JP2678747B2 - セルラーゼの製造方法 - Google Patents

セルラーゼの製造方法

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清吾 高沢
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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はセルラーゼの製造方法に関する。本明細書に
おいてセルラーゼとは、エキソセロビオハイドロラーゼ
(以下、C1酵素と称す)、エンド−β−グルカナーゼ
(以下、Cx酵素と称す)およびβ−グルコシダーゼから
なる酵素系の総称であり、セルロースをグルコースまで
分解する酵素である。 従来の技術 近年、セルロース資源の有効利用をめざし、セルロー
スの効果的な糖化法の確率が要請されている。糖化に必
要なセルラーゼの酵素源としては、トリコデルマ・リー
セイ(Trichoderma reesei)QM6a(ATCC 13631)から
取得された一連の変異株、例えばトリコデルマ・リーセ
イQM9414(ATCC 26921)[バイオテクノロジー・アン
ド・バイオエンジニアリング・シンポジウム(Biotechn
ology & Bioengineering Symposium),,9−20(197
6)]が最も有望とされている。これらの菌株の生産す
るセルラーゼのC1およびCx酵素活性は、他の種類、微生
物由来のものと比較してきわめて強力である。しかし、
β−グルコシダーゼは微弱な活性しか有さない[エンザ
イム・アンド・マイクロバイアル・テクノロジー(Euzy
me and microbial Technology),,91−102(198
0)]。セルロースをこれらの菌株の生産するセルラー
ゼを用いて糖化しようとすると、セロビオースが蓄積す
る。この蓄積したセロビオースをグルコースまで分解す
るために、アスペルギルス・ニガーやアスペルギルス・
フォエニシスのβ−グルコシダーゼを添加することまで
検討されている[Can.J.Mierobiol.,23,139−147(197
7)]。 そこで、トリコデルマ・リーセイのβ−グルコシダー
ゼ活性を高めるたmeに培養方法を検討したり[アプライ
ド・アンド・エンバイロンメタル・マイクロバイオロジ
ー(Applied and Environmental Microbiology),31,6
48−654(1976)]、及び[バイオテクノロジー・アン
ド・バイオエンジニアリング(Biotechnology & Bioen
gineering)23,1837−1849(1981)]、また種々の変異
株の取得が試みられてきた[エフイーエムエス・シンポ
ジウム(FEMS Symposium)No.13,405−416(1982)、特
開昭59−17984号公報]。 しかしながら、高濃度のセルロースを効率よく糖化さ
せるためには、これらの研究で得られたセルラーゼのβ
−グルコシダーゼ活性ではまだ不十分である。また、安
価にセルロースの糖化を行うためには、β−グルコシダ
ーゼ活性だけでなく、C1酵素活性、Cx酵素活性も高活性
であることを必要とする。 発明が解決しようとする問題点 本発明の目的は、セルラーゼの誘導生成能が高められ
た微生物を用いるセルラーゼの製造方法を提供すること
にある。 問題点を解決するための手段 本発明の方法に用いる微生物は、トリコデルマ・リー
セイに属する突然変異株で、結晶性セルロース10.0g/
,ポリペプトン1.0g/および酵母エキス0.5g/を主
成分とする培地500mlを含む2リットル容フラスコで28
℃、4日間培養した培養液を結晶性セルロース60g/ポ
リペプトン、1.0g/および酵母エキス0.5g/を主成分
とする培地3リットルを含む5リットル発酵槽でpHを調
節しながら28℃、1VVM、450rpmで7日間培養した培養液
を遠心分離したときの上清中のβ−グルコシダーゼ活性
が13単位/ml以上であるセルラーゼを生産する能力を有
する。 本発明の方法に前記の突然変異株、例えばトリコデル
マ・リーセイPCD−10(ERMP−8172)又はトリコデルマ
・リーセイCDU−11(FERMP−8173)が好適である。 トリコデルマ・リーセイの菌学的性質は、イー・ジー
・シモンズ,アブストラクト・セカンド・インターナシ
ョナル・マイコロジカル・コングレス(E.G.Simmons,Ab
st.2nd Inteanational Myclogical Congress)米国フロ
リダ州タンパ,1977年8月,618頁]に記載されている。 本発明の目的に用いられる変異株は例えば次の方法で
得られる。 セルラーゼ生産能を有しかつトリコデルマ・リーセイ
に属する微生物を、紫外線照射やニトロソグアニジンの
ような変異誘発剤の使用など、公知の変異誘導処理し、
処理ずみの菌株からセロビオースによるセルラーゼ誘導
能の高い菌株を選ぶ。このための実用的な手法として、
例えば、親株としてQM9414(ATCC 26921)を用い、ポ
テトデキストロース寒天斜面培地上で25℃、7日間培養
し、胞子を十分形成させる。生成した胞子を生理的食塩
水に懸濁し(約1〜3×107個/ml)、N−メチル−N′
−ニトロ−N−ニトロソグアニジンと反応させる(300
μg/ml,pH7.0,30℃,30〜120分)。この胞子懸濁液から
遠心分離により胞子を集め、よく洗浄し、平板あたり10
0〜300胞子/mlになるように希釈し、第1表に示したセ
ロビオースを炭素源とする寒天平板に塗布し、30℃で2
日間培養し、生育してきたコロニーの上に50mM酢酸緩衝
液pH5.0を含む0.5%リン酸膨潤セルロース寒天を加えて
45℃で10〜24時間保温する。セルラーゼを生成している
コロニーのまわりは透明帯が生成するので、これによっ
てC1酵素活性、Cx酵素活性の高まった変異株を選ぶこと
ができる。また、50mM酢酸緩衝液pH5.0、及び30%グル
コースを含む0.05%4−メチルウンベリフェリル−β−
D−グリコシド寒天を加えて、45℃で2〜16時間保温す
る。紫外線を照射すると、β−グルコシダーゼ活性の高
いコロニーのまわりには蛍光を生じるので、これによっ
てβ−グルコシダーゼ活性の高まった突然変異株を選ぶ
ことができる。こうして得られた突然変異株とQM9414と
の性状の比較を第2表に示す。 第1表 寒天倍地の組成 セロビオース 5g 酵母エキス 1g (NH42SO4 2g KH2PO4 4g Na2HPO4 6g MgSO4・7H2O 200mg F2SO4・7H2O 1mg CaCl2・2H2O 1mg トリトンX−100[半井化学薬品(株)製] 1g 寒天 20g H3BO3 10μg MnSO4.4H2O 10μg ZnSO4.7H2O 70μg CuSO4.5H2O 50μg (NH46Mo7O24・4H2O 10μg 水 1(pH5.5) 本発明における培地の炭素源としては、セルロースパ
ウダー、セロビオース、濾紙、一般紙類、オガクズ、ふ
すま、もみがら、バガス、大豆粕、コーヒー粕、澱粉、
ラクトース等が使用される。窒素源としては、硫安、硝
安などの無機アンモニウム塩、尿素、アミノ酸、肉エキ
ス、、酵母エキス、ポリペプトン、蛋白分解物等の有機
窒素含有物が使用される。無機塩類としては、KH2PO4
MgSO4・7H2O、CaCl2・2H2O、F2Cl3・6H2O、MnCl3・4H
2O、ZnSO4・7H2O等が使用される。必要ならば有機微量
栄養物を含有する培地が使用される。前記の菌株の培養
は、液体培養のほかに固形培養も可能である。液体培養
には通常の通気撹拌培養装置が用いられ、前記培地を使
用して、培養温度20〜33℃、好ましくは、28℃〜30℃、
培養pH4〜6で培養すれば、4〜10日間でセルラーゼ活
性は最高となる。ついで、培養液から遠心分離、濾過な
どの公知の方法によって菌体を除去し上澄液を得る。こ
の上澄液は、このまま粗酵素液として使用することがで
きる。 当該酵素の活性測定法は次に示すような酵素反応後、
比色定量を用いる方法で測定する。 (1) C1酵素活性 アビセルSF150mgを気質として、これに酵素液1.0ml、
0.2M、pH5.0の酢酸緩衝液4.0mlをそれぞれ加え、45℃で
1時間反応させる。100℃,10分間加熱して反応を停止さ
せる。3,5−ジニトロサリチル酸法により還元糖を比色
定量する。1分間に1μmol.のグルコースを遊離する酵
素量を1酵素単位(Unit)と定義する。 (2) Cx酵素活性 0.2M、pH5.0の酢酸緩衝液に溶解した1%カルボキシ
メチルセルロースナトリウム塩溶液を用意する。これに
等量の適当に希釈した酵素溶液を加え、45℃で30分間反
応させる。100℃、10分間加熱して反応を停止させた
後、3,5−ジニトロサリチル酸法により還元糖を比色定
量する。1分間に1μmol.のグルコースを遊離する酵素
量を1酵素単位(Unit)と定義する。 (3) β−グルコシダーゼ活性 基質液として0.05M、pH5.0の酢酸緩衝液に溶解した2m
Mp−ニトロフェニル−β−D−ギリコピラノシドを用意
する。基質液1.0mlに酵素液20μを加え、45℃で10分
間反応させる。2.0mlの1M炭酸ナトリウム溶液を加えて
反応を停止する。1分間に1μmol.のp−ニトロフェノ
ールを遊離する酵素量を1酵素単位(Unit)と定義す
る。 また、得られた上澄液から凍結感想、硫安塩析、有機
溶媒による沈殿法など公知の方法を用いることにより粗
酵素剤を得ることができる。 実施例1 トリコデルマ・リーセイQM9414(ATCC26921)、PCD−
10(FERM P−8172)、CDU−11(FERM P−8173)の
各菌株をポテトデキストロース寒天斜面培地上で、25
℃、7日間培養して胞子を十分形成させる。その1白金
耳をセロビオースを炭素源とする第3表の組成の培地50
mlを含む300ml容三角フラスコに接種して、28℃、7日
間振盪培養した。7日目に培養液を濾過し、その上清の
セルラーゼ活性を求めた。その結果を第4表に示す。 第3表 フラスコ培地の組成 セロビオース 10.0g ポリペプトン 1.0g 酵母エキス 0.5g KH2PO4 2.0g (NH42SO4 1.5g MgSO4・7H2O 0.3g CaCl2・2H2O 0.3g ツイーン80[半井化学薬品(株)製] 1.0ml 微量元素液 1.0ml 酒石酸緩衝液 50 mM 水 1(pH4.0) *微量元素液 H3BO4 6mg (NH46Mo7O24・4H2O 26mg FeCl3・6H2O 100mg CuSO4.5H2O 40mg MnSO4.4H2O 8mg ZnSO4.7H2O 200mg 水 100ml実施例2 トリコデルマ・リーセイQM9414、PCD−10、CDU−11の
各菌株をポテトデキストロース寒天斜面培地上で、25
℃、7日間培養して胞子を十分形成させる。その1白金
耳を第3表の組成の培地のうち、セロビオースのかわり
にアビセルPH301(旭化成社製)を用い、さらに酒石酸
緩衝液を除いたもの50mlを含む300ml容三角フラスコに
接種し、28℃、4日間振盪培養した。さらにこれを同組
成の培地500mlを含む2容三角フラスコに接種し、28
℃、4日間振盪培養した。本培養液をアビセルPH301 6
0g/、ツイーン80のかわりにアデカノールLG−109(旭
電化製)6g/を用いた同組成の培地3を含む5発
酵槽に添加して培養を開始した。培養温度は28℃、通気
は1VVM、撹拌は450rpmで、またpHの下限を2N NH4OHによ
って培養開始後3日間はpH4.0に調節し、その後pH5.5に
上昇させ、培養終了までこのpHで調節する。7日目に培
養液を遠心分離し、その上清中のセルラーゼ活性を求め
た。その結果を第5表に示す。 実施例3 実施例2で得たトリコデルマ・リーセイCDU−11の上
清のうち、1を硫安70%飽和で塩析後、セファデック
スG−25(ファルマシア・ファインケミカルズ社製)を
用いて脱塩し、さらに凍結乾燥して30gの粗酵素標品を
得た。C1酵素活性0.72U/mg、Cx酵素活性6.5U/mg、β−
グルコシダーゼ活性0.50U/mgであった。 ケインバガスを微粉砕し、0.3NのNaOHに懸濁して、12
0℃、15分間処理した。これを洗滌、中和後、0.1Mの酢
酸緩衝液(pH5.0)に150g/の濃度になるように懸濁し
た。さらに上記の粗酵素標品を10g/の濃度になるよう
に添加して、45℃で24時間作用させた。反応液を遠心分
離し、その上清をShodex Ionpack C−811(昭和電工
製)のカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーを用
いる方法(0.1%H3PO4で60℃で溶出、屈折計で検出)で
分析した。グルコースは69g/、キシロースは31g/生
成したが、セロビオースやオリゴ糖の存在は全く認めら
れなかった。 発明の効果 本発明による微生物を用いることにより、高活性のセ
ルラーゼを高収率で得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−92690(JP,A) 特公 昭39−2986(JP,B1) Bioatechnol.Bioen g.Symp.6(1976)P.9−20

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.(a)トリコデルマ・リーセイに属する突然変異株
    で、(b)セルラーゼを生産する能力を有し、(c)結
    晶性セルロース10.0g/l,ポリペプトン1.0g/lおよび酵母
    エキス0.5g/lを主成分とする培地500mlを含む2リット
    ル容フラスコで28℃、4日間培養後、結晶性セルロース
    60g/l、ポリペプトン1.0g/lおよび酵母エキス0.5g/lを
    主成分とする培地3リットルを含む5リットル発酵槽で
    pHを調節しながら28℃、1VVM、450rpmで7日間培養した
    培養液を遠心分離した後に、上清中のβ−グルコシダー
    ゼ活性が13単位/ml以上である微生物を、培地に培養
    し、得られたセルラーゼを採取する工程からなる、セル
    ラーゼの製造方法。 2.微生物がトリコデルマ・リーセイPCD−10(FERM
    P−8172)である特許請求の範囲第1項記載の方法。 3.微生物がトリコデルマ・リーセイCDU−11(FERM
    P−8173)である特許請求の範囲第1項記載の方法。
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