JP2664406B2 - 溶融時に光学的異方性を示すポリエステル樹脂及び樹脂組成物 - Google Patents

溶融時に光学的異方性を示すポリエステル樹脂及び樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は耐熱性と加工性に優れ、尚かつ、機械的性質
に優れた溶融時に光学的異方性を示すポリエステル樹脂
及びその組成物に関する。
〔従来の技術〕
近年、耐熱性と加工性を併せ備えた熱可塑性樹脂とし
て溶融時に光学的異方性を示すポリマー(液晶性ポリマ
ー)の提案が種々なされている。特開昭49−72393号
特開昭50−43223号特開昭54−77691号等がそれらの
代表的なものである。これらの液晶性ポリマーは何れも
ポリマーの骨格に剛直性セグメントを導入して液晶性を
発現し高強度で耐熱性に優れ、尚かつ、溶融流動性に優
れた易加工性を実現している。
〔発明が解決しようとする課題〕
然し乍ら、耐熱性と易加工性とを更に好適なものにす
る為には以下の点での配慮が必要とされる。即ち、熱可
塑性樹脂の通常の成形度範囲は高くとも350℃以下であ
り、それ以上の場合には特殊な成形機を必要とするので
賦形の汎用性と熱源の経済性を考慮すると350℃以下が
望ましい。
更に樹脂の使用される環境が増々苛酷な使用条件とな
っており、特に高温での機械的性質の信頼性が重要視さ
れている為、耐熱性の指標として用いられる熱変形温度
は少なくとも150℃以上、好ましくは200℃以上が望まれ
る温度範囲である。
以上の2点は通常の熱可塑性樹脂では相矛盾する性格
であり、要点若しくは流動点を下げながら尚かつ熱変形
温度を高めるということは極めて困難である。
因に、先に提案されている液晶性ポリマーの例として
は熱変形温度200℃以上を満足するものの成形温度350
℃以下を満さない。又、及びの例は成形温度350℃
以下を満すものの熱変形温度に関しては100℃以下で
あり、は180℃と望ましい範囲には及んでいない。
〔課題を解決する為の手段〕
以上の課題に鑑み、本発明者等は耐熱性と易加工性と
いう相矛盾する特性を同時に満足し、尚かつ苛酷な環境
下でも機械的物性の信頼性に優れた熱可塑性樹脂を得る
べく鋭意研究した結果、特定の構成単位を有するポリエ
ステルがこれらの相矛盾する問題点をバランス良く解決
出来ることを見出し、本発明を完成するに到ったもので
ある。
即ち本発明は、必須の構成成分として下式(I)〜
(V)で表される構成単位を含み、全構成単位に対して
(I)が35乃至90モル%、(II)が0.5乃至20モル%、
(III)が0.5乃至45モル%、(IV)が0.5乃至45モル
%、(V)が0.5乃至45モル%であることを特徴とする
溶融時に光学的異方性を示すポリエステル樹脂に関す
る。
本発明は上記の如き特定の構成単位の特定の比率より
なる組み合わせ、特に構成単位(II)の低含量域で、易
加工性と耐熱性のバランスの良好なポリマーの提供を実
現するのである。
ポリマーの構成単位である(I)の実現する具体的な
化合物はp−ヒドロキシ安息香酸及びその誘導体であ
り、誘導体としてはアセトキシ安息香酸等の酸エステル
安息香酸類、ヒドロキシ安息香酸のメチル、エチル、ブ
チル及びフェニルエステル等の安息香酸エステル類、ヒ
ドロキシ安息香酸クロライド等の酸クロライド類等があ
げられる。
本構成単位(I)は全構成単位に対して35乃至90モル
%が用いられ、好ましくは50乃至90モル%である。
(II)を実現する具体的な化合物は2−ヒドロキシ−
6−ナフトエ酸及びその誘導体であり、誘導体としては
2−アセトキシ−6−ナフトエ酸等の酸エステルナフト
エ酸類、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸のメチル、エ
チル、ブチル及びフェニルエステル等のナフトエ酸エス
テル類、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸クロライド等
の酸クロライド類等があげられる。
本構成単位(II)は全構成単位に対して0.5乃至20モ
ル%が用いられる。好ましくは1乃至15モル%の範囲で
ある。本構成単位(II)の配合比率は少量で敏感にポリ
マーの特性に影響を与える。
(III)を実現する具体的な化合物はレゾルシノール
及びその誘導体であり、誘導体としてはジアセトキシレ
ゾルシノール等の酸エステル類があげられる。
本構成単位(III)は全構成単位に対し0.5乃至45モル
%用いられる。2乃至25モル%が好ましい範囲である。
(IV)を実現する具体的な化合物はハイドロキノン及
びその誘導体であり、誘導体としてはジアセトキシハイ
ドロキノン等の酸エステル類があげられる。
本構成単位(IV)は全構成単位に対し0.5乃至45モル
%用いられる。2乃至25モル%が好ましい範囲である。
(V)を実現する具体的な化合物はテレフタル酸及び
/又はイソフタル酸とその誘導体であり、誘導体として
はフタル酸のメチル、エチル及びフェニルエステル等の
フタル酸エステル類、フタル酸クロライド等の酸クロラ
イド類等があげられる。
本構成単位(V)は全構成単位に対し0.5乃至45モル
%用いられる。この内、イソフタル酸の好ましい範囲は
15モル%以下である。
これらの化合物から本発明のポリマーが直接重合法や
エステル交換法を用いて重合され、重合に際しては、通
常溶融重合法やスラリー重合法等が用いられる。
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であ
り、代表的なものはジアルキル錫酸化物、ジアリール錫
酸化物、2酸化チタン、アルコキシチタンけい酸塩類、
チタンアルコラート類、カルボン酸のアルカリ及びアル
カリ土類金属塩類、BF3の如きルイス酸等があげられ
る。
触媒の使用量は一般にはモノマーの全重量に基いて約
0.001乃至1重量%、特に約0.01乃至0.2重量%が好まし
い。
これらの重合方法により製造されたポリマーは更に不
活性ガス中で加熱する固相重合により分子量の増加を計
ることができる。
溶融時に光学的異法性を示す液晶性ポリマーであるこ
とは、本発明において耐熱性と易加工性を併せ持つ上で
不可欠な要素である。溶融異方性の性質は直交偏光子を
利用した慣用の偏光検査方法により確認することができ
る。より具体的には溶融異方性の確認はLeitz偏光顕微
鏡を使用しLeitzホットステージにのせた試料を窒素雰
囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。
上記ポリマーは光学的に異方性であり、直交偏光子間に
挿入したとき光を透過させる。試料が光学的に異方性で
あると、例えば静止液状態であっても偏光は透過する。
本願の加工性の指標としては液晶性及び融点(液晶性
発現温度)が考えられる。液相性を示すか否かは溶融時
の流動性に深く係わり、本願のポリエステルは溶融状態
で液晶性を示すことが不可欠である。
ネマチックな液晶性ポリマーは融点以上で著しく粘性
低下を生じるので、一般的に融点またはそれ以上の温度
で液晶性を示すことが加工性の指標となる。従って、融
点(液晶性発現温度)は、通常の成形機の加熱能力から
みて350℃以下が望ましい目安となる。
本願の耐熱性の指標としては熱変形温度、高温下での
剛性等が考えられる。使用目的としての耐熱性は材料
が電気分野等で半田付け工程に耐えられる半田耐熱性を
持つこと材料が応力のかかった状態でも連続して使用
できる温度範囲が高温であること等が必要となる。は
通常熱変形温度が評価方法として用いられとの相関も
あるが樹脂自体の性能としては電気分野での蓄熱、熱源
廻りの部品用素材として勘案すると、200℃以上あれば
極めて優れた耐熱性を持つといえる。
次に本発明のポリエステルは使用目的に応じて各種の
繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を配合す
ることが出来る。
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊
維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊
維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼
素繊維、チタン酸カリ繊維、更にステンレス、アルミニ
ウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などの無機
質繊維状物質が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤
はガラス繊維である。尚、ポリアミド、フッ素樹脂、ポ
ルエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維
状物質を使用することが出来る。
一方、紛粒状充填剤としてはカーボンブラック、黒
鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスフ
ァイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウ
ム、硅酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、硅
藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化鉄、酸化チ
タン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金
属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き
金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金
属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、
窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
又、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、各
種の金属箔等が挙げられる。
有機充填剤の例を示せば芳香族ポリエステル、繊維、
液晶性ポリマー繊維、芳香族ポリアミド、ポリイミド繊
維等の耐熱性高強度合成繊維等である。
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用
することが出来る。繊維状充填剤と粒状又は板状充填剤
との併用は特に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を
兼備する上で好ましい組み合わせである。無機充填剤の
配合量は、組成物全量に対して95重量%以下、好ましく
は1〜80重量%である。
これらの充填剤の使用にあたっては必要ならば収束剤
又は表面処理剤を使用することが望ましい。
更に本発明のポリエステルには、本発明の企図する目
的を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂を補助的に添加
してもよい。
この場合に使用する熱可塑性樹脂の例を示すと、ポリ
エチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等
の芳香族ジカルボン酸とジオール或いはオキシカルボン
酸等からなる芳香族ポリエステル、ポリアセタール(ホ
モ又はコポリマー)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、
ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレン
オキシド、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂等を
挙げることができる。またこれらの熱可塑性樹脂は2種
以上混合して使用することができる。
〔発明の効果〕
本発明で得られる特定の構成単位よりなる溶融時に光
学的異方性を示す芳香族ポリエステル及びその組成物
は、優れた性能を発現でき、350℃以下の加工温度で流
動性を持ち、通常の射出成形や押出成形、圧縮成形が可
能であり種々の立体成形品、繊維、フィルム等に加工出
来、特に射出成形に好適な流動性を与える。又200℃以
上の耐熱変形性を持つ為、機械的強度の保持が高温状態
でも可能であり、又半田耐熱もあり各種の耐熱分野に供
される。
〔実施例〕
以下に実施例をもって本発明を説明するが、本発明は
実施例に限定を受けるものではない。以下本発明に用い
た測定法を記す。
1) 液晶性の測定 得られた樹脂の液晶性はLeitz偏光顕微鏡にて確認し
た。即ち、Leitzホットステージにのせた試料を窒素雰
囲気下で40倍の倍率で観察し、直交偏光子間に挿入した
とき光を透過させたものを液晶性ありと判断した。
2) 融点の測定 融点は示差走査型熱量計にて測定した。
3) 半田耐熱性の測定 半田耐熱性は260℃、30秒の半田浴中に厚さ1mmのプレ
スシートを切り出した試験片を浸した后に表面形状を観
察した。フクレ、しわ、クラック、変形等の異常のみら
れたものは×、異常のなかったものは○とした。
4) 捻り剛性率の測定 剛性率はレオメトリック社製レオメーターを用い、厚
さ1mmのプレスシートより切り出した引張試験片にて、2
50℃での捻り剛性を測定した。高温雰囲気下での剛性は
半田工程等の過程で耐変形性を確認出来る評価であり、
250乃至260℃で104dyn/cm2以上あれば熱時の耐変形性に
優れている目安となる。
5) 熱変形温度の測定 ASTM−D 648(荷重18.6kg/cm2)に準じて測定した。
実施例1 p−アセトキシ安息香酸50モル%、2,6−アセトキシ
ナフトエ酸5モル%、ジアセトキシレゾルシノール5モ
ル%、ジアセトキシハイドロキノン17.5モル%、テレフ
タル酸22.5モル%及び全仕込量に対し0.05重量%の酢酸
カリウムを各々、撹拌機、窒素導入管及び留出管を備え
た反応器中に仕込み、窒素気流下でこの混合物を1時間
で260℃にまで加熱した。反応器中から酢酸を留出させ
ながら260〜300℃に2時間加熱し、更に300〜320℃で1
時間、320〜350℃で1時間加熱し、真空下に酢酸を留出
させた。次いで窒素を導入し室温に迄冷却した。得られ
た重合体は約310℃以上で偏光ホットステージ顕微鏡観
察により光学異方性を示した。融点、熱変形温度及び剛
性率は各々前述の方法にて測定した。結果は表1に記載
の通りである。
実施例2〜4 実施例1と略同様の方法で表1に記載の構成比率にて
各々重合を行ない、得られた重合体も同様の手法で測定
した。結果を表1に示す。
実施例5 実施例3において、テレフタル酸のかわりにイソフタ
ル酸を使用した以外は同様にして重合体を得、同様の手
法にて測定を行なった。結果を表1に示す。
比較例1〜3 実施例1と同様に表1記載の構成比率にて重合体を
得、同様の手法にて測定を行なった。結果を表1に示
す。
実施例6 実施例2に用いた重合体100重量部に対してガラス繊
維15重量部を配合してなる組成物について実施例1と同
様の手法にて測定を行った。結果を表1に示す。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】必須の構成成分として下式(I)〜(V)
    で表される構成単位を含み、全構成単位に対して(I)
    が35乃至90モル%、(II)が0.5乃至20モル%、(III)
    が0.5乃至45モル%、(IV)が0.5乃至45モル%、(V)
    が0.5乃至45モル%であることを特徴とする溶融時に光
    学的異方性を示すポリエステル樹脂。
  2. 【請求項2】請求項1記載の溶融時に光学的異方性を示
    すポリエステル樹脂に無機充填剤を95重量%以下(対組
    成物全量)配合してなるポリエステル樹脂組成物。
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