JP2678291B2 - 板状炭素複合材料及びその製造法 - Google Patents

板状炭素複合材料及びその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は板状炭素複合材料及びその製造法に関し、さ
らに詳しくは、樹脂を含浸して硬化・焼成した板状炭素
材を積層するに際し、中間層を黒鉛粉末と樹脂からなる
接着剤を介して積層するか、あるいは膨張黒鉛成形体に
熱可塑性樹脂フイルムを被覆したのち加圧下で加熱して
膨張黒鉛成形体の内部空隙に熱可塑性樹脂を充填してな
る高強度の炭素複合材料及びその製造方法に関する。
<従来の技術> 従来より、膨張黒鉛を圧縮成形した可撓性黒鉛シート
材料が知られている。
この可撓性黒鉛シート材料は膨張黒鉛を少量の結合剤
の存在下、あるいは不存在下にて高圧で加圧成形して得
られるもので、その特徴は可撓性を有し、圧縮に対する
復元率がよいというものである。
しかしながら、結合剤を添加しない可撓性黒鉛シート
材料は、剛性が小さく脆いため、変形破損し易く、取扱
いが困難であるという欠点があった。
また、膨張黒鉛に結合剤を添加した黒鉛シート材料で
も剛性の向上は望めなかった。
そこで、可撓性黒鉛シートの補強方法として、熱硬化
性樹脂を減圧下で含浸させ、その後加熱硬化して補強す
る方法(特開昭60−242041号公報)や、膨張黒鉛粉末成
形体を積層して成形した成形体に樹脂を含浸し、成形体
の表面の樹脂を洗浄除去した後、加熱硬化する膨張黒鉛
成形体(特開昭60−65781号公報)が開示されている。
<発明が解決しょうとする課題> しかしながら、従来の可撓性黒鉛シートやその補強さ
れた黒鉛シートは、未だ強度が低く、大型の板状のもの
を貼付けハンドリング作業をする際等には割れが入るこ
とがしばしばある。
また、従来のものは変形しやすく、さらに表面が荒ら
く、これらの欠点のため加工することをよぎなくされる
が、カーボンの薄い板を加工することは困難であつた。
このためいっそう強度や剛性の高い可撓性シート材の
開発が望まれていた。
本発明は、上記欠点を除去して、曲げ強度、剛性が高
く、さらに表面が平滑である板状炭素複合材料及びその
製造法を提供することを目的とする。
<課題を解決するための手段> 本発明者は上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた
結果、膨張黒鉛成形体に熱硬化性で、かつ炭化し得る樹
脂を含浸し、加熱硬化した後、炭化して得られる硬化物
を、熱硬化性樹脂に黒鉛粉末を添加した接着剤を介して
積層するか、あるいは膨張黒鉛成形体に熱可塑性樹脂フ
イルムを被覆したのち加圧下で加熱して膨張黒鉛成形体
の内部空隙に熱可塑性樹脂を充填すれば、上記課題が解
決される板状炭素複合材料が得られるとして本発明を完
成した。
<作用> 本発明において使用される膨張黒鉛は、公知のものが
利用できるが、例えば、天然黒鉛、熱分解黒鉛、キッシ
ュ黒鉛等の黒鉛粉を濃硫酸、濃硝酸、硝酸カリウム等の
強酸化剤により層間化合物を形成させて得た黒鉛粒子を
急激に加熱処理して得られるものである。
膨張率が10倍未満であると膨張黒鉛としての性質が十
分でなく、自己接着性等に難があり好ましくない。
さらに、膨張黒鉛成形体は、前記膨張黒鉛を結合剤の
不存在下で、または少量の有機質結合剤や、ホウ酸、リ
ン酸アルミニウム等の無機質結合剤の存在下で加圧成形
したものを用いるのが好ましい。
本発明で使用する熱硬化性樹脂は、フエノール樹脂で
あることが好ましく、減圧:100mmHg以下で60分以下、加
圧:10kg/cm2・G以下で60分以下の条件下で膨張黒鉛に
含浸することが好ましい。
膨張黒鉛成形体に含浸した表面の熱硬化性樹脂を洗浄
除去したのち、40℃程度の温度で4〜8時間乾燥し、そ
の後プレスを使用して熱硬化し、ついで硬化物を700〜1
000℃で焼成する。
このとき、洗浄は水洗が好ましいが、トルエン等を用
いることもできる。
熱硬化は、プレスを用いて行なえば、曲げ強度、剛性
が硬化物でも高くなが、プレスを使用しないと硬化物の
表面が剥離するので好ましくない。
硬化条件は、例えば、100〜180℃で2〜10時間、プレ
ス圧1〜10kg/cm2・Gの条件で行なうことが好ましい。
硬化物を積層する接着剤としては、熱硬化性樹脂に黒
鉛粉末を添加したものを用い、熱硬化性樹脂としてはフ
エノール樹脂を用いることが好ましく、またこのフエノ
ール樹脂としては、可溶性樹脂と不可溶性樹脂の組合せ
であることが好ましい。
このとき、黒鉛粉末とフェノール樹脂の組合せとして
は、一般シェルモード用の粉末樹脂と主溶剤としてIP
A、メタノール、水、MEK、エタノール、トルエン等とし
たフエノール樹脂ワニスの液状樹脂と混合するか、また
は液状樹脂の代わりに、アルコール溶性フエノール樹脂
接着剤、水溶性フェノール樹脂接着剤やノボラツク型樹
脂をメタノールに溶解したレジンコーティングサンド用
フェノール樹脂等を利用することもできる。
黒鉛粉末/粉末樹脂+液状樹脂の配合比率は、例え
ば、50/(20〜50)+(100〜200)が示される。
また積層に際し、中間層に炭素繊維等の層状物を用い
れば、より強度が向上する。
このとき炭素繊維等の層状物としては、織布ならびに
フエルト等の不織布が好適に使用できる。
積層は、層状物をそのまま、あるいは熱硬化性樹脂を
含浸したのち、前記接着剤を介して行なう。
このように高密度化した接着によって、高強度の製品
を得ることができ、また中間層に黒鉛粉末を含有せしめ
ることによって、炭素率が向上し強度の向上を図ること
ができる。
また、フエノール樹脂に可溶性フエノール樹脂と不可
溶性フエノール樹脂を用いることにより、高粒子化する
ことができ、高強度な製品を得ることができる。
ついで、100〜200℃で、1〜5時間、加圧して硬化
し、得られた硬化物を700〜1000℃で焼成して、板状炭
素複合材料を得る。
さらに、本発明で使用する熱可塑性樹脂フイルムとし
ては、ポリフエニールサルフオン(PPS)樹脂、または
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂が好適で、フ
イルムの厚みは20〜200μが好ましく、30〜100μが特に
好ましい。
このフイルムで膨張黒鉛成形体表面を被覆し、つい
で、加圧下で加熱して、樹脂を流動せしめ膨張黒鉛成形
体の空隙中に樹脂を充填する。
ポリフエニールサルフオン(PPS)フイルム、または
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フイルムは、10Kg
/cm2以上の加圧下で200〜300℃で1〜2時間加熱して樹
脂を充填するのが好ましい。
ついで室温に冷却することにより板状炭素複合材料を
得る。
<効果> 本発明によれば、従来の膨張黒鉛シートに比して、剛
性を大幅に向上でき、曲げ強度に優れ、しかも不浸透性
で表面の平滑な板状炭素複合材料を得ることができ、さ
らに、変形、破損が少なく、取扱いが容易に行なえると
いう特徴を有する。
そのため各種の特に高温用の材料として最適であり、
また、燃料電池分離板、や雰囲気焼成炉の断熱材として
用いることができ、しかも各種の形状に容易に成形でき
る特長を有する。
<実施例> 以下に本発明の実施例を述べるが、本発明はこれらに
限定されるものでない。
実施例1 500×500mm、幅、厚み1mmの膨張黒鉛成形体に市販の
フエノール樹脂(大日本インキ株式会社製、TD753S)を
含浸し、乾燥後、150℃で3時間熱処理し、樹脂を硬化
した。
この硬化物を窒素中、800℃で焼成し、高性能硬化物
を得た。
得られた硬化物は原板と同様にその表面は平滑であっ
た。
その曲げ強度は120kg/cm2であり、原板の50kg/cm2
比べ、大幅に向上した。
また、曲げ強度測定時の応力−歪曲線から、本硬化物
は原料に比べ、変形しにくいことが明らかになった(第
1図参照)。
次いで、黒鉛粉末(24メツシュ以下)50部、粉末フエ
ノール樹脂(カネボウ株式会社製、ベルパールS−89
0)50部、及び液状フエノール樹脂(大日本インキ株式
会社製、TD753S)100部を混合して得た接着剤を介して
前記硬化物を積層し、乾燥、硬化、焼成して板状炭素複
合材料を得た。
得られた製品は、引っ張り強さ116kg/cm2、弾性率25t
/cm2で、通常品のそれぞれの70kg/cm2、10t/cm2に比べ
大幅に性能が向上した。
実施例2 実施例1で得た高性能硬化物2枚の接着面に実施例1
で使用した接着剤を塗布し、さらに液状フエノール樹脂
(大日本インキ株式会社製、TD7537)を含浸した3mm厚
みの炭素繊維不織布をはさみ込んで、乾燥し、150℃で
3時間熱処理して樹脂を硬化したのち、さらに800℃で
焼成して板状炭素複合材料を得た。
得られた製品のカサ比重は0.6g/cm3、曲げ強度は44kg
/cm2であつた。
実施例3 実施例1で使用したと同一の膨張黒鉛成形体の表面を
ポリフエニールサルフォン樹脂フイルム(深み80μ)で
被覆したのちオートクレーブに入れ、チツ素ガスで12kg
/cm2に加圧し、かつ280℃の温度で120分間保持した。
その後、これを室温に冷却して、本発明の板状炭素複
合材料を得た。
得られた製品の引っ張り強さは110kg/cm2、弾性率22t
/cm2であった。
【図面の簡単な説明】
第1図は曲げ強度測定時の応力−歪曲線を示す。

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】膨張黒鉛成形体に熱硬化性で、かつ炭化し
    得る樹脂を含浸し、加熱硬化した後、炭化して得られる
    硬化物を、熱硬化性樹脂に黒鉛粉末を添加した接着剤を
    介して積層してなる板状炭素複合材料。
  2. 【請求項2】接着剤として、黒鉛粉末とフエノール樹脂
    を用いたことを特徴とする請求項1記載の板状炭素複合
    材料。
  3. 【請求項3】接着剤としてのフエノール樹脂が、粉末樹
    脂と液状樹脂の組合せであることを特徴とする請求項1
    又は2記載の板状炭素複合材料。
  4. 【請求項4】膨張黒鉛成形体に熱可塑性樹脂フイルムを
    被覆したのち、加圧下で加熱して、該膨張黒鉛成形体の
    内部空隙に熱可塑性樹脂を充填してなる板状炭素複合材
    料。
  5. 【請求項5】熱可塑性樹脂フイルムが、ポリフエニール
    サルフオン(PPS)、またはポリエーテルエーテルケト
    ン(PEEK)であることを特徴とする請求項4記載の板状
    炭素複合材料。
  6. 【請求項6】膨張黒鉛成形体に熱硬化性で、かつ炭化し
    得る樹脂を含浸し、加熱硬化した後、炭化して得られる
    硬化物を、熱硬化性樹脂に黒鉛粉末を添加した接着剤を
    介して積層することを特徴とする板状炭素複合材料の製
    造方法。
  7. 【請求項7】接着剤として、黒鉛粉末とフエノール樹脂
    を用いたことを特徴とする請求項6記載の板状炭素複合
    材料の製造方法。
  8. 【請求項8】接着剤としてのフエノール樹脂が、粉末樹
    脂と液状樹脂の組合せであることを特徴とする請求項6
    又は7記載の板状炭素複合材料の製造方法。
  9. 【請求項9】膨張黒鉛成形体に熱可塑性樹脂フイルムを
    被覆したのち、加圧下で加熱して、該膨張黒鉛成形体の
    内部空隙に熱可塑性樹脂を充填することを特徴とする板
    状炭素複合材料の製造方法。
  10. 【請求項10】熱可塑性樹脂フイルムが、ポリフエニー
    ルサルフオン(PPS)またはポリエーテルエーテルケト
    ン(PEEK)であることを特徴とする請求項9記載の板状
    炭素複合材料の製造方法。
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