JP2675439B2 - 高機能薄膜の形成方法 - Google Patents

高機能薄膜の形成方法

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JP2675439B2 JP3002126A JP212691A JP2675439B2 JP 2675439 B2 JP2675439 B2 JP 2675439B2 JP 3002126 A JP3002126 A JP 3002126A JP 212691 A JP212691 A JP 212691A JP 2675439 B2 JP2675439 B2 JP 2675439B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電気かみそりの刃やその
他の刃物に高硬度を有する材料の被膜を形成する方法に
係り、特に形成された被膜の表面色の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば特開昭61-106767号公報や、特開
昭62-382号公報に、刃先に真空蒸着処理を施しながらイ
オン注入処理を施し、刃先表面に硬質の混合層を形成す
る技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが上記方法で
は、刃先表面の混合層の組成の制御に関する記述がな
く、表面の色調の調整については何ら開示されるところ
がない。最近の商品の傾向として、搭載される技術レベ
ルの高さが商品の付加価値を高める要因になっている
が、消費者にとって最も注意を引きつけられるのが、そ
の商品の概観及び色彩であり、この要因も大きくなって
いる。
【0004】そこで本発明は斯かる色彩を調整し、商品
の付加価値を高める被膜を施すことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、薄膜を形成す
るための基板に向けて常温で気体となる原子のイオンを
照射すると同時に、蒸発源より高硬度材料の原子を前記
基板に向けて放射することによって、該基板の表面に前
記イオンの作用を受けた高硬度材料原子から成る薄膜層
を形成する方法において、前記基板表面に到達する前記
常温で気体となる原子の分子としての個数NDと前記高
硬度材料原子の個数NBとの比ND/NBの値及び前記常
温で気体となる原子のイオンの個数NCと前記高硬度材
料原子の個数NBとの比NC/NBの値を調整して前記薄
膜層の表面色を制御し、前記常温で気体となる原子は窒
素とし、前記高硬度材料原子をジルコニウムとし、前記
C/NB及びND/NBの値を、 で調整し、前記薄膜層の表面色を前記数1の条件で透明
色、前記数2の条件で金色、前記数3の条件で銀色に制
御することを特徴とする。
【0006】また、本発明は、常温で気体となる原子の
雰囲気中で、薄膜を形成するための基板に向けて蒸発源
より高硬度材料原子を放射して薄膜層を形成する方法に
おいて、前記基板表面に到達する前記常温で気体となる
原子の分子としての個数NDと前記高硬度材料原子の個
数NBとの比ND/NBの値を調整して前記薄膜層の表面
色を制御し、前記常温で気体となる原子は窒素とし、前
記高硬度材料原子をジルコニウムとし、前記ND/NB
値を、 で調整し、前記薄膜層の表面色を前記数4の条件で透明
色、前記数5の条件で金色、前記数6の条件で銀色に制
御することを特徴とする。
【0007】この場合特に、前記常温で気体となる原子
は窒素とし、前記高硬度材料原子をジルコニウムとし、
前記ND/NBの値を調整し、前記薄膜層の表面色を透明
色、金色、銀色に制御するものである。
【0008】
【作用】基板に到達する常温で気体となる原子の分子と
しての個数及びそのイオンの個数と、高硬度材料原子の
個数との比を調整して、基板表面に形成される薄膜層の
表面色を制御する。
【0009】
【実施例】以下本発明の高機能薄膜の形成方法を電気か
みそりの刃に対する窒化ジルコニウム(ZrN)被膜の
形成方法について図面を用いて詳細に説明する。図1は
上記窒化ジルコニウムの薄膜を形成するための真空蒸着
及びイオン注入装置を示し、1は10-5〜10-7Tor
rに排気される真空チャンバ、2は該真空チャンバ1内
に配置され、図の矢印方向に10〜20rpmの速度で
回転可能にされた基板ホルダ、3は該ホルダ2に取りつ
けられたニッケル(Ni)の基板、4は電子ビ−ムによ
ってジルコニウム(Zr)原子を蒸発させ前記基板3に
向けて放射する蒸発源、5は前記基板3の方向に窒素イ
オン(N+)を放射するか、あるいは窒素ガス(N2)を
供給するかのいずれかを行うことができるアシストイオ
ンガンである。尚、このイオンガン4によってN+イオ
ンを放射している間、イオンに成り損ねた窒素原子
(N)が少数ではあるが同時に放射される。
【0010】次に上記装置を用いて図2に示すようなN
i素材の表面にZrN被膜を形成する第1の方法につい
て説明する。まず真空チャンバ1内を10-5〜10-7
orrに排気し、アシストイオンガン5にN2ガスを供
給し、N+イオンを放射せしめて、これを基板3の表面
に照射する。この時のN+イオンの加速電圧は700e
V、イオン電流密度は0.38mA/cm2に設定し
た。
【0011】一方、N+イオンの照射と同時に蒸発源4
を駆動し、Zr原子を蒸発させて前記基板3の表面に放
射する。この時のZrの蒸発速度は基板3上での成膜速
度に換算して650Å/min.に設定した。以上の工
程を30秒から1分程度行い、基板3の表面に膜厚0.
025〜0.05μmのZrNの第1薄膜層6を形成し
た。
【0012】次にN+イオンの照射を止めて、前記イオ
ンガン5よりイオン化していないN2ガスを前記チャン
バ1内に供給するとともに、このN2雰囲気中で蒸発源
4よりZrN原子を基板3上の前記第1薄膜層6表面に
向かって放射した。この時のZrの蒸発速度は第1薄膜
層6表面での成膜速度に換算して650Å/min.に
設定した。
【0013】以上の工程を4分から4分30秒程度行
い、前記ZrNの第1薄膜層6表面に、膜厚0.26〜
0.29μmを有するもう一層のZrNの第2薄膜層7
を形成した。以上の二つの工程の結果、基板3表面にト
−タルで膜厚0.3μmのZrN被膜6,7が形成される
ことになる。
【0014】ところで、一般にアシストイオンを用いた
ときには基板3での温度上昇が7℃/min.、ガス雰
囲気のみの利用では2℃/min.である。さらに第1
薄膜層6を形成したときと同じ方法を用いて前記第2薄
膜層7の表面に膜厚0.05〜0.15μmの第3薄膜層
8を形成した。この時の成膜時間は1分から2分程度が
望ましい。
【0015】また図3に成膜時間に対する基板3の裏面
温度を、特定のエネルギーをもったアシストイオンを連
続して用いて行う場合と、上記のように所定の時間だけ
用いて行う場合とに分けてグラフ化した図を示す。同図
において、折線(1)はアシストイオンエネルギ−90
0eV、折線(2)は700eV、折線(3)は500
eV、折線(4)は250eVで、ガラス基板に成膜し
た場合を示し、折線(5)は上記方法を用いて成膜した
場合を示す。同じイオンエネルギ−(700eV)を用
いた場合の折線(2)と折線(5)とを比較すると、ア
シストイオンを連続して用いて形成する方法と上記方法
とでは、5分間のプロセスで基板3の裏面においてほぼ
20℃の温度差が生じる。従って上記方法によれば、基
板3を低温に保持したまま成膜を行うことが可能とな
る。
【0016】また窒素イオンエネルギ−は700eV、
Zr蒸着速度は650Å/min.に設定したときのア
シストイオン(窒素)電流密度に対する成膜速度、及び
N/Zr組成比の関係を図4及び図5に示す。この図か
ら成膜速度はガス雰囲気のみの方がアシストイオンを用
いた方より大きいことが明らかであり、N/Zr組成比
はアシストイオン電流密度の大きさには差ほど影響を受
けないことが分かる。
【0017】また、アシストイオンを用いるとその大き
なエネルギ−とイオン注入効果により、基板3と形成被
膜との密着性がガス雰囲気のみの場合に比べて良好であ
る。さらに結晶性の点ではアシストイオンを用いたもの
は余り良くなく、ガス雰囲気を用いたものの方が良好で
ある。図6は第1薄膜層6の形成条件を変化させて、上
記方法により形成したZrN被膜のX線回折結果であ
る。同図において、曲線(a)は第1薄膜層6のN/Z
r到達比が0.33、曲線(b)は2.1の場合を示して
いる。ここでZrN(11 1)とZrN(2 0
0)、及びZrN(2 2 0)のピ−クは曲線(a)
(b)でほぼ同じ2θの値で現れているが、そのピ−ク
の高さは曲線(a)の方が曲線(b)よりも高い。即ち
N/Zrの到達比小さいほどできた第1薄膜層6の結晶
性が良くなることが分かる。
【0018】図7は先の図6で示された曲線(a)と曲
線(b)の特性を有する第1薄膜層6に第2薄膜層7を
形成したときの第1、第2薄膜層6,7ト−タルでのZ
rN被膜のX線回折結果である。この図において第2薄
膜層7を形成してもZrN被膜の配向性を調整すること
が可能である。以上の点から上記一連の工程において、
アシストイオンを用いる工程は基板3の温度が余り上昇
しないように極短時間として密着性のみを向上させ、ガ
ス雰囲気を用いる工程を相対的に長時間とすることによ
り、良好な密着性、早い成膜速度、良好な結晶性、及び
低温形成の4拍子揃った形成方法となる。
【0019】一方、第3薄膜層8は被膜表面の色調を変
化させるのに有効となる。この色調の変化は基板として
の第2薄膜層7に到達するNとZrの個数の比NC/NB
またはND/NBによって左右される。ところでZrの到
達個数NBは前記蒸発源4からのZrの蒸着速度V[Å
/min.]から数7より求めることができる。
【0020】
【数7】
【0021】ここで+イオンの個数NCはイオン電流
密度I[mA/cm2]から数により求められ、N2
子の衝突の個数NDはN2の分圧(即ちN2分子の平均粒
子密度n)から数8〜数11により求められる。
【0022】
【数8】
【0023】
【数9】
【0024】
【数10】
【0025】
【数11】
【0026】上記数7〜数11によって得られる到達比N
C/NB及びND/NBと第3薄膜層8の表面色との関係を
調べた結果を図8に示す。同図において白丸は金色、三
角は銀色、Xは透明色を表している。この図を見るとお
よそNC/NB
【0027】
【数12】
【0028】且つND/NB
【0029】
【数13】
【0030】の範囲で鮮やかな金色を呈し、NC/NB
【0031】
【数14】
【0032】またはND/NB
【0033】
【数15】
【0034】の範囲で透明色になり、NC/NB
【0035】
【数16】
【0036】またはND/NB
【0037】
【数17】
【0038】の範囲で銀色を呈するようにようになる傾
向がみられる。従って電気かみそりの刃に高い付加価値
を付与するにはZrの蒸着速度V、イオンガン5から照
射されるイオン電流密度I、及びチャンバ1内のN2
圧比を調整して、第3薄膜層8の表面色を金色または透
明色に制御すればよい。尚透明色の場合、膜厚の制御に
よって光の干渉による虹の7色で表面色に変化を付ける
ことが可能である。
【0039】尚、上記実施例では第1薄膜層6の上に形
成した第2薄膜層7に対して表面色を制御する第3薄膜
層8を形成したが、基板3の表面に形成される第1薄膜
層6のみの形成で十分被膜としての効果が得られる場合
には、この第1薄膜層6に対して前記数1〜数3の条件
を採用すればこの第1薄膜層6によって被膜の表面色を
制御することも可能である。
【0040】次に第2の実施例として前記第3薄膜層8
を形成することなく被膜の表面色を制御する条件につい
て説明する。基板3に対する第1薄膜層6の形成方法及
び条件は前記第1実施例と同じである。そして得られた
第1薄膜層6の表面に第2薄膜層7を形成する際に、数
4〜数6の条件でND/NB比のみを調整しつつ、N2
囲気中でZrを蒸発させることにより前記第2薄膜層7
の表面色を前記数4の条件で透明色、前記数5の条件で
金色、前記数6の条件で銀色に制御することが可能であ
る。
【0041】また高硬度材料原子として上記Zrの代わ
りにクロム(Cr)やアルミニウム(Al)を用い、常
温で気体となる原子として上記Nの代わりに酸素(O)
を用いることも可能である。
【0042】
【発明の効果】本発明は以上の説明の如く、薄膜を形成
するための基板に到達する常温で気体となる原子の分子
としての個数NDあるいはイオンの個数NCの高硬度材料
原子の個数NBに対する比の値を調整することにより薄
膜の表面色を制御するものであるから、被膜を形成しよ
うとする商品に応じて表面色を容易に選択でき、該商品
の付加価値を高める効果大なるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の形成方法を実施するための装置を示す
図である。
【図2】形成された基板表面の被膜を示す断面図であ
る。
【図3】成膜時間に対する基板裏面温度の変化を示す図
である。
【図4】アシストイオンに対するN/Zr組成比の関係
を示す図である。
【図5】アシストイオンに対する成膜速度の関係を示す
図である。
【図6】第1薄膜層の形成条件を変化させたときのX線
回折結果を示す図である。
【図7】第1薄膜層と第2薄膜層とのト−タルでの被膜
のX線回折結果を示す図である。
【図8】ND/NB比とNA /NB比、及び第3薄膜層の
表面色との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 チャンバ 2 基板ホルダ 3 基板 4 蒸発源 5 アシストイオンガン 6 第1薄膜層 7 第2薄膜層 8 第3薄膜層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−161155(JP,A) 特開 平3−281775(JP,A) 特開 平4−124257(JP,A) 特開 平3−226562(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薄膜を形成するための基板に向けて常温
    で気体となる原子のイオンを照射すると同時に、蒸発源
    より高硬度材料の原子を前記基板に向けて放射すること
    によって、該基板の表面に前記イオンの作用を受けた高
    硬度材料原子から成る薄膜層を形成する方法において、
    前記基板表面に到達する前記常温で気体となる原子の分
    子としての個数NDと前記高硬度材料原子の個数NBとの
    比ND/NBの値及び前記常温で気体となる原子のイオン
    の個数NCと前記高硬度材料原子の個数NBとの比NC
    Bの値を調整して前記薄膜層の表面色を制御し、 前記常温で気体となる原子は窒素とし、前記高硬度材料
    原子をジルコニウムとし、前記N C /N B 及びN D /N B
    値を、 【数1】 【数2】 【数3】 で調整し、前記薄膜層の表面色を前記数1の条件で透明
    色、前記数2の条件で金色、前記数3の条件で銀色に制
    することを特徴とする高機能薄膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 常温で気体となる原子の雰囲気中で、薄
    膜を形成するための基板に向けて蒸発源より高硬度材料
    原子を放射して薄膜層を形成する方法において、前記基
    板表面に到達する前記常温で気体となる原子の分子とし
    ての個数N D と前記高硬度材料原子の個数N B との比N D
    /N B の値を調整して前記薄膜層の表 面色を制御し、 前記常温で気体となる原子は窒素とし、前記高硬度材料
    原子をジルコニウムとし、前記N D /N B の値を、 【数4】 【数5】 【数6】 で調整し、前記薄膜層の表面色を前記数4の条件で透明
    色、前記数5の条件で金色、前記数6の条件で銀色に制
    御することを特徴とする高機能薄膜の形成方法。
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