JP2690433B2 - 高強度被覆光ファイバ - Google Patents

高強度被覆光ファイバ

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JP2690433B2
JP2690433B2 JP4232689A JP23268992A JP2690433B2 JP 2690433 B2 JP2690433 B2 JP 2690433B2 JP 4232689 A JP4232689 A JP 4232689A JP 23268992 A JP23268992 A JP 23268992A JP 2690433 B2 JP2690433 B2 JP 2690433B2
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    • C03C13/00Fibre or filament compositions
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    • G02B6/00Light guides; Structural details of arrangements comprising light guides and other optical elements, e.g. couplings
    • G02B6/44Mechanical structures for providing tensile strength and external protection for fibres, e.g. optical transmission cables
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光ファイバの強度を高め
る酸性被覆系を含む光ファイバに関する。
【0002】
【従来の技術】光ファイバは通信媒体として約12年前
のその胎児段階から離陸し、信頼できる世界的規模の通
信媒体としての現在の地位を築いた。典型的な光ファイ
バはコアおよびクラッドからなる溶融シリカ(fused si
lica:融解石英)部分と一層以上の被覆材料層を有す
る。被覆材料はプリフォーム(母材)から線引きされる
ファイバを保護する。
【0003】常用の光ファイバ被覆材料は、光開始剤を
含有するアクリレート系紫外線硬化性材料である。これ
らの材料は硬化する。すなわち、遊離基硬化と呼ばれる
機構により、液体から固体に変換される。遊離基硬化系
では、吸光すると、光開始剤成分が分裂し、一対の遊離
基を生成する。この遊離基対は最初相互に拡散し、アク
リレート基末端成分と反応し、遊離基連鎖重合を開始す
る。アクリレート系被覆材料は化学的に中性である。す
なわち、故意に行わなければ酸性または塩基性の何れに
もならない。
【0004】別の種類の被覆系はカチオン硬化性であ
る。カチオン硬化系では、カチオンまたはプロトンが重
合機構における開始種および生長反応種の両方を兼ね
る。これらの事実は例えば、米国特許第4956198
号明細書およびPCT公開公報第WO90/03988
号に開示されている。PCT公開公報によれば、ファイ
バ被覆で使用できるカチオン硬化系は、硬化エネルギー
への暴露が停止された後でも重合が継続されるようなも
のである。これに対し、遊離基重合系は、硬化エネルギ
ーへの暴露が停止された場合、反応が停止するので、重
合反応は不完全になる。
【0005】現在の耐力試験値の約50000psi
(36Kg/mm2)から光ファイバの強度を更に一層
高め、更に、その強度をファイバの全長を通じて均一に
することが以前から強く望まれてきた。気密被覆が施さ
れた光ファイバは2000000psi(1440Kg
/mm2)に達する耐力試験値を有する。しかし、気密
被覆光ファイバの製造および着色は極めて困難なので、
このようなファイバが広く一般的に受け入れられるため
の障害になっている。
【0006】溶融シリカ(fused silica:融解石英)光
ファイバ強度は中性または受動環境内で老化されるより
も、酸性環境内で老化されるほうが一層高いことが知ら
れている。この事実は例えば、1979年にワシントン
D.C.で開催された光ファイバ通信に関する主題別会
議講演集の12〜14頁に掲載されたエッチ・シー・チ
ャンダン(H.C.Chandan) およびディー・カリッシュ(D.K
alish) の「様々なpH溶液中で老化された光ファイバ
の強度および動的疲れ」と題する論文中に記載されてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】均一な強度の追及に関
して、ファイバ強度を高め、そして、一層均一にするメ
カニズムの解明が望まれている。光ファイバについて昔
からずっと求められてきたことは、その強度と応力亀裂
に対する抵抗性を高めることである。このような特性は
一層信頼性の高い通信系をもたらす。得られた光ファイ
バは、水中ケーブルまたはテザードビヒクルなどのよう
な、一層高い強度が必要とされる用途で使用できるであ
ろう。
【0008】従って、本発明の目的は、硬化速度を低下
することなく、また、比較的容易に製造することができ
る高強度被覆光ファイバを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的は、コアとクラ
ッドを有するガラス製ファイバと、前記クラッドの周囲
に配置され、該クラッドと係合する部分を有する被覆系
とからなる高強度の被覆光ファイバであって、前記被覆
系は、被覆光ファイバの強度を高めるのに十分な酸性環
境に前記ガラス製ファイバをさらす材料からなる層(例
えば、被覆光ファイバの強度を高めるのに十分な酸性環
境にガラス製ファイバをさらすために、カチオン重合性
末端基で末端形成された樹脂と、カチオン硬化性末端基
で末端形成された希釈剤と、光開始剤とを含む組成物か
らなる層)を含むことを特徴とする高強度被覆光ファイ
バにより実現される。ここに、ガラス製ファイバとは、
溶融シリカ(fused silica:融解石英)則ち、珪素(S
i)を主成分とするガラスで形成されたコアとクラッド
を有することを意味する。
【0010】
【実施例】以下、図面を参照しながら本発明について更
に詳細に説明する。
【0011】図1は、特別に作製された円筒状プリフォ
ーム(母材)22からガラス光ファイバ21を線引き
し、次いで、この光ファイバを被覆するのに使用され
る、全体が符号20で表された装置の模式的構成図であ
る。光ファイバ21は、先ず、プリフォーム22を約2
000℃の温度にまで局部的に、かつ、対称的に加熱す
ることにより形成される。プリフォーム22が加熱炉2
3内に供給され、そして、この炉内を通過するにつれ
て、光ファイバ21は溶融材料から線引きされる。
【0012】図1に示されるように、この線引き装置は
加熱炉23を有し、この炉内でプリフォームは光ファイ
バサイズにまで線引きされ、その後、この光ファイバ2
1は加熱ゾーンから引き出される。光ファイバの外径は
加熱炉23の下部位置で装置24により測定され、測定
値は制御系に入力される。制御系では、外径測定値を設
定値と比較し、この結果に基づいて出力信号を発生し、
ファイバの外径が設定値に近づくように線引き速度を調
節する。
【0013】光ファイバの外径を測定した後、装置25
により保護被覆系が施され、被覆光ファイバ30が供給
される。移動する光ファイバに2重被覆層を施す方法は
米国特許第4474830号明細書に開示されている。
線引き光ファイバに2重被覆層を施す別の方法と装置は
米国特許第4851165号明細書に開示されている。
【0014】次いで、被覆光ファイバ30は同心ゲージ
26を通過し、塗料処理用の紫外線(UV)照射装置2
7を通過し、塗料を硬化させ、更に、被覆ファイバの外
径を測定するための装置28を通過した後、このファイ
バはキャプスタン29により移動され、そして、試験お
よびその後の処理操作または販売のために巻き取られ
る。光ファイバの固有の高強度を保存することは、リボ
ン化、外被付け、接続、および配線中の重要事項であ
り、また、その実用寿命の期間中の重要事項でもある。
【0015】プリフォームから線引きされた後に光ファ
イバに施された被覆系31(図2参照)は、好ましく
は、輻射線により硬化された高分子材料の2重層からな
る。ガラス−被覆界面33でガラス光ファイバ21と接
触する内層32は第1の被覆層と呼ばれ、外層34は第
2の被覆層と呼ばれる。一般的に、第1および第2の被
覆層は各々、厚さが約30μmである。
【0016】被覆光ファイバ30は所定の性能特性を満
たさなければならない。例えば、被覆ファイバは優れた
伝達特性を有しなければならない。取り扱いを受けた
り、また、環境に暴露されても、被覆光ファイバは無傷
のままでなければならない。被覆光ファイバは他の被覆
光ファイバまたは装置と接続できなければならない。更
に、被覆光ファイバはテストを行うことができなければ
ならない。
【0017】更に詳細には、第1の被覆層とガラスファ
イバとの界面は被覆層の剥離を防ぐために適当な強度を
有していなければならず、また、被覆系は、頑固な残留
物がファイバ表面に残ることなく、光ファイバから剥ぎ
取ることができるものでなければならない。一方、第2
の被覆層の表面は、隣接するファイバ回旋間で粘着が起
こらないようなものでなければならない。これにより、
プロセススプールから容易に巻き出すことができる。ま
た、第2の被覆層の外面は、緩衝層と呼ばれるような比
較的厚い押出上塗層および/または多ファイバユニット
で識別用に使用される着色材料の塗布が可能なものでな
ければならない。重要なことは、被覆光ファイバが少な
くとも工業基準を満たす好適な動的および静的な耐疲労
性を有しなければならないことである。
【0018】本発明の好ましい実施例の光ファイバはガ
ラスファイバの周囲でpH7未満の周囲環境内で維持さ
れる硬化第1被覆層を有する。第1の被覆層は、硬化さ
れたときに、被覆光ファイバの強度を高めるために高酸
性の環境を形成する成分を含有している。言うまでもな
く、第2の被覆層もこのような環境を形成する成分を含
有している。
【0019】下記に説明するように、被覆光ファイバの
製造に現在使用されている殆どの光ファイバ被覆はUV
硬化性のアクリレート系材料である。この材料は遊離基
重合機構により液体から固体に変換される。例えば、ア
クリレート末端ポリウレタン系の紫外線硬化性塗料は当
業者に周知である。これらは紫外線で開始される遊離基
重合触媒の存在下で硬化する。前記のようなアクリレー
ト系の塗料は化学的に中性である。
【0020】線引き光ファイバの周囲に酸性環境を形成
するために、酸性基を末端に有するアクリレートを光フ
ァイバ塗料組成物中に混合し、低pHを得ることができ
る。この方法の欠点は、硬化速度が低下し、望ましから
ざる結果を生むことである。また、酸を構成成分として
硬化組成物に添加することは簡単に実施できない。
【0021】本発明の好ましい実施例の被覆光ファイバ
30は、ビニルエーテル基を末端に有するオリゴマー
(特に、ポリウレタンオリゴマー)を含有する組成物で
被覆されている。アクリレート系塗料と対照的に、ビニ
ルエーテルはカチオン重合機構により液体から固体に変
換される。
【0022】ビニルエーテル末端ポリウレタンは米国特
許第4472019号明細書および同第4751273
号明細書に開示されている。これら従来の各文献では、
ビニルエーテル末端ポリウレタンは脂肪族1価ビニルエ
ーテルとジイソシアネートを反応させることにより生成
される。
【0023】本発明のカチオン重合により硬化される塗
料は、線引きガラスファイバと接触する十分に酸性の環
境を形成するために使用され、被覆光ファイバの動的お
よび静的耐疲労性を高める。ファイバ用の酸性環境を形
成するためのこのような塗料系の具体例として2種類の
基本的な化合物が挙げられる。これらはビニルエーテル
組成物か、またはエポキシ基を末端に有する材料であ
る。遊離基硬化系と異なり、これらの2種類の材料が使
用される。本発明のカチオン重合により硬化される組成
物は、吸光したときに強力な酸を生成する光開始剤を含
有する。この組成物が硬化されたとき、ビニルエーテル
またはエポキシではなく、光開始剤が光を吸収し、反応
を受け、酸を生成する。光反応により生成された酸は引
き続いて、ビニルエーテルまたはエポキシ末端成分と反
応し、カチオンを発生する。このカチオンは中性のエポ
キシまたはビニルエーテル成分と反応し、更に重合反応
を生長させることができる。照射後、潜伏性の酸が存在
し、比較的長期間にわたって存在し続ける。これに対し
て、遊離基硬化系では、若干の遊離基は存在するかもし
れないが、比較的短時間しか潜伏しない。
【0024】カチオン硬化の機構は、光に暴露されたと
きに、塗料が液体から固体に変換されることによる。カ
チオン硬化は紫外線または可視光線あるいは加熱手段に
より影響を受ける。カチオン硬化と遊離基硬化との相違
は、カチオン硬化では、カチオンR+ またはプロトンH
+ が重合機構における種を開始させると共に生長させる
ことである。R+ は電子が1個欠乏したカチオン化学種
である。光開始剤は光を吸収し、そして、R+ またはH
+ を発生する。遊離基硬化では、種は不対電子を1個有
する反応性化学種である遊離基を含有する。カチオンは
強力な電子受容体であり、そのままで、カチオン硬化性
末端基から電子を受容することができる能力を有する。
これにより、重合を開始または生長させることができ
る。
【0025】更に具体的に説明すれば、カチオン重合性
被覆組成物が液体から固体に変換される機構は次の化1
の化学反応式で示される。下記の化1の化学反応式にお
いて、ジアリールヨードニウム光開始剤Ar2+-
は、例えば、光、紫外線の吸収により生起された光分解
を受けたときに、HBF4 ,HAsF6 ,HPF6 のよ
うな強力なブレーンステッド酸HXを生成し、引き続
き、プロトン供与体SHと反応する。
【0026】
【化1】
【0027】追加生成物のArI、Ar・およびS・も
生成されるが、カチオン重合には関与しない。前記の化
1の反応式における光開始剤は、光分解を受けたときに
ブレーンステッド酸を生成する光開始剤の一例である。
このブレーンステッド酸は、光ファイバのガラス部分に
隣接する環境のpHに影響を及ぼすほど十分に強力であ
り、また、被覆光ファイバの強度を高めるのに十分なほ
ど強力である。トリアリールスルホニウム塩も吸光した
ときに強力なブレーンステッド酸を生成する。
【0028】一般的に、UV硬化性組成物は光開始剤、
オリゴマー樹脂、一種類以上の希釈剤および添加剤を含
有している。オリゴマー樹脂は、光生成ブレーンステッ
ド酸と反応し、カチオン種を生成することができる末端
基を2個以上含有する点で、多官能性である。同様に、
希釈剤成分も光生成ブレーンステッド酸と反応し、カチ
オン種を生成することができる。これを下記の化2の化
学反応式に示す。式中、種(i〜)はオリゴマー樹脂成
分または2官能性希釈剤成分である。下記の化2の化学
反応式に示されるように、ブレーンステッド酸は塗料
の、例えば、オリゴマーまたは希釈剤のようなカチオン
重合性成分(i〜)と反応し、重合を開始する。
【0029】
【化2】
【0030】この開始反応によりカチオン種(ii〜)
と、対応するブレーンステッド酸の共役塩基X- が生成
する。カチオン種(ii〜)は、光生成ブレーンステッ
ド酸とオリゴマー成分または光生成ブレーンステッド酸
と希釈剤成分との反応生成物である。カチオン種(ii
〜)は、引き続いて、下記の化3の化学反応式に示され
る単官能性成分(iii〜)または下記の化4の化学反
応式に示される2官能性成分(v〜)と反応し、下記の
化3および化4の化学反応式にそれぞれ示されるような
カチオン重合反応を生長させることができる。
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】前記の化4の化学反応式(化4)に示され
る生長反応は2官能性成分(ii〜)と(v〜)との間
に架橋を形成し、中間体の架橋種(vi〜)を生成す
る。引き続いて、この中間体架橋種(vi〜)は、例え
ば、(iii〜)のような単官能性成分または例えば、
(v〜)のような2官能性成分と更に反応し、カチオン
重合連鎖反応を継続または生長する。これらの架橋は主
に、硬化被膜の最終の機械的および物理的特性を形成す
る。
【0034】開始反応(化2)および生長反応(化3お
よび化4)の結果、塗料は液体から固体に変換される。
この変換は硬化とも呼ばれる。
【0035】前記の化学反応式に示されたエポキシ末端
種はカチオン重合性成分の単なる一例である。例えば、
環状エーテル、ラクトン、ビニルエーテルまたはスチレ
ン基を含有する他の組成物もカチオン重合させることが
できる。カチオン重合に関する一般的な説明は、198
0年にテクノロジーマーケッティング社から発行され
た、エス・ピーター・パパス(S.Peter Pappas)編著の
「UV硬化:科学と技術」の23〜76頁に収載された
ジェー・ブイ・クリベロ(J.V.Crivello)の“光開始カチ
オン重合”と題する論文に記載されている。
【0036】前記の化1の反応式に示されるように、光
開始剤は光分解したときに強力なブレーンステッド酸を
生成する。この光生成酸の一部分だけがオリゴマー樹脂
または1種類以上の希釈剤のようなカチオン重合性塗料
成分と不可逆的に反応する。従って、カチオン重合性成
分の消費により、架橋塗料中に絡み込まれたブレーンス
テッド酸を有する硬化被覆組成物が生成する。引き続い
て、ガラス光ファイバクラッド層と緊密に接触する被覆
材料は光ファイバ表面の周囲に、かつ、この表面と接触
する酸性環境を形成する。また、ガラス界面との間に間
隔を有する架橋塗料の塊内に絡み込まれたブレーンステ
ッド酸は光ファイバ/塗料界面内に拡散し、被覆光ファ
イバの強度を高めるのに十分なほど酸性の環境を光ファ
イバガラス表面周囲に形成することもできる。
【0037】硬化被覆のpH値を最適にするカチオン硬
化の化学作用は、光開始剤の適正な選択または光開始剤
の濃度若しくは塗料配合のビニルエーテルおよびエポキ
シ末端基の濃度を調節することによりコントロールされ
る。異なった量の酸が必要な場合、例えば、光開始剤の
量および/またはビニルエーテルまたはエポキシ末端基
の量を変化させることにより、様々な量の酸を供給する
ことができる。
【0038】カチオン重合に適したカチオン光開始剤の
代表的な配合割合は、1wt%〜4wt%、好ましくは、3
wt%〜4wt%の範囲内である。優れた硬化特性をもたら
す急速硬化は、カチオン光開始剤を一層少ない配合割合
で使用することにより得られることが発見された。
【0039】生成された酸は加工後もしばらくの間は、
本発明の被覆光ファイバ30内にそのまま存在し続け
る。生成酸の寿命は、対応する光開始剤により生成され
た遊離基に比べて遥かに長い。硬化速度を低下させるこ
となく、ファイバの強度が高まるので、この生成酸の長
寿命は好都合である。光ファイバ被覆は、線引き装置で
硬化光を最初に照射されたかなり後でも、硬化し続け
る。この効果は、カチオン重合により硬化される材料中
に長寿命の潜在的酸成分が存在することによる。この潜
在的酸成分はガラスファイバ周囲の低pH環境に影響を
及ぼすことができ、そして、被覆光ファイバの高強度特
性をもたらす。光ファイバの静的耐疲労性はpH依存性
なので、高ガラス強度が得られる。従って、pH値が低
くなるほど、静的耐疲労性は大きくなる。更に、カチオ
ン重合により硬化された光ファイバ被覆の毒性はアクリ
レート系材料の毒性よりも遥かに温和であると思われ
る。また、カチオン重合による硬化は酸素により妨害さ
れないので、或る用途におけるその硬化速度はアクリレ
ート系材料の硬化速度よりも大きい。
【0040】見たところでは、カチオン重合により硬化
された塗料の付加されたファイバ強度の利点は、この分
野の工業界により未だ検討されていないものと思われ
る。異なったpH値を有する溶液に光ファイバを浸漬す
ることにより最適なpH値を得ることは公知文献に示唆
されているが、被覆光ファイバの強度を高めるのに十分
なほど酸性pH値の環境にガラスファイバを暴露する被
覆を示唆した公知文献は存在しないものと思われる。現
在まで、低pH値の被覆を形成することにより、局所的
な環境が被覆ガラスファイバの強度に影響を及ぼすこと
は検討されたことはない。
【0041】本発明の好ましい実施例の光ファイバは、
線引きガラスに連続的に塗布される塗料の層を有する。
この塗料はビニルエーテルまたはエポキシ基のようなカ
チオン重合硬化性の末端基を末端に有する樹脂と、光開
始剤と添加剤および場合により、着色成分を含有する。
添加剤は例えば、ファイバ被覆の酸化性、加水分解性ま
たは保存寿命などのような、安定性を高めるために含有
される安定剤である。光開始剤は光を吸収し、酸を生成
する。そして、カチオン硬化の結果として、潜在酸をポ
リマー中に存在させる。これにより、ポリマーはガラス
・被覆界面におけるpH値を低下する。
【0042】塗料のカチオン重合硬化層は、多層被覆が
使用される場合、光ファイバのガラス部分に対して連続
的に被覆されたものでなければならない。しかし、この
ような塗料が、第1の被覆層によりガラスファイバから
離間された第2の被覆層として使用される場合、第1の
被覆層を通してガラス部分に拡散する残留酸が存在する
こともできる。
【0043】光ファイバのガラス部分に酸性環境を供給
する材料を含有する被覆系は前記に述べたもの以外であ
ってもよい。例えば、光ファイバ用の被覆系は光ファイ
バのガラス部分を保護する1層以上の被覆層と、例え
ば、着色剤の層40(図3参照)を含むことができる。
例えば、インクのような着色剤はカチオン重合硬化性の
ものを使用することができる。これにより、この着色剤
は酸性成分を生成する。この酸性成分は被覆層を通して
拡散し、ガラス・被覆層界面に好適な酸性環境を供給す
る。このような着色剤は強度増強着色剤と呼ばれる。
【0044】図4および図5に別の実施例を示す。図4
では、被覆光ファイバ30は、例えば、ポリ塩化ビニル
(PVC)のような緩衝材料の層42を有する。緩衝材
料層42の周囲に着色層44を設けることができる。層
42または層44の何方も、被覆光ファイバの強度を高
めるのに十分なほどの酸性環境をガラス・被覆界面に供
給するようなものである。図5では、被覆光ファイバ3
0は緩衝層46を有する。この緩衝層は着色剤を含有
し、ガラス・被覆界面に好適な酸性環境を供給するよう
なものである。
【0045】また、被覆光ファイバはマトリックス材料
50(図6参照)を含有することもできる。この目的に
使用できる様々な形状のマトリックス材料が米国特許第
4900126号明細書に開示されている。被覆系はフ
ァイバを保護するのに使用される被覆層ばかりでなく、
ファイバを整列状態に維持するのに使用されるマトリッ
クス材料50も含有する。この実施例では、マトリック
ス材料50はカチオン重合硬化性のものであり、ガラス
・被覆界面に十分に酸性の環境を供給する。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ガラス光ファイバの周囲に塗布される被覆層用の塗料は
ビニルエーテルまたはエポキシ末端基を有するオリゴマ
ー組成物と光開始剤からなり、この光開始剤は光照射を
受けるとカチオン重合機構により強力な酸を生成する。
この酸は前記オリゴマー成分とカチオン重合し、硬化被
覆を形成する。生成された酸は加工後もしばらくの間
は、被覆光ファイバ内にそのまま存在し続ける。生成酸
の寿命は、対応する光開始剤により生成された遊離基に
比べて遥かに長い。硬化速度を低下させることなく、フ
ァイバの強度が高まるので、この生成酸の長寿命は好都
合である。光ファイバ被覆は、線引き装置で硬化光を最
初に照射されたかなり後でも、硬化し続ける。この効果
は、カチオン重合により硬化される材料中に長寿命の潜
在的酸成分が存在することによる。この潜在的酸成分は
ガラスファイバ周囲の低pH環境に影響を及ぼすことが
でき、そして、被覆光ファイバの高強度特性をもたら
す。光ファイバの静的耐疲労性はpH依存性なので、高
ガラス強度が得られる。従って、pH値が低くなるほ
ど、静的耐疲労性は大きくなる。更に、カチオン重合に
より硬化された光ファイバ被覆の毒性はアクリレート系
材料の毒性よりも遥かに温和であると思われる。また、
カチオン重合による硬化は酸素により妨害されないの
で、或る用途におけるその硬化速度は従来のアクリレー
ト系材料の硬化速度よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】円筒状プリフォームからガラス光ファイバを線
引きし、次いで、この光ファイバを被覆するのに使用さ
れる被覆光ファイバ製造装置の一例の模式的構成図であ
る。
【図2】被覆系を有する光ファイバの断面図である。
【図3】着色剤を含む被覆系からなる光ファイバの断面
図である。
【図4】着色剤層を有する緩衝光ファイバの断面図であ
る。
【図5】着色剤を含む緩衝層を有する光ファイバの断面
図である。
【図6】マトリックス材料により整列状態に保持された
複数本の光ファイバの断面図である。
【符号の説明】 20 被覆光ファイバ製造装置 21 光ファイバ 22 プリフォーム 23 加熱炉 24 線径測定装置 25 塗料塗布装置 26 同心ゲージ 27 紫外線照射装置 28 外径測定装置 29 キャプスタン 30 被覆光ファイバ 31 被覆系 32 第1の被覆層 33 ガラス・被覆界面 34 第2の被覆層 40 着色剤層 42 緩衝層 44 着色層 46 緩衝層 50 マトリックス材料

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コアとその周囲に形成されたクラッドと
    を有するガラス製ファイバと、 前記クラッドの周囲に配置され、前記クラッドと接触す
    る部分を有する被覆系とからなる高強度の被覆光ファイ
    バであって、 前記被覆系は、前記被覆光ファイバの強度を高めるのに
    十分な酸性環境に前記ガラス製ファイバをさらすため
    に、(A) 吸光したときに酸を生成する光開始剤と、 (B) ビニルエーテルまたはエポキシ末端成分を有
    し、このビニルエーテルまたはエポキシ末端成分が前記
    光開始剤から生成された酸と反応してカチオンを発生
    し、このカチオンがさらに前記ビニルエーテルまたはエ
    ポキシ末端成分と重合反応して架橋を形成する塗料系
    と、 を含む組成物を光照射して形成した被覆層を含む ことを
    特徴とする高強度被覆光ファイバ。
  2. 【請求項2】 コアとその周囲に形成されたクラッドと
    を有するガラス製ファイバと、 前記クラッドの周囲に配置され、前記クラッドと接触す
    る部分を有する被覆系とからなる高強度の被覆光ファイ
    バであって、 前記被覆系は、被覆光ファイバの強度を高めるのに十分
    な酸性環境に前記ガラス製ファイバをさらすために、(A) 吸光したときに酸を生成する光開始剤と、 (B) 前記光開始剤から生成された酸と反応してカチ
    オンを発生する希釈剤と (C) ビニルエーテルまたはエポキシ末端成分を有
    し、このビニルエーテルまたはエポキシ末端成分が前記
    光開始剤から生成された酸と反応してカチオンを発生
    し、カチオンがさらに前記ビニルエーテルまたはエポキ
    シ末端成分と重合反応して架橋を形成する塗料系と、 を含む組成物を光照射して形成した被覆層を含む ことを
    特徴とする高強度被覆光ファイバ。
  3. 【請求項3】 前記(A)光開始剤の配合量は、組成物
    の重量を基準にして約1〜5wt%の範囲内であり、 前記(B)希釈剤の配合量は、組成物の重量を基準にし
    て約5〜39wt%であり、 前記(C)塗料系の配合量は、組成物の重量を基準にし
    て約60〜90wt%の範囲内であることを特徴とする請
    求項2の被覆光ファイバ。
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