有するコロイド状シリカが固形分重
量で50〜95%、150〜2000nmの粒子径を有するコロイド
状シリカが固形分重量で5〜50%からなるコロイド溶液
100重量部(以下重量部は固形分を表す)に対し、Al,M
g,Ca,Znの燐酸塩の1種または2種以上を130〜250重量
部、無水クロム酸,クロム酸塩,重クロム酸塩の1種ま
たは2種以上を10〜40重量部加えた絶縁皮膜形成用塗布
剤を塗布し、焼付け処理することを特徴とする鉄心の加
工性および耐熱性の優れる方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形
成方法にある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、方向性電磁鋼
板の絶縁皮膜形成方法について種々検討した。その結
果、絶縁皮膜形成用塗布剤の塗布、焼付け処理の過程に
おいて、絶縁皮膜形成用塗布剤におけるコロイド状シリ
カの粒径をコントロールすることにより著しく絶縁皮膜
の潤滑性(滑り性)が向上し、さらに歪取焼鈍時のステ
ィッキングと呼ばれる皮膜の焼付き現象を大幅に改善で
きることを見出した。
以下、実験データに基づき、本発明をさらに詳細に説
明する。
公知の方法で製造した板厚0.23mmの方向性電磁鋼板の
最終仕上焼鈍後のストリップコイルからサンプルを切り
出し、850℃×4hrsの歪取焼鈍を施してコイルセットを
除去した後、2% H2SO4で80℃×10秒間の軽酸洗を施し
たものをサンプルとした。このサンプルに対し、第1表
に示すように、80nm以上の粗大な粒径を有するコロイド
状シリカを15nmの粒径を有する微粒コロイド状シリカに
配合した溶液をベースとした絶縁皮膜形成用塗布剤を、
焼付け処理後に4.5g/m2となるように塗布しN2雰囲気中
で850℃×30秒間の焼付け処理を施した。
こうして得られた製品板から試料を切り出し、第1図
に示す方法(A法)で絶縁皮膜の滑り摩擦係数(FF値)
を測定した。即ち、挟み板1−1,1−2間に試料2を置
き、重錘3にて荷重を加え、試料2を引き出す力F′を
バネ計り4で測定し、滑り摩擦係数μを、μ(FF)=
F′により求めた。
さらに、絶縁皮膜上を一定荷重を加えた鋼球を滑ら
せ、そのときの鋼球が絶縁皮膜表面から受ける抵抗値を
測定した(B法)。
また、別に切り出した3cm×4cmの板を積層し、これを
80Kg/cm2の締付け圧力で結束してN2雰囲気中で850℃×4
hrsの歪取焼鈍を施し、第2図に示す方法によって鋼板
の剥離荷重を測定し、スティッキング性について調査を
行った。
結果を、第1表に示す。
第1表に示すように、粒径15nmのコロイド状シリカに
300nmと、1000nmのコロイド状シリカを重量で10%配合
した本発明の絶縁皮膜形成剤を塗布し焼付け処理したも
のは、何れもA法によるFF値、B法による潤滑性および
歪取焼鈍時の耐スティッキング性の何れにおいても著し
い向上が見られた。
次に、本発明における絶縁皮膜形成方法について述べ
る。
本発明においては、絶縁皮膜形成用塗布剤として、20
nm以下の粒子径を有するコロイド状シリカが固形分重量
で50〜95%、150〜2000nmの粒子径を有するコロイド状
シリカが固形分重量で5〜50%からなるコロイド状シリ
カ溶液(以下単にコロイド溶液という)100重量部に対
し、Al,Mg,Ca,Znの燐酸塩の1種または2種以上を130〜
250重量部、無水クロム酸、クロム酸塩、重クロム酸塩
の1種または2種以上を10〜40重量部加えた絶縁皮膜形
成用塗布剤を塗布し焼付け処理する。
本発明を実施するに際しては、20nm以下の粒子径を有
するコロイド状シリカが固形分重量で50〜95%、150〜2
000nmの粒子径を有するコロイド状シリカが固形分重量
で5〜50%からなるコロイド溶液を得るのに、粒度分布
を上記規定を満足する範囲で有する1種類のコロイド溶
液を準備してもよいし或は、粒子径を均一に調整した2
種類以上のコロイド状シリカを混合して上記規定を満足
せしめるようにしてもよい。
次に、本発明における諸条件の限定理由を説明する。
本発明においては、絶縁皮膜形成用塗布剤の塗布、焼
付け処理の段階で、絶縁皮膜形成用塗布剤として、20nm
以下の粒子径を有するコロイド状シリカが固形分重量で
50〜95%、150〜2000nmの粒子径を有するコロイド状シ
リカが固形分重量で5〜50%からなるコロイド溶液100
重量部に対し、Al,Mg,Ca,Znの燐酸塩の1種または2種
以上を130〜250重量部、無水クロム酸、クロム酸塩、重
クロム酸塩の1種または2種以上を10〜40重量部加えた
ものを用いるようにしている。
このように、微粒子のコロイド状シリカ中に粗粒子の
コロイド状シリカを適当量配合し分散させることがポイ
ントである。
20nm以下の粒子径を有するコロイド状シリカが固形分
重量で50〜95%、150〜2000nmの粒子径を有するコロイ
ド状シリカが固形分重量で5〜50%の範囲で絶縁皮膜に
おける著しい滑り性改善効果が現れる。ベースとなる微
粒子のコロイド状シリカは、20nm以下の粒子径であるこ
とが重要であり、20nmを超えると絶縁皮膜の基本的な特
性である鉄損、磁歪の改善効果を小さくしたり、皮膜の
不透明化を生じ外観を損なう等の問題を惹起するととも
に、全体の粒子径が粗くなることにより、逆に皮膜のす
べり性も劣化してくる。
微粒子のコロイド状シリカに対し配合される粗粒子の
コロイド状シリカの粒子径は、150〜2000nmである。粒
子径が150nmに満たないと、潤滑性の改善効果が得られ
ない。一方、粒子径が2000nmを超えると、すべり性およ
び耐熱性(耐スティッキング性)はあっても、製品を積
層するときに占積率の低下をもたらすから好ましくな
い。
次に、コロイド溶液と燐酸塩の配合は、コロイド溶液
100重量部に対し、Al,Mg,Ca,Znの燐酸塩の1種または2
種以上を130〜250重量部である。これは、絶縁皮膜によ
る張力効果や皮膜の耐熱性を考える場合、重要である。
コロイ溶液100重量部に対する燐酸塩の配合割合が130重
量部より少ないと、コロイド状シリカに対するバインダ
ーの不足から形成後の絶縁皮膜に亀裂を生じ、絶縁皮膜
による張力効果を喪失するから好ましくない。一方、配
合割合が250重量部を超えると、皮膜の外観の白濁化或
は張力効果の減少を招きさらには歪取り焼鈍での耐熱性
の劣化が急激に進むから上限を250重量部に限定する。
燐酸塩としては、Al,Mg,Ca,Znの燐酸塩の1種または
2種以上が用いられる。燐酸塩としては市販の50%溶液
でよい。燐酸Caは、溶解度が小さく50%溶液が得られな
いから、計算上50%溶液にバランスするよう添加され
る。
ベース皮膜の潤滑性を向上させる意味からは、最も好
ましい燐酸塩の組合せはAl−Mg−Ca,Al−Ca,Mg−Caであ
る。
無水クロム酸、クロム酸塩、重クロム酸塩は、燐酸塩
の量に応じて配合される。
燐酸塩130〜250重量部に対し、10重量部未満では、皮
膜成分中のフリー燐酸をCrPO4生成等の反応によって安
定化させるために必要な量とならず、ベタツキ発生の原
因となる。一方、40重量部を超えると、フリーのクロム
酸が過剰となり、この場合もベタツキを生じる。
本発明においては、コロイド液の製造段階で適度に粒
子径を分散させるように製造したものを使用するか或
は、微粒子、粗粒子のコロイド状シリカをそれぞれ別々
に製造したものを2種以上混合して、本発明に規定する
粒子径を組合せとなるようにするか何れの手段も適用で
きる。
次に、本発明によって形成される絶縁皮膜が、潤滑
性、耐熱性に優れる理由を述べる。電磁鋼板表面の潤滑
性を向上させるメカニズムとしては、 1)皮膜表面がスムーズであること 2)皮膜自体の潤滑性が良好であることの他に、 3)表面形状効果という観点から、点接触の方がスムー
ズにすべるという機構が考えられる。
本発明者等が提案した特開昭61−4773号公報に開示さ
れている方法は、1)の効果によるものである。
本発明は、3)の形状効果によってもたらされる点接
触によるものであり、特に本発明では、コロイド状シリ
カの粒子径の組合せを利用するため、絶縁皮膜表面での
コロイドの球面形状により、著しい効果がもたらされる
ものと推察される。
第3図(a),(b)は、本発明の適用によって得ら
れた製品の表面形状と潤滑性の関係を示す図であり、本
発明により、FF値(A法)、潤滑性(B法)ともに著し
く改善されている。
(実施例) 重量%でC;0.078%,Si;3.22%,Mn;0.068%,S;0.024
%,酸可溶Al;0.032%,残部Fe及び不可避的不純物から
なる珪素鋼スラブを公知の方法で熱延し、焼鈍後冷延
し、最終板厚0.295mmとした。次いで脱炭焼鈍,焼鈍分
離剤塗布の後、1200℃×20時間の最終仕上焼鈍を行い、
グラス皮膜を形成した。次に余剰の焼鈍分離剤を水洗に
より除去し、軽酸洗の後、第2表に示すようにコロイド
状シリカの粒子径と燐酸塩を燐酸塩を調整した絶縁皮膜
剤の焼付後の重量で4.5g/m2になるように塗布し、830℃
×30秒間N2中で焼付け処理を行った。この製品板からサ
ンプルを切り出し、FF値(A法)、潤滑性(B法)、耐
スティッキング性等について調査した。結果を第3表に
示す。
(発明の効果) 本発明によれば、鋼板表面の滑り性と耐熱性が良好
で、変圧器製造における鉄心の加工性が優ていると共に
変圧器製品の磁気特性を良好ならしめる方向性電磁鋼板
を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は絶縁皮膜の滑り摩擦係数を測定する手段(A
法)を示す図、第2図(a),(b)は電磁鋼板を鉄心
へ加工後、歪取焼鈍するときのスティッキング性を調査
する方法を示す図で、(a)は歪取焼鈍時におけるステ
ィッキング性調査に際し、歪取焼鈍でのサンプルの積層
状態を示す図、(b)は歪取焼鈍終了後、層間の焼付き
状態を測定するときの態様を示す図、第3図(a),
(b)は、本発明によって得られた製品の表面形状と潤
滑性の関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−257483(JP,A) 特開 昭61−41778(JP,A) 特開 昭53−28043(JP,A) 特開 昭52−25296(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】珪素鋼スラブを熱間圧延し焼鈍した後、1
    回或は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行って最終
    板厚とし、この材料を脱炭焼鈍し焼鈍分離剤を塗布した
    後最終仕上焼鈍を施し、次いで絶縁皮膜形成用塗布剤を
    塗布し焼付け処理した後ヒートフラットニングを施す方
    向性電磁鋼板の製造方法において、20nm以下の粒子径を
    有するコロイド状シリカが固形分重量で50〜95%、150
    〜2000nmの粒子径を有するコロイド状シリカが固形分重
    量で5〜50%からなるコロイド溶液100重量部(固形分
    として)に対し、Al,Mg,Ca,Znの燐酸塩の1種または2
    種以上を固形分重量で130〜250重量部、無水クロム酸,
    クロム酸塩,重クロム酸塩の1種または2種以上を固形
    分重量で10〜40重量部加えた絶縁皮膜形成用塗布剤を塗
    布し、焼付け処理することを特徴とする鉄心の加工性お
    よび耐熱性の優れる方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方
    法。
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