JP2668293B2 - 溶融亜鉛メッキ構造物における高力ボルト摩擦接合方法 - Google Patents

溶融亜鉛メッキ構造物における高力ボルト摩擦接合方法

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伸伍 高松
治三 首藤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶融亜鉛メッキ構造物
における高力ボルト摩擦接合方法に関する。本方法は、
例えば、土木・建築工事などにおいて使用される。
【0002】
【従来の技術】土木・建築基準法などで規制を受ける溶
融亜鉛メッキ構造物の場合、高力ボルト摩擦接合面は、
すべり係数が0.4以上あることが要求されている。
【0003】この摩擦係数を得るために従来行なわれて
いたのは、大別すると次の2方法であった。
【0004】a.摩擦接合面のみ不メッキ処理し、母材
の鋼表面を残す方法。メッキに先だって、母材の摩擦接
合面となる部分のみ、不メッキ剤を塗布し、メッキが付
着しないようマスキングする。所定時間屋外に放置し、
塗布された不メッキ剤を乾燥させる。アルカリ脱脂およ
び酸洗により表面を正常にし、フラックス処理を行なっ
た後、メッキを行なう。メッキ後、摩擦接合面に付着し
た不メッキ剤のスラッグをワイヤーブラシ又はサンダー
などを用いて除去する。添接板ともども屋外に放置し、
赤錆を発生させるか、または通常のブラスト処理によっ
て所定の摩擦係数を確保する。
【0005】b.全面メッキを施した後、摩擦接合面の
み肌粗し処理を行なう方法。これにも大別して2種類あ
る。
【0006】第一は、全面メッキを施した後、建築基準
法に定められたブラスト処理を行なう方法である。その
際、摩擦面以外はブラストしないように、例えばブラス
ト処理の境界にガムテープなどを貼付ける。添接板はメ
ッキ加工されたものを用い、片面についてブラスト処理
を行なう。
【0007】第二は、ディスクサンダーなどで肌粗し処
理を行なう方法である。母材については、添接板の当る
部分についてディスクサンダーで肌粗し処理を行なう。
添接板は摩擦接合面を全面的にディスクサンダーで肌粗
し処理を行なう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前記aの方法では、不
メッキ処理に工数がかかる。また、ボルト締め付け接合
後、ボルト及び添接板の不メッキ部は、ジンクリッチペ
イントなどを塗布して防錆する必要がある。
【0009】前記bの方法では、摩擦接合部メッキ面の
肌粗し処理に工数がかかるという欠点がある。
【0010】本発明は、これら従来技術の問題点に鑑み
て行なわれたもので、簡易、迅速、経済的に必要なすべ
り係数が得られる溶融亜鉛メッキ構造物における高力ボ
ルト摩擦接合方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、溶融亜鉛メッ
キ母材に溶融亜鉛メッキ添接板を当てて高力ボルトで締
め付け、前記母材と前記添接板の間に生じる摩擦力によ
って応力を伝達する高力ボルト摩擦接合方法であって、
前記母材と前記添接板のうち少なくとも摩擦接合面に対
してりん酸塩処理を施すことを特徴とする。
【0012】りん酸塩処理は鉄鋼、亜鉛、溶融亜鉛メッ
キなどに対する工業的塗装下地法として業界ではよく知
られている工法である。例えば、溶融亜鉛メッキに対す
るりん酸塩処理は典型的には次のように行なわれる。
【0013】メッキ直後の汚れのない溶融亜鉛メッキ鋼
の場合、ファインクリーナー(アルカリ度17−21ポ
イント)により55−65℃で5−10分間脱脂する。
その後、常温において浄水で水洗し、プレパレンZ(日
本パーカライジング株式会社の商標)により、30−4
0℃で10−20秒間表面調整をする。その後、例え
ば、りん酸亜鉛系のパルボンド(日本パーカライジング
株式会社の商標)(全酸度17−23ポイント、遊離酸
度1−3ポイント)により、60−75℃で3−5分間
りん酸塩処理する。その後、70℃以上の湯水により湯
洗の上、乾燥させて製品とする。
【0014】メッキ後長時間経過して汚れのある溶融亜
鉛メッキ鋼の場合には、前記方法において水洗工程と表
面調整工程の間で、酸洗工程と水洗工程を加える。酸洗
は1−3.5%の硝酸に常温で20−120秒間処理す
る。水洗は常温で浄水により行なう。
【0015】溶融亜鉛メッキ鋼の表面に生成するりん酸
塩皮膜は灰色であるが、前処理方法および条件の調節に
より塗装用色見本帳((社)日本塗装工業会)における
マンセル値でN3.5−7.0の範囲で調節可能であ
る。
【0016】本発明において、りん酸塩処理を母材およ
び添接板の全体にわたって行なうには、工場内で浸漬処
理をするのが好ましく、工事現場で摩擦接合面だけに対
して行なうときには、スプレー又ははけ塗りなどの塗布
法が適している。
【0017】
【作用】本発明に基づき、りん酸塩処理した溶融亜鉛メ
ッキの高力ボルト摩擦接合面は、すべり係数0.4を以
上を達成し、土木・建築基準法などの規制に合格した。
【0018】
【実施例】図1,図2に示す試験体を製作してすべり試
験を行なった。試験体は、母材1および添接板2からな
る溶融亜鉛メッキ高力ボルト摩擦接合継手で、ボルト3
で数箇所固定されている。板幅Wは100mmで、母材
厚みは22mm、添接板厚みは12mm、ボルト等級F
8T(呼び径M22)、孔径24.5mmであった。接
合面はりん酸塩処理をしないもの3体と、浸漬法により
りん酸塩処理したもの3種類(暗色タイプ、中間色タイ
プ、明色タイプ)、塗布法によりりん酸塩処理したもの
2種類を各3体製作して、比較した。
【0019】浸漬法による3種類(暗色タイプ、中間色
タイプ、明色タイプ)のりん酸塩処理は、次のようにし
て行なった。
【0020】 暗色タイプ(N4.5) 処理液 濃度 温度 時間 脱脂 ファインクリーナー 20-30pt 55-70 ℃ 5-10分 水洗 浄水 − 常温 表面調整(1) 硝酸 1-3.5% 常温 20-120 秒 水洗 浄水 − 常温 表面調整(2) プレパレン-Z 1-5g/l 15-40 ℃ 1-2 分 (pH8-9.5) りん酸塩処理 パルボンド3308 60-70 ℃ 3-4 分 (りん酸亜鉛系) 全酸度 20-30pt 遊離酸度 2-5pt 酸比 5-10 湯洗 浄水 65-80℃ 1-2分 (プレパレン-Zとパルボンド3308は日本パーカライジング株式会社の商標)
【0021】 中間色タイプ(N5.0) 処理液 濃度 温度 時間 脱脂 ファインクリーナー 20-30pt 55-70 ℃ 5-10分 水洗 浄水 − 常温 表面調整 プレパレン-Z 1-5g/l 15-40 ℃ 1-2 分 (pH8-9.5) りん酸塩処理 パルボンド3308 60-70 ℃ 3-4 分 (りん酸亜鉛系) 全酸度 20-30pt 遊離酸度 2-5pt 酸比 5-10 湯洗 浄水 65-80 ℃ 1-2 分
【0022】 明色タイプ(N7) 処理液 濃度 温度 時間 脱脂 ファインクリーナー 20-30pt 55-70 ℃ 5-10分 水洗 浄水 − 常温 表面調整 プレパレン-Z 1-5g/l 15-40 ℃ 1-2 分 (pH8-9.5) りん酸塩処理 パルボンドL47T 45-60 ℃ 3-5 分 (りん酸亜鉛系) 全酸度 25-40pt 遊離酸度 3-10pt 酸比 4-10 湯洗 浄水 − 65-80 ℃ 1-2分
【0023】塗布法による2種類のりん酸塩処理は、次
のようにして行なった。 処理液 濃度 温度 塗布回数 No.1 パルボンドL15C-A 原液 常温 1-2 No.2 パルボンドL15C-AとパルボンドL15C-Bを1:1 常温 1-2 (パルボンドL15C-AとパルボンドL15C-Bは日本パーカライジング株式会社の商標 である)
【0024】試験方法は次の通りである。 a.組立に先立ち、摩擦面から油、ゴミなどの摩擦力を
低下させるものを除去した。 b.母材、添接板の穴位置を決定し、ボルト(等級F8
T、呼び径M22x85)をセットした。 c.試験体は、片側をすべり面とし、反対側を固定側と
した。すべり側ボルトの締め付けは一次締め15kgf ・ m
のトルク値を導入後、マーキングを施し、トルクレンチ
で標準ボルト軸力(18.2ton )が導入できるように締め
付けた。なお、固定側ボルトは、すべり側ボルトの10%
増しのトルクで締め付けた。 d.ボルト締付け後、各試験体は側面にすべり確認用の
ケガキ線を入れた。 e.試験体の載荷は、すべり点が明確に判明できるよう
に徐々に載荷した。 f.すべり点の確認に関しては、すべり音を発した点、
ケガキ線が明瞭にずれた点、または引張り試験機の指針
が急激に減少した点をすべり点として記録した。
【0025】すべり係数値の算出式は次の通りである。 μ= P/m・n・N ここに μ:すべり係数値 m:摩擦面数、本試験では2 n:ボルト本数、本試験では2 P:すべり荷重(tonf) N:標準導入軸力(tonf)、本試験では18.2
【0026】試験結果は次に示すとおりである。
【0027】 (A)りん酸塩処理をしないもの3体 すべり荷重 すべり係数 すべり係数の平均 1. 16.1 0,221 2. 20.4 0.280 0.255 3. 19.2 0.264
【0028】 (B)浸漬法によりりん酸塩処理をしたもののうち暗色タイプ3体 すべり荷重 すべり係数 すべり係数の平均 1. 40.3 0.554 2. 38.6 0.530 0.536 3. 38.1 0.523
【0029】 (C)浸漬法によりりん酸塩処理をしたもののうち中間色タイプ3体 すべり荷重 すべり係数 すべり係数の平均 1. 32.7 0.449 2. 30.5 0.419 0.440 3. 33.0 0.453
【0030】 (D)浸漬法によりりん酸塩処理をしたもののうち明色タイプ3体 すべり荷重 すべり係数 すべり係数の平均 1. 35.4 0.486 2. 33.9 0.466 0.480 3. 35.6 0.489
【0031】 (E)塗布法(上記No.1)によりりん酸塩処理をしたもの 3体 すべり荷重 すべり係数 すべり係数の平均 1. 36.7 0.504 2. 40.2 0.552 0.536 3. 40.2 0.552
【0032】 (F)塗布法(上記No.2)によりりん酸塩処理をしたもの 3体 すべり荷重 すべり係数 すべり係数の平均 1. 33.9 0.466 2. 33.4 0.459 0.459 3. 33.0 0.453
【0033】以上より、りん酸塩処理をしないものは
すべり係数0.4を達成できないが、りん酸塩処理した
ものはすべてすべり係数0.4以上を達成していること
が分かる。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、溶融亜鉛メッキ鋼を高
力ボルト摩擦接合継手として使用し、それ自体公知のり
ん酸塩処理を施すことにより、簡易、迅速、経済的に必
要なすべり係数が得られる。さらに、りん酸塩処理した
摩擦接合面は耐食性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験体の平面図である。
【図2】試験体の側面図である。
【符号の説明】
1 母材 2 添接板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭51−17763(JP,A) 特開 昭50−74056(JP,A) 特開 昭63−161237(JP,A) 鉛と亜鉛 第31号 第26頁 (昭和44 年9月15日、日本鉛亜鉛需要研究会発 行) 鉄塔 第69号 第26〜27頁 (昭和62 年6月12日、社団法人日本鉄塔協会発 行)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融亜鉛メッキ母材に溶融亜鉛メッキ添
    接板を当てて高力ボルトで締め付け、前記母材と前記添
    接板の間に生じる摩擦力によって応力を伝達する高力ボ
    ルト摩擦接合方法であって、前記母材と前記添接板のう
    ち少なくとも摩擦接合面に対してりん酸塩処理を施すこ
    とを特徴とする溶融亜鉛メッキ構造物における高力ボル
    ト摩擦接合方法。
  2. 【請求項2】 母材及び/又は添接板が浸漬法によりり
    ん酸塩処理されている請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 母材及び/又は添接板が塗布法によりり
    ん酸塩処理されている請求項1記載の方法。
JP12490291A 1991-04-25 1991-04-25 溶融亜鉛メッキ構造物における高力ボルト摩擦接合方法 Expired - Lifetime JP2668293B2 (ja)

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Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
鉄塔 第69号 第26〜27頁 (昭和62年6月12日、社団法人日本鉄塔協会発行)
鉛と亜鉛 第31号 第26頁 (昭和44年9月15日、日本鉛亜鉛需要研究会発行)

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