JP2698253B2 - 銅を含む塩化第二鉄エッチング液の処理方法 - Google Patents

銅を含む塩化第二鉄エッチング液の処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、銅を含む塩化第二鉄を
含むエッチング液の処理方法に関するもので、特に当該
エッチング液を隔膜電解処理するとともに、そこで発生
する塩素ガスを別のエッチング液の再生処理に用いる方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、集積回路基板のパターンを形成
するエッチング工程等においてエッチング液として塩化
第二鉄溶液が使用される場合、前記工程から流出するエ
ッチング廃液は、環境汚染防止上および経済的要請から
再生し、エッチング操作に再利用することが望ましく、
当該廃液から銅を回収し、かつエッチング液を再生する
手段として、従来から種々の方法が提案され実用化され
ている。そしてそれらの方法のうち、隔膜によって陽極
室と陰極室とに区分された電解槽を用いてエッチング廃
液を電解し、陰極側に金属銅を析出させて回収するとと
もに、陽極側において塩化第二鉄を酸化再生する電解法
が特に知られている。
【0003】このような電解による方法では、エッチン
グによってプリント基板の銅板又は銅箔を溶解して含む
エッチング廃液中には、塩化鉄及び銅基板からのイオン
としての3価の鉄イオン、2価の鉄イオン、2価の銅イ
オン及び1価の銅イオンが含まれている。かかるエッチ
ング廃液の電解時には、電解槽の陰極で電解還元反応が
生起するが、その際、
【0004】
【化1】 Fe3++e-→Fe2+
【0005】の反応が優先し、次いで
【0006】
【化2】 Cu2++2e-→Cu+-→Cu
【0007】の反応が生じる。即ち、液中では、先ず塩
化第二鉄が塩化第一鉄に還元され、次いで塩化第二銅が
塩化第一銅に還元され、この後に始めて金属銅の析出が
見られる。そのため、例えば、回収装置をクローズド化
して連続的に電解を行う場合には、一旦陰極で析出した
金属銅の一部、とりわけ、電極から溶液中に脱落した金
属銅粉がそのまま放置されていると、新たに給送される
エッチング廃液中のFeCl3 又はCuCl2 と次のよ
うに反応する。
【0008】
【化3】 FeCl2+Cu→FeCl2+CuCl
【0009】
【化4】 CuCl2+Cu→2CuCl
【0010】このため、一旦析出した金属が再び溶液中
に溶解してしまい、銅の回収が思わしくないとともに、
当該溶解によって再生液中にCuClが相当量含まれる
こととなって、エッチング効率が低下する。
【0011】そこで、特開昭55−18558号公報に
おいて、銅を含む塩化第二鉄を含むエッチング廃液から
電解によって連続的に銅を回収し且つ塩化第二鉄エッチ
ング液を再生するにあたって、前記電解還元工程を、塩
化第二鉄イオン・塩化第二銅イオンから塩化第一鉄イオ
ン・塩化第一銅イオンへの第一工程と、金属銅を析出す
る第二工程とに区分することが提案されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭
55−18558号公報に開示された電解法に基づく銅
回収方法は、電解還元工程を2段階に分け、1段目で、
銅電析を起こす直前までエッチング液を還元する方法
で、設備が複雑な上、液組成の管理が難しい等の欠点が
ある。また、当然発生すると考えられる塩素ガスの処理
方法が明記されておらず、放出塩素ガスにより作業環境
が悪化する恐れがある。
【0013】そこで本発明は、上記した従来方法での問
題に鑑み、電解処理を1段で行いながら、クローズド化
した場合に生じるとされている種々の不具合を回避し
て、簡単な操作で、しかも低い運転コストで、エッチン
グ廃液を処理するとともに、発生する塩素ガスを系外に
放出することなく、安全に有効利用することを課題とし
ている。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を、銅
を含む塩化第二鉄エッチング液を隔膜電解法で処理し、
3価の鉄イオン濃度を30g/l 以下、銅イオンを20g/
l 以下に調整した陰極室で銅を電析回収するとともに、
陽極室で発生する塩素ガスをエッチング工程で使用して
いる別の銅を含む塩化第二鉄エッチング液に導き、当該
液を再生することにより解決した。陰極液中の3価の鉄
イオン及び1価、2価の銅イオンの濃度を所定以下に調
整することによって、一旦析出した銅の再び溶解するこ
とを防止することが可能になった。
【0015】本発明の基本概念は、エッチング液を隔膜
電解法と塩素ガス法の両方で処理することを内容とする
もので、とりわけ、隔膜電解の陽極室で発生する塩素ガ
スすべてを塩素ガス法に利用するので、全く無駄が生じ
ない。
【0016】塩素ガス法については、例えば、特開平2
−254188号公報で指摘されているように、従来は
理論上のみの再生方法と考えられていたが、本発明者は
その有効性を確認するとともに、当該公報で言及されて
いる「環境衛生上の問題」を特に本方法のために開発し
た密閉型の電解槽を使用し、吸収塔を併用することによ
り回避することに成功した。
【0017】本発明の詳細な工程を以下に説明する。
【0018】銅を含む塩化第二鉄エッチング液を、隔膜
電解槽の陰極室に導き、陰極液中の3価の鉄イオン濃度
を30g/l 以下、銅イオンを20g/l 以下に調整しなが
ら金属銅を回収する工程と、銅回収後の液を次いで陽極
室に導き、含有する2価の鉄イオン及び1価の銅イオン
を3価の鉄イオン及び2価の銅イオンに酸化するととも
に塩素ガスを発生させる工程と、当該発生塩素ガスを別
の銅を含む塩化第二鉄エッチング液に接触させて、当該
液を酸化する工程とによりエッチング液を再生処理する
のが、好適である。
【0019】また、銅を含む塩化第二鉄エッチング液
を、隔膜電解槽の陰極室に導き、陰極液中の3価の鉄イ
オン濃度を30g/l 以下、銅イオンを20g/l 以下に調
整しながら金属銅を回収する工程と、銅回収後の液を別
の銅を含む塩化第二鉄エッチング液と合流させる工程
と、金属銅回収工程で発生する塩素ガスを、合流液に接
触させて、当該合流液を酸化する工程とによりエッチン
グ液を再生処理しても、好適である。
【0020】本発明で使用される電解隔膜としては、
陰極中に存在する鉄乃至銅の塩素錯体が陽極側に移動す
ることを制限し、多少の液面の揺れ等では、陰極液と陽
極液の混合が起こらない程度の気密性を有し、できる
かぎり電気抵抗の小さいものであり、耐薬品性、とり
わけ耐塩素化性に優れるものであって、膜自体が複極
を形成しない、電気的に中性、即ち、極性を持たないも
のである等の特性を有することが要求され、例えば、モ
ドアクリル、酢酸ビニル、ポリエステル、サラン等を挙
げることができる。
【0021】また電解槽での陽極には、塩素ガス発生の
際の過電圧を低下させる機能を有するものが求められ、
白金や、寸方安定アノード(dimentionaly stable anod
e、DSAと略称される)と称されるRuO 2 -Sb/Ti、IrO
2 -Pt/Tiを用いるのが好ましい。陰極には、銅を用い
るのが好ましい。これらの電極仕様により、液に全く不
純物を溶出させることなく、また電極板から剥離しやす
い銅の結晶を得ることができる。
【0022】
【作用】エッチング槽で生じ、3価の鉄イオン、2価の
鉄イオン、2価の銅イオン及び1価の銅イオンを含有す
るエッチング液を、先ず隔膜電解槽の陰極室に導く。陰
極液中の3価の鉄イオン濃度を30g/l 以下、銅イオン
を20g/l 以下に調整されて循環する陰極液の流入・流
出する当該陰極室内で、先ず、3価の鉄イオンが2価の
鉄イオンに還元され、その後、過剰の2価の銅イオン及
び1価の銅イオンは還元電析され、金属銅が回収され
る。
【0023】そして銅濃度を減じ陰極室を出る液を、循
環系から抜き出して陽極室に導く。当該陽極室内では、
塩素イオンが電子を失って塩素ガスが発生する。当該塩
素ガスは、吸収塔に導かれる。塩素ガスの発生により塩
素濃度を減じ2価の鉄イオン・1価の銅イオンを3価の
鉄イオン・2価の銅イオンに電解酸化された液は、陽極
側の循環系から抜き出されて再生エッチャントとしてエ
ッチング槽に戻される。
【0024】エッチング槽で生じたエッチング液を、隔
膜電解槽に導く他に、吸収塔に導く。隔膜電解槽で発生
し当該吸収塔に導かれた塩素ガスによって、当該エッチ
ング液は、
【0025】
【化5】 2FeCl2+Cl2→2FeCl3
【0026】
【化6】 2CuCl+Cl2→2CuCl2
【0027】の反応式で酸化され再生される。再生され
た塩化第二銅・塩化第二鉄液は、再生エッチャントとし
てエッチング槽に戻される。
【0028】また、陰極室で還元され銅濃度を減じ当該
室を出る液を陽極室に導くことなく、吸収塔に導かれる
エッチング液に合流させてもよい。この場合、陰極室で
の反応に伴い、電解槽の隔膜を透過して陽極側へ移動す
る塩素イオンが酸化され、塩素ガスが発生するので、こ
れを吸収塔へ導くことにより、前記合流エッチング液
は、再生される。再生された液は、再生エッチャントと
してエッチング槽に戻される。この場合には、陽極室か
ら発生する塩素ガスが少量となるので、塩酸と過酸化水
素を補助的に添加して、合流エッチング液の酸化再生に
用いてもよい。
【0029】本発明においては、通常の電解方法では発
生を極力抑えるように考慮されていた塩素ガスを、完全
密閉された系内においてエッチング液の再生に積極的に
利用するものである。
【0030】
【実施例】以下に、本発明の実施例を挙げて更に具体的
に説明する。
【0031】実施例1 図1に概念的に示された装置において、銅成分87.4
g/l (うち1価の銅イオン0.0g/l )、鉄成分100
g/l (うち2価の鉄イオン23.4g/l )、塩素成分3
17g/l の組成からなるエッチング液を4.1ml/minの
流量で、先ず、モドアクリル製隔膜を有し電解電圧2.
1Vの隔膜電解槽1の陰極室(電極;Cu)に導く。銅
成分13.3g/l 、鉄成分104.8g/l 、塩素成分2
73g/lの組成で、3価の鉄イオン濃度を30g/l 以下
に調整してなる循環陰極液の流入・流出する当該陰極室
内で、先ず、3価の鉄イオンを2価の鉄イオンに還元
し、しかる後に、過剰の2価の銅イオン及び1価の銅イ
オンを還元電析し、析出された金属を調べたところ、銅
成分が97.1%である結果を得た。回収銅の量は、1
7.3g/h であった。回収銅1gあたりの電解電力は
3.64Wh/gであった。
【0032】そして銅濃度を減じ陰極室を出る液を、循
環系から抜き出して陽極室(電極;RuO2 −Sb/T
i)に導く。当該陽極室内では、塩素イオンが電子を失
って6.3g/h の塩素ガスが発生する。当該塩素ガス
は、吸収塔2に導かれる。塩素ガスの発生により塩素濃
度を減じ2価の鉄イオン・1価の銅イオンを3価の鉄イ
オン・2価の銅イオンに電解酸化され、陽極側の循環系
から抜き出された液の組成は、銅成分15.7g/l (う
ち1価の銅イオン0.0g/l )、鉄成分104g/l (う
ち2価の鉄イオン0.0g/l )、塩素成分247g/l で
あった。当該液は、再生エッチャントとしてエッチング
槽3に戻される。
【0033】エッチング槽3で生じ、銅成分37.5g/
l (うち1価の銅イオン0.0g/l)、鉄成分106g/l
(うち2価の鉄イオン51.4g/l )、塩素成分24
8g/l の組成からなるエッチング液を、2.3ml/minの
流量で吸収塔2に導く。隔膜電解槽1で発生し当該吸収
塔2に導かれた上記塩素ガスによって、当該エッチング
液を酸化した。その結果得られた液の組成は、銅成分3
7.5g/l (うち1価の銅イオン0.0g/l )、鉄成分
106g/l (うち2価の鉄イオン0.0g/l )、塩素成
分292g/l (うち、溶存塩素量11.4g/l )であっ
た。即ち、塩化第二銅・塩化第二鉄液として再生された
ことが確認された。当該液は、再生エッチャントとして
エッチング槽3に戻される。
【0034】実施例2 図2に概念的に示された装置において、銅成分89.5
g/l (うち1価の銅イオン0.0g/l )、鉄成分99.
1g/l (うち2価の鉄イオン15.7g/l )、塩素成分
318g/l の組成からなるエッチング液を4.6ml/min
の流量で、先ず、モドアクリル製隔膜を有し電解電圧
2.6Vの隔膜電解槽1の陰極室(電極;Cu)に導
く。銅成分6.8g/l 、鉄成分100g/l 、塩素成分2
39g/l の組成で、3価の鉄イオン濃度を30g/l 以下
に調整してなる循環陰極液の流入・流出する当該陰極室
内で、先ず、3価の鉄イオンを2価の鉄イオンに還元
し、しかる後に、過剰の2価の銅イオン及び1価の銅イ
オンを還元電析し、析出された金属を調べたところ、銅
成分が96.6%である結果を得た。回収銅の量は、2
2.7g/h であった。回収銅1gあたりの電解電力は
4.58Wh/gであった。
【0035】そして銅濃度を減じ陰極室を出る液を、循
環系から抜き出して、エッチング槽3で生じた別のエッ
チング液に合流した。銅成分36.6g/l (うち1価の
銅イオン0.0g/l )、鉄成分104g/l (うち2価の
鉄イオン19.3g/l )、塩素成分271g/l の組成か
らなる当該合流液を、17.3ml/minの流量で吸収塔2
に導く。
【0036】隔膜電解槽1の陽極室(電極;RuO2
Sb/Ti)内では、前記陰極室での反応に伴い、隔膜
を透過して陽極側へ移動する塩素イオンが酸化され、2
1.8g/h の塩素ガスが発生する。当該塩素ガスは、吸
収塔2に導かれる。
【0037】当該塩素ガスによって、前記合流液を酸化
した。その結果得られた液の組成は、銅成分36.6g/
l (うち1価の銅イオン0.0g/l)、鉄成分104g/l
(うち2価の鉄イオン0.0g/l )、塩素成分292g
/l (うち、溶存塩素量8.7g/l )であった。即ち、
塩化第二銅・塩化第二鉄液として再生されたことが確認
された。当該液は、再生エッチャントとしてエッチング
槽3に戻される。
【0038】
【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、
本発明は以下の効果を奏するものである。
【0039】本発明は、陰極液中の3価の鉄イオン濃度
及び銅イオン濃度を所定以下に調整することで、従来不
可能と考えられていた一段階による銅回収装置のクロー
ズド化に成功した。
【0040】また本発明は、エッチング液を隔膜電解法
と塩素ガス法の両方で処理するので、無駄なく当該液を
再生することができ、また90%以上の高純度の銅を回
収することができる。
【0041】回路基板以外の分野においても、塩化第一
銅・塩化第一鉄の塩化第二銅・塩化第二鉄への変換は必
要なことが多く、余剰廃液を生ぜず、また環境汚染の問
題も生ずることのない本発明の処理方法は、極めて有効
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る概念フロー図である。
【図2】本発明の別の実施例に係る概念フロー図であ
る。
【符号の説明】
1 隔膜電解槽 2 吸収塔 3 エッチング槽
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C25F 7/02 C25F 7/02 (56)参考文献 特開 昭55−18558(JP,A) 特開 昭55−2763(JP,A) 特開 昭62−235482(JP,A) 特開 昭55−145176(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅を含む塩化第二鉄エッチング液を隔膜
    電解法で処理し、3価の鉄イオン濃度を30g/l 以下、
    銅イオンを20g/l 以下に調整した陰極室で銅を回収す
    るとともに、陽極室で発生する塩素ガスをエッチング工
    程で使用している別の銅を含む塩化第二鉄エッチング液
    に導き、当該液を再生することを特徴とするエッチング
    液の処理方法。
  2. 【請求項2】 銅を含む塩化第二鉄エッチング液を、隔
    膜電解槽の陰極室に導き、陰極液中の3価の鉄イオン濃
    度を30g/l 以下、銅イオンを20g/l 以下に調整しな
    がら金属銅を回収する工程と、銅回収後の液を陽極室に
    導き、含有する1価の銅イオン及び2価の鉄イオンを2
    価の銅イオン及び3価の鉄イオンに酸化するとともに塩
    素ガスを発生させる工程と、当該発生塩素ガスを別の銅
    を含む塩化第二鉄エッチング液に接触させて、当該液を
    酸化する工程ととを有することを特徴とする請求項1に
    記載のエッチング液の処理方法。
  3. 【請求項3】 銅を含む塩化第二鉄エッチング液を、隔
    膜電解槽の陰極室に導き、陰極液中の3価の鉄イオン濃
    度を30g/l 以下、銅イオンを20g/l 以下に調整しな
    がら金属銅を回収する工程と、銅回収後の液を別の銅を
    含む塩化第二鉄エッチング液と合流させる工程と、前記
    金属銅回収工程で発生する塩素ガスを、合流液に接触さ
    せて、当該合流液を酸化する工程とを有することを特徴
    とする請求項1に記載のエッチング液の処理方法。
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