JP2690801B2 - 感光膜の製造方法 - Google Patents

感光膜の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、電子複写機等の感光部に用いる感光膜を浸
漬塗布法により均一な特性の膜を形成する製造方法に関
するものである。
〈従来の技術〉 従来から、電子複写機には一般的に円筒状の感光ドラ
ムが使用されていて、その感光ドラムの感光膜は浸漬塗
布(デッピング)による方式が一般的になっている。
以上の浸漬塗布を行なう装置の概要は、塗布液を均一
にして保つための循環装置を備えた塗布液槽と、その塗
布液槽へ円筒状基体を浸漬させた上、引き上げる昇降装
置などから構成されていた。この塗布装置により塗布膜
厚を変えるときは、前記の塗布液槽から浸漬していた円
筒状基体を引き上げる引き上げ速度で制御していた。
(この引き上げ速度を速くすれば塗布膜厚は厚くな
る。) しかし、以上の塗布方法では、そのときの塗布液の粘
度,溶剤の種類,又は、設定した膜厚などによっても多
少変わるが、引き上げでの塗布の立上りから数cmの範囲
では塗布液のタレや溶剤の蒸気などによる雰囲気が異な
るので、設定した膜厚から外れて不均一になり感光特性
も不均一になった。従って、この膜厚不均一による不良
を避けるために、その円筒状の基体を必要以上に長くす
るか、初めの塗布引上げ速度を複雑に制御することで対
応していた。
〈発明が解決しようとする課題〉 以上で説明した引き上げの初期に塗布膜厚の不均一部
ができる塗布膜の製造方法を用いるときは、円筒状基体
の長さを長くして、必要な長さの均一膜厚領域を形成す
ることは可能であるが、後加工の問題から、その円筒状
基体の長さだけでなく、それを設置する装置も大型化す
ることになり、又コストアップにもつながるという欠点
があった。
他の基体の引上げ速度を複雑に制御することで立ち上
がり部の塗布膜厚を所定の厚さにする方法も、その引き
上げ速度が変化したとき円筒状基体の表面に塗布液面部
で塗布膜に輪状の膜厚ムラができる。従って、塗布の引
上げ制御に対応した輪形の波状模様が形成されることに
なり、これにより画像に欠陥を生じるという欠点があっ
た。
本発明は、従来の感光膜の引上げ塗布による製膜方法
がもつ課題を解消するもので、この従来からの比較的簡
単な装置を使用する感光膜の製造方法を改良することで
塗布膜厚の不均一部を小さく押えることができる塗布方
法を提供することを目的としている。
〈課題を解決するための手段〉 従来の塗布液に浸漬した基体を引上げる塗布方法に於
て、その塗布の立ち上がりに不均一部ができるのは、そ
の立ち上がりのとき基体が塗布液面から出たときの雰囲
気が、その後の引上げ塗布のときの塗布液面の雰囲気と
異なることが大きい原因となっている。この引上げ雰囲
気が異なる原因は引上げの立ち上りでは、基体からの塗
布液の溶剤の蒸発が殆んどないことや、塗布液表面の空
気の流れが異なることなどによると考えられる。
従って、本発明では引上げ塗布における塗布液表面の
雰囲気を一定に保つために、引上げる基体の表面からほ
ぼ等しい間隔、また基体を保持した位置から一定の間隔
になるように、基体の引上げ方向の上下に開口をもつ筒
状のフード(風防)を設け、かつ、引上げ塗布する基体
と連動してそのフードも引上げるものである。以上の筒
状フードを用いることで前記引き上げ塗布における立ち
上がりからの塗布液面の雰囲気の変化を防ぐので、立ち
上がりの塗布膜厚不均一部を小さくすることができる。
〈作用〉 本発明による塗布液中に浸漬した基体を引き上げる塗
布に於て、引き上げる基体に近接させた筒状フードをそ
の基体と連動させて引き上げる装置を設けることによ
り、そのフード内の塗布液中の溶剤の蒸気などによる雰
囲気は、フード外の雰囲気や風の影響が少なくなり、塗
布雰囲気をほぼ一定にでき塗布膜厚の一定化を図ること
ができる。
〈実施例〉 以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
第1図に、本発明の塗布膜製造装置の一実施例の概要
構成を断面図で示している。
この第1図に於て、塗布する基体は円筒状基体2であ
り、この基体2の外周に筒状のフード1が設けられてい
る。基体2とフード1は保持具3に機械的に接続されて
いるが、フード1は数本の可変長の支持棒8を介して保
持具3に接続してあるから、基体2が保持され保持位置
から一定の間隔を隔てた開口が形成され、これによりフ
ード1は引き上げ方向に上下に開口をもつ通気筒状にな
り、基体2との間に溶剤蒸気が充満しない構成である。
以上の他、塗布液5を入れた塗布液槽4と、保持具3を
駆動モーター6の動力で昇降させる昇降部7が本塗布膜
製造装置の主な構成部で、塗布液の循環装置や装置全体
を支持する台などの図示は省略している。
以上の装置による基体2の塗布工程は、まず、保持具
3に、基体2とフード1を取り付け、モーター6を回転
させ昇降部7により保持具3を下降させて、とりつけた
基体2を槽4内の塗布液5中に完全に浸漬させる。次に
モーター6を前と逆の一定の回転速度にして、フード1
と共に基体2を一定速度で引き上げることで、基体2を
塗布液中から引き出すことにより塗布し、保持具3から
基体を取り外して、1回の塗布工程が完了する。
次の第2図は、この種の塗布装置による塗布膜の立上
がり部を拡大して示した断面である。この第2図では基
体2を塗布液5から一定速度v1で引き上げたとき、均一
な膜厚d1に達するまでの基体2上の長さがa1になり、そ
の膜厚の立ち上り角がθになったことを示している。
第3図は第2図で説明した装置により、引き上げ速度を
早くしたv2(>v1)のときの拡大した膜厚断面を示して
いる。この第3図から引き上げ速度をv2と速くすること
で、膜厚の立上り角θが大きくなり、目標の膜厚d1
なる長さは短かくなるが、膜厚が一定になるときの膜厚
d2は目標より厚くなる。従って塗布膜厚の立上がり角を
大きくし、かつ、膜厚を一定の厚さにするためには、塗
布液から引き上げていく速度を、はじめ速くして徐々に
速度を下げるという制御が必要になる。
次に第4図に示したのは本発明の主要部になる円筒の
フード1,基体2及び保持具3の配置を示した部分拡大断
面図である。この第4図で、フード1と基体2の水平間
隔をx1,棒8で接続されたフードと板状保持具3の間の
長さをx2とすると、塗布膜厚に影響する溶剤蒸気zの濃
度は、上記のx1とx2の長さで制御できるが、今回は特に
影響が大きいx2について検討した。
このx2を零にすることは、フード1の上部を密閉した
状態になりフード1内は蒸気zの流動がなく充満して、
塗布液からの溶剤の蒸発が遅くなることから粘度の関係
で塗布膜厚が薄くなってくる。又、フード1を用いる効
果は、外部からの空気の流れによる影響を抑えることで
ある。即ち、フード1により外部の空気の流れにより基
体2の周方向に膜厚差を生じていたのを防ぐ作用があ
る。
第1実施例 次の条件による塗布を行った。
塗布液は、電荷発生物質(β型銅フタロシアニン):1
重量部,ポリ−N−ビニルカルバゾール:5重量部,電荷
移送物質(4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N−
フェニル−α−ナフチルヒドラゾン):5重部,及び1.2
−ジフロロエタン:200重量の割合で混合した上、ボール
ミルで10時間分散させた。基体は直径80mmで、長さ340m
mの鏡面加工のアルミドラムである。乾燥後の膜厚20μ
mを目標とし、実施例1と比較例となる比較例1.2を作
成した。その作製条件と、形成された乾燥後の膜の形状
をまとめたのが第1表である。
第1表で乾燥後の膜厚は、FISHER社製のパーマスコープ
タイプEW8.Ie3T3で測定した。
次の第5図に上記3例の立ち上がり部での塗布膜変化
の状態を示した。この第5図から本発明のフードの採用
で、塗布膜の立ち上がり部の長さが短くなり、均一な膜
厚部分も膜厚の変化が少なくなっていることが分る。
更に、次の第6図は、上記の実施例1と比較例1につ
いて円筒のアルミドラム上の塗布膜の円周上の分布を示
している。この測定点はドラムの長さ方向で中央部の円
周上を12等分した点である。
この第6図から分るように比較例1は目標膜厚の20μ
mに対し、19.3μmから20.5μmの膜厚で、1.2μmの
膜厚差であるが、実施例1は規則的な膜厚差がなく、測
定膜厚のバラツキも±0.1μmと良好であった。
以上の実施例1と比較例1を複写機に取り付けた評価
では、実施例1ではムラのない良好な画像が得られた
が、比較例1を用いたときは、画像の端をはじめ画像ム
ラが生じていた。
第2実施例 この実施例は、次の条件で行った。
塗布液は、分散剤が下記構造式の多環キノン系顔料
(商品名Monolite Red 2Y:ICI社製):2重量部, フエノキシ樹脂(PKHH:ユニオンカーバ社製):1重量
部,及び、1.4−ジオキサン:97重量部をボールミルで12
時間分散した液を用いて、前と同じ直径80mm,長さ340mm
の鏡面ドラムに、厚さ1μmの電荷発生層を形成した。
続いて、下記構造式のヒドラゾン系化合物:1重量部, ポリカーボネート樹脂(〃ユーピロン:三菱ガス化学
社製):1重量部,及びジクロルメタン:8重量部を混合
し、攪拌機で充分攪拌溶解した塗布液を用いて電荷移送
層を形成した。この電荷移送層の膜厚は、塗布後80℃で
1時間の乾燥を行ったとき20μmになる条件にした。
以上の実施例2に於ける本発明の効果を調べるため比
較例3,及び,4を作製した。これらの作製条件,膜の形状
及び電気特性を第2表にまとめて示した。(なお、各実
施例とも電荷発生層まで同じ条件で作製し、各膜への帯
電は、複写機に搭載して行なった。) この第2実施例の結果から、本発明のフードを用いた
塗布方法により、塗布した膜は、塗布方向(上下方向)
だけでなく、その塗布方向に垂直な方向(円周方向)も
均一なり電気的な特性も均一になることが分った。
〈発明の効果〉 本発明は、簡単な構成の浸漬による塗布装置に、塗布
物と連動する筒状のフードを設け、塗布液の蒸発速度を
均一化することで、薄い塗布膜を立上りの不均一部を少
なくし、かつ、全体の膜厚の均一化が容易にしたもので
ある。従って、塗布膜の特性の向上と、塗布工程管理の
簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例の塗布装置の概要を示す断面
図、第2図と第3図は実施例の塗布法による塗布膜の立
ち上がり部を示す部分拡大断面図、第4図は本発明の実
施例の塗布膜の立ち上がり部を示す部分拡大断面図、第
5図は本発明と比較例の塗布の立ち上がり部の膜厚変化
を示す図、第6図は実施例と従来例の円周上の膜厚分布
の比較を示す図である。 1……フード,2……基体,3……保持具,4……塗布液槽,5
……塗布液,6……モーター,7……昇降部,8……支持棒。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】感光剤と溶剤からなる塗布液中に浸漬した
    基体を一定速度で引上げる塗布感光膜製造に於いて、 前記基体の感光膜塗布面から、かつ前記基体を保持する
    位置から一定間隔を隔てて設けられ、上下に開口が形成
    される通気筒状のフードを、前記基体の引き上げと連動
    させて引上げることを特徴とする感光膜の製造方法。
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