JP2652899B2 - 冷凍機油 - Google Patents

冷凍機油

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は冷凍機油に関し、詳しくは特定の構造を有す
る炭酸エステルを主成分とする、各種性能に優れた冷凍
機油に関するものである。
[従来の技術および発明が解決しようとする課題] 従来から、冷凍機油としては、40℃における動粘度が
10〜200cStのナフテン系鉱油、パラフィン系鉱油、アル
キルベンゼン、ポリグリコール系油およびこれらの混合
物またはこれらの各種基油に添加剤を配合したものが一
般的に使用されている。
一方、冷凍機に用いられるフロン系冷媒としては、CF
C−11、CFC−12、CFC−115、HCFC−22等が使用されてい
る。
これらのフロン系冷媒のうち、CFC−11、CFC−12、CF
C−115等の炭化水素の全ての水素を塩素を含むハロゲン
で置換した形のフロンは、オゾン層破壊につながるとし
て規制の対象となっている。従って、HFC−134aやHFC−
152a等の非塩素系フロンがCFCの代替として使用されつ
つあるが、特に、HFC−134aは、従来から家庭用冷蔵
庫、エアコン、カーエアコン等の多くの冷凍機に使用さ
れているCFC−12と熱力学的物性が類似しており、代替
冷媒として有力である。
冷凍機油には種々の要求性能があるが、冷媒との相溶
性は、冷凍機の潤滑性、およびシステム効率の面から極
めて重要である。しかしながら、ナフテン系鉱油、パラ
フィン系鉱油、アルキルベンゼン等を基油とした冷凍機
油は、HFC−134a等の非塩素系フロンとの相溶性が殆ど
ないため、HFC−134aとの組合せで使用すると、常温に
おいて二層分離を起こし、冷凍システム内で最も重要な
油戻り性が悪くなって冷凍効率の低下あるいは潤滑性が
不良となって圧縮機の焼き付き発生等の実用上様々な不
都合が発生し使用に耐えない。
この問題を解決するため、本発明者らは、HFC−134a
との相溶性が従来公知の冷凍機油と比較して大幅に優れ
ているポリグリコール系冷凍機油を先に開発し、既に出
願している(特開平1−256594号公報、同1−274191号
公報等)。また、米国特許4,755,316号には、HFC−134a
と相溶性のあるポリグリコール系冷凍機油が開示されて
いる。しかしながら、ポリグリコール系油は、水の溶解
性が高く、また電気絶縁性が劣るという問題を有するこ
とが判明した。
一方、家庭用冷蔵庫等の圧縮機に用いられる冷凍機油
は、高い電気絶縁性が要求される。公知の冷凍機油のう
ち、最も高い電気絶縁性を有するものはアルキルベンゼ
ンや鉱油であるが、前述のようにアルキルベンゼンや鉱
油はHFC−134a等の非塩素系フロンとの相溶性が殆どな
い。従って、現在使用されているCFC−12、HCFC−22等
の塩素系フロンと高い相溶性があり、さらにHFC−134a
等の非塩素系フロンとの高い相溶性と、高い絶縁性とを
兼ね備えた冷凍機油は未だ出現していない。
本発明者らは、上記要求に応え得る冷凍機油を開発す
べく研究を重ねた結果、特定構造を有する炭酸エステル
が、CFC−12、HCFC−22、HCFC−142b等の塩素系フロン
のみならず、HFC−134a、HFC−152a等の非塩素系フロン
との相溶性に優れ、かつ高い電気絶縁性を有するもので
あり、さらに優れた潤滑特性、加水分解安定性を有する
ことを見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、特定構造を有する炭酸エステルを主成分と
する、フロンとの相溶性に優れ、かつ高い電気絶縁性を
有する冷凍機油を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] すなわち、本発明は、 一般式 [式中、R1およびR2は同一でも異なっていてもよく、そ
れぞれ炭素数1〜15のアルキル基または炭素数2〜12の
2価アルコール残基を示し、R3は炭素数2〜12のアルキ
レン基を示し、nは0〜30の整数を示す] で表される炭酸エステルを主成分とすることを特徴とす
る冷凍機油を提供するものである。
以下、本発明の内容をより詳細に説明する。
本発明の冷凍機油は、一般式 で表される炭酸エステルを主成分とすることを特徴とす
る。上記式中、R1およびR2は同一でも異なっていてもよ
く、それぞれ炭素数1〜15、好ましくは2〜9のアルキ
ル基または炭素数1〜15、好ましくは2〜9のアルキル
基または炭素数2〜12、好ましくは2〜9の2価アルコ
ール残基を示し、R3は炭素数2〜12、好ましくは2〜9
のアルキレン基を示し、nは0〜30、好ましくは1〜30
の整数を示す。上記条件を満たさない炭酸エステルを主
成分として使用すると、非塩素系フロン冷媒との相溶性
等の各種性能が劣るため好ましくない。R1およびR2で表
される炭素数1〜15のアルキル基としては、具体的には
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、
n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n
−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウン
デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テ
トラデシル基、n−ペンタデシル基、iso−プロピル
基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル
基、iso−ヘキシル基、iso−ヘプチル基、iso−オクチ
ル基、iso−ノニル基、iso−デシル基、iso−ウンデシ
ル基、iso−ドデシル基、iso−トリデシル基、iso−テ
トラデシル基、iso−ペンタデシル基等が例示される。
また、炭素数2〜12の2価アルコール残基としては、具
体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオー
ル、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2
−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオー
ル、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコー
ル、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル
−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2
−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2
−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジ
オール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオー
ル、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオー
ル等の残基が例示される。さらに、R3で表される炭素数
2〜12のアルキレン基としては、具体的には、エチレン
基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン
基、ブチレン基、2−メチルトリメチレン基、ペンタメ
チレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチ
レン基、2−エチル−2−メチルトリメチレン基、ヘプ
タメチレン基、2−メチル−2−プロピルトリメチレン
基、2,2−ジエチルトリメチレン基、オクタメチレン
基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレ
ン基、ドデカメチレン基等の直鎖構造や分枝構造を有す
るものが例示される。
本発明に用いられる炭酸エステルの製造法は任意であ
るが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノー
ル、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタ
ノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウン
デカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデ
カノール、ペンタデカノール等の炭素数1〜15のアルコ
ール、炭酸ジエステルもしくはホスゲン、およびエチレ
ングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレング
リコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオー
ル、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタ
ンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサン
ジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジ
オール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プ
ロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3
−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノ
ナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカ
ンジオール、1,12−ドデカンジオール、トリメチレング
リコール等の2価アルコールを金属ナトリウム、水酸化
ナトリウム、ナトリウムメトキシド等のアルカリの存在
下、80〜200℃で反応せしめることにより得られる。勿
論、これらのアルコール、炭酸ジエステル、および2価
アルコールは、2種以上の混合物を使用してもよい。
上記のような原料より得られた生成物を精製して副生
成物や未反応物を除去してもよいが、少量の副生成物や
未反応物は、本発明の冷凍機油の優れた性能を損なわな
いかぎり、存在していても支障はない。本発明におい
て、上記一般式で表される炭酸エステルは、混合物の形
で用いても、単品で用いてもよい。本発明に係る炭酸エ
ステルの分子量は特に限定されるものではないが、圧縮
機の密封性をより向上させる点から、数平均分子量が20
0〜3000のものが好ましく使用され、数平均分子量が300
〜2000のものがより好ましく使用される。更に、本発明
に係る炭酸エステルの好ましい動粘度は100℃において
2〜150cSt、より好ましくは4〜100cStである。
本発明の冷凍機油は、上記炭酸エステルを単独で用い
てもよいが、必要に応じて他の冷凍機油基油を混合して
使用することもできる。この基油として好ましいものと
しては、以下のものが例示できる。
一般式 R4OR6 aOR5 [式中、R4およびR5は水素または炭素数1〜18のアルキ
ル基を示し、R6は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、
aは5〜70の整数を示す] で表されるポリオキシアルキレングリコールまたはその
エーテル。
一般式 [式中、R7〜R9は水素または炭素数1〜18のアルキル基
を示し、R10〜R12は炭素数2〜4のアルキレン基を示
し、b〜dは5〜7の整数を示す] で表されるポリオキシアルキレングリコールグリセロー
ルエーテル。
一般式 [式中、X1は−OR15または で表される基、X2または で表される基をそれぞれ示し、またR13およびR19は炭素
数1〜8のアルキレン基、R14およびR16は炭素数2〜16
のアルキレン基、R15およびR20は炭素数1〜15のアルキ
ル基、R17およびR18は炭素数1〜14のアルキル基をそれ
ぞれ示し、さらにeおよびfは0または1を、gは0〜
30の整数をそれぞれ示す] で表されるエステル。
一般式 [式中、X3はメチル基、エチル基、プロピル基および一
般式 で表される基からなる群より選ばれるいずれかの基を示
し、R21〜R24は炭素数3〜11の直鎖のアルキル基、炭素
数3〜15の分枝アルキル基および炭素数6〜12のシクロ
アルキル基より選ばれる基を示し、直鎖アルキル基の割
合が全アルキル基に対し60%以下、またhは1〜3の整
数を示す] で表されるポリオールエステル。
一般式 [式中、X4およびX5は同一でも異なっていてもよく、そ
れぞれメチル基、エチル基、プロピル基および一般式 で表される基からなる群より選ばれるいずれかの基を示
し、R25〜R29は炭素数3〜15のアルキル基、R30は炭素
数1〜8の2価の炭化水素基を示し、またiは1〜5の
整数を示す] で表されるポリオールジカルボン酸エステル。
一般式 [式中、X6は水素原子または一般式 で表される基を示し、R31〜R33は同一でも異なっていて
もよく、それぞれ炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5
〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜30かつ水酸
基数3〜8のネオペンチル型ポリオール残基を示し、R
34は炭素数1〜6のアルキル基を示し、また、jは1ま
たは2、kは0または1であり、かつj+k=2となる
数を示し、さらにlは0〜30(l=0の場合、R31およ
びR32の少なくともいずれか一方はネオペンチル型ポリ
オール残基を示す)、mは1〜3の整数をそれぞれ示
す] で表される炭酸エステル。
これらの油は単独でも数種類組み合わせて用いてもよ
い。なお、パラフィン系およびナフテン系の鉱油、ポリ
α−オレフィン、アルキルベンゼン等の油も混合しても
よいが、この場合は非塩素系フロン溶媒との相溶性が落
ちる。
これらの基油の配合量は、本発明の冷凍機油の優れた
性能を損なわない範囲であれば特に限定されるものでは
ないが、冷凍機油全量に対し、通常50重量%未満、好ま
しくは30重量%以下になるように配合される。
本発明の冷凍機油において、その耐摩耗性、耐荷重性
をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸
エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン
酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ば
れる少なくとも1種のリン化合物を配合することができ
る。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とア
ルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあ
るいはこの誘導体である。具体的には、リン酸エステル
としては、トリブチルホスフェート、トリフェニルホス
フェート、トリクレジルホスフェート等が挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、ジテトラデシルアシッド
ホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、
ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシル
アシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフ
ェート等が挙げられる。酸性リン酸エステルのアミン塩
としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エ
チルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチル
アミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルア
ミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルア
ミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシル
アミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメ
チルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、
トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシル
アミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等の
アミンとの塩が挙げられる。塩素化リン酸エステルとし
ては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス
・クロロエチルホスフェート、ポリオキシアルキレン・
ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート、トリス・
クロロフェニルホスフェ−ト等が挙げられる。亜リン酸
エステルとしては、ジブチルホスファイト、トリブチル
ホスファイト、ジペンチルホスファイト、トリペンチル
ホスファイト、ジヘキシルホスファイト、トリヘキシル
ホスファイト、ジヘプチルホスファイト、トリヘプチル
ホスファイト、ジオクチルホスファイト、トリオクチル
ホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスフ
ァイト、ジウンデシルホスファイト、トリウンデシルホ
スファイト、ジドデシルホスファイト、トリドデシルホ
スファイト、ジフェニルホスファイト、トリフェニルホ
スファイト、ジクレジルホスファイト、トリクレジルホ
スファイト等が挙げられる。また、これらの混合物も使
用できる。これらのリン化合物を配合する場合、冷凍機
油全量に対し0.1〜5.0重量%、好ましくは0.2〜2.0重量
%の割合で含有せしめることが望ましい。
また、本発明の冷凍機油において、その安定性をさら
に改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポ
キシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、エ
ポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油か
らなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物
を配合することができる。ここでいうフェニルグリシジ
ルエーテル型エポキシ化合物としては、フェニルグリシ
ジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテ
ルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジ
ルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個
有するものであり、中でも炭素数4〜10のアルキル基を
1個有するもの、例えばブチルフェニルグリシジルエー
テル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシル
フェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシ
ジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、
ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグ
リシジルエーテルが好ましい。グリシジルエステル型エ
ポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエステル、
アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエ
ステル等が挙げられ、好ましいものとしては、グリシジ
ルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジル
メタクリレート等が例示できる。
またエポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキ
シ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアル
コールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエス
テルが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチ
ル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエ
チル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルが好ま
しく用いられる。
またエポキシ化植物油としては、大豆油、アマニ油、
綿実油等の植物油のエポキシ化合物が例示できる。
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フ
ェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物およびエポ
キシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリ
シジルエーテル型エポキシ化合物がより好ましく、フェ
ニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエ
ーテルおよびこれらの混合物が特に好ましい。
これらのエポキシ化合物を配合する場合、冷凍機油全
量に対し0.1〜5.0重量%、好ましくは0.2〜2.0重量%の
割合で含有せしめることが望ましい。
さらに、本発明の冷凍機油において、その耐摩耗性、
耐荷重性をさらに改良するために、 一般式 R35−CH(COOH)および/または R36−CH2−COOH [式中、R35およびR36は同一でも異なっていてもよく、
それぞれ炭素数8〜18のアルキル基を示す] で表されるカルボン酸を配合することができる。このカ
ルボン酸としては、具体的には例えば、オクチルマロン
酸、ノニルマロン酸、デシルマロン酸、ウンデシルマロ
ン酸、ドデシルマロン酸、トリデシルマロン酸、テトラ
デシルマロン酸、ペンタデシルマロン酸、ヘキサデシル
マロン酸、ヘプタデシルマロン酸、オクタデシルマロン
酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン
酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘ
プタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサ
ン酸およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらのカルボン酸を配合する場合、冷凍機油全量に対
し、0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜2重量%の割合
で含有せしめることが望ましい。
また、上記リン化合物、エポキシ化合物およびカルボ
ン酸を2種以上併用してもよいことは勿論である。
さらに本発明における冷凍機油に対して、その性能を
さらに向上させるため、必要に応じて従来より公知の冷
凍機油添加剤、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾー
ル、ビスフェノールA等のフェノール系、フェニル−α
−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フ
ェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリ
ン酸亜鉛等の摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合
物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消
泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤等の添加
剤を単独で、または数種組み合わせて配合することも可
能である。これらの添加剤の合計配合量は、通常、冷凍
機油全量に対し、10重量%以下、好ましくは5重量%以
下である。
本発明において、他の冷凍機油や添加剤が配合される
場合は、本発明に係る炭酸エステルは、冷凍機油全量に
対し、50重量%超、好ましくは70重量%以上含有されて
いることが望ましい。
本発明の炭酸エステルを主成分とする冷凍機油は、通
常、冷凍機油として使用されている程度の動粘度および
流動点を有していればよいが、低温時の冷凍機油の固化
を防ぐためには流動点が−10℃以下、好ましくは−20℃
〜−80℃であることが望ましい。また、圧縮機との密封
性を保つためには100℃における動粘度が2cSt以上、好
ましくは3cSt以上が望ましく、低温における流動性およ
び気化器における熱交換の効率を考慮すると、100℃に
おける動粘度が150cSt以下、好ましくは100cSt以下であ
ることが望ましい。
本発明の冷凍機油に用いられる冷媒としては、具体的
には1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,
1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジ
フルオロエタン(HFC−152a)、トリフルオロメタン(H
FC−23)等の非塩素系フロン、トリクロロモノフルオロ
メタン(CFC−11)、ジクロロジフルオロメタン(CFC−
12)、モノクロロトリフルオロメタン(CFC−13)、モ
ノクロロペンタフルオロメタン(CFC−115)、モノクロ
ロジフルオロメタン(HCFC−22)、1−クロロ−1,1−
ジフルオロエタン(HCFC−142b)等の塩素系フロン、ま
たはこれら2種以上の混合物等が挙げられるが、環境問
題の面から非塩素系フロンを用いるのが好ましく、特に
HFC−134aが好ましい。本発明の冷凍機油は、従来公知
の冷凍機油に比べて非塩素系フロンとの相溶性が大幅に
優れている。
また、本発明の冷凍機油は、非塩素系フロンとの高い
相溶性、高い電気絶縁性を有するだけでなく、潤滑性が
高く、吸湿性が低い優れた冷凍機油である。
本発明の冷凍機油は、往復動式や回転式の圧縮機を有
するエアコン、除湿機、冷蔵庫、冷凍庫、冷凍冷蔵倉
庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却
装置等に特に好ましく用いられるが、遠心式の圧縮機を
有するものにも好ましく使用できる。
[実施例] 以下、実施例と比較例により、本発明の内容を更に具
体的に説明する。
実施例1〜7および比較例1〜5 本実施例および比較例に用いた冷凍機油を以下に示
す。
実施例1:式1に示す分枝構造のカーボネート。
実施例2:式2に示す分枝構造のカーボネート。
比較例1:ナフテン系鉱油。
比較例2:分岐鎖型アルキルベンゼン(平均分子量約30
0)。
比較例3:ペンタエリスリトールと2−メチル−ヘキサン
酸および2,4−ジメチルヘプタン酸のテトラエステル。
このエステルは以下の一般式で表されるポリオールエス
テルである。
一般式 [式中、X3は一般式 で表され、R21〜R24は1−メチルペンチル基または1,3
−ジメチルヘキシル基であり、hは1である。
比較例4:3−メチル−1,5−ペンタンジオール、アジピン
酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸のコンプレック
スエステルで平均分子量が約500。このエステルは以下
の一般式で表されるエステルである。
一般式 [式中、X1はテトラメチレン基で、eは1であり、R14およびR16
3−メチルペンタメチレン基、R17およびR18は2,4,4−
トリメチルペンチル基、gは平均分子量が500となるよ
うな値(例えば、g=0で分子量が398、g=1で分子
量が626)である。
比較例5:ポリオキシプロピレングリコール(平均分子量
約900)。このグリコールは以下の一般式で表される。
一般式 R4OR6−OR5 [式中、R4およびR5は水素、R6はプロピレン基で、aは
平均分子量が900となるような値である。
実施例3:実施例1のカーボネートと比較例3のエステル
との混合物(重量比60:40) 実施例4:実施例1のカーボネートと比較例5のポリオキ
シアルキレングリコールとの混合物(重量比70:30) 実施例5:実施例2のカーボネートと比較例4のエステル
との混合物(重量比70:30) 実施例6:実施例2のカーボネートと比較例5のポリオキ
シアルキレングリコールとの混合物(重量比80:20) 実施例7:実施例2のカーボネートと式3に示す炭酸エス
テルとの混合物(重量比60:40) 本発明に係る実施例1〜7の冷凍機油の基油の性能評
価のためにHFC−134aとの溶解性、加水分解性、絶縁特
性、ファレックス摩耗試験および吸湿性を評価した。ま
た、比較のために、従来から冷凍機油に使用されている
鉱油、アルキルベンゼン、エステル油および米国特許4,
755,316号に開示されているポリアルキレングリコール
(比較例1〜5)の試験結果を第1表に併記する。
(HFC−134aとの溶解性) 内径6mm、長さ220mmのガラス管に、実施例および比較
例の試料油を0.2gを採取し、さらに冷媒(HFC−134a)
2.0gを採取してガラス管を封入する。このガラス管を所
定の温度の低温槽または高温相に入れ、冷媒と試料油が
相互に溶解しあっているか、分離または白濁しているか
を観察する。
(加水分解試験) 試料油60g、水0.6gを200mlのガラス製試験管に採り、
劣化促進触媒として銅板、鉄板およびアルミニウム板
(それぞれ、6cm2)を入れて、ステンレス製のオートク
レーブ中で175℃、168時間加熱劣化した。
試験後は、試料油の酸価と水酸基価を測定した。
(絶縁特性) JIS C 2101に準拠して25℃の試料油の体積抵抗率を測
定した。
(FALEX摩耗試験) ASTM D 2670に準拠して、試料油の温度100℃で、150l
b荷重で慣らし運転を1分行なった後に、330lbの荷重の
下に2時間運転し、テストジャーナルの摩耗量を測定し
た。
(吸湿性) 試料油30gを300mlビーカーに採り、30℃、60%湿度に
保たれた恒温恒湿槽に7日間静置した後、カールフィッ
シャー法により水分を測定した。
第1表の実施例1〜2が示す通り、本発明による冷凍
機油は、比較例1〜2に比べHFC−134aに対する冷媒溶
解性が非常に優れている。
比較例3〜4に示すようにエステル油は冷媒溶解性、
電気絶縁性に優れているものの加水分解性が悪く、水の
混入、侵入が予想される冷凍機システムでは生成した酸
の腐食等で使用上問題がある。一方、実施例1〜2は、
若干ながら加水分解し水酸基は生成するものの、酸は生
成しないので何等問題ない。
実施例1〜2は、絶縁特性の点でも鉱油、アルキルベ
ンゼンと比べて遜色なく、エステル油とほぼ同等であ
り、さらに比較例5のアルキレングリコール油よりも優
れている。
また、ファレックスによる摩耗試験においても実施例
1〜2は、比較例1〜5に比べて同等ないしはそれ以上
であることがわかる。
水分の吸湿性についても、実施例1〜2の冷凍機油
は、比較例1〜2と比べて遜色なく、比較例3〜4のエ
ステル油とほぼ同等であり、さらに比較例5のアルキレ
ングリコールよりも吸湿性が著しく低く優れている。
[発明の効果] 以上の説明と実施例によって明らかである通り、本発
明の冷凍機油は、冷凍機における使用に適するものであ
り、電気絶縁性が優れていると共に耐摩耗性、非吸湿性
に優れた冷凍機油である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 129:16 143:04 129:78 137:04 137:08 129:18 129:66 129:40 129:42 137:02) C10N 40:16 40:30 (72)発明者 石川 達之 神奈川県横浜市中区千鳥町8番地 日本 石油株式会社中央技術研究所内 (56)参考文献 特開 平4−178354(JP,A)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 [上記式中、R1およびR2は同一でも異なっていてもよ
    く、それぞれ炭素数1〜15のアルキル基または炭素数2
    〜12の2価アルコール残基を示し、R3は炭素数2〜12の
    アルキレン基を示し、nは0〜30の整数を示す] で表される炭酸エステルを主成分とすることを特徴とす
    る冷凍機油。
  2. 【請求項2】使用する冷媒が非塩素系フロンである請求
    項1に記載の冷凍機油。
  3. 【請求項3】前記炭酸エステルを基油とするものである
    請求項1または2に記載の冷凍機油。
  4. 【請求項4】(I) 前記炭酸エステル、並びに (II) 一般式 R4OR6 aOR5 [式中、R4およびR5は水素または炭素数1〜18のアルキ
    ル基を示し、R6は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、
    aは5〜70の整数を示す] で表されるポリオキシアルキレングリコールまたはその
    エーテル、 一般式 [式中、R7〜R9は水素または炭素数1〜18のアルキル基
    を示し、R10〜R12は炭素数2〜4のアルキレン基を示
    し、b〜dは5〜7の整数を示す] で表されるポリオキシアルキレングリコールグリセロー
    ルエーテル、 一般式 [式中、X1は−OR15または で表される基、X2または で表される基をそれぞれ示し、またR13およびR19は炭素
    数1〜8のアルキレン基、R14およびR16は炭素数2〜16
    のアルキレン基、R15およびR20は炭素数1〜15のアルキ
    ル基、R17およびR18は炭素数1〜14のアルキル基をそれ
    ぞれ示し、さらにeおよびfは0または1を、gは0〜
    30の整数をそれぞれ示す] で表されるエステル、 一般式 [式中、X3はメチル基、エチル基、プロピル基および一
    般式 で表される基からなる群より選ばれるいずれかの基を示
    し、R21〜R24は炭素数3〜11の直鎖のアルキル基、炭素
    数3〜15の分枝アルキル基および炭素数6〜12のシクロ
    アルキル基より選ばれる基を示し、直鎖アルキル基の割
    合が全アルキル基に対し60%以下、またhは1〜3の整
    数を示す] で表されるポリオールエステル、 一般式 [式中、X4およびX5は同一でも異なっていてもよく、そ
    れぞれメチル基、エチル基、プロピル基および一般式 で表される基からなる群より選ばれるいずれかの基を示
    し、R25〜R29は炭素数3〜15のアルキル基、R30は炭素
    数1〜8の2価の炭化水素基を示し、またiは1〜5の
    整数を示す] で表されるポリオールジカルボン酸エステル、 および、一般式 [式中、X6は水素原子または一般式 で表される基を示し、R31〜R33は同一でも異なっていて
    もよく、それぞれ炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5
    〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜30かつ水酸
    基数3〜8のネオペンチル型ポリオール残基を示し、R
    34は炭素数1〜6のアルキル基を示し、また、jは1ま
    たは2、kは0または1であり、かつj+k=2となる
    数を示し、さらにlは0〜30(l=0の場合、R31およ
    びR32の少なくともいずれか一方はネオペンチル型ポリ
    オール残基を示す)、mは1〜3の整数をそれぞれ示
    す] で表される炭酸エステル、 からなる群より選ばれる少なくとも、1種の油の混合油
    を基油とする請求項1または2に記載の冷凍機油。
  5. 【請求項5】前記(I)炭酸エステルが冷凍機油全量に
    対し、50重量%を超える量配合されている請求項4に記
    載の冷凍機油。
  6. 【請求項6】冷凍機油全量に対し、リン酸エステル、酸
    性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩
    素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群
    より選ばれる少なくとも1種のリン化合物0.1〜5.0重量
    %を必須成分として含有する請求項1〜5のいずれかに
    記載の冷凍機油。
  7. 【請求項7】冷凍機油全量に対し、フェニルグリシジル
    エーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポ
    キシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポ
    キシ化植物油からなる群より選ばれる少なくとも1種の
    エポキシ化合物0.1〜5.0重量%を必須成分として含有す
    る請求項1〜6のいずれかに記載の冷凍機油。
  8. 【請求項8】冷凍機油全量に対し、 一般式 R35−CH(COOH)および/または R36−CH2−COOH [式中、R35およびR36は同一でも異なっていてもよく、
    それぞれ炭素数8〜18のアルキル基を示す] で表されるカルボン酸0.01〜3重量%を必須成分として
    含有する請求項1〜7のいずれかに記載の冷凍機油。
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