JP2671088C - - Google Patents

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JP2671088C
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明はフォルステライト、スピネル等のグラス皮膜を有さない(グラスレス
)方向性電磁鋼板の製造方法に関わり、切断性、打抜き性、曲げ加工性等の加工 性が良好で、低鉄損でかつ高磁束密度の方向性電磁鋼板を安価に提供する。 【0002】 【従来の技術】 方向性電磁鋼板は一般に軟磁性材料として、主としてトランスその他の電気機
器として使用されるもので、磁気特性として励磁特性と鉄損特性の良好なものが
要求される。良好な磁気特性を得るためには結晶の磁化容易軸である<001>
軸を圧延方向に高度に揃えることが重要である。又、板厚、結晶粒度、固有抵抗
、純度、皮膜特性等は磁気特性に大きい影響を与えるため重要である。 【0003】 結晶の方向性については、AlNをインヒビターとして利用した高圧下最終冷
延を特徴とする方法によって大幅に向上し、現在では理論値にほぼ近いものまで
製造できるようになって来た。一方、方向性電磁鋼板を用いて需要家で鉄心を加
工する際には、磁気特性と共に重要なのは鉄心の加工性と皮膜特性である。 通常、方向性電磁鋼板は最終仕上焼鈍時に形成するグラス皮膜とその上にヒー
トフラット時に処理される絶縁皮膜の二層皮膜により表面処理がなされている。
【0004】 グラス皮膜は焼鈍分離剤MgOと脱炭焼鈍工程で生成するSiO2との反応物
であるフォルステライト(Mg2SiO4)を主成分とし、インヒビターとして用
いられるAlNの分解により生じるAl23とMgO、SiO2等によるスピネ
ル系化合物よりなる。このグラス皮膜は硬質で摩耗性が強く、トランス鉄心加工
時のスリット、切断、打抜き等の耐久性に著しい影響を及ぼす。 【0005】 例えば、グラス皮膜を有する方向性電磁鋼板の打抜きを行う場合には、金型の
摩耗が生じ、数千回の打抜きによって打抜いたシートの返りが大きくなって使用
時に問題を生じたり、歪によって磁気特性に影響を及ぼす。このため、金型の再
研磨、金型の新品との取替等が必要になり、鉄心加工時の作業能率の低下やコス
トアップを招くことになる。 【0006】 同様にしてスリット性、切断性等についてもグラス皮膜による悪影響が問題で ある。 このグラス皮膜は方向性電磁鋼板の磁気特性については、その皮膜張力によっ
て鉄損、磁歪等の改善が得られ、特に磁束密度の高い素材の場合にはこの効果が
著しく、板厚が0.30mm以下で磁束密度がB8≧1.91Teslaの素材
では20%近い鉄損の改善効果が得られる。 【0007】 しかし、その形成状態、皮膜厚みの増加や内部皮膜層の存在によっては、磁束
密度の低下や後の磁区細分化処理に際して鉄損改善効果に悪影響を及ぼす。 更にグラス皮膜形成技術におけるもう1つの問題は仕上高温焼鈍時の純化反応
に対する影響である。 これは、昇温過程から形成するグラス皮膜が二次結晶終了後の不要のインヒビ
ター元素であるN、S等の純化のバリヤーとなることである。これらの不純物の
残留は磁気特性としての鉄損の劣化をもたらすだけではなく、鉄心加工工程での
、例えば巻鉄心の巻、成型、レーシング工程での曲げ加工の特性を悪くし、板折
れ、双晶の発生等をもたらす。このため、方向性電磁鋼板の最終仕上焼鈍におい
ては、1200℃以上の様な高温で長時間の焼鈍を経て純化処理がなされる。 【0008】 又、近年では高張力の絶縁皮膜剤の処理技術が発達し、機械的、光学的、化学
的等の手段による磁区細分化技術が発達し、従来の方向性電磁鋼板の様にグラス
皮膜の張力なしでも鉄損の改善や表面の絶縁性の改善がはかれるようになった。
このためグラス皮膜による磁束密度の低下や磁区細分化に際して弊害となる内部
酸化層のないスムースな表面形状をもったグラスレス材が求められるようになっ
た。 【0009】 このようなことから、グラスレス、高磁束密度の方向性電磁鋼板の方が超低鉄
損化と鉄心加工性向上のため脚光をあびるようになって来た。 グラス皮膜を有しない方向性電磁鋼板の製造法としては、例えば特開昭53−
22113号公報に開示のものがある。これは脱炭焼鈍において酸化膜の厚みを
3μm以下として、焼鈍分離剤として含水珪酸塩鉱物粉末を5〜40%含有する 微粒子のアルミナを用い、これを鋼板に塗布し、仕上焼鈍を行うことを特徴とし
ており、これによると酸化膜を薄くし、さらに含水塩鉱物の配合によって剥離し
易いグラス皮膜が形成され、金属光沢を有するものが得られるとされている。 【0010】 又、焼鈍分離剤によりグラス皮膜の形成を抑制する方法として特開昭56−6
5983号公報には、水酸化アルミニウムに不純物除去用添加物20重量部、抑
制物質10重量部を配合した焼鈍分離剤を鋼板に塗布し、0.5μm以下の薄い
グラス皮膜を形成する方法がある。又、特開昭59−96278号公報には脱炭
焼鈍で形成した酸化層のSiO2と反応性が弱いAl23と、1300℃以上の
高温で焼成し活性を低下させたMgOとからなる焼鈍分離剤がある。これによる
とフォルステライトの形成が抑制されるというものである。 【0011】 これらの先行技術はいずれも通常のオリエントコアと呼ばれる方向性電磁鋼板
で、磁東密度1.88Tesla以下と低い低級な方向性電磁鋼板をベースとす
るものであり、グラス皮膜を有さない点では本発明と類似の効果は得られるかも
しれないが、本発明のように高磁束密度、超低鉄損の高級な方向性電磁鋼板の開
発技術を得るまでに至っていない。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、従来インヒビターコントロールの面で実現が困難とされてい
たグラスレスの高磁束密度方向性電磁鋼板を工業的に安価に製造する方法を提供
するにある。 さらに本発明は、前記鋼板に高張力皮膜を適用することにより、従来のグラス
皮膜形成技術に比較して飛躍的な超低鉄損材を得ること、および同時にグラスレ
スと高純化効果によって鋼板の切断、曲げ等の鉄心加工性を著しく向上すること
を目的とするものである。 【0013】 【課題を解決するための手段】 本発明における出発材としては、鋼成分として重量比でC:0.021〜0. 075%、Si:2.5〜4.5%、酸可溶Al:0.01〜0.04%、N:
0.0030〜0.0130%、S≦0.014%、Mn:0.050〜0.4
5%を含有するスラブを1280℃以下の温度に加熱後、熱延し、1回又は中間
焼鈍を挟む2回以上の冷延を行い、最終板厚とした後、次いで脱炭焼鈍し、窒化
処理をし、焼鈍分離剤を塗布した後、高温仕上焼鈍し、ヒートフラットニングの
前又は後で磁区細分化処理をし、絶縁皮膜剤の塗布焼付を行う工程からなる。 【0014】 即ち、本発明ではスラブ加熱段階ではインヒビター元素、例えばAl、N、M
n、S等の鋼中への溶解を行わず、脱炭焼鈍後、材料を強還元雰囲気中で窒化処
理を行うことにより、(Al、Si)Nを主成分とするインヒビターを形成させ
、仕上焼鈍過程で良好な二次再結晶を発達させた後、磁区細分化することを基本
工程とする。 【0015】 このような成分と工程による本発明のグラス皮膜を有さない超低鉄損の方向性
電磁鋼板の製造方法においては、焼鈍分離剤塗布〜仕上焼鈍〜絶縁皮膜剤塗布の
過程での表面処理方法に特徴がある。 最終冷延された素材は連続ラインにおいて脱炭焼鈍される。この脱炭焼鈍によ
り、鋼中のCの除去と一次再結晶が行われ、同時に鋼板表面にSiO2を主成分
とする酸化膜の形成が行われる。脱炭焼鈍は800〜875℃、雰囲気はN2
2中で露点をコントロールして行われる。 【0016】 次いで脱炭焼鈍の後半或いは終了後に同一ライン或いは別ラインで窒化処理が
行われる。その際の窒化量は150ppm以上、好ましくは150〜300pp
mとして処理される。次いで、焼鈍分離剤が塗布され、乾燥されて巻取られる。 その際の焼鈍分離剤としてはCAA値が50秒以上のMgO:100重量部に
対し、Li、K、Na、Ba、Ca、Mg、Mn、Zn、Fe、Zr、Sn、S
r、Al等から選ばれる元素の少なくともCl化合物をClとして1重量部以上
含み、かつ塩素化合物、硫黄化合物、窒素化合物の1種又は2種以上をCl、S
、Nのトータル量で1〜20重量部添加したものを用いる。 【0017】 本発明においては焼鈍分離剤と共に重要なのは仕上焼鈍条件である。本発明の
ように脱炭焼鈍後に窒化処理をし(Al、Si)Nを主体とするインヒビターを
形成し、焼鈍分離剤によってグラス皮膜の形成抑制と分解反応を同時に行い、最
終的にグラスレスの鏡面状の表面を有する鋼板を得ようとする場合には、最終焼
鈍でのヒートサイクルと雰囲気条件が二次再結晶の安定化と磁気特性と鋼板の加
工性に重要である。 【0018】 即ち、本発明のようにインヒビターとしてMnSをほとんど使用せず、(Al
、Mn)Nを形成し、AlNへと変化させるプロセスにおいては、二次再結晶完
了温度が1050〜1100℃と従来の方向性電磁鋼板より高い。このため二次
再結晶開始の高温域までインヒビターを安定に保つ必要がある。特に本発明のよ
うに仕上焼鈍昇温時における低温側でのグラス皮膜の若干の形成とその後の成長
反応の抑制及び高温側でのグラス皮膜の分解を生じさせる工程においては、その
焼鈍条件によっては鋼中へのNの過剰な増加や、グラス皮膜分解時における表面
からの脱インヒビターや鋼板表面や粒界の酸化等が生じてしまうからである。 【0019】 このため、本発明のように特別な焼鈍条件を用いないと高磁束密度、低鉄損、
高純の脆性等のない鋼板が得られない。 仕上焼鈍条件としては、昇温時における雰囲気ガスを600〜1100℃の範
囲を、N220%以上を含むN2、H2、Ar等からなる雰囲気とし、昇温率は2
0℃/hr以下で加熱する。又、均熱条件は1100〜1200℃である。 【0020】 これにより高温側でのグラス皮膜分解反応促進以後におけるインヒビターの分
解が抑えられ、良好な二次再結晶が得られる。又、グラスレス化により、表面の
バリヤーがないためN、S等の純化が容易に行われ、鉄損値の向上が得られると
共に、打抜き、切断、スリットや曲げ等の加工性が著しく向上する。このため通
常のグラス皮膜材では純化のめたに高温、長時間を必要とするのに対し、本発明
では前記の様な低温焼鈍でも純化が容易に行われる。 【0021】 本発明においては図1に示す如く、N、S等の純化が従来のグラス皮膜形成技
術に比較して格段に優れており、従来技術では不可能であった1100〜115
0℃程度の低温での仕上焼鈍が可能である。 このように処理されたグラスレス高磁束密度方向性電磁鋼板は形状矯正と歪取
焼鈍をかねて連続ラインにおいて張力付与型絶縁皮膜剤塗布とヒートフラットニ
ングが行われる。絶縁皮膜剤としては、焼付時に鋼板に張力付与が生じるような
低熱膨張率の皮膜剤をコーティングロールによる塗布、メッキ、蒸着等により処
理し、焼付処理が行われる。 【0022】 コロイド状物質を用いた絶縁皮膜剤の塗布方法としては、例えばコロイド状の
SiO2、ZrO2、SnO2、Al23等の溶液を固形分換算で100重量部に
対し、Al、Mg、Ca等の第1リン酸塩の1種又は2種以上130〜200重
量部、クロム酸又はクロム酸塩の1種又は2種以上をCrO3として12〜40
重量部配合したものが用いられる。その際の皮膜の厚みとしては、焼付後の厚み
で2〜6μmの厚みで処理される。これにより、鉄損が著しく改善され、鉄心加
工性の良い、高磁束密度、超低鉄損の方向性電磁鋼板製品が得られる。 【0023】 次に本発明における限定理由を述べる。 まず、焼鈍分離剤として使用するMgOとしては、30℃におけるCAA値が
50秒以上のものが用いられる。このCAA値はスラリー調整時の水和性に影響
する。CAA値が50秒未満の活性MgOでは水和水分の抑制が難しく、これに
より板間がウェットになってコイル内のグラスレス化を不均一にしたり、純化反
応が不均一になるので制限される。50秒以上の不活性MgOではスラリー攪拌
時に工業的に水和水分の抑制が容易で、表面状況の均一な製品が得られる。塗布
性等の作業性を考慮すれば、最も好ましい範囲は50〜250秒である。 【0024】 MgOの添加剤としては、前記MgO:100重量部に対し、Li、K、Na
、Ba、Ca、Mg、Mn、Zn、Fe、Zr、Sn、Sr、Al等の中から選 ばれる元素の少なくとも塩素化合物をClとして1重量部以上含み、かつ塩素化
合物、硫黄化合物、窒素化合物の1種又は2種以上をCl、S、Nのトータル量
として1〜20重量部が配合される。塩素化合物を少なくともClとして1重量
部以上含まないと酸化膜中のFeのエッチングによるグラスレス化反応が充分に
進行せず、均一なグラスレス化が得られない。Clを1重量部以上含み、かつC
l、S、Nのトータル量が1〜20重量部の範囲であれば、コイル全面にわたっ
て均一なグラスレスでかつ高磁束密度の製品が得られる。この範囲未満の添加量
では、本発明で主眼とするフォルステライト及びスピネル状化合物のトータル量
として1.0g/m2以下に制御することが困難になる。一方、塩素化合物、硫
黄化合物、窒素化合物がCl、S、Nのトータル量で20重量部超では鋼板表面
、結晶粒界の過剰エッチングにより表面状態を悪くしたり、鋼中へのこれら化合
物元素の拡散量が増して、本発明の純化促進効果を以てしても純化が困難になる
。 【0025】 これらの添加剤により、仕上焼鈍昇温過程においてMgOの表面が低融点化さ
れ、鋼板表面と地鉄中にヌードル状に発達したSiO2主体の皮膜層に拡散し、
昇温時に早期にフォルステライト主体の薄膜層を形成する。これにより雰囲気ガ
スからの鋼中への過剰な追加窒化や追加酸化が抑制される。次いで昇温時後段で
は前記ヌードル状に発達したSiO2層のFe部分がClやS等によりエッチン
グを受け、グラス皮膜層が分解する。この後、更に高温で分解が進行し、遊離し
たSiO2層が鋼板間の焼鈍分離剤のMgO中にMg2SiO3、Mg2SiO4
なって吸収される。この後、高温保定時においては表面ではサーマルエッチング
とケミカルエッチングが同時に進行し、滑らかな鏡面状の鋼板表面が得られる。 【0026】 塩素化合物と硫黄化合物と共に添加される窒素化合物は昇温過程でのグラスレ
ス化に伴って生じるインヒビター(Al、Si)Nの急激な減少を防止するため
の窒化剤として作用する。これにより二次再結晶の安定化が得られる。 次に仕上焼鈍の雰囲気条件としては昇温時600〜1100℃において、少な くともN220%以上含むN2、H2、Ar等からなる雰囲気とする。N220%未
満では本発明の焼鈍分離剤や焼鈍条件を以てしてもグラス皮膜分解消失後におけ
る脱Nが進み、(Al、Si)N、AlN等の弱体化が生じ、二次再結晶不良や
磁束密度の低下が生じる。鋼板の表面酸化や二次再結晶の安定性等を考慮すると
最も好まし範囲はN250〜80%である。 【0027】 次に仕上焼鈍の昇温速度は20℃/hr以下である。この昇温速度内では昇温
時の追加窒化、脱Nと粒成長のバランスが適度に保たれ、良好な二次再結晶が得
られる。20℃/hr超の急速加熱では二次再結晶不良が生じやすいため制限さ
れる。 均熱条件としては1100〜1200℃である。これは本発明のように100
0℃以後に急激なグラスレス化が生じる場合には1100℃到達時点ではほぼ均
一にグラスレス化が完了し、純化反応が著しく進行するので、従来のグラス皮膜
形成技術のような純化に際してのバリヤーとなるグラス皮膜がないため図1に示
す如く、低温、短時間で純化が完了することによる。均熱時間については特に規
定するものではないが、通常グラス付材で1200℃焼鈍の場合は20hr程度
必要とするのに対し、グラスレスの場合には5〜10hrの焼鈍時間で充分な純
化が行われる。 【0028】 最終仕上焼鈍後の鋼板に鉄損、磁歪等の向上のために処理される絶縁皮膜剤と
しては、例えばSiO2、ZrO2、SnO2、Al23等のコロイド状物質10
0重量部に対し、Al、Mg、Ca等の第1リン酸塩の1種又は2種以上130
〜200重量部とクロム酸、クロム酸塩の1種又は2種以上をCrO3として1
2〜40重量部配合したものが用いられる。 【0029】 これらの張力付与型の皮膜の塗布量としては焼付後の膜厚で2〜6μmである
。2μm未満では上記皮膜組成によっても鉄損、磁歪改善のための充分な張力の
効果が得られない。一方、6μm超になると張力による鉄損、磁歪の改善効果が
飽和に近づき、又皮膜厚み増による占積率の低下が生じ、張力による鉄損、磁歪 等の改善効果以上に鉄損劣化の問題が大きくなる。 【0030】 このようにして処理された本発明の方向性電磁鋼板としては、まず鋼中に残留
するN、Sのトータル量が30ppm以下であることが要件である。30ppm
超ではこれら不純物による鉄損の劣化やエージングによる鉄損の経時劣化が生じ
る。鋼板表面のグラス皮膜量としてはMgO、SiO2、Al23からなるフォ
ルステライト、スピネル状物質が1.0g/m2以下であることが要件である。
1.0g/m2超では鋼板地鉄のグラス質皮膜の特にスピネル状物質による皮膜
界面の凹凸の存在や、これら皮膜残留によるサーマルエッチング+ケミカルエッ
チングの複合反応効果の阻害により鏡面化が得られないため、張力付与コーティ
ング、磁区細分化処理等の適用によっても超低鉄損値が得られなくなる。又、こ
の場合、剪断スリット性、打抜き性等の加工性が著しく低下するので好ましくな
い。1.0g/m2以下では、磁気特性が優れ、表面形状がスムースで、切断性
、曲げ加工性等に優れた高磁束密度の方向性電磁鋼板が得られる。本発明のよう
にグラスレスの製品においては、もう1つの重要な問題として曲げ加工性がある
。グラスレス化反応時においては、本発明のように特別な工程と反応によらない
とグラスレス化工程で粒内、粒界の酸化や過剰なエッチング、不純物の拡散等に
より曲げ加工性が劣化する。これは前述のようにトランス鉄心加工時の磁性劣化
や鉄心加工時の折れ等を引き起こすことになる。曲げ加工性が5回未満ではこれ
らの問題を引き起こす場合があるので好ましくない。 【0031】 本発明によれば、これらの諸特性を満足して、高性能のグラスレス製品が得ら
れる。 本発明によりグラスレスで超低鉄損及び良加工性の高磁束密度方向性電磁鋼板
が得られるメカニズムとしては以下のように考えられる。 本発明においては新規な焼鈍分離剤と仕上焼鈍条件により、まず仕上焼鈍の昇
温前段で適正量のグラス皮膜を形成する。これにより鋼板表面に適度なシール効
果をもたらし、インヒビターの(Al、Si)N、AlN等の安定化と鋼板の追
加酸化が抑制される。 【0032】 次いで昇温後段で焼鈍分離剤の添加剤によりグラス皮膜層をケミカルエッチン
グして分解し、酸化膜中のSiO2を表面の余剰MgO側に吸収反応させる。そ
の後、更に仕上焼鈍の高温均熱段階でサーマルエッチングが生じ、鋼板表面は鏡
面化される。この段階においては冷延時の鋼板の表面粗度、脱炭焼鈍時の酸化膜
の不均一等によって生じた鋼板地鉄表面の凹凸が平滑化されるが、これはグラス
皮膜が高温均熱時までに消失することにより表面の原子移動を容易にし、表面張
力を下げる結果、平滑化がもたらされるのである。このグラスレス化時において
は純化を容易にし、結晶粒内、粒界ともに高純化される。この結果、鉄損が良好
で、曲げ加工、切断等の加工性を同時に満足するものと考えられる。 【0033】 このグラスレス過程のインヒビター(Al、Si)N、AlN等の分解を二次
再結晶開始時点まで安定化させるのが焼鈍分離剤中に添加される窒素化合物と仕
上焼鈍昇温過程での窒素分圧の制御であり、これらによりグラスレス化時の脱イ
ンヒビターが抑制され、インヒビターを安定に保つ結果、良好な二次再結晶と特
性が得られる。 【0034】 このようにして得られたグラスレス高磁束密度方向性材料は引き続き処理され
る高張力絶縁皮膜剤により鋼板に張力付与がなされ、磁区細分化されて超低鉄損
化される。 これは、鋼板表面がスムースで、従来のグラス皮膜処理材に見られる内部皮膜
層の悪影響がないためである。本発明においてはグラス皮膜による非磁性体部と
、表面の凹凸がないため、高張力絶縁皮膜剤の厚みを厚くしても占積率や励磁特
性への影響がないので厚膜化ができる。これにより、張力効果、絶縁性等におけ
る問題を十分にカバーできる。 【0035】 【実施例】 実施例1 重量で、C:0.054%、Si:3.35%、Mn:0.12%、酸可溶A 1:0.032%、S:0.0070%、N:0.0072%、残部Feと不可
避の不純物からなる素材を1.6mmに熱延し、1130℃で2分間焼鈍後、酸
洗し、冷延して最終板厚0.15mmとした。 【0036】 次いでN225%+H275%、露点65℃の条件で830℃×70秒の脱炭焼
鈍をし、750℃×30秒、N225%+H275%+NH3のDry雰囲気中で
鋼板〔N〕量が220ppmになるように窒化処理をし、供試材とした。この鋼
板に表1に示すような組成の焼鈍分離剤を塗布し、図2(A)、(B)に示すよ
うに雰囲気条件を変えて仕上焼鈍を行った。この鋼板を2%H2SO4、80℃×
10秒の軽酸洗を行って表面の活性化を行った後、絶縁皮膜剤として20%コロ
イド状SiO2100ml+50%第1リン酸Al25ml+50%第1リン酸
Mg25ml+無水クロム酸7gからなる処理剤を焼付後の膜厚で4μmになる
ように塗布し、830℃×30秒間の焼付処理を行って製品とした。この実験に
おける鋼板の表面状況、皮膜量、磁気特性等を表2に示す。 【0037】 【表1】 【0038】 【表2】 【0039】 この結果、本発明の焼鈍分離剤によるものは、何れもほぼ全面的にグラスレス
化して金属光沢を呈し、鏡面的な鋼板表面が得られた。又、グラス形成量は本発
明のものは何れも1g/m2以下でほとんど形成しなかった。しかし磁気特性は 仕上焼鈍条件(A)によるものは何れも高磁束密度で低鉄損値が得られたのに対
し、仕上焼鈍比較例(B)によるものは何れも二次再結晶が不良で磁気特性は不
良であった。又、繰り返し曲げ特性は本発明のものは何れも比較材に比べ非常に
良好であった。更に打抜回数においても本発明のものは飛躍的に良好な結果が得
られた。 【0040】 実施例2 実施例1と同一の素材を同様にして処理して最終板厚0.225mmに圧延し
た。この鋼板をN225%+H275%、露点65℃の雰囲気中で840℃×90
秒の脱炭焼鈍を行い、引続きN225%+H275%+NH3のDry雰囲気中で
750℃×30秒鋼中〔N〕量が200ppmになるようにNH3の含有量を変
えて焼鈍した。この後、表3に示すような組成の焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍
を図2(A)の条件で行った。この鋼板に2.0%コロイド状SiO2100m
l+50%Mg(H2PO4250ml+CrO37gからなるコーティング剤を
膜厚を変えて焼付処理を行った。この実験における皮膜の状況、磁気特性の結果
を表4に示す。 【0041】 【表3】【0042】 【表4】【0043】 この結果、本発明によるものは何れもグラスレス化が顕著で金属光沢を呈した
鋼板が得られ、グラス皮膜形成量は1g/m2以下であった。磁気特性も本発明
の焼鈍分離剤によるものは鉄損値、磁束密度とも良好で特に膜厚3μm以上では 良好な鉄損値を得た。又、鋼中のN、S量もグラスレス材では比較材のグラス付
材より著しく低い値を示した。 【0044】 比較例のグラス付の材料は純化が不良で、鉄損値も不良であった。 【0045】 【発明の効果】 本発明によればグラスレスで切断性、スリット性、打抜き性等の良い高磁束密
度低鉄損材が得られる。又、製品の純化が容易で高純な製品が得られ、曲げ加工
性等の鉄心加工性が向上する。このため、仕上焼鈍が低温化できることからコイ
ル形状が良好で製品の歩留の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】 【図1】 仕上焼鈍時のS、N量を示す図である。 【図2】 仕上焼鈍サイクルを示す図である。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量比でC;0.021〜0.075%、Si;2.5〜4.
    5%、Mn;0.05〜0.45%、S≦0.014%、N;0.0030〜0
    .0130%、酸可溶Al;0.010〜0.040%、残部がFeと不可避の
    不純物からなるスラブを熱延し、必要に応じて焼鈍し、1回又は焼鈍をはさむ2
    回以上の冷延により最終板厚とし、次いで脱炭焼鈍し、窒化処理し、焼鈍分離剤
    を塗布し、仕上焼鈍し、絶縁皮膜剤を塗布することからなる方向性電磁鋼板の製
    造方法において、脱炭焼鈍後の鋼板表面に測定温度30℃のCAA値が50秒以
    上のMgO:100重量部に対し、少なくとも塩素化合物をClとして1重量部
    以上含み、かつ塩素化合物、硫黄化合物、窒素化合物の1種又は2種以上をCl
    、S、Nのトータル量で1〜20重量部含む焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍条件
    として昇温時の雰囲気ガスを、600〜1100℃の範囲において、N225%
    以上を含むN2、H2、Ar等からなる雰囲気とし、昇温率20℃/hr以下で仕
    上焼鈍し、絶縁皮膜剤を焼付後の厚みで2〜6μmとなるように焼付処理するこ
    とからなる磁気特性が優れ、鉄心加工性が著しく優れた高磁東密度方向性電磁鋼
    板の製造法。 【請求項2】 MgO:100重量部に対し、少なくとも塩素化合物をClと
    して1重量部以上、窒素化合物をNとして1重量部以上含み、かつ塩素化合物、
    硫黄化合物、窒素化合物の1種または2種以上をCl、S、Nのトータル量で1
    〜20重量部含ませることを特徴とする請求項1記載の磁気特性が優れ、鉄心加
    工性が著しく優れた高磁東密度方向性電磁鋼板の製造法。

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