JP3088206B2 - 芳香族ポリエステル及びポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

芳香族ポリエステル及びポリエステル樹脂組成物

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JP3088206B2
JP3088206B2 JP04314942A JP31494292A JP3088206B2 JP 3088206 B2 JP3088206 B2 JP 3088206B2 JP 04314942 A JP04314942 A JP 04314942A JP 31494292 A JP31494292 A JP 31494292A JP 3088206 B2 JP3088206 B2 JP 3088206B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、従来用いている装置に
て溶融加工が行うことが可能で、得られた成形物が優れ
た耐熱性、高い機械物性を与えることのできる新規な光
学的異方性を示す共重合ポリエステルに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】全芳香
族ポリエステルとして現在市販されているものは4−ヒ
ドロキシ安息香酸が主成分である。しかし、4−ヒドロ
キシ安息香酸のホモポリマーは、融点が分解点よりも高
くなってしまう為、種々の成分を共重合する事により、
低融点化する必要がある。共重合成分として1,4 −フェ
ニレンジカルボン酸、1,4 −ジヒドロキシベンゼン、4,
4'−ジヒドロキシビフェニル等を用いた全芳香族ポリエ
ステルは、融点が350 ℃以上と高く、汎用の装置にて溶
融加工を行うには高すぎる。又、このような高い融点の
ものを、汎用の溶融加工機器で加工できる温度まで融点
を下げるために種々の方法が試みられているが、低融点
化がある程度実現される一方で高温(融点下近傍)での
機械的強度を保てないという問題がある。一方、2−ヒ
ドロキシ−6−ナフトエ酸を用いた全芳香族ポリエステ
ルは融点300 ℃前後と低く、良い性能を持ち合せている
が、高価な共重合成分を用いなければならない。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記問題点
を解決する為、鋭意研究努力した結果、ポリエステル製
造において一般的に用いられるモノマーと特定の比率で
組み合わせることで少量の4−ヒドロキシ安息香酸を用
いることにより低融点化が可能であり、且つ高温(融点
下近傍)での優れた機械的性質を持ったポリマーが得ら
れることを見出し、本発明を完成するに至った。このよ
うに4−ヒドロキシ安息香酸を主成分とせずに、また特
殊なモノマーを使用することなく低融点化が可能である
ことは驚くべきことである。即ち本発明は、必須の構成
成分として下記一般式(I),(II),(III) ,(I
V),(V)で表される構成単位を含み、全構成単位に
対して(I)の構成単位が5〜45モル%、(II)の構成
単位が5〜45モル%、(III) の構成単位が2〜49モル
%、(IV)の構成単位が1〜48モル%であり、(V)の
構成単位が0.1 〜20モル%であることを特徴とする溶融
時に光学的異方性を示す芳香族ポリエステルに関する。
【0004】
【化2】
【0005】(ここで、Ar1 は2,6 −ナフタレン、Ar2
は1,4 −フェニレン、Ar3 は1,3 −フェニレン及び1,4
−フェニレンから選ばれる少なくとも1種、Ar4 はパラ
位でつながるフェニレン数2以上の化合物の残基の少な
くとも1種、Ar5 は1,3 −フェニレン及び1,4 −フェニ
レンから選ばれる少なくとも1種である。)上記(I)
〜(V)の構成単位を具現化するには通常のエステル形
成能を有する種々の化合物が使用される。以下に本発明
を構成する芳香族ポリエステルを形成するために必要な
原料化合物について順を追って詳しく説明する。ジカル
ボン酸成分は(I)及び(II)の二種の構成単位からな
る。そのうちの(I)は2,6 −ナフタレンジカルボン
ら導入される。また、構成単位(I)はポリマー中の
全構成単位に対して5乃至45モル%であり、好ましくは
7乃至36モル%である。これらの範囲を逸脱すると生成
ポリマーの融点が著しく上昇し、また充分な分子量を得
るのが困難になるため好ましくない。ジカルボン酸構成
単位(II)は、1,4 −フェニレンジカルボン酸から導入
される。また、構成単位(II)の量はポリマー中の全構
成単位に対して5乃至45モル%である。これらの範囲を
逸脱すると生成ポリマーの融点が著しく上昇し、分子量
も小さくなるなので好ましくない。尚、以上のジカルボ
ン酸単位をポリマー中に導入するため、ジカルボン酸や
それ以外のジエステル形成性誘導体を用いることができ
るが、ジカルボン酸が好ましい。
【0006】一方、ジオール成分は(III) および(IV)
の二種の構成単位からなる。そのうちの(III) は1,3 −
フェニレンジオール及び1,4 −フェニレンジオールより
選ばれる少なくとも一種、好ましくは1,4 −フェニレン
ジオールより導入される。また、構成単位(III) の量は
ポリマー中の全構成単位に対して2乃至49モル%であ
り、好ましくは10乃至49モル%である。(III) が全構成
単位に対して2モル%未満であると融点が著しく上昇
し、分子量も小さくなるようなので好ましくない。ジオ
ール構成単位(IV)は、パラ位でつながるフェニレン数
2以上の化合物、例えば4,4'−ビフェニレンジオール、
4,4"−ターフェニレンジオール等のポリフェニレンジオ
ールより選ばれる少なくとも一種、好ましくは4,4'−ビ
フェニレンジオールより導入される。また、構成単位
(IV)の量は、全構成単位に対して1乃至48モル%であ
り、好ましくは10乃至40モル%である。これらの範囲を
逸脱すると生成ポリマーでの融点が著しく上昇し、分子
量も小さくなるなので好ましくない。尚、以上のジオー
ル単位をポリマー中に導入するため、ジオールやそれ以
外のジエステル形成性誘導体、例えばジアセテート、ジ
プロピオネート、ジベンゾエート等を用いる事ができ
る。
【0007】次に、ヒドロキシカルボン酸成分(V)
は、3−ヒドロキシ安息香酸及び4−ヒドロキシ安息香
酸より選ばれる少なくとも一種、好ましくは4−ヒドロ
キシ安息香酸より導入される。また、構成単位(V)の
量は、全構成単位に対して0.1乃至20モル%であり、好
ましくは1乃至15モル%である。尚、ヒドロキシカルボ
ン酸単位をポリマー中に導入するため、ヒドロキシカル
ボン酸やそれ以外のエステル形成性誘導体を用いる事が
できる。
【0008】本発明の芳香族ポリエステルは、直接重合
法やエステル交換法を用いて重合され、重合に際して
は、通常溶媒重合法やスラリー重合法等が用いられる。
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であ
り、代表的なものはジアルキル錫酸化物、ジアリール錫
酸化物、二酸化チタン、アルコキシチタンけい酸塩類、
チタンアルコラート類、カルボン酸のアルカリ及びアル
カリ土類金属塩類、BF3 の如きルイス酸塩等が挙げられ
る。触媒の使用量は一般にはモノマーの全重量に基いて
約 0.001乃至1重量%、特に約0.01乃至 0.2重量%が好
ましい。これらの重合方法により製造されたポリマーは
更に減圧又は不活性ガス中で加熱する固相重合により分
子量の増加を図ることができる。
【0009】溶融時に光学的異方性を示す液晶性ポリマ
ーであることは、本発明において熱安定性と易加工性を
併せ持つ上で不可欠な要素である。溶融異方性の性質は
直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により確認す
ることができる。より具体的には溶融異方性の確認はオ
リンパス社製偏光顕微鏡を使用しリンカム社製ホットス
テージにのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150 倍の
倍率で観察することにより実施できる。上記ポリマーは
光学的に異方性であり、直交偏光子間に挿入したとき光
を透過させる。試料が光学的に異方性であると、例えば
溶融静止液状態であっても偏光は透過する。本発明の加
工性の指標としては液晶性及び融点(液晶性発現温度)
が考えられる。液晶性を示すか否かは溶融時の流動性に
深く係わり、本願のポリエステルは溶融状態で液晶性を
示すことが不可欠である。ネマチックな液晶性ポリマー
は融点以上で著しく粘性低下を生じるので、一般的に融
点またはそれ以上の温度で液晶性を示すことが加工性の
指標となる。融点(液晶性発現温度)は、出来得る限り
高い方が耐熱性の観点からは好ましいが、ポリマーの溶
融加工時の熱劣化や成形機の加熱能力等を考慮すると、
350 ℃以下であることが望ましい目安となる。更に好ま
しくは320 ℃以下が望ましい。又、少なくとも融点に10
℃を加えた温度以上で樹脂の溶融粘度が100sec-1の剪断
応力下で1×106 ポイズ以下であることが好ましい。更
に好ましくは104 ポイズ以下である。これらの溶融粘度
は液晶性を具備することで概ね実現される。
【0010】次に本発明のポリエステルは使用目的に応
じて各種の繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填
剤を配合することができる。繊維状充填剤としてはガラ
ス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミ
ナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊
維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、更に
ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属
の繊維状物などの無機質繊維状物質が挙げられる。特に
代表的な繊維状充填剤はガラス繊維である。尚、ポリア
ミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂な
どの高融点有機質繊維状物質も使用することが出来る。
一方、粉粒状充填剤としてはカーボンブラック、黒鉛、
シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイ
バー、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅
酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、硅藻土、
ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、
酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸
化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の
炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫
酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼
素、各種金属粉末等が挙げられる。又、板状充填剤とし
てはマイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げら
れる。有機充填剤の例を示せば芳香族ポリエステル繊
維、液晶性ポリマー繊維、芳香族ポリアミド、ポリイミ
ド繊維等の耐熱性高強度合成繊維等である。これらの無
機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することが出
来る。繊維状充填剤と粒状又は板状充填剤との併用は特
に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で
好ましい組み合わせである。無機充填剤の配合量は、組
成物全量に対して95重量%以下、好ましくは1〜80重量
%である。これらの充填剤の使用にあたっては必要なら
ば収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。
【0011】更に本発明のポリエステルには、本発明の
企図する目的を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂を補
助的に添加してもよい。この場合に使用する熱可塑性樹
脂の例を示すと、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポ
リオレィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレ
ンテレフタレート等の芳香族ジカルボン酸とジオール等
からなる芳香族ポリエステル、ポリアセタール(ホモ又
はコポリマー)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ
アミド、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンオ
キシド、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂等を挙
げることができる。またこれらの熱可塑性樹脂は2種以
上混合して使用することができる。
【0012】
【発明の効果】本発明で得られる特定の構成単位よりな
る溶融時に異方性を示す芳香族ポリエステル及びその組
成物は、溶融時の流動性が良好でなおかつ熱安定性に優
れているおり、また成形可能温度があまり高くないため
に、特殊な構造を持った成形機で用いずとも射出成形や
押出成形、圧縮成形が可能であり、種々の立体成形品、
繊維、フィルム等に加工出来る。又、熱安定性のバラン
スも良好なことから精密な部品、特にピッチ間隔の狭い
コネクターや、薄肉部品、電線被覆材等に好適である。
【0013】
【実施例】以下に実施例をもって本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】実施例1 表1に示す如く、2,6 −ナフタレンジカルボン酸110.68
g(24.5モル%) 、テレフタル酸85.05(24.5モル%)、4
−ヒドロキシ安息香酸5.77g(2モル%) 、1,4−ジヒド
ロキシベンゼン78.92g(34.3モル%) 、4,4'−ジヒドロ
キシビフェニル57.20g(14.7モル%) 、無水酢酸213.32
g 、及び全仕込み量に対し0.05重量%の酢酸カリウムを
各々、攪拌機、窒素導入管及び留出管を備えた反応器中
に仕込み、反応器内を窒素にて置換した後、窒素気流下
で、この混合物を 140℃にて1時間反応させる。この後
1.5時間で 250℃まで加熱した。この時酢酸が約110g留
出した。次に 1.5時間で 250から 300℃へ加熱し更に1
時間で 340℃まで加熱し、更に 340℃にて 0.5時間攪拌
した。この時までに理論酢酸留出量の90%以上が留出し
た。次いで 340℃にて反応器内を徐々に減圧し、 0.5時
間で20mmHgまで減圧し、更に 0.2時間で1mmHg以下に減
圧しこの圧力にて1時間反応を行った。この減圧中に少
量の酢酸が留出した。反応終了後窒素を導入し内容物を
取出した。得られた重合物は、淡黄乳白色であり、パー
キンエルマー社製DSC にて測定した融点は 280℃であっ
た。オリンパス社製偏光顕微鏡にてリンカム社製ホット
ステージ上で、重合物をクロスニコル下で加熱観察した
ところ、融点以上ではネマチック性の液晶パターンを示
した。又この重合体の溶融粘度を東洋精機社製キャピロ
グラフにて測定したところ、2100ポイズ(320 ℃、1000
-1)であった。次に横浜ケミックス社製ミニショット
2型機を用いてこの重合体より引張試験片を作成し、こ
の重合体より引張試験片を作成し、東洋ボールドウィン
社製引張試験機を用い測定した結果、引張強度1110 kg/
cm2 、引張伸度 1.3%、引張弾性率 8.3×104 kg/cm2
あった。次に融点下近傍での強度保持性を評価するため
に、代用特性として以下の値を用いた。即ち、ビカット
方式に準じ、0.5mm 厚のプレスシートに一定の荷重下、
一定寸法の針の貫入し始める温度(A)と融点(B)よ
り求められる値C(C=B−A)を高温特性とした。得
られたポリマーをこの方法により測定した結果、高温特
性は35℃であった。このC値は小さいほど高温特性が良
いことを示す。
【0015】実施例2〜7 実施例1と同様の方法で表1に記載の構成比率にて重合
を行い、得られた重合体を同様の手法で評価した。但
し、融点は柳本社製融点測定装置により測定した溶融し
始める温度として示した。 比較例1〜5 実施例1と同様の方法により表1に記載の構成比率によ
り重合を行った。しかし、比較例1〜3では 300℃前後
より著しく増粘し、最終的に 390℃まで加熱したが固化
してしまい、反応容器から取出すことができなくなっ
た。また、比較例4は高粘性物として取り出した。 実施例8 実施例1で得た重合体をハーケ社製押出機にてガラス繊
維30重量%と混合押出し、同様の手法で試験片を作成し
評価した。以上の測定結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】(表1の注) * NDA ;2,6 −ナフタレンジカルボン酸 TPA ;テレフタル酸 IPA ;イソフタル酸 HQ ;1,4 −ジヒドロキシベンゼン(1,4 −フェニレン
ジオール) BP ;4,4'−ジヒドロキシビフェニル(4,4'−ビフェニ
レンジオール) HBA ;4−ヒドロキシ安息香酸 N/A ;固化して反応容器から取り出せず
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−142846(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/60 C08L 67/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 必須の構成成分として下記一般式
    (I),(II),(III) ,(IV),(V)で表される構
    成単位を含み、全構成単位に対して(I)の構成単位が
    5〜45モル%、(II)の構成単位が5〜45モル%、(II
    I) の構成単位が2〜49モル%、(IV)の構成単位が1
    〜48モル%であり、(V)の構成単位が0.1 〜20モル%
    であることを特徴とする溶融時に光学的異方性を示す芳
    香族ポリエステル。 【化1】 (ここで、Ar1 は2,6 −ナフタレン、Ar2 は1,4 −フェ
    ニレン、Ar3 は1,3 −フェニレン及び1,4 −フェニレン
    から選ばれる少なくとも1種、Ar4 はパラ位でつながる
    フェニレン数2以上の化合物の残基の少なくとも1種、
    Ar5 は1,3 −フェニレン及び1,4 −フェニレンから選ば
    れる少なくとも1種である。)
  2. 【請求項2】 請求項1記載の芳香族ポリエステルに無
    機充填剤を95重量%以下(対組成物全量)配合してなる
    ポリエステル樹脂組成物。
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