JP3535563B2 - 水及びフルオロ炭化水素を含む共沸組成物、共沸蒸留により溶液から水を除去する方法及びハイドロフルオロアルカンの製造方法 - Google Patents

水及びフルオロ炭化水素を含む共沸組成物、共沸蒸留により溶液から水を除去する方法及びハイドロフルオロアルカンの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水及び少なくとも1種
のフルオロ炭化水素を含む共沸組成物、共沸蒸留により
溶液から水を除去する方法及びハイドロフルオロアルカ
ンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】飽和又は不飽和ハロゲン含有炭化水素と
フッ化水素との反応によってハイドロフルオロアルカン
を製造することは既知である。この既知の方法では、目
的のハイドロフルオロアルカン及び未反応フッ化水素並
びに普通は塩化水素及び種々のハロゲン含有有機化合
物、特に使用したハロゲン含有炭化水素の未反応分並び
に種々の副生成物を含む反応生成物の混合物が得られ
る。次いで、目的のハイドロフルオロアルカンが実質的
に純粋な形で単離できることが必要であるのみならず、
フッ化水素及びあらゆる他の未転化反応体をフッ素化反
応器に再循環できることが該方法の経済性にとって最も
重要である。ハイドロフルオロアルカンの合成方法で
は、少なくとも部分的に、蒸留によって反応生成物の混
合物をその種々の成分に分割することが行われる。例と
して、フッ化水素と塩化ビニリデン又は1,1,1−トリク
ロロエタンとの反応による1−クロロ−1,1−ジフルオ
ロエタンの合成の前後に得られる反応生成物の混合物の
分割に関する文献としてEP−A−0,003,147(ソ
ルベー)及びEP−A−0,098,341(ペンウォルト
(PENNWALT))を挙げることができる。また、フッ化水素
とトリクロロエチレン又は2−クロロ−1,1,1−トリフ
ルオロエタンとの反応による1,1,1,2−テトラフルオロ
エタンの合成の前後に得られる反応生成物の混合物の蒸
留による分割に関するヨーロッパ特許出願EP−A−0,
467,531(I.C.I.)も挙げることができる。
【0003】フッ化水素との反応によるハイドロフルオ
ロアルカンの製造方法では、水の存在が一般に該方法の
円滑な進行を損なう。目的のハイドロフルオロアルカン
の合成を行うことへの起こり得る負の作用に加えて、反
応生成物の混合物中における水分の増加は必然的に装置
の腐蝕を増加させる。しかしながら、現実に絶対的に無
水の反応体を用いることは非常に困難であることが分か
る。ところで、未反応反応体をその合成反応器に再循環
する場合には、フッ化水素の水に対する強い親和性によ
り、再循環されたフッ化水素が一般に水を伴出して、
“フッ化水素の分離及び再循環用の反応器ユニット”循
環路内の水分の増加をもたらすようである。結局のとこ
ろ、反応生成物の混合物中に存在する水を再循環の前に
除去することが必要である。特許DD−83984は、
粗製テトラフルオロジブロモエタンにメタノールを添加
して、テトラフルオロジブロモエタン、メタノール及び
水からなる3成分系共沸混合物を蒸留することにより、
粗製テトラフルオロジブロモエタンから水を除去する方
法を開示している。かかる方法では、必然的に、該混合
物中に存在するテトラフルオロジブロモエタン及びメタ
ノールを乾燥することが必要である。
【0004】更に、ハイドロフルオロアルカンの幾つか
の製造方法においては、反応生成物の混合物中に不純物
として存在する不飽和炭化水素を目的のハイドロフルオ
ロアルカンの蒸留によって分離するのは、それらの沸点
が前記ハイドロフルオロアルカンの沸点にあまりにも接
近しているのという事実によって難しく、その結果とし
て、それらを塩素化によって、前記ハイドロフルオロア
ルカンから容易に分離することができるより重質の飽和
炭化水素に転化している。かかる塩素化操作では、既に
その幾つかの成分を取り除いた後であってもよい反応生
成物の混合物を、転化されるべき不飽和炭化水素に比べ
て一般に過剰に導入される塩素と接触させる必要があ
る。今回、一定の運転条件下では、反応生成物の混合物
中に存在する水又は塩素と一緒に混入してきた水が塩素
と水和物Cl2−H2Oを形成することが認められた。これ
ら水和物は、プラントの低温域において、例えば、反応
生成物から過剰Cl2を分離してそれを再循環する目的で
設けられた蒸留塔の最上部にあるコンデンサー内に固体
の形で蓄積することがある。プラントを休止するときは
いつでも、これら水和物には、該プラントの低温域の再
加熱による分解及び著しく腐蝕性の溶液を生成する危険
がある。それらが起こす甚だしい腐蝕の問題に加えて、
該塩素水和物は装置を塞いでその製造能力を制限する危
険もある。共沸蒸留により液体組成物から水を除去する
ことは周知であり、例えば、"Encyclopedia of Chemica
l Technology", 1978, 3rd Edition, Volume 3, p.361-
373 に記載されている。この方法によれば、水と共沸混
合物を形成する化合物である共留剤を該組成物に添加し
た後、共沸混合物を留出させるために、得られた溶液を
加熱及び/又は減圧にする。該溶液を蒸留すると、水/
共留剤共沸混合物が蒸留塔の最上部で除去される。
【0005】
【課題を解決するための手段】今回、幾つかの明確に規
定されたフルオロ炭化水素が水と共沸混合物を形成し
て、一定の条件下で、種々の溶液中、特にハイドロフル
オロアルカンの製造中に回収される反応生成物の混合物
中に存在する水を除去できるようにし、それによってハ
イドロフルオロアルカンの製造中における上に挙げた欠
点を避け得ることが分かった。従って、本発明は、水
と、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1−クロロ
−1,1−ジフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、
1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオ
ロエタン及びトリフルオロエチレンから選ばれる少なく
とも1種のフルオロ炭化水素とを含む共沸組成物に関す
る。水と、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1−
クロロ−1,1−ジフルオロエタン又は1,1,1−トリフル
オロエタンとを含む共沸組成物が好ましい。流体の熱力
学的状態は、基本的には次の4つの相互依存的変数によ
り定義される:圧力(P)、温度(T)、液相の組成
(X)及び気相の組成(Y)。真の共沸混合物は、所定
温度及び所定圧においてXがYに厳密に等しい2又は3
以上の成分を含有する特殊な系である。擬似の共沸混合
物は、所定温度及び所定圧においてXがYに実質的に等
しい2又は3以上の成分を含有する系である。実際に
は、これは、かかる共沸及び擬似共沸系の成分は蒸留に
より実質的に分離不能であることを意味している。
【0006】本発明においては、共沸組成物は、真の共
沸混合物又は擬似の共沸混合物の特性を有する2又は3
以上の成分の混合物であって、該混合物の成分のモル比
が真の共沸混合物のモル比から10%未満だけ変動する
か、又は(所定圧での)沸点が真の共沸混合物の沸点と
0.5℃未満だけ相違するか、又は(所定温度での)蒸気
圧が真の共沸混合物の蒸気圧を10mbar未満だけ相
違する混合物のことをいうものと理解される。共沸混合
物において、成分の濃度、温度及び蒸気圧は相互依存的
パラメーターであることが知られている。これらパラメ
ーターのうちの1つが設定されれば他のパラメーターも
すぐに決まる。ハイドロフルオロアルカンの標準的製造
方法で用いられる通常の圧力範囲内、即ち、0.1〜10
0barでは、本発明による共沸組成物の水分は、少な
くとも0.01モル%に等しく、多くても10モル%に等
しい。この含有量は、0.1モル%より大きいか等しい場
合が最も多い。好ましくは5モル%より低いか等しい。
【0007】20℃では、本質的に1,1−ジクロロ−1
−フルオロエタン(HFA−141b)及び水からなる
共沸組成物は、(4±0.4):100に等しい水/HF
A−141bのモル比でこれら成分を含有する。この温
度では、本質的にHFA−141b及び水からなる共沸
組成物の蒸気圧は、0.67±0.01barである。20
℃では、本質的に1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン
(HFA−142b)及び水からなる共沸組成物は、
(1.1±0.1):100に等しい水/HFA−142b
のモル比でこれら成分を含有する。この温度では、本質
的にHFA−142b及び水からなる共沸組成物の蒸気
圧は、2.93±0.01barである。20℃では、本質
的に1,1,1−トリフルオロエタン(HFA−143a)
及び水からなる共沸組成物は、(0.3±0.03):10
0に等しい水/HFA−143aのモル比でこれら成分
を含有する。この温度では、本質的にHFA−143a
及び水からなる共沸組成物の蒸気圧は、11±0.01b
arである。本発明は、上で規定した具体的な組成物に
限定されない。本発明は、水と、1,1−ジクロロ−1−
フルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタ
ン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエ
タン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン及びトリフルオ
ロエチレンから選ばれる少なくとも1種のフルオロ炭化
水素とから本質的になるあらゆる共沸組成物を対象とし
ている。
【0008】本発明による共沸組成物は、水と、特にハ
イドロフルオロアルカンの製造中に得られる反応生成物
の混合物の如き水以外の少なくとも1種の液体化合物を
含む溶液から、共沸蒸留により水を除去する方法に適用
できる。従って、本発明は、水/共留剤共沸混合物の共
沸蒸留により、水及び水以外の少なくとも1種の液体化
合物を含む溶液から水を除去する方法であって、該共留
剤が1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1−クロロ
−1,1−ジフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、
1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオ
ロエタン及びトリフルオロエチレンから選ばれることを
特徴とする方法にも関する。共留剤という用語は、本発
明による共沸組成物を水と形成するフルオロ炭化水素で
あって、溶液を蒸留に付したときに蒸留塔の最上部で除
去され得るものを表すものと理解される。本発明による
水の除去方法は、特に、概して30重量%より低い低水
分を含有する溶液に適用できる。溶液中の水の量は該溶
液の10重量%を越えない。多くの場合、この量は5%
を越えない。一般には、重量基準で少なくとも5ppm
である。重量基準で少なくとも50ppmの場合が最も
多い。
【0009】本発明による方法では、共留剤は、一般
に、水と共沸混合物を形成するフルオロ炭化水素であっ
て、その沸点が該溶液中に存在する水以外の化合物の沸
点よりも低いために、水/共留剤共沸混合物が蒸留中に
蒸気の状態で除去されるようなフルオロ炭化水素から選
ばれる。水及び共留剤によって形成される共沸混合物よ
りも低い沸点を有する幾つかの化合物を含有する溶液に
この方法を適用する場合には、これら化合物は該共沸混
合物と一緒に該溶液から分離される。本発明による水の
除去方法においては、除去すべき水を含有する溶液を充
分な量の共留剤の存在下で蒸留工程に付する。必要な共
留剤の量は、特にその性質、溶液中に含まれる残留水
分、蒸留を行う圧力及び温度の如き種々のパラメーター
並びに除去すべき水を含有する溶液中の化合物の性質及
び割合に依存する。普通、溶液中に含まれる実質的に全
ての水と共沸混合物を形成するのに充分な量の共留剤が
存在するのが望ましい。一般に、使用する共留剤の量
は、溶液中に存在する全ての水と共沸混合物を形成する
ために精確に必要な共留剤の量の1〜10倍である。好
ましくは、共留剤の量は、前記の精確に必要な量の1.2
〜5倍である。特に好ましい場合には、共留剤の量は、
前記の精確に必要な量の1.5〜3倍である。
【0010】本発明による水の除去方法においては、上
に挙げた水以外の液体化合物は臨界的ではなく、有機化
合物であっても無機化合物であってもよい。特に、水素
酸(例えば、フッ化水素又は塩化水素)又は特にハロゲ
ンによって置換されていてもよい炭化水素(例えば、ハ
イドロフルオロアルカン)を含有してもよい。本発明に
よる水の除去方法は、水以外の液体化合物としてハイド
ロフルオロアルカンを含む溶液から水を除去するのに有
利である。水以外の液体化合物が少なくとも部分的に水
と共沸混合物を形成する共留剤を構成する溶液から水を
除去するのが特に有利である。本発明をこれに適用する
場合、ハイドロフルオロアルカンを含有する溶液は、例
えば、精密機械部品又は光学部品の如き、物品を清浄
化、脱脂又は乾燥するための組成物のような種々の組成
物であってもよい。
【0011】本発明による水の除去方法は、ハイドロフ
ルオロアルカンの製造中に得られる反応生成物の混合物
から水を除去するのに著しく有利である。従って、本発
明は、溶液中にハイドロフルオロアルカン及び水を含む
反応生成物の混合物を回収し、水と共沸混合物を形成す
る共留剤の存在下で前記混合物を共沸蒸留に付し、そし
て該共沸混合物を含有する留出物及びハイドロフルオロ
アルカンを含有する液相を該蒸留から回収するハイドロ
フルオロアルカンの製造方法であって、共留剤が1,1−
ジクロロ−1−フルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジ
フルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−ト
リフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン及
びトリフルオロエチレンから選ばれることを特徴とする
方法にも関する。
【0012】ハイドロフルオロアルカンを製造するため
の本発明による方法は、その沸点が上記の共沸混合物の
沸点よりも高いあらゆるハイドロフルオロアルカンの製
造に適用できる。それは、特に、2〜6の炭素原子を含
有する一般式Ca b c d に対応するハイドロフル
オロアルカンの製造に適用できる。ここで、XはCl及
び/又はBr、好ましくはClを表し、aは2〜6の整
数であり、bは1〜13の整数であり、cは1〜13の
整数でありそしてdは0〜8の整数であって、該ハイド
ロフルオロアルカンが非環式であるときはb+c+d=
2a+2であり、該ハイドロフルオロアルカンが脂環式
であるときはb+c+d=2aである。XがClであ
り、aが2、3又は4に等しい整数であり、bが1〜9
の整数であり、cが1〜9の整数であり、そしてdが0
〜5の整数である上記の一般式に対応する非環式ハイド
ロフルオロアルカンの製造に特に適用できる。より特定
的には、XがClであり、aが2又は3に等しい整数で
あり、bが1〜6の整数であり、cが1〜6の整数であ
り、そしてdが1〜4の整数である上記の一般式に対応
する非環式ハイドロフルオロアルカンの製造に適用でき
る。例として、本発明による方法は、式CH3CCl2F、
CH3CClF2 、CH3CHF2 、CH3CF3 、CH2FC
H2F、CH2FCHF2 、CH2FCF3 、CHF2CCl3
CHF2CF3 、CHCl2CF3 、CHF2CHF2、CF3
HClF、CF3CF2CHCl2、CF2ClCF2CHCl
F、CF3CH2CF2CH3 及びCF3CH2CH2CF3 のハイ
ドロフルオロアルカンの製造に特に適用できる。本発明
による方法は、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンの
製造に特に好ましく適用できる。
【0013】本発明によるハイドロフルオロアルカンの
製造方法においては、ハイドロフルオロアルカンは、一
般に、ハロゲン、水素酸又は水素と飽和又は不飽和ハロ
ゲン含有炭化水素との反応によって製造される。かかる
反応の例として、塩化ビニリデン又は1,1,1−トリクロ
ロエタンのハイドロフルオリネーションによる1,1−ジ
クロロ−1−フルオロエタン及び/又は1−クロロ−1,
1−ジフルオロエタンの合成を挙げることができる。ま
た、XがCl又はFに等しい式CX3CH2Cl又はCX2
CHXの化合物の接触ハイドロフルオリネーションによ
る1,1,1,2−テトラフルオロエタンの合成も挙げること
ができる。これら反応を行う運転条件は、先行技術にお
いて周知である。反応生成物の混合物という用語は、溶
解した状態で、水、製造されるべきハイドロフルオロア
ルカン及び、例えば、未転化反応体、副生成物及び不純
物の如き付加的な任意物質を含有するあらゆる液体媒質
をいうものと理解される。これは、上で規定したハイド
ロフルオロアルカンの合成が終結してすぐに回収される
付加的物質を含有する粗製混合物であっても、前記付加
的物質に関して少なくとも部分的に精製した混合物であ
ってもよい。
【0014】目的のハイドロフルオロアルカンに加え
て、反応生成物の混合物は、一般に、該合成からの他の
ハイドロフルオロアルカン副生成物、又は目的のハイド
ロフルオロアルカンが他のハイドロフルオロアルカンか
ら得られる場合には、この出発ハイドロフルオロアルカ
ンの未反応分を含有する。該混合物は、フッ化水素又は
塩化水素の如き少なくとも1種の水素酸を含有してもよ
い。該混合物はフッ化水素を含有する場合が多い。該混
合物は、塩素又はフッ素の如きハロゲンを含有してもよ
い。更に、該混合物は、一般に、合成工程からの未転化
反応体又はそれらの副生成物であってもよい種々のハロ
ゲン含有化合物を含有する。該混合物は、また、窒素の
如き不活性ガスとして又は水素の如き反応体として合成
に用いる種々の無機化合物も溶解した状態で含有するこ
とができる。反応生成物の混合物中の水分は広い範囲で
変動してもよいが、該反応生成物の混合物中のハイドロ
フルオロアルカン含量よりも低く維持する。それは、一
般に、反応生成物の混合物の5重量%を越えない。本発
明による方法は、特に水が少量だけ存在する場合、例え
ば、反応生成物の混合物中の水分が重量基準で5〜50
00ppmである場合の水の除去に適している。反応生
成物の混合物は、典型的には、ハイドロフルオロアルカ
ンを合成するために用いた反応体が10〜500ppm
のオーダーの水を含有する場合に、そのような水分を含
有する。
【0015】本発明によるハイドロフルオロアルカンの
製造方法においては、蒸留はあらゆる標準的な蒸留塔で
行うことができる。共沸混合物が留出物中で最低沸点タ
イプであるときは、蒸留塔の最上部で回収される。含有
していた水を取り除いた反応生成物の混合物は蒸留塔の
最下部で液相で回収される。この液相は、製造すべきハ
イドロフルオロアルカンを含有している。それは、一般
に、上で規定した少なくとも数種の付加的物質も含有す
る。適切な場合には、目的のハイドロフルオロアルカン
を実質的に純粋な形に単離する目的で、ハイドロフルオ
ロアルカンからこれら付加的物質を分離するために蒸留
の液相をその成分に分離する標準的操作に付する。分離
した付加的物質は、それらの性質及び製造すべきハイド
ロフルオロアルカンの合成におけるそれらの役割に依っ
て、最も適したやり方で再循環してもよい。水/共留剤
共沸混合物の蒸留は、好ましくは、用いた共沸混合物の
揮発性に近い揮発性を有する反応生成物の混合物の他の
成分の分離を同時に行う蒸留塔で行う。一般に、蒸留に
付する反応生成物の混合物中に存在する共留剤の量は、
該反応生成物の混合物中に存在する水と共沸混合物を形
成するのに精確に必要な量の1〜10倍である。好まし
くは、反応生成物の混合物中に存在する共留剤の量は、
前記の精確に必要な量の1.2〜5倍である。特に好まし
い場合には、反応生成物の混合物中に存在する共留剤の
量は、前記の精確に必要な量の1.5〜3倍である。
【0016】ハイドロフルオロアルカンの製造のための
本発明による方法の第1の態様においては、用いる共留
剤は反応生成物の混合物の成分である。それは、目的の
ハイドロフルオロアルカンの合成において完全に転化さ
れなかった反応体であってもよい。それは、該合成中に
生成した副生成物であってもよい。また、それは、目的
のハイドロフルオロアルカンであってもよい。この最後
の場合において、水を除去するのに必要なハイドロフル
オロアルカンの量だけが留出物中に回収され、ハイドロ
フルオロアルカンの残量、好ましくは大部分が蒸留塔を
出て蒸留の液相内に存在するように蒸留の条件を制御す
る。本発明による方法のこの第1の態様は、該方法に無
関係な化合物に頼るのを回避するという利点を有してい
る。しかしながら、それは、反応生成物の混合物の成分
のうちの1種が、製造すべきハイドロフルオロアルカン
の沸点よりも低い沸点を有する共沸混合物を水と共に形
成し、かつ、この混合物中に含まれる水の量を満足のゆ
くまで除去するのに充分な量でそれが該混合物中に存在
する場合にのみ可能である。
【0017】ハイドロフルオロアルカンを製造するため
の本発明による方法の第2の態様においては、共留剤の
少なくとも一部分を反応生成物の混合物に添加する。か
かる態様は、反応生成物の混合物が上で規定したような
水と共沸混合物を形成するフルオロ炭化水素を含有して
いないか、又はそれらを含有しているが量が不充分であ
る場合に必要である。反応混合物への添加は、それを蒸
留に付する前に行っても共留剤を蒸留塔の中に直接導入
してもよい。蒸留後、適切な場合には、何らかの適当な
方法で留出物の他の成分を分離してもよい。例えば、乾
燥剤を用いて乾燥することによって水/共留剤共沸混合
物をその成分ごとに分割することも可能であり、又は別
に、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン/水及び1−
クロロ−1,1−ジフルオロエタン/水組成物の場合のよ
うに共沸混合物が不均一共沸混合物であるときは、相分
離によって分割することも可能である。共沸混合物のこ
の分割は、共留剤として用いたフルオロ炭化水素を回収
したい場合に望ましい。これは、特に、該フルオロ炭化
水素が、目的のハイドロフルオロアルカンの合成に関与
する場合又は水と共沸混合物を形成する目的で反応生成
物の混合物に故意に導入された化合物である場合であ
る。次いで、好ましくは、それをその機能に依り最も適
した時点でハイドロフルオロアルカン製造プラントの中
に再循環させる。共留剤が目的のハイドロフルオロアル
カンであるときは、該留出物中に除去されたハイドロフ
ルオロアルカン留分の量がかなり多いかあまり多くない
か、水/ハイドロフルオロアルカン共沸混合物の回収工
程を行った後に水と該ハイドロフルオロアルカンの分離
工程を行うか行わないかに依存して、該留出物中に移行
したハイドロフルオロアルカン留分を回収する。次に、
ハイドロフルオロアルカンの製造のための本発明による
方法の2つの具体的な態様のフローダイヤグラムを図式
的に表した添付の図面を参照しながら本発明を説明す
る。これらの例は、説明のために示したものであって、
本発明をこれら具体的な適用に限定することを意図して
いない。
【0018】図1に概略を示した方法は、1,1−ジクロ
ロ−1−フルオロエタン及び1−クロロ−1,1−ジフル
オロエタンを同時製造するものである。つまり、フッ化
水素及び塩化ビニリデンを反応器内(示していない)で
反応させ、典型的には、2.5〜60モル%の1,1−ジク
ロロ−1−フルオロエタン、2.5〜60モル%の1−ク
ロロ−1,1−ジフルオロエタン、30〜90モル%のフ
ッ化水素、5〜50モル%の塩化水素、50〜250p
pmの水、及び適切な場合には、1,1,1−トリフルオロ
エタン(5モル%まで)を含む反応生成物の混合物を該
反応器から回収する。符号(2)で表した反応混合物を
液状で蒸留塔(1)に導入する。この際、上で規定した
ように、共留剤として1,1,1−トリフルオロエタンを補
充してもよい。補充用1,1,1−トリフルオロエタンの量
は、蒸留に付する混合物中において、1,1,1−トリフル
オロエタンフラックスと反応混合物フラックス間のモル
比が、通常、0.2〜10%となるように制御される。蒸
留塔は8〜20barの圧力に維持する。配管(3)を
通って該塔から出てくる留出物は、主として、塩化水
素、水/1,1,1−トリフルオロエタン共沸混合物及び存
在する場合には過剰の1,1,1−トリフルオロエタンを含
む。それは、更に窒素を含む。コンデンサー(5)内で
部分的に濃縮した後、該留出物の未濃縮部分(7)を吸
収塔(8)に送り込む際に、該留出物の濃縮部分(6)
を還流液として蒸留塔に戻す。吸収塔では、(9)にお
いて導入される水に吸収させることにより該留出物と塩
化水素を分離する。該塩化水素と水は配管(10)を通っ
て除去される。続いて、主として水で飽和した1,1,1−
トリフルオロエタンと不活性ガスの混合物を含有する残
存ガス状フラックス(11)を水を除去するためにドライ
ヤー(12)に送る。ドライヤー(12)では、ガス状フラ
ックス(11)を、例えば、吸着剤床に通してもよい。ド
ライヤー(12)から回収されたガス(13)は、殆ど1,1,
1−トリフルオロエタンと不活性ガスだけからなる。そ
れを配管(14)、コンプレッサー(15)及び配管(16)
を通して蒸留塔(1)に送る。
【0019】配管(17)は、窒素の如き不活性ガス及び
存在する場合には過剰の1,1,1−トリフルオロエタンを
除去するパージを構成する。液相(4)は、蒸留塔の最
下部で回収される。この液相は、通常、同時生成物とし
て1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン及び1−クロロ
−1,1−ジフルオロエタンを含有し、未反応塩化ビニリ
デン及びフッ化水素及び10ppm未満の水を含有す
る。この液相は、既知のやり方でその種々の成分に分割
して、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン及び1−ク
ロロ−1,1−ジフルオロエタンを回収してもよく、続い
て未転化反応体(塩化ビニリデン及びフッ化水素)をハ
イドロフルオリネーション反応器の中に再循環すること
も可能である。図1に概略を示した方法の標準的な変法
においては、液相(4)の一部を別の蒸留容器内で留出
させて蒸気の形で蒸留塔(1)に送る。この第1の態様
は、反応体として用いるフッ化水素を理論量よりも過剰
量で用いる場合及び、明らかに経済的理由で、この過剰
のフッ化水素を無水の形で再利用することが望まれる場
合に、本発明による方法が特に有利であることを説明す
るものである。図1を参照しながら説明したばかりの本
発明による方法は、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタ
ン又は1−クロロ−1,1−ジフルオロエタンの選択的製
造に適用することができる。
【0020】図2に概略を示した方法は、不飽和炭化水
素の塩素化による1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン
の精製に関するものである。つまり、塩化ビニリデンの
ハイドロフルオリネーション用反応器から生じる不飽和
炭化水素を含有する反応生成物の混合物を塩素化反応器
(示していない)内で塩素で処理する。塩素化反応器か
ら生じる処理生成物の混合物は、典型的には、75〜9
9モル%の1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、0.0
1〜20モル%の塩素、0.01〜5モル%の塩素化され
た不純物及び0.1〜5モル%の塩化水素、並びに重量基
準で20〜50ppmの水を含有する。符号(102 )で
表したこの反応混合物を蒸留塔(101 )に導入する。蒸
留塔(101 )は、圧力を1〜10barに維持し、配管
(103 )を通って塔(101 )を出てゆく留出物が1,1−
ジクロロ−1−フルオロエタンを含有するように温度を
調節する。コンデンサー(105 )内での固体塩素水和物
の如何なる生成も避けるためには、留出物(103 )中3
〜50%の1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンの重量
含有量で充分である。留出物(103 )は、主として、塩
素、塩化水素、水/1,1−ジクロロ−1−フルオロエタ
ン共沸混合物及び少量の過剰1,1−ジクロロ−1−フル
オロエタンを含む。コンデンサー(105 )内で部分的に
濃縮した後、該留出物の濃縮部分(106 )を該塔に還流
液として戻し、該留出物の未濃縮部分(107 )を分離装
置(108 )に送る。そこでは、例えば、蒸留によって塩
素と塩化水素を分離し、配管(109 )から除去する。続
いて、主として1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン及
び水を含有する残存ガス状フラックス(110 )を水を除
去するためにドライヤー(111 )に送る。ドライヤー
(111 )では、ガス状フラックス(110 )を、例えば、
吸着剤床に通してもよい。ドライヤー(111 )の出口で
回収されるガス(112 )は、殆ど1,1−ジクロロ−1−
フルオロエタンだけからなる。
【0021】次いで、反応生成物の混合物から伴出して
きた水を取り除いた1,1−ジクロロ−1−フルオロエタ
ンを液相(104 )と混合し、該蒸留塔の最下部で回収し
てもよい。この液相(104 )は、主として、1,1−ジク
ロロ−1−フルオロエタン及び塩素化反応器内で塩素化
された不飽和炭化水素の塩素化生成物を含有する。この
液相(104 )は、既知のやり方、例えば、蒸留によりそ
の種々の成分に分割して、1,1−ジクロロ−1−フルオ
ロエタンを実質的に純粋な形で回収してもよい。図2に
概略を示した方法の標準的な変法においては、液相(10
4 )の一部を別の蒸留容器内で留出させて蒸気の形で蒸
留塔(101 )に送り込む。この第2の態様は、本発明に
よる方法が、塩素と水の間の如何なる水和物の生成も回
避し、かくしてハイドロフルオロアルカン製造プラント
の低温域における、特に、塩素で処理した反応生成物の
混合物から未反応塩素を除去することを企図した蒸留塔
の最上部のコンデンサー内におけるそれらの蓄積の回避
を可能にすることを説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン及び1−
クロロ−1,1−ジフルオロエタンを同時製造するための
フローダイヤグラムである。
【図2】不飽和炭化水素の塩素化による1,1−ジクロロ
−1−フルオロエタンの精製のフローダイヤグラムであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特表 平7−501979(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 17/38 C07C 19/08

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水と、1,1−ジクロロ−1−フルオロエ
    タン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、1,1−ジ
    フルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,
    2−テトラフルオロエタン及びトリフルオロエチレンか
    ら選ばれる少なくとも1種のフルオロ炭化水素とを含む
    共沸組成物。
  2. 【請求項2】 フルオロ炭化水素が、1,1−ジクロロ−
    1−フルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエ
    タン及び1,1,1−トリフルオロエタンから選ばれる請求
    項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 0.01〜10モル%の水を含有する請求
    項1又は2記載の組成物。
  4. 【請求項4】 水/共留剤共沸混合物の共沸蒸留によ
    り、水及び水以外の少なくとも1種の液体化合物を含む
    溶液から水を除去する方法であって、該共留剤が1,1−
    ジクロロ−1−フルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジ
    フルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−ト
    リフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン及
    びトリフルオロエチレンから選ばれることを特徴とする
    方法。
  5. 【請求項5】 溶液中に含まれる水以外の液体化合物が
    ハイドロフルオロアルカンである請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 溶液中に含まれる水以外の液体化合物が
    少なくとも部分的に共留剤を構成する請求項4又は5記
    載の方法。
  7. 【請求項7】 溶液が、物品を清浄化、脱脂又は乾燥す
    るための組成物である請求項4〜6のいずれか1項に記
    載の方法。
  8. 【請求項8】 溶液が、ハイドロフルオロアルカンの製
    造中に得られる反応生成物の混合物である請求項4〜6
    のいずれか1項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 溶液中にハイドロフルオロアルカン及び
    水を含む反応生成物の混合物を回収し、水と共沸混合物
    を形成する共留剤の存在下で前記混合物を共沸蒸留に付
    し、そして該共沸混合物を含有する留出物及びハイドロ
    フルオロアルカンを含有する液相を該蒸留から回収する
    ハイドロフルオロアルカンの製造方法であって、共留剤
    が1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1−クロロ−
    1,1−ジフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1,
    1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロ
    エタン及びトリフルオロエチレンから選ばれることを特
    徴とする方法。
  10. 【請求項10】 蒸留が、共沸混合物を形成するのに正
    確に必要な量の1〜10倍量の共留剤の存在下で行われ
    る請求項9記載の方法。
  11. 【請求項11】 共留剤が該混合物の成分である請求項
    9又は10記載の方法。
  12. 【請求項12】 共留剤がハイドロフルオロアルカンで
    ある請求項11記載の方法。
  13. 【請求項13】 共留剤を該混合物に添加する請求項9
    又は10記載の方法。
  14. 【請求項14】 ハイドロフルオロアルカンが1,1−ジ
    クロロ−1−フルオロエタンである請求項9〜13のい
    ずれか1項に記載の方法。
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