JP2646869B2 - 自動変速機の油圧回路 - Google Patents

自動変速機の油圧回路

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は切換弁によって選択的に
供給される複数の油圧をアキュムレータで調圧する際
に、夫々の調圧特性を独立して設定し得るようにした、
自動変速機の油圧回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、絞りを介して供給される、調圧す
べき複数の油圧を切換弁で選択的に1つのアキュムレー
タに供給する、自動変速機の油圧回路としては、例えば
図3に示すものがある。この油圧回路は、日産自動車
(株)が1989年8月に発行した「RE5R01A型オー
トマチックトランスミッションサービスマニュアル」に
記載の自動変速機に使用したものであり、切換弁50と、
アキュムレータ51と、これらを接続する油路とを有して
いる。切換弁50は、絞り55を介してハイクラッチ圧回路
に接続されるポート50a と、絞り56を介してリバースク
ラッチ圧回路に接続されるポート50b と、フォワードク
ラッチ圧回路に接続されるポート50c と、アキュムレー
タ51に接続されるポート50d と、弁体50e を図示上方に
付勢するばね50f とを有している。この切換弁50は、ポ
ート50c にフォワードクラッチ圧 PF を切換信号圧とし
て作用されて弁体50e がばね50f のばね力に抗して図示
下方にストロークすることによりポート50a 、ポート50
b の何れか一方をポート50d に選択的に連通し、ポート
50a のハイクラッチ圧 PH 、ポート50b のリバースクラ
ッチ圧 PR の何れか一方をアキュムレータ51に供給す
る。アキュムレータ51は、切換弁のポート50d に接続さ
れるポート51a と、ライン圧回路に接続されるポート51
b と、ピストン51c を図示上方に付勢するばね51d とを
有している。ピストン51c はポート51a に供給される油
圧 PH または PR による力およびばね51d のばね力の合
力と、ポート51b に供給されるライン圧 PL による力と
が釣合う位置に停止し、これによりアキュムレータ51は
制御圧としての油圧 PH または PR を所定の調圧特性
(その一例を図4に示す)に調圧する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来例において
は、切換信号圧( PF )を制御圧としての油圧 PH 、 P
R と関連付けていなかったため、アキュムレータ51によ
る調圧特性は図4に示すように油圧 PH の場合も油圧 P
R の場合も同一となり、1つのアキュムレータで複数の
油圧を異なる調圧特性に調圧する必要がある場合には対
処することができなかった。また上記従来例において
は、制御圧としての油圧 PH , PR が共にクラッチ圧で
あるため、例えばリバースクラッチ圧 PR を図4の調圧
特性により瞬時t1以後徐々に増加させると、 PR がクラ
ッチON圧(締結圧) PONに達する瞬時t2までの間のタイ
ムラグΔt により変速レバー操作から、クラッチ締結が
遅れるので運転者に異和感を与える惧れがあった。
【0004】本発明は第1摩擦要素および第2摩擦要素
の油圧を切換弁によって選択的に1つのアキュムレータ
に供給して調圧する際に、該切換弁の切換信号圧を前記
第1摩擦要素の油圧とするとともに、該切換信号圧が切
換圧を上回るまではバイパス油路を連通させて前記絞り
をバイパスするように構成することにより、上述した問
題を解決することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的のため、本発明
の自動変速機の油圧回路は、絞りを介して第1摩擦要素
へ油圧を供給する第1油路と、第2摩擦要素へ油圧を供
給する第2油路と、前記第1油路および第2油路を切換
信号圧に応じて選択的に1つのアキュムレータへの油路
に連通させる切換弁とを有する、自動変速機の油圧回路
において、前記第1油路中の絞りをバイパスし前記切換
弁にて連通および遮断を切換えるバイパス油路を設け、
前記切換弁の一端に前記第1摩擦要素の油圧を切換信号
圧として作用させるとともに他端に前記アキュムレータ
の作動荷重を上回る設定荷重を有する押圧手段の押圧力
を作用させ、前記第1摩擦要素の油圧が出力されないと
きには前記第2摩擦要素の油圧を前記アキュムレータに
供給する位置に前記切換弁が切換わり、前記第1摩擦要
素の油圧の出力時には、該油圧が前記押圧手段の設定荷
重を上回るまでは前記バイパス油路を連通させ、該油圧
を前記バイパス油路を経て前記第1摩擦要素に供給する
位置に前記切換弁が切換わり、該油圧が前記押圧手段の
設定荷重を上回ったとき該油圧を前記アキュムレータに
供給する位置に前記切換弁が切換わることにより、前記
第1摩擦要素の油圧の、前記アキュムレータの立上り領
域における調圧特性が前記第2摩擦要素の油圧の前記領
域における調圧特性よりも高圧側に設定されるようにし
たことを特徴とするものである。
【0006】
【作用】本発明によれば、調圧すべき第1摩擦要素およ
び第2摩擦要素の油圧の内の第1摩擦要素の油圧は、こ
れら油圧を選択的にアキュムレータに供給する切換弁の
切換信号圧として前記切換弁の一端に作用して、前記切
換弁の他端に作用する、前記アキュムレータの作動荷重
を上回る設定荷重を有する押圧手段の押圧力と対抗する
ため、前記切換弁は前記第1摩擦要素の油圧が出力され
ないときには前記第2摩擦要素の油圧を前記アキュムレ
ータに供給する位置に切換わり、前記第1摩擦要素の油
圧の出力時には該油圧が前記押圧手段の設定荷重を上回
ったとき該油圧を前記アキュムレータに供給する位置に
切換わるから、例えば図2に実線で示すように、この切
換信号圧として作用する前記第1摩擦要素の油圧の、前
記アキュムレータの立上り領域における調圧特性は、調
圧下限値が切換信号圧下限値(前記切換圧) PCHと一致
するものとなり、同図に点線で示す、前記第2摩擦要素
の油圧の前記領域における調圧特性よりも高圧側に設定
されることになる。したがって上述のような極めて簡略
な回路構成で、1つのアキュムレータによって第1摩擦
要素および第2摩擦要素の油圧を異なる調圧特性に調圧
することが可能になる。その際、前記切換弁は、例えば
図2に実線で示すように、前記第1摩擦要素の油圧 PR
が前記押圧手段の設定荷重(前記切換弁の切換圧 PCH
を上回るまで(瞬時t1以前)は前記バイパス油路を連通
させ、前記第1摩擦要素の油圧を前記バイパス油路を経
て前記第1摩擦要素に供給する位置に切換わるから、こ
のバイパス油路の連通作用によって前記第1摩擦要素の
油圧が前記絞りを通らずに直接前記第1摩擦要素に供給
されるため、前記第1摩擦要素油圧の供給開始から瞬時
t1までの間の前記第1摩擦要素のロスストロークに要す
る時間を短縮する効果が得られる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に
説明する。図1は本発明の自動変速機の油圧回路の第1
実施例の構成を示す図であり、図中10は切換弁、11はア
キュムレータを示す。切換弁10はポート10a 〜10f 、弁
体10g およびばね10h を有しており、ポート10a には絞
り(オリフィス)15を介してリバースクラッチ圧 PR
供給するリバースクラッチ圧回路(第1油路)12を接続
し、リバースクラッチ圧回路12は油路16によってポート
10c に接続し、さらに図示しないリバースクラッチ(第
1摩擦要素)にも接続する。また切換弁10のポート10b
には絞り17を介して図示しないハイクラッチ(第2摩擦
要素)へハイクラッチ圧 PH を供給する図示しないハイ
クラッチ圧回路(第2油路)を接続し、ポート10d には
アキュムレータ11のポート11a に調圧すべき油圧を供給
する油路13を接続する。さらにポート10e, 10fには、切
換弁10の切換信号圧が切換圧(ばね10h の設定荷重)未
満のときリバースクラッチ圧回路12の絞り15をバイパス
するバイパス油路18, 19を接続し、これらバイパス油路
18, 19の連通および遮断を切換弁10によって切換える。
これらバイパス油路18, 19は図示の連通状態のときリバ
ースクラッチ圧 PR を直接リバースクラッチに供給す
る。アキュムレータ11はポート11a 、11b 、ピストン11
c および、アキュムレータ11の作動荷重を上回る設定荷
重を有する押圧手段であるばね11d を有しており、ポー
ト11a には前記油路13を接続し、ポート11b にはライン
圧 PL を供給する図示しないライン圧回路を接続する。
【0008】次に本例の自動変速機の油圧回路の作用に
ついて説明する。切換弁10は、ポート10c に供給される
切換信号圧としてのリバースクラッチ圧 PR によってポ
ート10a 〜10d 間、ポート10b 〜10d 間を選択的に連通
し、ポート10b 〜10d 間連通時にはポート10e 〜10f 間
も連通する(ポート10a 〜10d 連通時にはポート10e 〜
10f 間は連通しない)。すなわち、切換信号圧 PR によ
り弁体10g が切換弁10のばね10h のばね力に抗して図1
の下方にストロークすることによりポート10a 〜10d 間
を連通させるときの切換信号圧 PR の下限値(すなわち
切換圧)を PCHとすると、 PR ≦ PCHのときポート10b
〜10d 間が連通してハイクラッチ圧 PH がアキュムレー
タ11に供給されるとともに、ポート10e 〜10f 間が連通
してリバースクラッチ圧 PR が図示しないリバースクラ
ッチに絞り15を通らずに直接供給され、 PR > PCHのと
きポート10a 〜10d 間が連通してリバースクラッチ圧 P
R がアキュムレータ11に供給される。アキュムレータ11
は、その内部に摺動自在に嵌合したピストン11c が、ポ
ート11a に供給された油圧 PH または PR による力およ
びばね11d のばね力の合力により図1の上方に向って押
圧され、ポート11b に導かれた油圧 PL による力により
図1の下方に向って押圧されるため、両者の力が釣合う
位置に停止し、この状態で制御圧としての油圧 PH また
は PR を所定の調圧特性に調圧する。
【0009】上記調圧特性を前記従来例と比較しながら
図2により説明する。まずリバースクラッチ圧 PR にお
いては、切換信号圧でもある PR が切換圧 PCHに達する
までは切換弁10のポート10b 〜ポート10d 間およびポー
ト10e 〜ポート10f間を連通する、図1の状態になって
いるため、油圧 PR はアキュムレータ11に到達せず、絞
り15を通らずに直接リバースクラッチに供給される。し
たがって図2に実線で示すようにリバースクラッチ圧 P
Rは供給開始後リバースクラッチのロスストロークの間
零に保持され、瞬時t1に PCHまで急激に上昇し、その後
アキュムレータ11のポート11a に通じる油室内に油が充
填される瞬時t3まで PR はアキュムレータ11の調圧作用
により PCHに保持される。油圧 PR が PCHを超えて切換
弁10がばね10f のばね力に抗して PR 側に切換られる瞬
時t2以後、ピストン11がストローク上限に達するまでは
絞り15の開度に応じて図示のように調圧がなされ、この
場合の調圧下限値は PCHとなる。
【0010】一方、ハイクラッチ圧 PH においては、切
換信号圧PR ≦ PCHであれば切換弁10のポート10b 〜ポ
ート10d 間が常に連通し、したがって瞬時t1以前にアキ
ュムレータ11に油圧 PH が到達してポート11a に通じる
油室内に油が充填された状態になっているため、図2に
点線で示すように瞬時t1にハイクラッチ圧 PH は所定値
P1まで急激に上昇し、その後図2に示すように図4の従
来例と同様の調圧特性に調圧され、この場合の調圧下限
値は従来例と同様のP1となる(P1< PCH)。
【0011】このように本例においては、切換信号圧
を、調圧すべき第1摩擦要素の油圧であるリバースクラ
ッチ圧 PR としたため、極めて簡略な回路構成で、選択
的にアキュムレータ11に供給される油圧 PR 、 PH を図
2に示すような異なる調圧下限値を有する調圧特性に調
圧することができる。言い換えれば、第1摩擦要素の油
圧 PR の、アキュムレータ11の立上り領域における調圧
特性が、図2に示すように第2摩擦要素の油圧 PH の前
記領域における調圧特性よりも高圧側に設定されるよう
に調圧することができる。
【0012】ところで上記のように第1摩擦要素および
第2摩擦要素の油圧を異なる調圧下限値に調圧すると、
以下に示すように自動変速機においてN→Rセレクト時
リバースクラッチON圧到達までのタイムラグを解消する
効果が得られる。すなわち、自動変速機においてN(ニュ
ートラル) レンジ選択状態からR(リバース) レンジを選
択したとき、リバースクラッチ圧 PR を図4に示すよう
に徐々に増加させる調圧特性に設定した場合、 PR がリ
バースクラッチON圧 PONに到達する瞬時t2までのΔt の
間、クラッチの締結が遅れる。この対策として本例のよ
うにリバースクラッチ圧 PR を図2に実線で示すように
急激に増加させる調圧特性に設定し、油圧 PR = P
CH(切換圧)をリバースクラッチON圧 PONよりも大きく
しておけば、前記タイムラグΔt はほぼ解消されること
になる。さらに、切換信号圧 PR が切換圧 PCH 未満の
間(瞬時t1以前)、切換弁10はリバースクラッチ圧回路
12の絞り15をバイパスするバイパス油路18, 19間を連通
させるように切換えられ、このバイパス油路18, 19の連
通作用によってリバースクラッチ圧 PR が絞り15を通ら
ずに直接リバースクラッチに供給されるため、油圧 PR
の供給開始から瞬時t1までの間のリバースクラッチのロ
スストロークに要する時間を短縮する効果が得られる。
【0013】
【発明の効果】かくして本発明の自動変速機の油圧回路
は上述の如く、絞りを介して供給される第1摩擦要素
(例えばリバースクラッチ)の油圧を、アキュムレータ
の作動荷重を上回る設定荷重(切換弁の切換圧)を有す
る押圧手段の押圧力に対抗するよう前記切換弁に切換信
号圧として作用させたときの前記切換弁の上記一連の切
換動作により、上述のような極めて簡略な回路構成で、
例えば図2に示すように、前記第1摩擦要素の油圧の、
前記アキュムレータの立上り領域における調圧特性を、
前記第2摩擦要素の油圧の前記領域における調圧特性よ
りも高圧側に設定する際に、前記第1摩擦要素の油圧の
出力時には、切換信号圧である前記第1摩擦要素の油圧
が前記押圧手段の設定荷重(切換弁の切換圧)を上回る
までは前記第1油路中の絞りをバイパスするバイパス油
路を連通させるように前記切換弁が切換えられ、このバ
イパス油路の連通作用により前記第1摩擦要素の油圧が
絞りを通らずに前記第1摩擦要素に供給されるため、油
圧供給開始から油圧上昇開始までの間の前記第1摩擦要
素のロスストロークに要する時間を短縮することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動変速機の油圧回路の第1実施例の
構成を示す図である。
【図2】同例における調圧特性を例示する図である。
【図3】従来例の自動変速機の油圧回路の構成を示す図
である。
【図4】従来例の調圧特性を例示する図である。
【符号の説明】
10 切換弁 11 アキュムレータ 12 リバースクラッチ圧回路 15 絞り 16 油路 17 絞り 18 バイパス油路 19 バイパス油路 PH ハイクラッチ圧 PL ライン圧 PR リバースクラッチ圧(切換信号圧)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絞りを介して第1摩擦要素へ油圧を供給
    する第1油路と、第2摩擦要素へ油圧を供給する第2油
    路と、前記第1油路および第2油路を切換信号圧に応じ
    て選択的に1つのアキュムレータへの油路に連通させる
    切換弁とを有する、自動変速機の油圧回路において、 前記第1油路中の絞りをバイパスし前記切換弁にて連通
    および遮断を切換えるバイパス油路を設け、前記切換弁
    の一端に前記第1摩擦要素の油圧を切換信号圧として作
    用させるとともに他端に前記アキュムレータの作動荷重
    を上回る設定荷重を有する押圧手段の押圧力を作用さ
    せ、前記第1摩擦要素の油圧が出力されないときには前
    記第2摩擦要素の油圧を前記アキュムレータに供給する
    位置に前記切換弁が切換わり、前記第1摩擦要素の油圧
    の出力時には、該油圧が前記押圧手段の設定荷重を上回
    るまでは前記バイパス油路を連通させ、該油圧を前記バ
    イパス油路を経て前記第1摩擦要素に供給する位置に前
    記切換弁が切換わり、該油圧が前記押圧手段の設定荷重
    を上回ったとき該油圧を前記アキュムレータに供給する
    位置に前記切換弁が切換わることにより、前記第1摩擦
    要素の、油圧の前記アキュムレータの立上り領域におけ
    る調圧特性が前記第2摩擦要素の油圧の前記領域におけ
    る調圧特性よりも高圧側に設定されるようにしたことを
    特徴とする、自動変速機の油圧回路。
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