JP2654013B2 - 電子放出素子およびその製造方法 - Google Patents

電子放出素子およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は電子放出素子およびその製造方法に係り、特
に突端部を有する電子放出用電極と該突端部に対向して
設けられた取り出し電極とを有する電子放出素子および
その製造方法に関する。
〔従来の技術〕
電子発生源としては従来熱陰極からの熱電子放出が用
いられていた。この用な熱陰極を利用した電子放出は、
加熱によるエネルギーロスが大きい点、加熱手段の形成
が必要である点、及び予備加熱にかなりの時間を要する
点や熱により系が不安定化しやすいう点で問題があっ
た。
そこで、加熱によらない電子放出素子の研究が進めら
れ、その中の一つに電界効果型(FE型)の電子放出素子
がある。
第6図は従来の電界効果型の電子放出素子の概略的構
成図である。
同図に示すように従来の電界効果型の電子、放出素子
は、基体28上に設けられた、強電界を得るために先端を
鋭く尖らせた陰極チップ30と、基体28上に絶縁層29を介
して設けられ、且つ陰極チップ30の尖頭部を中心として
略円形状の開口部が形成された引き出し電極31とから構
成され、陰極チップ30と引き出し電極31との間に引き出
し電極を高電位とする電圧を印加し、電界強度の大きい
陰極チップ30の尖頭部から電子を放出させるものであ
る。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、上記従来の電界効果型の電子放出素子
は陰極チップ30の先端を鋭く尖らせることが難しく、一
般的に陰極チップ30を作製する場合には、電界研摩を行
った後にリモルディングを行っていた。この工程は多く
の手間を要し煩雑であるとともに、経験的な要素が強い
ために、機械化が難かしく、製造条件にバラツキが生じ
やすく、品質が安定しない等の問題点があった。また積
層構造とするために、陰極チップ30と引き出し電極31と
の位置合わせ誤差が発生する問題点があった。
本発明の目的は、上記従来技術の問題に鑑み、電子放
出用の陰極の尖頭部の製造工程を簡易化し、高精度且つ
薄型化を可能とした電界効果型の電子放出素子およびそ
の製造方法を提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明の電子放出素子は、絶縁基体の同一面内に、突
端部を有する電子放出用電極と該突端部に対向した電子
放出口を有する引き出し電極とが間隔を有して配置され
ており、少なくとも、該電子放出用電極の突端部下、該
引き出し電極の該突端部に対向する側及び電子放出口側
の端部下、該突端部と該引き出し電極との間、の該絶縁
基体に凹部を有することを特徴とする。
また、本発明の電子放出素子の製造方法は、絶縁基体
の同一面内に積層された導電層から、突端部を有する電
子放出用電極と該突端部に対向した電子放出口を有する
引き出し電極とを間隔を有して形成する工程と、少なく
とも、該電子放出用電極の突端部下、該引き出し電極の
該突端部に対向する側及び電子放出口側の端部下、該突
端部と該引き出し電極との間、の該絶縁基体にエッチン
グ処理にて凹部を形成する工程と、を有することを特徴
とする。
〔作用〕
本発明は、絶縁基体面に略平行となるように、突端部
を有する電子放出用電極と、該突端部に対向し且つ電子
放出口を有する引き出し電極とを設け、前記電子放出用
電極と前記引き出し電極との間に、引き出し電極を高電
位とする電圧を印加することにより、前記突端部から電
子放出を行わせ、電子放出口を通して絶縁基体面に略平
行となるように電子を引き出すものである。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説
明する。
第1図は本発明の電子放出素子の第一実施例を示す概
略的構成図である。
同図に示すように、ガラス等の絶縁基板1上に、導電
層を500〜1000Å程度、蒸着によって積層させ、後述す
るFIB等のマスクレスエッチング技術を用いて、電子放
出用電極2と、バトラー型と呼ばれるバイポテンシャル
レンズを構成するレンズ構成部材3,4,5,6を形成する。
レンズ構成部材3,4は引き出し電極としての役割も果た
し、電源7によって、電子放出用電極2に対して高電位
な電圧V1を印加することにより、電子放出用電極2から
電子が放出され、レンズ構成部材3,4間に引き出され
る。
レンズ構成部材3,4に印加される電圧V1と、レンズ構
成部材5,6に電源8によって印加される電圧V2との電圧
比及びレンズ構成部材3,4,5,6と電子放出用電極2との
間の距離を適当な値に設計することにより、レンズ構成
部材3,4間に引き出された電子を発散させることなく、
所望の位置に収束させて焦点を結ばせることができる。
電子放出用電極2の形状は、極力、曲率半径が小さく
なるように、前記FIB等を用いて、三角形状、放物線形
状に加工されて、くさび系の柱状体、放出線状の側面を
有する柱状体に形成される。
電子放出用電極2の材質は、上記のように電界強度を
強くするために、曲率半径が小さくなるように形成さ
れ、その結果電流密度が大きくなり、発熱量が大きくな
るために、高融点材料であることが好ましく、また電圧
を低減させるために低仕事関数材料から構成することが
好ましい。例えば、W,Zr,Ti等の金属、TiC,ZrO,HfC等の
金属炭化物、LaB6,SmB6,GdB6等の金属ホウ化物、WSi2,T
iSi2,ZrSi2,GdSi2等の金属シリサイド等を用いることが
できる。
なお、レンズ電極は上記実施例においては、バイポテ
ンシャルレンズを用いたが、この方式に限定されるもの
ではなく、電子を収束させるレンズ作用を有するもので
あればよい。
なお、電子放出用電極2とレンズ構成部材3,4との間
の電界強度を向上させ、放出された電子を絶縁基板状に
チャージさせることなく、効率よくレンズ構成部材5,6
負から取り出すためには、少なくとも前記電子放出用電
極の突端部から放出される電子の通過領域又は/及び該
電子に印加される電界の電界形成領域に対応する絶縁基
板面にドライエッチング等を用いて凹部を形成すること
が望ましい。本実施例においては第1図に示すように、
電子放出用電極2、レンズ構成部材3,4,5,6と接する絶
縁基板1の一部を除き凹部が形成されている。
第2図(A)〜(D)は、基板に凹部を形成する製造
工程を説明するための概略的説明図である。
まず、第2図(A)に示すように、Si基板9上に熱酸
化等によりSiO2層10を形成する。
次に第2図(B)に示すようにW等の導電層11を形成
する。
次に、第2図(C)に示すように、FIB等の微細加工
技術を用いて尖端部形状を有する電子放出用電極2、レ
ンズ構成部材3,4,5,6(レンズ構成部材4,5は不図示)を
形成する。
次に、第2図(D)に示すように、フッ硝酸系のエッ
チング液を用いたウェットエッチング、CF4等の反応ガ
スを用いたプラズマエッチング等の選択エッチングによ
ってSiO2層10をエッチングする。このとき、エッチング
は電子放出用電極2、レンズ構成部材3,4,5,6と接する
絶縁基板1の一部を除いて行われ、エッチング方向は等
方的に行われるので、電界形成領域に対応する絶縁基板
面は完全に除去される。このようにして凹部12が形成さ
れる。
次に本実施例に用いる微細加工技術について説明す
る。
通常、微細加工技術としてはレジストプロセスとエッ
チングプロエスからなるフォトリソグラフィー技術が用
いられるが、マスクずれ等が生じるために、0.7μm以
下の微細加工は困難である。低電圧化等を図るために
は、0.7μm以下の微細加工が可能なものが望ましく、
例えば前述したFIBが用いられる。
第3図はFIB装置の一例の構成図である。FIB技術は、
サブミクロンに収束した金属イオンを走査し、固体表面
におけるスパッタリング現象を利用して、サブミクロン
オーダの微細加工を行うものである。
同図において、イオン源13は、引き出し電極により液
体金属原子を放出させ、EXB質量分離器15によって所望
のイオンビームを選別し(合金系液体金属を用いる場
合)、対物レンズ16によって80keV程度に加速したイオ
ンビームを0.1μm程度まで集束し、偏向電極17によっ
て基体18上を走査する。なおイオンビームの位置あわせ
は、試料ステージ19によって行われる。
第4図は、本発明の電子放出素子の第二実施例を示す
概略的構成図である。
同図に示すように本実施例の電子放出素子は、前記第
一実施例の電子放出素子にさらに、一次元の静電偏向板
20,21及びアインツェルレンズ22〜27を絶縁基板1上に
設けたものである。なお、前記第一実施例と同一構成部
材については同符号を付して説明を省略する。
本実施例の電子放出素子は、絶縁基板1上で一次元偏
向及び収束を行なうことができるので、偏向及び収束を
高精度に行なうことができ、また装置全体を軽量化、薄
型化することができるという特徴を有している。
なお、絶縁基板1の外に2次元方向に偏向する装置を
設けて2次元に偏向させることも可能である。
上記電子放出素子を多数個用いて複数の電子スキャナ
を構成すれば、電子ビーム描画装置として用いることが
できる。
第5図は、本発明の電子放出素子の第三実施例を示す
概略的構成図である。
同図に示すように本実施例の電子放出素子は、前述し
た第一実施例の電子放出素子において、電子放出用電極
2の突端部が複数個設けられたものであり、これらの突
端部に対応して、レンズ構成部材3a,6aが形成される。
レンズ構成部材3a,6aはバイポテンシャルレンズを構成
する。
本実施例において、FIB等の微細加工技術を用いて、
複数個の突端部及びレンズ構成部材3a、6aを形成すれ
ば、高精度に加工することができるので、電子放出のた
めの印加電圧のバラツキは少なく、各突端部から放出さ
れる電子の量は略同一となる。
〔発明の効果〕
以上詳細に説明したように、本発明によれば、同一絶
縁基板上に電子放出用電極と引き出し電極とを配置し、
絶縁基体面に略平行となるように電子を引き出すことが
可能となり、その結果として次のような効果を得ること
ができる。
(1) 電子放出用電極と引き出し電極とを同工程で作
製することができるので、コストを低減させることがで
き、相対的な位置精度を向上させることができる。
(2) 同一絶縁基板上に電子放出用電極と引き出し電
極が形成されるので、薄型化、小型化、軽量化を達成す
ることができる。
また、本願発明によれば、少なくとも、電子放出用電
極の突端部下、引き出し電極の該突端部に対向する側及
び電子放出口側の端部下、該突端部と該引き出し電極と
の間、の絶縁基体に凹部を形成することで、突端部から
放出された電子を該絶縁基体面へチャージアップさせる
ことなく、効率よく電子を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の電子放出素子の第一実施例を示す概略
的構成図である。 第2図(A)〜(D)は、基板に凹部を形成する製造工
程を説明するための概略的説明図である。 第3図はFIB装置の一例の構成図である。 第4図は、本発明の電子放出素子の第二実施例を示す概
略的構成図である。 第5図は、本発明の電子放出素子の第三実施例を示す概
略的構成図である。 第6図は従来の電界効果型の電子放出素子の概略的構成
図である。 1……絶縁基板、2……電子放出用電極、3,4,5,6,3a,6
a……レンズ構成部材、7,8……電源、20,21……静電偏
向板、22〜27……アインツェルレンズ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 彰 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 金子 哲也 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 武田 俊彦 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 奥貫 昌彦 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭61−220258(JP,A) 特開 昭59−16255(JP,A) 特開 昭59−105252(JP,A) 特開 昭63−274047(JP,A) 実開 昭56−167456(JP,U) 特公 昭46−20944(JP,B1) 特公 昭54−17551(JP,B2)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】絶縁基体の同一面内に、突端部を有する電
    子放出用電極と該突端部に対向した電子放出口を有する
    引き出し電極とが間隔を有して配置されており、 少なくとも、該電子放出用電極の突端部下、該引き出し
    電極の該突端部に対向する側及び電子放出口側の端部
    下、該突端部と該引き出し電極との間、の該絶縁基体に
    凹部を有することを特徴とする電子放出素子。
  2. 【請求項2】前記引き出し電極が放出された電子を収束
    するレンズ電極の構成材料である特許請求の範囲第1項
    記載の電子放出素子。
  3. 【請求項3】前記引き出し電極の後に、偏向電極又は/
    及びレンズ電極を設けた特許請求の範囲第1項又は第2
    項記載の電子放出素子。
  4. 【請求項4】少なくとも前記突端部の構成材料が高融点
    低仕事関数材料からなる特許請求の範囲第1項記載の電
    子放出素子。
  5. 【請求項5】前記電子放出用電極が複数の突端部を有す
    る特許請求の範囲第1項記載の電子放出素子。
  6. 【請求項6】前記絶縁基体上に積層された導電層を微細
    加工することによって形成された特許請求の範囲第1
    項,第3項、又は第5項記載の電子放出素子。
  7. 【請求項7】絶縁基体の同一面内に積層された導電層か
    ら、突端部を有する電子放出用電極と該突端部に対向し
    た電子放出口を有する引き出し電極とを間隔を有して形
    成する工程と、 少なくとも、該電子放出用電極の突端部下、該引き出し
    電極の該突端部に対向する側及び電子放出口側の端部
    下、該突端部と該引き出し電極との間、の該絶縁基体に
    エッチング処理にて凹部を形成する工程と、 を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  8. 【請求項8】前記突端部を有する電子放出用電極と前記
    突端部に対向した電子放出口を有する引き出し電極は、
    前記導電層を微細加工することで形成された特許請求の
    範囲第7項記載の電子放出素子の製造方法。
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