JP2660495B2 - スープ用もずくの製造方法とカップもずくスープ - Google Patents

スープ用もずくの製造方法とカップもずくスープ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スープ用もずくの製造
方法とカップもずくスープに係り、より詳細には、常温
保存が可能で、熱湯を注いでスープにした際、口当た
り、のどごしの良いスープ用もずくの製造方法と、この
スープ用もずくを用いたカップもずくスープに関する。
【0002】
【従来の技術】褐藻類である『もずく』は、その顕微鏡
によって拡大すると、その幹部分に多くの繊毛を有する
構造を呈している。そして、この繊毛部分には、ヨコ海
老、巻き貝等の異物や、おごのり、ひめのり等の海藻が
付着し、更に、海水中に存在する大腸菌、バチラス菌、
ビブリオ菌、その他の菌類が多く付着している。そのた
め、『もずく』は、その鮮度の保持が難しく、長期保存
ができないという課題を有している。
【0003】このような観点から、近年、長期保存の手
段として、『もずくに、醸造酢等にアルカリを加えてP
H5.0〜6.5に中和調整した溶液を、酢酸酸度が、
0.05〜1.0%となるように添加し、これを容器に
入れて40〜70℃で5分以上加熱処理する構成』(特
公昭62−36659号公報参照)、そして、この容器
として『もずくをガスバリアー性フィルムで包装体で包
装する構成』(特開平1−226575号公報参照)が
提案されている。
【0004】そして、このような構成によれば、『もず
く』の繊毛部分に付着する大腸菌等の菌類の活動を緩や
かにすることができ、保存性の保持がある程度できると
いう利点を有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した『も
ずく』の保存方法の場合、次のような問題がある。すな
わち、 もずくを酢酸等による酸処理をすると共に、40〜
70℃で5分以上加熱処理するので、ある程度の期間の
保存ができるものの、もずくが酢酸等の酸によって、酸
っぱくなり、食味が低下する。 またボツリヌス菌の芽胞等の嫌気性菌の活動を停止
することができず、保存途中で酸敗が発生し、長期保存
ができなくなる。 もずく自体の『臭み』が残るので、食し難い。 等の課題がある。
【0006】本発明は、以上のような課題に対処して創
作したものであって、その目的とする処は、もずく自体
のもつ臭みを除去でき、かつ酢酸処理等をすることなく
常温保存が可能で、熱湯を注いでスープにした際、口当
たり、のどごしの良いスープ用もずくの製造方法を提供
することにある。また、本発明の目的は、このスープ用
もずくを用いたカップもずくスープを提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】そして、上記課題を解決
するための手段としての本発明の請求項1のスープ用も
ずくの製造方法は、太さの太いもずくを原料とし、該も
ずくを裁断、水洗、異物除去、水切り等の前処理して、
該前処理によりもずく表面のぬめり部分を少なくとも一
部を除去した後、該もずくを包装材に充填すると共に、
真空脱気し、更に該もずくを、105℃〜115℃で高
温加熱殺菌し、該加熱により該もずくの表皮部分の水溶
性アルギン酸やフコイダンを主成分とする粘性物質を溶
出させ、該粘性物質を該もずく表面に付着させること
で、表面にぬめりを有する太さの細いスープ用もずくを
得る構成としている。
【0008】請求項2のスープ用もずくの製造方法は、
前記請求項1のスープ用もずくの製造方法において、前
記太さの細いスープ用もずくの表面のぬめりが、前記原
料とする太さの太いもずくの30〜40体積%である構
成としている。
【0009】請求項3のスープ用もずくの製造方法は、
前記請求項1のスープ用もずくの製造方法において、前
記もずくを水切り処理した後、かつ前記包装材に充填処
理前に、該もずくを塩化カルシウム、亜硫酸カルシウム
等のカルシウム塩に接触させる構成としている。
【0010】また、本発明の請求項4のカップもずくス
ープは、前記請求項1〜3のいずれかに記載のスープ用
もずくの製造方法で製造したスープ用もずく入り包装体
と、醤油、鰹エキス、昆布エキス等を配合した調味スー
プ入り包装体と、両包装体を収納するカップとの組み合
わせからなる構成としている。
【0011】
【作用】本発明の請求項1のスープ用もずくの製造方法
は、原料であるもずくとして、その径が太いもずくを用
い、これを包装材に充填すると共に真空脱気した後、1
05℃〜115℃で高温加熱殺菌しているので、ボツリ
ヌス菌の芽胞等をも死滅させることができ、長期保存性
を向上させることができ、また、該加熱により該もずく
の表皮部分の水溶性アルギン酸やフコイダンを主成分と
する粘性物質を溶出させ、該粘性物質を該もずく表面に
付着させているので、これに調味スープを入れ、熱湯を
注いだ際、該粘性物質が、該熱湯中に溶けて、とろみを
有するもずくスープを得ることができる。また、前記高
温加熱殺菌によって、前記粘性物質を溶出させ、表面に
ぬめりを有する太さの細いスープ用もずくを得ているの
で、もずく本来の歯応えを保有するスープ用もずくとす
ることができる。
【0012】請求項2のスープ用もずくの製造方法は、
前記太さの細いスープ用もずくの表面のぬめりを、前記
原料とする太さの太いもずくの30〜40体積%として
いるので、前記請求項1の作用に加えて、スープとした
際、該ぬめりが好ましいとろみとなり、かつもずく本来
の歯応えを保有するスープ用もずくを得ることができ
る。
【0013】請求項3のスープ用もずくの製造方法は、
前記もずくを水切り処理した後、かつ前記包装材に充填
処理前に、該もずくを塩化カルシウム、亜硫酸カルシウ
ム等のカルシウム塩に接触させ、該もずくの表面をコー
ティング状態とし、もずく表面を固めることができ、後
工程での加熱の際の粘性物質の必要以上の溶出を抑える
ことができる。
【0014】また、請求項4のカップもずくスープは、
前記請求項1〜3のいずれかに記載のスープ用もずくの
製造方法で製造したスープ用もずく入り包装体と、醤
油、鰹エキス、昆布エキス等を配合した調味スープ入り
包装体と、両包装体を収納するカップとの組み合わせて
いるので、該カップにスープ用もずく入り包装体と調味
スープ入り包装体に封入されているスープ用もずくと調
味スープを入れ、これに熱湯を注ぐことで、とろみのあ
るもずくスープを容易に得ることができる。
【0015】
【実施例】以下、本発明を具体化した実施例について説
明する。本実施例のスープ用もずくの製造方法は、概略
すると、前処理工程、包装材への充填工程、加熱
殺菌工程、の三工程からなる。
【0016】−前処理工程− 本工程は、太さの太いもずくを原料とし、該もずくを裁
断、水洗、異物除去、水切り等の前処理を行う工程であ
る。ここで、該もずくとしては、塩蔵処理された『塩蔵
ふともずく』で、沖縄等、高温水域で生産された原藻も
ずく(天然、養殖に限らない)を塩蔵処理した径が、1
〜3mmのものを用いている。本工程は、この『塩蔵ふ
ともずく』を、所定長さに裁断(切断)する裁断工程
と、水洗いして脱塩する脱塩工程と、もずくの繊毛部分
に付着しているヨコ海老、巻き貝等の異物や、おごの
り、ひめのり等の海藻を除去する異物除去する異物除去
工程と、および水切りする水切り工程、およびもずくの
表面を硬くする硬化工程からなる。
【0017】すなわち、前記裁断工程によって、該もず
くを、7〜10cm程度の長さに裁断する。これは、商
品性を良好にして、消費者に食し易くすることを考慮し
たことによる。次の脱塩工程では、裁断したもずくを循
環式水洗装置によって、水洗い脱塩処理する。産地で取
られたもずくは、その保存のために、通常、塩蔵処理さ
れている。従って、この塩抜きして、食しやすくしてい
る。そして、この水洗い脱塩によって、もずくは、2倍
程度の太さになって、その表面がドロドロの糊状態とな
り、かつこの部分は、大腸菌その他の菌類の生育場所で
あるため、これを水切りしている。この水切り処理した
もずくは、その表面のぬめりが取り除かれ、もずくの元
来の性情と異なったものとなる。
【0018】そして、本実施例においては、この次に、
該もずくを、塩化カルシウム水溶液に浸漬処理してい
る。この塩化カルシウムと接触させることで、もずくの
表面を塩化カルシウムでコーティング状態とし、好まし
くは、PH7.85〜7.95程度にし、その表面を固
めている。ここで、該塩化カルシウム水溶液は、脱水処
理したもずくに対して、0.10〜0.15重量%程度
含有した水溶液を用いている。そして、この浸漬時間
は、10〜15分程度行い、その後、水切りを行って、
次工程である包装材へ充填する。
【0019】−包装材への充填工程− 本工程は、前記前処理したもずくを包装材に充填する工
程である。ここで、包装材としては、ナイロンとポリエ
チレンシートをラミネートしたレトルト用包装材を用い
る。そして、これを真空脱気し、密封状態とする。通
常、もずくは、50g程度を一袋とする形態としてい
る。なお、真空脱気したのは、次工程での加熱処理を均
一に行うためと、好気性菌の活性を停止するためであ
る。
【0020】−高温加熱殺菌工程− 本工程は、前記工程で包装したもずくを高温加熱殺菌す
る工程である。ここで、加熱温度(中心温度)は、10
5℃〜115℃、15〜5分間程度(50g入りもず
く)行っている。この温度とすることにより、耐熱芽胞
菌等を死滅させ、かつもずくの表皮部分の水溶性アルギ
ン酸やフコイダンを主成分とする粘性物質を溶出させ、
該粘性物質を該もずく表面に付着させている。これによ
って、前記加熱処理前のもずくの30〜40体積%が粘
性物質として溶出し、これがもずくの表面の繊維に付着
して、もずく本来の性状であるぬめりとなる。そして、
この場合のもずくの径は、『ほそもずく』程度の径、す
なわち、0.8〜2.5mm程度となる。なお、前記加
熱処理を、105℃以下、例えば、40〜70℃とした
場合は、前記殺菌が十分には行えず、またもずく本来の
性状のぬめりが得られない。なお、前記加熱時間を、1
5〜5分間程度としたのは、前記加熱処理前のもずくの
30〜40体積%が粘性物質として溶出させるために最
も好ましい時間であって、これは実験の結果得られたも
のである。従って、このぬめりが多くするには、加熱時
間を長くし、またぬめりを少なくするには、この加熱時
間を短くする等して、その調整を行っている。
【0021】そして、このようにして製造したスープ用
もずくは、原料として、『ふともずく』を用い、これを
前処理した後、包装材への充填、真空脱気、高温加熱殺
菌処理しているため、加熱処理前のもずくの30〜40
体積%が粘性物質として溶出させ、この粘性物質がもず
く表面に付着し、『ほそもずく』と同様の径で、しかも
ぬめりが、多い状態のスープ用もずくである。そして、
このスープ用もずくは、高温加熱殺菌しているので、も
ずく本来の臭いを消すことができ、また耐熱性芽胞菌等
をも死滅させることができるため、長期保存性を保持で
きる。ところで、生もずくの場合は、通常、もずく表面
のぬめりは、20体積%程度である。
【0022】また、このスープ用もずくを、調味スープ
と合わせてカップに入れ、これに熱湯を加えてスープと
した場合、前記もずく表面に付着している加熱処理前の
もずくの30〜40体積%が粘性物質が、前記熱湯に溶
けて、好ましい『とろみ』を生じさせ、極めて口当た
り、のどこしのよいスープを得ることができる。そし
て、このスープ用もずく入れた包装体と、醤油・鰹エキ
ス・昆布エキス等を配合した調味スープを入れた包装体
を、カップに入れて、一商品とすることにより、常温保
存可能なカップスープとすることが可能となる。
【0023】次に、本実施例で得たスープ用もずくを素
材として用い、これをカップに入れて前記調味スープを
添加し、熱湯を注いで得たもずくスープ(以下、本実施
例スープという)を、20名のパネラーに食して貰い、
本実施例の作用・効果を調べた。また、同時に、生もず
くを用いて同様のスープ(以下、従来例スープという)
としたものについも同様に食して貰った。その結果、本
実施例スープにあっては、18名のパネラーが、全ての
もずくの臭気がなく、またスープ自体にとろみがあって
食しやすいという評価をした。これ対して、従来例スー
プにあっては、19名のパネラーが、もずく本来の臭気
である生臭さがあり、飲みにくいという評価をした。こ
のように、本実施例のスープ用もずくによれば、本来、
スープとしての食材としては不向きであったもずくを、
スープとして利用することができることが確認できた。
【0024】また、本実施例の製造方法で製造したスー
プ用もずくは、経時的変化を確認した処、製造後、6ケ
月を経過しても、細菌数に変化が全く認められず、長期
保存のできることが確認できた。これは、加熱殺菌処理
として、ミニレトルト殺菌(105℃〜115℃での高
温加熱)を用いているので、ボツリヌス菌等における耐
熱性芽胞等を死滅させることができることによるものと
考えられる。
【0025】このように、本発明は、太さの太いもず
くを原料として用いた点、加熱殺菌処理として、10
5℃〜115℃での高温加熱殺菌処理を行う点、この
加熱処理により、もずくの表皮部分の水溶性アルギン酸
やフコイダンを主成分とする粘性物質を溶出させ、該粘
性物質を該もずく表面に付着させる点、に最大の特徴を
有し、この構成によって、表面にぬめりを有する太さの
細いスープ用もずくを得ることができるというものであ
る。また、塩化カルシウム等のカルシウム塩にもずくを
接触させ、その表面を固めておくことで、高温加熱殺菌
の際の加熱によって、必要以上の粘性物質の溶出を調整
したことを特徴としている。
【0026】なお、本発明は、上述した実施例に限定さ
れるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で変
形実施できる構成を含む。因みに、前記塩蔵もずくの他
に、生もずくを用いてもよいことは当然であり、またカ
ルシウム塩としては、塩化カルシウムの他に亜硫酸カル
シウム等であってもく、もずく表面を固めることができ
るアルカリ塩であればよい。
【0027】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明
の請求項1のスープ用もずくの製造方法によれば、原料
であるもずくとして、その径が太いもずくを用い、これ
を包装材に充填すると共に真空脱気した後、105℃〜
115℃で高温加熱殺菌しているので、ボツリヌス菌の
芽胞等をも死滅させることができ、長期保存性を向上さ
せることができるという効果を有する。また、該加熱に
より該もずくの表皮部分の水溶性アルギン酸やフコイダ
ンを主成分とする粘性物質を溶出させ、該粘性物質を該
もずく表面に付着させているので、これに調味スープを
入れ、熱湯を注いだ際、該粘性物質が、該熱湯中に溶け
て、とろみを有するもずくスープを得ることができ、ま
た、前記高温加熱殺菌によって、前記粘性物質を溶出さ
せ、表面にぬめりを有する太さの細いスープ用もずくを
得ているので、もずく本来の歯応えを保有するスープ用
もずくとすることができるという効果を有する。
【0028】請求項2のスープ用もずくの製造方法によ
れば、前記太さの細いスープ用もずくの表面のぬめり
を、前記原料とする太さの太いもずくの30〜40体積
%としているので、前記請求項1の作用に加えて、スー
プとした際、該ぬめりが好ましいとろみとなり、かつも
ずく本来の歯応えを保有するスープ用もずくを得ること
ができるという効果を有する。
【0029】請求項3のスープ用もずくの製造方法によ
れば、前記もずくを水切り処理した後、かつ前記包装材
に充填処理前に、該もずくを塩化カルシウム、亜硫酸カ
ルシウム等のカルシウム塩に接触させ、該もずくの表面
をコーティング状態とし、もずく表面を固めることがで
き、後工程での加熱の際の粘性物質の必要以上の溶出を
抑えることができるという効果を有する。
【0030】また、請求項4のカップもずくスープによ
れば、前記請求項1〜3のいずれかに記載のスープ用も
ずくの製造方法で製造したスープ用もずく入り包装体
と、醤油、鰹エキス、昆布エキス等を配合した調味スー
プ入り包装体と、両包装体を収納するカップとの組み合
わせているので、該カップにスープ用もずく入り包装体
と調味スープ入り包装体に封入されているスープ用もず
くと調味スープを入れ、これに熱湯を注ぐことで、とろ
みのあるもずくスープを容易に得ることができるという
効果を有する。
【0031】従って、本発明によれば、もずく自体のも
つ臭みを除去でき、かつ酢酸処理等をすることなく常温
保存が可能で、熱湯を注いでスープにした際、口当た
り、のどごしの良いスープ用もずくの製造方法と、この
スープ用もずくを用いたカップもずくスープを提供する
ことができるという効果を有する。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 太さの太いもずくを原料とし、該もずく
    を裁断、水洗、異物除去、水切り等の前処理して、該前
    処理によりもずく表面のぬめり部分を少なくとも一部を
    除去した後、該もずくを包装材に充填すると共に、真空
    脱気し、更に該もずくを、105℃〜115℃で高温加
    熱殺菌し、該加熱により該もずくの表皮部分の水溶性ア
    ルギン酸やフコイダンを主成分とする粘性物質を溶出さ
    せ、該粘性物質を該もずく表面に付着させることで、表
    面にぬめりを有する太さの細いスープ用もずくを得るこ
    とを特徴とするスープ用もずくの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記太さの細いスープ用もずくの表面の
    ぬめりが、前記原料とする太さの太いもずくの30〜4
    0体積%である請求項1に記載のスープ用もずくの製造
    方法。
  3. 【請求項3】 前記もずくを水切り処理した後、かつ前
    記包装材に充填処理前に、該もずくを塩化カルシウム、
    亜硫酸カルシウム等のカルシウム塩に接触させる請求項
    1に記載のスープ用もずくの製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のスープ
    用もずくの製造方法で製造したスープ用もずく入り包装
    体と、醤油、鰹エキス、昆布エキス等を配合した調味ス
    ープ入り包装体と、両包装体を収納するカップとの組み
    合わせからなることを特徴とするカップもずくスープ。
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