JP2762291B2 - 炭素質押し棒の製造方法 - Google Patents

炭素質押し棒の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、高温、高圧のホットプレスに用いられる炭
素質押し棒の製造方法に関する。
〔従来の技術〕
近年、各種セラミック材料を高密度成形するための手
段として、ホットプレス焼結が汎用されている。
高温を伴うホットプレスのダイスおよび押し棒には従
来から炭素材が好適な構成基材とされてきたが、炭素材
は材質的に脆弱であるため高密度成形に必要な高圧をか
けると往々にして破損現象を生じる。このうち、ダイス
の破損は胴体に引張り応力がかかって縦割りを起す態様
が主体となるが、この現象を防止するための材質強化策
としては、黒鉛筒の外面にC/C複合材を一体に固着形成
した構造が提案されている(実開昭62−107907号公
報)。
しかしながら、炭素質押し棒の材質強化については有
効な手段が見出されていない。
〔発明が解決しようとする課題〕
押し棒の破損態様は上記したダイス材の場合とは異な
り、押圧による圧縮応力に伴い半径方向に膨張して破壊
に至る現象があるため、外周に圧縮時の層間剪断強度が
弱いC/C複合材を単純に固着形成した構造では使用時に
起る層間剥離乃至破壊などを十分に防止することは困難
である。
本発明は、炭素質押し棒の外周に特定の条件で炭素繊
維を巻きつけ、これを一体に固定化することにより層間
剥離および半径方向の膨張に対する抵抗性を付与するこ
とに成功したものである。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、本発明に係る炭素質押し棒の製造方法は、
円柱状の炭素質基材の外周面に熱硬化性樹脂液からなる
炭化性結合材を塗布し、これを半硬化したのち前記と同
一の炭化性結合材を浸透した炭素繊維を積層状に巻きつ
けて固定硬化し、ついで非酸化性雰囲気中1500℃以上の
温度で焼成処理することを構成的特徴とする。
適用される円柱状の炭素質基材としては、押出、型込
またはラバープレスなどの成形手段を用いて製造された
各種の炭素質成形体を選択することができるが、使用温
度を越える温度で焼成または黒鉛化された高密度組織の
材質を選定することが望ましい。
炭素質素材の外周面には、例えばフェノール系樹脂、
フラン系樹脂などの初期縮合物のような炭化性の熱硬化
性樹脂液からなる結合材を塗布する。該炭化性結合材の
塗布は、刷毛塗り、スプレー散布あるいは浸漬処理など
適宜な方法によりおこなうことができる。
炭化性結合材を塗布した炭素質基材は、加熱または風
乾して外周面の樹脂成分を半硬化の状態とする。この半
硬化処理は、次段の炭素繊維巻きつけ工程で供給する炭
化性結合材が炭素質基材の組織内部に浸透することを阻
害するために重要な要件で、本処理を施さない場合には
界面接着性が低下して層間剥離が生じたり、目的とする
圧縮強度の向上効果が得られなくなる。
この状態で、半硬化した炭化性結合材と同一の炭化性
結合材を浸透した炭素繊維を炭素質基材の外周面に巻き
つける。炭素繊維には可及的に炭素質基材と熱膨張差の
ない高弾性タイプのトウが有効に使用され、フィラメン
トワインディング法を用いて炭化性結合材を同伴させな
がら少くとも2層以上の積層状に巻回する。
ついで、巻きつけられた炭素繊維層に介在する炭化性
結合材を硬化する。硬化処理は炭素質基材を150〜300℃
の温度に加熱することによりおこなわれるが、この際、
例えばテフロン製のような気密性のある熱収縮チューブ
に嵌め込み、加熱時の熱収縮作用を利用して締着する方
法を採ることが確実な固定状態を得るために有効であ
る。特に、この締着方法はフェノール系樹脂のような加
圧硬化が必要な炭化性結合材を用いる場合に効果があ
る。
このようにして炭素繊維を一体に積層固定化した炭素
質基材は、常法に従いアルゴン、窒素ガスなど非酸化性
雰囲気中で1500℃以上の温度により焼成処理して炭化性
結合材を完全に炭化する。
以上の工程により得られた炭素質押し棒に対し、更に
同一の炭化性結合材を加圧含浸して焼成する処理を反復
すると一層組織密度および強度特性を増大させることが
できる。
〔作 用〕
炭素質基材の外周面に炭素繊維層を固定化した複合構
造はそれ自体で強化性能がもたらされるが、本発明の製
造方法では炭素繊維層を形成する前工程として炭化性結
合材を塗布し半硬化する処理がおこなわれるため炭素質
基材と炭素繊維層との接合固着が確実となって一層強化
性能が向上する。したがって、ホットプレスの押し棒と
して実用した場合に苛酷な熱圧に十分に耐え、層間の剥
離、破壊等の発生を効果的に防止する。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
実施例1、比較例1〜2 押出成形法で製造した見掛比重1.81g/ccで、直径30mm
の円柱状炭素質基材〔東海カーボン(株)製、GN材〕の
外周面にフェノール樹脂初期縮合物〔大日本インキ化学
工業(株)製、P5900、不揮発分58.5%〕を炭化性結合
材として均一に刷毛塗りし、80℃の温度に加熱して樹脂
成分を半硬化の状態とした。これをマンドレルとし、ポ
リアクリルニトリル系の高強度高弾性炭素繊維のトウを
前記フェノール樹脂初期縮合物と同一の炭化性結合材に
浸漬させながら1.5kgf/束の条件でフィラメンドワイン
ディングにより積層数を変えて巻きつけた。ついで積層
外径より2mm大きい内径を有するテフロン製熱収縮のチ
ューブに嵌め込み、250℃の温度に加熱してチューブを
熱収縮させながら樹脂成分を硬化した。
硬化処理後の炭素質基材を焼成炉に移し、窒素気流中
で2000℃の温度に焼成して樹脂成分を炭化した。
このようにして製造した炭素質押し棒につき圧縮強度
を測定し、巻きつけた炭素繊維の積層数と対比して表1
に示した。
比較のために、上記実施例のプロセスのうち炭化性結
合材を塗布したのちの半硬化処理を施さないほかは同一
方法で製造した例(比較例1)および使用した炭素質基
材そのものについて各測定した圧縮強度を表1に併載し
た。
なお、表1に示した圧縮強度は、直径30mm、高さ30mm
の円柱状サンプルを1.3mm/分の負荷速度で加圧し破壊時
の最大荷重とした。
表1の結果から本発明の実施例による炭素質押し棒は
高度の圧縮強度を示したが、半硬化処理を施さない比較
例1においては強度特性が低く、炭素繊維の積層数が4
層を越えると基材との間に層間剥離が発生した。
実施例2、比較例3 ラバープレス成形法で製造した見掛比重1.80g/ccを有
する高密度の炭素質基材〔東海カーボン(株)製、G34
7〕を用い、実施例1および比較例1と同一方法で炭素
質押し棒を製造した。
得られた炭素質押し棒について圧縮強度を測定し、そ
の結果を表2に示した。
〔発明の効果〕 以上のとおり、本発明によれば炭素質基材の外周面に
新規なプロセスを用いて炭素繊維層を形成することによ
り良好な圧縮強度を有するホットプレス用押し棒を製造
することができる。したがって、苛酷な熱圧条件が負荷
されるセラミック材料等の高密度成形にあたっても、十
分な耐久性が保証される。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】円柱状の炭素基材の外周面に熱硬化性樹脂
    液からなる炭化性結合材を塗布し、これを半硬化したの
    ち前記と同一の炭化性結合材を浸透した炭素繊維を積層
    状に巻きつけて固定硬化し、ついで非酸化性雰囲気中15
    00℃以上の温度で焼成処理することを特徴とする炭素質
    押し棒の製造方法。
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