JP2671073B2 - 接着芯地の製造方法 - Google Patents

接着芯地の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、接着芯地の製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】衣料用接着芯地は衣服の表素域の芯材と
して用いられる。接着芯地は、不織布、編布や織布など
の基布の片面にホットメルトタイプの接着樹脂をドット
状などの様々な形状に塗布加工してあるので、これらの
接着芯地を表素材と共にアイロンなどで加熱・加圧する
ことにより両者を接着・接合させることができる。
【0003】ところが、ホットメルトタイプの接着樹脂
のみを担持した接着芯地を用いて表地などと加熱接着す
ると、接着樹脂が芯地基布の中を通って、反対面に染み
出す現象(逆染み)が問題であった。この問題を解決す
るために、例えば、実公昭56-55206号公報記載の技術で
は、基布とドット状接着樹脂層との間に、接着樹脂層の
ドットの大きさにほぼ相当するドット状下層を設けた。
即ち、下層の樹脂に比して上層の接着樹脂の熱可塑流動
特性を大きくすることにより、接着芯地と表地とを貼り
合わせるために加熱加圧した際に、上層の接着樹脂は表
地側へ移行しても、下層の樹脂は流動性が低いために芯
地の基布側へ移行しにくくなり、逆染みが防止される。
しかし、この技術では、接着芯地を製造する際に、ドッ
ト状下層の位置に同調させて丁度その上にドット状上層
を設けるのが難しいという欠点があった。
【0004】前記実公昭56-55206号公報記載の技術の改
良がドイツ特許公開第2460855 号明細書に記載されてい
る。即ち、この改良技術では、図1に示すように、基布
1の片面上に下層形成樹脂2をペースト状態でドット状
などにプリントした後、この下層形成樹脂2が粘着性を
有している間にホットメルト樹脂粉末3を基布1の上部
から落下させる。続いて、下層形成樹脂2の部分以外の
基布部分に落下・付着した樹脂粉末を表面から吸引した
り、裏面から打撃などによる振動を加えて払い落とすこ
とにより、下層形成樹脂2の上にのみホットメルト樹脂
粉末3を担持させた接着芯地を比較的容易に製造するこ
とができる。しかしながら、この改良技術では、ホット
メルト樹脂などの粉末3を基布1の上部から基布1の表
面全体に落下させるので、下層形成樹脂2以外の基布部
分に落下した粉末3は基布1の内部に入り込み、後の払
い落とし工程によっても除去されずに残留するものがあ
る。こうして残留した粉末は、製品搬送の際の振動によ
っても基布の内部へ入り込んで行く。基布の内部に入り
込んだ樹脂粉末は、表地との接着の際に逆染みの原因と
なったり、芯地の風合いを硬化させる原因となる。特
に、基布が不織布の場合には、不織布が3次元的な構造
からなるため、この現象が顕著に現れる。また、下層形
成樹脂2以外の基布部分に落下した余剰の粉末を基布か
ら払い落とす際の吸引や打撃によって、下層形成樹脂2
の上に乗った必要な樹脂粉末3の一部まで払い落として
しまう欠点もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、従来技術の前記欠点を解消し、ホットメルト樹脂な
どの粉末を芯地の基布内部に残留させず、しかも下層形
成樹脂の上にはホットメルト樹脂などの粉末を接着に必
要な充分な量で担持させることができる、接着芯地の製
造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記の目的は、本発明に
より、第1の樹脂からなる層を基布の片面上にドット状
に設け、その第1の樹脂層を担持する基布面を下向きと
し、第1の樹脂が粘着性を有する間に第2の樹脂の粉末
を第1の樹脂層を担持する基布面に向かって下側から吹
きつけることにより第2の樹脂の粉末を第1の樹脂層上
に付着させ、第2の樹脂の粉末を吹きつけた面とは反対
側の面から基布に向かって空気を吹きつけることによ
り、第1の樹脂層上以外の基布部分に付着した第2の樹
脂の粉末を基布から除去することを特徴とする、接着芯
地の製造方法によって達成することができる。
【0007】本発明方法で用いる基布は、従来法の基布
と異なるものではなく、不織布、編み物、織物、あるい
はこれらの複合布である。不織布としては、繊維接着不
織布、接着剤結合型不織布又は水流絡合不織布などが特
に適している。また、フィラメント、ネット、編み物又
は織物と複合した不織布も使用することができる。
【0008】本発明方法において前記の「第1の樹脂」
は、基布上に設ける下層を形成する樹脂であり、従来法
で用いられている下層形成樹脂と異なるものではない。
即ち、この下層の上に担持される「第2の樹脂」と比べ
て、熱流動性の小さいものであればよく、例えばアクリ
ル樹脂又はウレタン樹脂などが通常用いられ、特に自己
架橋タイプのものが好ましい。これらの樹脂は、従来法
と同様に、例えば、エマルジョンなどの形態でペースト
状にして、ロールプリンタなどにより基布の片面にドッ
ト状にプリントされる。ここで、ドット状とは、従来法
と同様に、基布表面上に不連続な多数の点又は小区域か
ら形成される模様であり、各ドットの形状(例えば、円
形、楕円形、又は正方形、長方形や六角形などの多角
形)や大きさ、或いは相互間の間隔や密度なども従来法
のものと異なるものではない。一般に、ドット状下層の
個々の大きさは約0.03〜1.2mm2 、好ましくは
0.07〜0.5mm2 であり、そのプリント総面積は、
基布の約6〜40%、好ましくは10〜20%を占め
る。
【0009】本発明方法において前記の「第2の樹脂」
は、前記の第1の樹脂からなる下層の上に担持される熱
可塑性接着樹脂であり、従来法と同様に、第1の樹脂と
比べて、熱流動性の大きなものであればよい。例えば、
融点が80〜120℃の低融点となるように成分を調整
したポリエステル系共重合体、ポリアミド系共重合体、
ポリエチレン、塩化ビニル系共重合体などを使用するこ
とができる。
【0010】第2の樹脂は、前記ドイツ特許公開第2460
855 号明細書記載の方法と同様に、粉末状で、基布上の
下層の上に与えられる。但し、本発明方法では、前記ド
イツ特許公開第2460855 号明細書記載の方法と異なり、
第1の樹脂の下層を担持する基布面を下向きとし、その
下を向いた基布面に向かって上向きに粉末状の第2の樹
脂を与える。従って、粉末状の第2の樹脂の付与工程に
おいては、基布の下層担持面を下側に向ける。ここで第
1の樹脂からなる下層を担持する基布面を下向きにする
とは、基布の仰角が0°(水平)以上で90°(垂直)
未満であることを意味し、その下層担持面が垂直から少
しでも角度を有して下側を向いていればよく、必ずしも
水平である必要はない。また、本発明方法においても、
第2の樹脂の粉末の付与工程においては、第1の樹脂は
粘着性を有している必要があるので、第1の樹脂のプリ
ント工程の後、第1の樹脂のプリントが未乾燥の状態
か、あるいは乾燥されていても完全に架橋されておら
ず、粘着性を残している状態で第2の樹脂の粉末の付与
工程を実施するのが望ましい。
【0011】第2の樹脂の粉末を、粉体用スプレーガン
などにより、基布の下層プリント面に吹き付ける。この
際、第1の樹脂から成る下層にのみ充分量の粉末を付着
させ、その他の部分には粉末を付着させないか又は付着
量を最小量に抑えるように、粉末の吹きつけ速度、粉末
の粒度、第1の樹脂の粘着度、基布の搬送速度及び基布
の仰角などを調節するのが好ましい。なお、第2の樹脂
の粉末を摩擦や高圧電荷を与えることにより帯電させる
と、第1の樹脂から成る下層プリント面は、この時点で
水分を含んでいてアースされた状態となっているため、
静電気力により、粉末がプリント面に付着しやすくな
る。
【0012】更に、基布の少なくとも1面に撥水加工を
施し、その撥水加工面上に下層をプリントし、その上に
接着性樹脂粉末を付与すると粉末の付着安定性が向上す
ることが分かった。その理由は必ずしも明らかではない
が、撥水加工面に下層をプリントすると下層形成樹脂が
基布に染み込まずに形態が安定すること、及び、撥水加
工により基布が正(+)に帯電し易くなるので、接着性
樹脂粉末も正(+)に帯電させると、粉末が下層プリン
ト部分に集中し易くなることによるためと思われる。撥
水加工を施した基布を用い、正(+)に帯電した接着性
樹脂粉末を用いて本発明方法を実施すると、例えば、プ
リント総面積約15%に対して、接着性樹脂粉末の付与
量に対する付着量の割合(付着率)を約30%以上に増
加させることができる。
【0013】粉末の付与工程の後で、下層以外の基布部
分に付着した粉末を除去する。粉末の除去に、基布のプ
リント担持面とは逆の面から空気を吹きつける逆洗法を
用いると、下層プリント部分では空気が下層に遮断され
るのに対し、下層以外の基布部分では空気が基布繊維を
通過するので、下層上に付着している必要な粉末はその
空気によって除去されず、下層以外の基布部分に付着し
ている不要な粉末のみを効率よく除去することができ
る。
【0014】本発明方法では、粉末の除去工程の後で、
必要により、乾燥工程を行い、下層を乾燥させると共
に、下層とその上の粉末との加熱処理を行い、粉末を溶
融させて、付着強度を高めるのが好ましい。これらの工
程も従来法と同様に実施することができる。
【0015】次に、本発明方法の代表的態様を図2に沿
って説明する。基布1を、プリンタ4へ送り、基布1の
片面上に第1の樹脂による下層2をドット状にプリント
する。続いて、基布のプリント面を下向きにしてスプレ
ーブース5に送る。スプレーブース5では基布を水平か
ら仰角αが0〜90°、好ましくは約30〜60°傾
け、下向きのプリント面に向かって、パウダー塗布用ス
プレーガン6により、第2の樹脂の粉末を吹きつける。
この際の粉末の吹きつけ速度などは適宜容易に調節する
ことができる。次に、エアーノズル7により基布のプリ
ント面とは逆の面から空気を吹きつけ、下層上以外の基
布部分に付着した余分な粉末を除去する。なお、粉末の
除去のために、必要に応じて振動、吸引、表面からのエ
アーブローなどの手段を併用してもよい。続いて、基布
を乾燥機8に送り、下層の乾燥及び下層とその上の粉末
とを融着させ、接着芯地を得る。
【0016】
【実施例】図2に示す装置と同様の装置を用いて本発明
方法を実施した。繊度1.5デニール、繊維長38mmの
ナイロン繊維100%からなる繊維ウェブを、長方形凸
部が一様に分布した彫刻ロールとフラットロールとから
なるカレンダーロール(表面温度195℃)に通し、シ
ール面積が10%で目付が25g/m2 のポイントシー
ル不織布を作製した。続いて、この不織布1の片面にプ
リンタ4により、ポリウレタン樹脂を主成分とするドッ
ト形状(ドット数70個/cm2 )のプリント2を設け
た。なお、プリント2の固形分付着量は5g/m2 であ
った。
【0017】次いで、上記プリント不織布をプリント面
が下になるようにスプレーブース5に導き、不織布を水
平からの仰角αが45°となるように移動させ、この状
態で下方から粉末塗布用スプレーガン6によって、粒径
80〜150μmの共重合ポリアミド樹脂粉末(融点1
10℃)3を50g/分の供給量で吹き付けた。この
後、不織布のプリント面と逆の面から逆洗用エアーノズ
ル7によりエアーをあて、余剰の粉末を除去したとこ
ろ、8g/m2 の粉末が付着していた。続いて、乾燥機
8により120℃で熱処理して目付38g/m2 の接着
芯地を得た。
【0018】得られた接着芯地の接着力、逆しみ出し、
風合いを表す値としての曲げ値、及び剪断値を測定し、
結果を表1に示した。なお、各試験は下記の方法によっ
て行なった。(1)接着力: 接着芯をウールギャバジンからなる表地と重ね、ロー
ルプレス機により温度130℃及びゲージ圧3kgの条
件で10秒間プレスして、表地と接着芯地とを接着して
サンプルを作成する。次いで、このサンプルを5cm×
10cmにカットして試験片を得る。得られた試験片を
引張り試験機によって引張り速度10cm/分で180
度剥離し、このときの強度を接着力とする(JISL−
1086準用)。
【0019】(2)逆しみ出し:接着力の試験(1)で
用いたものと同じ試験片を2枚用意し、芯地面を重ね合
わせた後、平板プレス機により、温度110℃、圧力
0.4kg/cm2 、スチーム時間5秒間及びプレス時間1
0秒間の条件でプレスを2回施す。このサンプルの芯地
面の剥離強度を引張り試験機を用いて、接着力の測定と
同様の方法で測定し、これを逆しみ出しの判定基準とす
る。ここでは、剥離のための強度が大きいほど、逆しみ
出しが大きいものと判定される。
【0020】(3)曲げ値〔KESB値〕:接着力の試
験(1)で用いたものと同じサンプルを20cm×20cm
にカットして、試験片を作成する。純曲げ試験機
〔(株)カトーテック製〕の固定チャックと移動チャッ
クに、この試験片をはさみ、移動チャックを動かすこと
で試験片を一定の曲率に曲げ、それに対応する曲げモー
メントを測定する。試験片の曲率と曲げモーメントの関
係をグラフ化し、その傾きから曲げ値(B値)を求め
る。なお、曲げ値は試験片の縦方向と横方向とを測定
し、その平均値で表す。
【0021】(4)剪断値〔KESG値〕:曲げ値の試
験(3)で用いたものと同じ試験片を用意し、この試験
片を測定実寸法が5cm×20cmとなるように5cmの間隔
をあけて、剪断試験機〔(株)カトーテック製〕のチャ
ック間に固定し、一方のチャックを移動させることによ
り、試験片を一定の剪断ずり量にずらし、それに対応す
る剪断荷重を測定する。この剪断ずり量と剪断荷重との
関係をグラフ化し、その傾きから剪断値(G値)を求め
る。なお、剪断値は試験片の縦方向と横方向とを測定
し、その平均値で表す。
【0022】
【比較例】実施例と同様にしてプリント不織布を作製
し、プリント面を上向きにして水平に移動させ、上方よ
り、実施例で用いたのと同じ粒径80〜150μmの共
重合ポリアミド樹脂粉末(融点110℃)を散布した。
この後、プリント面を下方に向け、プリント面と反対側
より打撃を与え、振動により余分な粉末を除去した。な
お、この工程により粉末の付着量が実施例と同じ8g/
となるように調整したが、この際の粉末の散布量は
90g/分であった。続いて、乾燥機により120℃で
熱処理して目付38g/mの接着芯を得た。得られ
た接着芯地の接着力、逆しみ出し、曲げ値及び剪断値を
実施例と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
なお、この接着芯地を観察すると、プリント以外の部分
にも粉末が付着していた。
【0023】
【表1】測定項目 実施例 比較例 接着力(kg/5cm幅) 1.5以上 1.0 逆しみ出し(g/5cm幅) 10以下 150 曲げ値(g・cm/cm) 0.30 0.46 剪断値(g・cm/degree ・cm ) 2.40 3.45
【0024】表1において、実施例の接着芯地は接着力
の測定において1.5kg/5cm幅の時点で不織布が破断
したため、正確な接着力は計れなかった。しかし、比較
例の接着芯地と比較して、付着している共重合ポリアミ
ド樹脂粉末の量が等しいにもかかわらず、強度的に優れ
ていることは明らかである。これは、実施例の方法によ
る接着芯地では樹脂粉末がプリントされた下層の樹脂の
上に効率よく乗っているためと推定される。なお、この
ことは実施例の接着芯地に比べて比較例の接着芯地では
逆しみ出しが大きいこと、及び風合いを示す曲げ値や剪
断値が大きく、風合が硬くなっていることからも理解さ
れる。
【0025】
【発明の効果】本発明方法によれば、基布の下層プリン
ト部分にのみ接着性樹脂粉末を安定に付着させることが
できるので、逆染みが生じず、ソフトな風合いが保て、
充分な接着強度を有する接着芯地を製造することができ
る。本発明方法では、下層プリント部分以外の基布部分
に付着する接着性樹脂粉末の存在を有効に防止すること
ができるので、従来法ではその防止が特に困難であった
不織布基布の接着芯地の製造に適用するのが特に好まし
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】接着芯地上の下層及びその上に付着する接着性
樹脂層の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明方法の1態様を実施する装置の説明図で
ある。
【符号の説明】
1…基布 2…下層 3…接着性樹脂粉末 4…プリンタ 5…スプレーブース 6…スプレーガン 7…逆洗用エアーノズル

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の樹脂からなる層を基布の片面上に
    ドット状に設け、その第1の樹脂層を担持する基布面を
    下向きとし、第1の樹脂が粘着性を有する間に第2の樹
    脂の粉末を第1の樹脂層を担持する基布面に向かって下
    側から吹きつけることにより第2の樹脂の粉末を第1の
    樹脂層上に付着させ 第2の樹脂の粉末を吹きつけた面とは反対側の面から基
    布に向かって空気を吹きつけることにより、第1の樹脂
    層上以外の基布部分に付着した第2の樹脂の粉末を基布
    から除去することを特徴とする 、接着芯地の製造方法。
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JP6175918B2 (ja) * 2012-07-04 2017-08-09 日東紡績株式会社 接着芯地の製造方法、及び接着芯地

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