JP4759121B2 - 燃料電池セパレータの製造装置及び製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、燃料電池セパレータの製造装置及び製造方法に関し、特に、成型後に金型から取り外す際に、エジェクタピンを使用せず、燃料セパレータを破損することなく取り出すことができる製造装置と製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料ガスと酸化ガス使用するタイプの燃料電池、その中でも固体高分子型燃料電池は、イオン導電性の固体電解質膜を、触媒が担持されたガス拡散電極からなるアノードとカソードとで挟み、さらにこれらの外側をセパレータで挟んだ構造をしている。アノード側のセパレータはアノードに燃料ガスとしての水素を供給し、カソード側のセパレータはカソードに酸化剤ガスとしての酸素を供給する。
【0003】
図3はこのような燃料電池セパレータの図である。同図に示すように、燃料電池セパレータ1は、板状の表面にガスの通路となるU字状の細い溝1aが形成されるが、ガス拡散電極とガスとの接触面積を増加させるため、溝1aは、ほぼセパレータの全面に蛇行して細かいピッチで形成されている。この溝1aは、図3(b)のようにセパレータの両面に形成される場合もあるが、片面のみの場合もある。
【0004】
このような構造のものの他に、セパレータの両面又は片面に突起が配列されていてこれらの突起相互間の隙間をガスの流路とする構造のもの、この突起と上記の溝とが組み合わされた構造のものもある。
【0005】
上記の燃料電池セパレータには、次のような性質が要求される。
▲1▼ ガス不浸透性。これは、供給される水素ガスや酸素ガスを透過させない性質をいう。通常、燃料電池は、中心の固体高分子電解質膜、その両側のガス拡散電極、その外側のセパレータまでを1単位セルとして、これらを多数積層して形成される。したがって、1枚のセパレータの少なくとも片側にはガスが流れており、セパレータがガスを通過させる性質を有していると、電池の発電効率が低下するか、発電自体が不能となり電池として成立しなくなるためである。
【0006】
▲2▼ 導電性。セパレータが燃料電池の電極となっているので、導電性が不可欠となる。
【0007】
▲3▼ 面精度すなわち、厚み精度が高いこと。これは、セパレータとアノードやカソードが接触して電気を通しているので、面精度が悪いと、接触面積が減少し、導電性が悪化するためである。また、面精度が悪いと、アノードやカソードとの間に隙間ができ、この隙間が押しつぶされる方向に力が作用すると、セパレータが割れることがあるからでもある。面精度が高いほど、接触抵抗が減少するので、燃料電池の性能が向上する。
【0008】
従来の燃料電池セパレータは、カーボンの粉末と、合成樹脂の粉末とを混合して粉末状の原料を作り、これをプレス機の下金型内に投入して上金型を被せ、プレス機で加圧・加熱して成型していた。なお、ここに言う「粉末状原料」の語は、粉状、粒状、及び短繊維状の原料の総称として用いている。
【0009】
図4によりさらにこれを説明する。同図において、2は上金型で、3は枠金型、4は下金型である。同図(a)に示すように、上下の金型を離反させ、下金型4の上に燃料電池セパレータの原料となる粉末状原料aを投入する。つぎに、(b)に示すように下金型4に上金型2を被せて粉末状原料aを加圧・加熱し、燃料電池セパレータ1を成型する。
【0010】
成型が完了したら、図4(c)に示すように、上金型2を上昇させて、下金型4に設けられたエジェクタピン5,5を上昇させ燃料電池セパレータ1を下金型4から離反させて取り出し可能な位置まで移動する。
【0011】
上金型2には、燃料電池セパレータ1の上面の凹凸状のパターン2aが形成されている。このパターン2aは、ガス拡散電極にガスを供給するためのガス流路が主体となっている。他方の下金型4の上面には燃料電池セパレータ1の下面の凹凸状のパターン4aが形成されている。
【0012】
しかし、上金型のパターン2aが燃料電池セパレータ1の上面全体のパターンであるのに対し、下金型のパターン4aは燃料電池セパレータ1の下面全体のパターンとはなっていない。これは、エジェクタピン5,5を設けたためである。
【0013】
図5は下金型4を拡大した断面図である。上述したエジェクタピン5,5の上面には、パターン4aの連続部分となるパターン5aが形成されている。パターン4aもパターン5aも共に燃料電池セパレータ1の下面に対応した凹凸であるから、これらは連続部Aに段差がないように金型を作らなければならない。もし、段差ができると、低いところではガス拡散電極との接触が悪くなって、電池の性能が落ちることになるからである。
【0014】
しかしながら、上記のような1つの金型の中にエジェクタピン5を形成すると、これらの接合部を1/100(mm)のオーダで高精度に一致させることは非常にむずかしく、接合部Aには段差ができてしまう。その結果、成型された燃料電池セパレータに、図3に示すようにエジェクタピン痕1bとして0.2mm程度の段差部分が形成されていた。また、エジェクタピン5と金型との境目にバリが出来やすく、ガスの流路を塞いでしまうこともある。さらに、エジェクタピン5の分だけ下金型4の剛性が低下してしまう、という問題もあった。
【0015】
このような問題を解決するものとして、図6に示すような製造装置も提案されている。この装置では下金型12にエジェクタピンが形成されていない。(a)に示すように上金型11を離反させ、下金型12上に原料を投入し、(b)に示すように上金型11を被せ、加圧・加熱して成型する。成型が完了したら、上金型を離反するところまでは前の従来例と同じである。この後、この従来例では、下金型12全体を上昇させて燃料電池セパレータ1を取り出せるようにしている。この従来例では、エジェクタピンを使用しないので、成型された燃料電池セパレータ1にエジェクタピン痕は形成されない。
【0016】
しかしながら、下金型12を枠金型13内で昇降させるので、下金型12と枠金型13との間に隙間sができ、ここに溶融した原料が入り込み、下金型12の昇降が阻害されてしまう。そのため、頻繁に掃除をしなければならないので、手間が掛かると同時にプレス機の停止時間が増加し効率が低下するという問題があった。また、下金型12を昇降する際に、動きが悪くなると、金型を傾斜させてしまい、場合によっては、かじりつきを起こして動かなくなることもあった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事実から考えられたもので、燃料電池セパレータの製造方法であって、手間が掛からず、装置の効率も低下させず、形成された燃料電池セパレータを破損することのない製造方法と、その製造方法を実施するための製造装置を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の燃料電池セパレータの製造装置は、上下の金型間に粉末状の原料を投入して加圧・加熱して成型する燃料電池セパレータの製造装置において、燃料電池セパレータの一方の面に対応する凹凸状のパターンが形成された上金型と、燃料電池セパレータの他方の面に対応する凹凸状のパターンが形成された下金型と、成形された燃料電池セパレータの周辺部に気体を吹き付けて下金型から燃料電池セパレータを剥離させる1又は2以上の移動自在のノズルと、上下の金型間に進退して、成形された燃料電池セパレータを取り出す吸着装置と、を有することを特徴としている。原則として、上下の金型のパターンは、セパレータの各面の全面に対応した構成とし、エジェクタピンを設けない構成である。
【0019】
または、上記下金型が燃料電池セパレータの粉末状原料が投入される空間を備えている構成としたり、上記吸着装置が、上金型又は下金型に向かって昇降可能である構成とすることができる。
【0020】
本発明の燃料電池セパレータの製造方法は、上下の金型間に粉末状の原料を投入して加圧・加熱して成型する燃料電池セパレータの製造方法において、成型後に上下の金型を離反させ、下金型上の成形された燃料電池セパレータの周辺部に1又は2以上の移動自在のノズルから気体を吹き付けて下金型から燃料電池セパレータを剥離させ、上下の金型の間に吸着装置を挿入し、成型された燃料電池セパレータを吸着して取り出すことを特徴としている。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面によって詳細に説明する。図1は本発明の燃料電池セパレータの製造装置の要部を示す図である。同図に示す本発明の装置は、プレス加工機に設置される金型を主体としている。
【0022】
上金型21は従来例で説明したのと同じであり、その下面に燃料電池セパレータ1の上面を形成する凹凸状のパターン21aが形成されている。一方の下金型22は、従来例における枠金型の部分も一体にした形状で、上面には、燃料電池セパレータ1の下面を形成する凹凸状のパターン22aを有する。これら凹凸状のパターンは、ガスの通路や冷却流体の通路を主体とするものである。そして、上金型21、下金型22のいずれにもエジェクタピンがない。したがって、パターン21a,22aは、それぞれ燃料電池セパレータ5の各片面の全面について形成されており、エジェクタピンとの境界の面を一致させる作業が不要になる。また、枠金型の部分と下金型とが一体になって原料投入のための空間22bを形成しているが、図6の従来例で問題となった隙間sを無くすことができたので、溶融した原料が入り込むこともない。特に、下金型22はエジェクタピンが無く、枠金型と一体になっているので、剛性が上がる。
【0023】
本発明では、上下の金型21,22の他に、吸着装置23と、1又は2以上のノズル25とが設けられている。吸着装置23は、プレス装置等の固定された部分に支持されており、図示しない駆動装置によって図1の左右方向と、上下方向とに移動可能である。また、この吸着装置23の下面には図示しないが幾つかの孔が穿設されており、アーム兼パイプ23aを図示しない吸引ポンプ等に接続することで、吸着装置23はその下面に接触しているものを吸着することができる。
ノズル25は、下金型22の凹凸状のパターンの周辺部に圧縮空気等の圧力の加わった気体を吹き付けるものである。このノズル25も、図示しない駆動装置によって、図1の左右方向及び上下方向に移動自在である。ノズル25は、1つのみでも良いが、対向する位置に2つ設けるとか、四角のセパレータの各辺に1つづつ設けるとか、さらには、セパレータの全周に連続したノズルを設けてもよい。
【0024】
図2(a)〜(c)は本発明の装置の使用状態、すなわち、燃料電池セパレータの製造方法を説明する図である。
まず、図2(a)のように上金型21と下金型22との間を開き、下金型22の空間22b内に燃料電池セパレータ1の製造粉末状の原料aを投入する。原料aとしては、たとえば、リン片状黒鉛(平均粒径30μm)100重量部に対し、フェノール樹脂を25重量部混合し、造粒した燃料電池セパレータ用コンパウンドを使用することができる。
【0025】
このように粉末状原料aが充填されたら上金型21を重ね、金型を温度160℃、成形圧力200kg/cm2で、5分程度保持し、300mm×250mm×2mmtの燃料電池セパレータ1を成型した。
【0026】
そして、図2(b)に示すように、上金型21と下金型22とを離反させ、ノズル25を下金型22の縁部に移動し、圧縮空気等の気体を下金型22上の燃料電池セパレータ1の周辺部に吹き付ける。吹き付けられた気体は、下金型22と燃料電池セパレータ1との間の狭い隙間を通って下金型22に達し、燃料電池セパレータ1を下金型22から剥離させる。燃料電池セパレータ1は薄くて脆いものであるが、吹き付ける気体の圧力を適当に調整することによって、破損することなく安全に下金型22から剥離することができる。この後、図2(c)に示すように、吸着装置23を下金型22の真上に水平に移動し、さらに下降させて燃料電池セパレータ1の上に軽く接触させ、吸引させる。吸着装置23の吸引部の大きさは、290mm×240mmと燃料電池セパレータ1より一回り小さい。燃料電池セパレータ1は下金型22から離れて吸着装置23に吸い付く。この状態で吸着装置23を上昇させ、さらに下金型22の上方から外れた図示しない収納位置まで水平に移動し、必要に応じて下降し、吸引を停止する。燃料電池セパレータ1は吸着装置23から離れて収容場所に取り込まれる。
このようにして成型された燃料電池セパレータはエジェクタ痕がなく、その部分にあった段差が無くなった。
【0027】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、燃料電池セパレータの一方の面に対応する凹凸状パターンが形成された上金型と、燃料電池セパレータの他方の面に対応する凹凸状パターンが形成された下金型と、上下の金型間に進退して、成形された燃料電池セパレータを取り出す吸着装置と、成形された燃料電池セパレータの周辺部に気体を吹き付けて下金型から燃料電池セパレータを剥離させる1又は2以上のノズルと、上下の金型間に進退可能な吸着装置と、を有する構成としたので、成型されたセパレータをエジェクタピンを使用することなく吸着装置で金型から取り外すことができる。したがって、セパレータにエジェクタピン痕が着かず、面精度の優れたセパレータを得ることができる。
上記の構成において、ノズルは、1つでもよいが、複数設ける方がより確実に燃料電池セパレータを下金型から剥離することができる。
【0028】
吸着装置が、上金型又は下金型に向かって昇降可能である構成とすれば、吸着装置と金型の取り出し位置との間に高低差があっても、成型後の燃料電池セパレータを確実に取り出すことができる。
【0029】
また、本発明により製造された燃料電池セパレータは、ガス流路内に、エジェクタ痕ができないようにしたので、ガス流路を塞ぐといったトラブルの発生もない。また、エジェクタ痕にできる段差も無くなるので、セパレータとガス拡散電極との間の接触を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池セパレータの製造装置の要部構成を示す模式図である。
【図2】本発明の燃料電池セパレータの製造方法を説明する図である。
【図3】燃料電池セパレータの図で、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図4】従来の燃料電池セパレータの製造方法を説明する図である。
【図5】図4の下金型の拡大断面図である。
【図6】従来の燃料電池セパレータの別の製造方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 燃料電池セパレータ
21 上金型
21a パターン
22 下金型
22a パターン
23 吸着装置
25 ノズル
a 原料
Claims (3)
- 上下の金型間に粉末状の原料を投入して加圧・加熱して成型する燃料電池セパレータの製造装置において、燃料電池セパレータの一方の面に対応する凹凸状のパターンが形成された上金型と、燃料電池セパレータの他方の面に対応する凹凸状のパターンが形成された下金型と、成形された燃料電池セパレータの周辺部に気体を吹き付けて下金型から燃料電池セパレータを剥離させる1又は2以上の移動自在のノズルと、上下の金型間に進退して、成形された燃料電池セパレータを取り出す吸着装置と、を有することを特徴とする燃料電池セパレータの製造装置。
- 上記吸着装置が、上金型又は下金型に向かって昇降可能であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池セパレータの製造装置。
- 上下の金型間に粉末状の原料を投入して加圧・加熱して成型する燃料電池セパレータの製造方法において、成型後に上下の金型を離反させ、下金型上の成形された燃料電池セパレータの周辺部に1又は2以上の移動自在のノズルから気体を吹き付けて下金型から燃料電池セパレータを剥離させ、上下の金型の間に吸着装置を挿入し、成型された燃料電池セパレータを吸着して取り出すことを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。
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