JP2661489B2 - 高沸点ハロゲン化炭化水素とフッ化水素の分離方法 - Google Patents

高沸点ハロゲン化炭化水素とフッ化水素の分離方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高沸点ハロゲン化炭化水
素とフッ化水素の分離方法に関し、詳しくは1,1,1−
トリクロロエタンをフッ化水素と反応させて、1,1−
ジクロロ−1−フルオロエタン(以下、141bと略)と
1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(142b)を製造
する場合に副生する比較的沸点の高いハロゲン化炭化水
素とフッ化水素とを分離する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】141bは現在フォーム発泡剤として使
用されているトリクロロフルオロメタンの代替化合物で
あり、発泡剤のみならず、油脂、フラックス等の除去用
洗浄材あるいはドライクリーニング用溶剤としても有用
である。また、142bは発泡剤あるいは高分子材料の
原料モノマーとして有用である。141b、142bは
1,1,1−トリクロロエタン(以下、140aと略す)を
過剰のフッ化水素と反応させることにより製造される。
この反応では141b、142bの外に塩化水素のような
比較的沸点の低い化合物、さらには、CF3CH2CF2
CH3あるいは塩化ビニリデンのオリゴマーあるいはそ
のフッ素化物の如き、比較的沸点の高いハロゲン化炭化
水素類が副生される。
【0003】反応混合物を蒸留するとフッ化水素の一
部、141b、142b、塩化水素等、比較的沸点の低い
副生物が先ず留去され、フッ化水素の残りと比較的沸点
の高いハロゲン化炭化水素副生物が残存する。該ハロゲ
ン化炭化水素類を除去するためにそのまま蒸留を継続し
ても、それらハロゲン化炭化水素類の多くはフッ化水素
と共沸物を形成するため、フッ化水素と当該副生物を効
果的に分離することは困難である。特開昭58−217
403号公報には、140aとフッ化水素を反応させて
主として142bを製造する場合における、高沸点副生
成物とフッ化水素の分離方法が開示されているが、14
0aとフッ化水素から主として141bを製造する場合に
適用すると、高沸点副生物が目的物である141bに混
入し、その分離が困難であるので適当ではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、140aを
過剰のフッ化水素と反応させて、主として141bを製
造する場合に副生する、比較的高沸点のハロゲン化炭化
水素類をフッ化水素と効率的に分離し、分離されたフッ
化水素の再使用を可能にし、同時に該副生物の141b
への混入を阻止せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決するための鋭意検討を行った。その結果、比較的高
沸点のハロゲン化炭化水素類とフッ化水素の混合物に1
41bを加えて蒸留を行えば、フッ化水素は141bと共
沸するためそれらの混合物として留去できるので、該ハ
ロゲン化炭化水素類と分離でき、しかも、141bは該
混合物から容易に回収できて再使用が可能であることを
見出したことに基づいて本発明を完成させた。すなわ
ち、本発明は、比較的高沸点のハロゲン化炭化水素混合
物とフッ化水素の混合物に141bを加えて蒸留し、フ
ッ化水素を141bとの混合物として抜き出すことによ
る該ハロゲン化炭化水素混合物とフッ化水素の分離方法
を要旨とする。また本発明は、上のようにして抜き出し
た混合物を相分離させ141bに富む層と、フッ化水素
に富む層に分離させることをも要旨とする。
【0006】本明細書において、比較的高沸点のハロゲ
ン化炭化水素とは、CF3CH2CF2CH3(以下HFC
365mfcと略す)、CF3CH2CH2Cl(以下253と
略す)、CH2=CCl2(以下1130と略す)、CHCl2
CH3(以下150aと略す)、CHCl3(以下20と略
す)、CF2HCH2CH2Cl(以下262と略す)、CF2
ClCH2CF2CH3(以下364lfcと略す)、CH3CC
l3(以下140aと略す)、CHCl=CCl2(以下112
0と略す)、CH2ClCH2Cl(以下150と略す)、C
FCl2CH2CF2CH3(以下363kfcと略す)、CF
Cl2CH2CFClCH3(以下362kfbと略す)、CF
Cl2CH2CCl2CH3(以下361kfaと略す)、CCl3
CH2CFClCH3(以下361jfbと略す)等を言う。
これらの化合物が少なくとも2種以上フッ化水素に含ま
れる場合に本発明は適用できる。
【0007】本発明の方法においては、高沸点ハロゲン
化炭化水素混合物とフッ化水素との混合物に141bを
加えて蒸留する。加えるべき141bの量は、フッ化水
素1モルに対し0.4〜20モル、好ましくは0.5〜5
モルである。141bの量が0.4モルより少ない場合、
混合物からのフッ化水素と141bの混合物の分離性が
悪くなるため、蒸留分離するためには高段数の塔を必要
とし好ましくない。又141bの量が20モルを越える
場合は、分離性は良くなるものの、処理できる高沸点ハ
ロゲン化炭化水素とフッ化水素との混合物の量が少なく
なるため、限られた蒸留塔に対して効率的でない。蒸留
温度は、蒸留塔の塔底温度30〜120℃、好ましくは
40〜60℃の範囲とし、蒸留圧力1〜12kg/cm2
好ましくは2〜7kg/cm2の範囲とする。一定圧力の下
でフッ化水素、高沸点ハロゲン化炭化水素および141
bの混合液を加熱していくと、留出物の温度は次第に上
昇し、一定の沸点を示し、141bとフッ化水素との混
合物が留去されてくる。この混合物は、例えば圧力3kg
/cm2では温度38℃を示し、その組成は141b 34
モル、フッ化水素 66モルであって、高沸点ハロゲン
化炭化水素を含有しない。該混合物は、系外に抜き出し
て凝縮させる。なお、蒸留器中の141bは混合物とし
て抜き出されるので、フッ化水素に対する141bの割
合が前記範囲を維持するように141bを追加する。こ
のようにして蒸留を続けると、フッ化水素は141bと
の混合物として蒸留器外へ抜き出され、蒸留器には高沸
点ハロゲン化炭化水素及び141bが残留し、かくして
フッ化水素と高沸点ハロゲン化炭化水素は分離される。
【0008】抜き出された混合物は40℃以下の温度に
すると、141bに富む層とフッ化水素とに液/液分離
する。例えば20℃の場合、141bに富む層は、約9
9重量%の141bと約1重量%のフッ化水素よりな
り、フッ化水素を富む層は約18重量%の141bと約
82重量%のフッ化水素よりなる。141bに富む層は
ほとんどフッ化水素を含まないので、本発明の高沸点ハ
ロゲン化炭化水素とフッ化水素との混合物の蒸留に際し
て加えるべき141bとして使用できる。かくして14
1bはリサイクルして使用できる。フッ化水素に富む層
はさらに蒸留してフッ化水素と141bに分離すること
もできるが、140aとフッ化水素との反応系あるいは
141bの分離工程に加えるのが得策である。
【0009】
【実施例】スチル部の容量が3lで理論段数20段の塔
を有し、冷却温度0℃の凝縮器を備えた蒸留塔に約17
モルの141bを加えた。スチル部の温度40℃で14
1bの全還流状態にした。そこへ、365mfc、364lf
c、363kfc、362kfb、361kfaを合計で2モル%
含むフッ化水素を7.9モル/時間の割合で蒸留塔底部
より加えた。約10分後凝縮器で還流される液は、14
1bとフッ化水素との混合物で141bとフッ化水素のモ
ル比は34対66であった。この混合物を、11.9モ
ル/時間の割合で抜き出した。蒸留塔の塔頂からは、1
41bが4.1モル/時間、フッ化水素が7.7モル/時
間の割合で抜き出されたことになる。この操作により塔
頂から抜き出されたフッ化水素と141bの混合物中に
含まれる副生成物類は、抜き出された141bに対して
0.01モル%以下であった。さらに蒸留塔中段に14
1bを4.2モル/時間の割合で加え、スチル部より高沸
点ハロゲン化炭化水素を含む141bを0.11モル/時
間の割合で抜き出した。本操作を続けるにしたがい、穏
やかな塩化水素及び142b等の発生があり、系内圧力
が穏やかに増加するため、一定の圧力を保持するよう
に、塩化水素及び142b等は凝縮器上部より非凝縮ガ
スとして放出した。蒸留塔へ供給した141bとフッ化
水素は各々合計で 141b 4.2モル/時間 フッ化水素 7.9モル/時間 となり、141b対フッ化水素のモル比は、フッ化水素
の1に対して141bが0.53倍であった。本操作を5
時間継続後、スチル部より抜き出される141bは約4.
5モル%の副生成物類を含有していた。さらに塔頂より
抜き出された141bとフッ化水素の混合物を20℃以
下に保って、141bに富む相とフッ化水素に富む相と
の2相に分離した。ここで141bに富む相とは、概ね
1重量%のフッ化水素を含む141bの相であり、フッ
化水素に富む相とは、概ね18重量%の141bを含む
フッ化水素の相であった。141bに富む相は、前述の
蒸留塔中段に加えた141bとして使用可能であるし、
フッ化水素に富む相は、通常反応器へリサイクルされ
る。又わずかに抜き出された高沸点ハロゲン化炭化水素
を含む141bは、通常焼却される。
【0010】
【発明の効果】フッ化水素と高沸点ハロゲン化炭化水素
が効率的に分離でき、分離したフッ化水素は再使用可能
となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小松 聡 大阪府摂津市西一津屋1番1号 ダイキ ン工業株式会社淀川製作所内 (56)参考文献 特開 平2−295937(JP,A) 特開 昭58−217403(JP,A) 特開 平2−196734(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1,1,1−トリクロロエタンをフッ化水
    素と反応させて1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン
    と1−クロロ−1,1−ジフルオロエタンを生成させる
    反応において副生する高沸点ハロゲン化炭化水素混合物
    とフッ化水素との混合物に、1,1−ジクロロ−1−フ
    ルオロエタンを加えて蒸留し、フッ化水素を1,1−ジ
    クロロフルオロエタンとの混合物とし留去することより
    なる、高沸点ハロゲン化炭化水素混合物とフッ化水素の
    分離方法。
  2. 【請求項2】 高沸点ハロゲン化炭化水素混合物が、C
    3CH2CF2CH3、CF3CH2CH2Cl、CH2=C
    Cl2、CHCl2CH3、CHCl3、CF2HCH2CH2
    l、CF2ClCH2CF2CH3、CH3CCl3、CHCl=
    CCl2、CH2ClCH2Cl、CFCl2CH2CF2
    3、CFCl2CH2CFClCH3、CFCl2CH2CC
    2CH3および/またはCCl3CH2CFClCH3の混
    合物である請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 加えるべき1,1−ジクロロ−1−フル
    オロエタンの量がフッ化水素1モルに対して、0.4〜
    20モルである請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 蒸留の条件が、蒸留塔のスチル部の温度
    30℃〜120℃で圧力1〜12kg/cm2である請求項
    1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 留去した混合物を相分離させ、1,1−
    ジクロロ−1−フルオロエタンに富む層とフッ化水素に
    富む層に分離する請求項1に記載の方法。
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