JP2691148B2 - シート状レンズの製法 - Google Patents

シート状レンズの製法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主としてフレネル
レンズ、液晶ディスプレイにおける光拡散板等として光
学的に又は照明目的で使用される薄いシート状レンズの
製法に係る。
【0002】
【従来の技術】従来におけるシート状レンズの製法とし
ては、例えばプレス成形法、射出成形法及びコーティン
グプレス成形法がある。これらの内で最も汎用されてい
るプレス成形法は、一般に加熱プレス機と冷却プレス機
とを併用し、金型と金属製鏡面板とを1セットとして、
その間にレンズ用熱可塑性合成樹脂シートを配置した
後、加熱プレス機にて加熱・予備プレス成形し、次いで
予備成形シートを挟持している金型及び鏡面板を冷却プ
レス機に移送し更にプレスして最終成形すると共に成形
シートを冷却する方法である。尚、1台のプレス機を使
用し、先ず蒸気を送って金型を加熱すると共に熱可塑性
合成樹脂シートを予備プレス成形し、次いで冷却水を送
って金型を冷却しつつ最終プレス成形する方法も過去に
は実施されていたが、能率が悪いために、現在では殆ど
利用されてはいない。
【0003】射出成形法は、両金型(一方は鏡面板に相
当)にて形成される閉鎖性空間部に合成樹脂溶融物を注
入充填し、次いで金型を冷却することにより合成樹脂溶
融物を固化して成形する方法である。
【0004】一方、コーテイングプレス成形法は、ベー
ス合成樹脂フィルムに光重合性モノマー又は光増感重合
性モノマーを均一に塗布し、平板又はロールタイプの金
型によりパターンを転写し、次いで紫外線等を照射する
ことによりパターン転写モノマー層を重合硬化させて成
形品とする方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題乃至発明の目的】上記の
従来法は何れもバッチ式であり、連続的に成形加工がで
きない点に共通する課題を有しており、更に個々的には
次のような課題を有している。即ち、プレス成形法は、
加熱プレス機と冷却プレス機とを必要とし、加熱加工と
冷却加工に要する所要時間が長く(例えば、加熱加工に
際しては30kg/cm2プレスで150秒、冷却加工に際し
ては100kg/cm2プレスで150秒)、加熱成形シート
を挟持している金型と鏡面板とを加熱プレス機から冷却
プレス機に移送せねばならず、又成形後の離型が困難で
あり、成形加工に熟練を要する点に課題がある。
【0006】射出成形法は、近年要求される薄いシート
状レンズの製作が本質的に困難であり、又射出される合
成樹脂溶融物と射出直前の金型温度との関係が微妙であ
り、又溶融物の固化の進行と金型の冷却温度がマッチし
ないと成形品にヒケや歪みを生じる可能性があり、更に
固化時に収縮率の大きい素材は転写率が低くなるので使
用できない点に課題がある。
【0007】一方、コーティングプレス成形法は、高価
な光重合性又は光増感重合性材料を用いる必要性があ
り、又紫外線等の光照射装置を用いねばならず、装置が
大型で高価となる点に課題がある。
【0008】従って、本発明の目的は従来技術における
上記のような課題を生じることなしに高性能な且つ薄い
シート状レンズを効率的かつ経済的に製造する方法を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】既述の課題を解決するた
めに、本発明者は種々検討を重ねた結果、原料材料の選
択幅が広いこと及び転写精度が高いこと等の点からプレ
ス成形法を採択し、その改良を試みた。
【0010】その結果、プレス機の固定プレス板側及び
可動プレス板側に冷却機能を有する定板をそれぞれ配置
し、これらの定板間に、可動定板側から順に電極板、金
属製鏡面板、レンズ用金型、絶縁機能を有するクッショ
ン板、電極板及び絶縁板が配置されており、上記の鏡面
板と金型との間にレンズ用熱可塑性合成樹脂シートを間
挿し、上記の両電極板間に電圧を印加して金型を誘導加
熱すると共に上記の熱可塑性合成樹脂シートをプレス成
形し、次いで電圧を解き且つプレス状態を維持したまま
上記の定板により冷却した後に離型させれば、シート状
レンズが効率的に製造し得ることを見い出して本発明を
完成するに至った。
【0011】即ち、本発明は基本的には、従来のプレス
成形法において使用されてきた2台のプレス機、即ち加
熱プレス機と冷却プレス機を単一のプレス機とし、プレ
ス機間の移送工程を省略するものであり、その結果、レ
ンズ用熱可塑性合成樹脂シートとして単葉シートのみな
らず長尺シートの使用が可能となる。
【0012】何故ならば、従来のプレス成形法において
は、2台のプレス機を使用する関係上、長尺のシートで
は材料の無駄となるので単葉シートを使用せざるを得な
かったが、本発明では唯1台のプレス機が使用されるの
で、長尺の材料シートを機械的に且つ間欠的に送ること
により逐次成形することができ、従って、手作業的に単
葉シートをセットする必要性を回避することができ、操
作的にも有利となる。
【0013】本発明方法において、金型に迅速且つ均一
な加熱をもたらすために、電極には高周波電圧を印加す
るのが有利である。高周波電圧を印加する場合には、加
熱所要時間が約30秒、冷却所要時間が約60秒、熱間
及び冷間加工時におけるプレス圧力が共に約30kg/cm2
で成形が可能であり、従来のプレス成形法と比較すると
成形条件が緩和され、所要時間も著しく短縮する。尚、
本発明方法を実施するプレス機におけるクッション板は
文字通り緩衝用に使用されるが、上記の方法が高周波誘
導加熱であるために当該部材は絶縁性材料である必要性
があり、例えば珪素樹脂製であることができる。
【0014】上記の本発明方法における加熱方式は高周
波誘導加熱であるが、誘電加熱方式に変更して実施する
こともできる。この場合にはプレス機の固定プレス板側
及び可動プレス板側に冷却機能を有する定板をそれぞれ
配置し、これらの定板間に、可動定板側から順に金属製
鏡面板、シート状レンズ用金型、絶縁板が配置されてお
り、上記の鏡面板と金型との間にレンズ用熱可塑性合成
樹脂シートを間挿し、上記の金型及び鏡面板を電極とし
電圧を印加して上記の熱可塑性合成樹脂シートを誘電加
熱すると共に該熱可塑性合成樹脂シートをプレス成形
し、次いで電圧を解き且つプレス状態を維持したまま上
記の定板により冷却した後に離型させることに実施され
る。
【0015】即ち、誘電加熱の場合には別個に電極板を
設ける必要性はなく、金型及び金属製鏡面板を以って両
電極に代えることができる。但し、金型は高価であり、
その保護を考慮するならば、金型とクッション板との間
に導電製の、例えば銅製の板材を配置し、これを一方の
電極とするのが実用的である。この誘電加熱方式を採用
する場合には成形されるべき熱可塑性合成樹脂シート自
体が発熱するので、加熱所要時間が約10秒と大幅に短
縮する。
【0016】誘電加熱の場合には、成形加工されるべき
熱可塑性合成樹脂シートを加熱プレス処理に先立ち予備
加熱するのが有利である。何故ならば、誘電加熱の場合
には加熱されるべき物体の初期温度に起因して熱可塑性
合成樹脂シート全体が一様に加熱されずに発熱ムラの生
じる可能性があるからである。
【0017】誘導加熱又は誘電加熱を問わずに成形条件
が苛酷であると、成形品の離型が困難となる場合がある
が、金型の周縁部に開口を設け、該開口から空気等のガ
スを噴射すれば、離型が容易となる。
【0018】本発明方法において使用されるレンズ用合
成樹脂シートの素材は、光透過性等の制限はあるが熱可
塑性を有していれば任意の合成樹脂材料が使用可能であ
り、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレ
ン樹脂、塩化ビニル樹脂等を例示することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明によるシート状レンズの製
法を工程順に説明する。第1工程ではレンズ用熱可塑性
合成樹脂シートが所定の寸法になされる。寸法は使用さ
れるプレス機に依存するが、単葉シートの場合には一般
にA4の大きさである。しかしながら、本発明方法は単
葉シートのみならず、長尺シートの使用を企図してお
り、この場合には所定幅の且つロール状に巻かれたシー
トが購入使用される。
【0020】第2工程においては、第1工程で得た所定
形状のレンズ用熱可塑性合成樹脂シートが人為的又は機
械的に(長尺シートの場合には、当然のことながら機械
的移送が採用されよう)、冷却機能をも有する高周波加
熱プレス機にセットされる。このレンズ用熱可塑性合成
樹脂シートとして本発明は薄手のものを使用することを
企図しており、その厚みは例えば400μm(0.4m
m)程度である。
【0021】第3工程は第2工程でプレス機にセットさ
れたレンズ用熱可塑性合成樹脂シートを熱間及び冷間プ
レス成形する工程である。プレス機としては、冷却機能
を備えたプレス機例えば図1に略示されているような、
冷媒(例えば水)循環式の冷却盤を備えており、従来プ
レス成形法において冷却プレスとして使用されてきたよ
うなプレス機に、高周波加熱手段を併設して用いること
ができる。
【0022】図3には金型を誘導加熱して熱可塑性合成
樹脂シートを軟化させると共に熱間プレス加工し、次い
で冷間プレス加工してシート状レンズに成形する高周波
加熱プレス機が示されている。この高周波加熱プレス機
は固定プレス板1と可動プレス板2との間に、冷却水循
環路(図示せず)を有する定板B,B’を介して高周波
発振機(図示せず)に接続された電極板3,4と、レン
ズ用金型5と、レンズ用熱可塑性合成樹脂シート6と、
金属製鏡面板7と、絶縁材料製クッション板8とを配設
し、前記電極板3と固定プレス板Bとの間に絶縁体9を
取り付け且つ電極板4を接地させており、且つ高周波発
振器を作動させることにより両電極板間に電圧を印加し
て金型5を誘導加熱し、これによって熱可塑性合成樹脂
シート6を軟化させると共に油圧装置(図示せず)を作
動して可動プレス板2を駆動し、斯くて金型5に形成さ
れているパターンをプレス圧力により当該熱可塑性合成
樹脂シート6に精確に転写し、次いで高周波発振器の作
動を停止させ且つプレス圧力を維持しながら定板B,
B’の冷却能により熱可塑性合成樹脂シート成形体を冷
却してレンズ状シートに成形加工するものである。
【0023】尚、熱可塑性合成樹脂シート6自体を誘電
加熱して軟化させる場合には、前記の金型5と金属製鏡
面板7とを電極として使用することができ、従って電極
板3,4を別途に設ける必要性はない。但し、高価な金
型の保護を考慮する場合には、クッション板8が絶縁体
9と接した状態になされ且つクッション板8と金型5と
の間に導電性の、例えば銅製の板体が一方の電極として
配置される。
【0024】更に、最終製品であるシート状レンズの離
型を容易にするためには、金型の一部に単数個、好まし
くは複数個の円形又はスリット状の開口(図示せず)を
設けて、当該開口からガス、例えば圧搾空気を噴射すれ
ば金型に密着している成形加工品を離型させることがで
き、生産能率が向上する。
【0025】比較試験例 下記の表1には加熱プレス機と冷却プレス機とを併用す
る従来技術方法と、本発明方法(単一のプレス機を使
用、高周波誘導加熱又は誘電加熱方式を利用)による比
較試験の結果が示されている。対照例は、本出願人会社
の三郷工場内に設置されている加熱プレス機と冷却プレ
ス機を用いた場合であり、又試験例1及び2は、本発明
方法に従い上記の冷却プレス機を単独で用い、但しこの
プレス機に高周波発振機(山本ビニター株式会社製のR
H−5型)を取り付け加熱を高周波誘導加熱方式(試験
例1)又は誘電加熱方式(試験例2)で行なった場合の
ものである。尚、これらの試験例で使用した高周波発振
機の出力は5KWであり、周波数は27.12MHz±
0.126%であった。
【0026】
【表1】
【0027】表1に示されている結果から明らかなよう
に、1台の且つ高周波加熱方式を採用したプレス機を使
用する本発明のプレス成形法(試験例1及び2)は、加
熱プレス機と冷却プレス機とを併用する従来のプレス成
形法(対照例)と比較した場合に所要時間が約1/3〜
1/4に短縮し、所要プレス圧力も著しく軽減する。
【0028】
【発明の効果】プレス機が1台であり、従って従来のよ
うに加工途中で加熱プレス機から冷却プレス機に金型及
び鏡面板と共に移送する工程が省略されるのでロスタイ
ムがなく且つ熱可塑性合成樹脂材料も単葉シートのみな
らず長尺シートが使用可能となり、更に従来方法と比較
する場合に成形加工処理時間が著しく短縮し、又所要圧
力も大幅に軽減するので、シート状レンズを効率的に製
造することができ、又動力費等の製造コストを低減する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において使用するプレス機に転用される
従来の冷却プレス機の概略図である。
【図2】従来の加熱プレス機を示す概略図である。
【図3】本発明方法に使用されるプレス機であって、高
周波誘導加熱方式を採用しているプレス機の要部を示す
立面図である。
【符号の説明】
1:固定プレス板 2:可動プレス板 3:電極板 4:電極板 5:金型 6:レンズ用熱可塑性合成樹脂シート 7:金属製鏡面板 8:クッション板 9:絶縁体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // B29K 101:12 B29L 11:00 (56)参考文献 特開 平4−6124(JP,A) 特開 平5−185472(JP,A) 特開 昭62−66913(JP,A)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プレス機の固定プレス板側及び可動プレ
    ス板側に冷却機能を有する定板をそれぞれ配置し、これ
    らの定板間に、可動定板側から順に一方の電極板、金属
    製鏡面板、レンズ用金型、絶縁機能を有するクッション
    板、他方の電極板及び絶縁板が配置されており、上記の
    鏡面板と金型との間にレンズ用熱可塑性合成樹脂シート
    を間挿し、上記の両電極板間に電圧を印加して金型を誘
    導加熱すると共に上記の熱可塑性合成樹脂シートをプレ
    ス成形し、次いで電圧を解き且つプレス状態を維持した
    まま上記の定板により冷却した後に離型させることを特
    徴とする、シート状レンズの製法。
  2. 【請求項2】 両電極板間に高周波電圧を印加すること
    を特徴とする、請求項1に記載のシート状レンズの製
    法。
  3. 【請求項3】 レンズ用熱可塑性合成樹脂シートが長尺
    体であり、間欠的に送られてプレス成形されることを特
    徴とする、請求項1又は2に記載のシート状レンズの製
    法。
  4. 【請求項4】 金型の周縁部に開口が設けられており、
    シート状レンズの成形後に該開口からガスを噴射して成
    形体を離型させることを特徴とする、請求項1、2又は
    3に記載のシート状レンズの製法。
  5. 【請求項5】 プレス機の固定プレス板側及び可動プレ
    ス板側に冷却機能を有する定板をそれぞれ配置し、これ
    らの定板間に、可動定板側から順に金属製鏡面板、シー
    ト状レンズ用金型、絶縁板が配置されており、上記の鏡
    面板と金型との間にレンズ用熱可塑性合成樹脂シートを
    間挿し、上記の金型及び鏡面板を電極とし電圧を印加し
    て上記の熱可塑性合成樹脂シートを誘電加熱すると共に
    該熱可塑性合成樹脂シートをプレス成形し、次いで電圧
    を解き且つプレス状態を維持したまま上記の定板により
    冷却した後に離型させることを特徴とする、シート状レ
    ンズの製法。
  6. 【請求項6】 両電極に高周波電圧を印加することを特
    徴とする請求項5に記載のシート状レンズの製法。
  7. 【請求項7】 レンズ用熱可塑性合成樹脂シートが長尺
    体であり、間欠的に送られてプレス成形されることを特
    徴とする請求項5又は6に記載のシート状レンズの製
    法。
  8. 【請求項8】 金型の周縁部に開口が設けられており、
    シート状レンズの成形後に該開口からガスを噴射して成
    形体を離型させることを特徴とする、請求項5、6又は
    7に記載のシート状レンズの製法。
  9. 【請求項9】 レンズ用熱可塑性合成樹脂シートを予備
    加熱した後にプレス機に送ることを特徴とする、請求項
    5、6、7又は8に記載のシート状レンズの製法。
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