JP2639857B2 - ディーゼルエンジンのうず室式燃焼室 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ディーゼルエンジンの
うず室式燃焼室に関するものである。

【０００２】

【発明の背景】ディーゼルエンジンのうず室式燃焼室で
は、うず室にその噴口を接線状に連通させ、この噴口を
介して主燃焼室に上記うず室を連通させ、このうず室に
燃料噴射ノズルを臨ませたものが、一般的構造として採
用されている。

【０００３】ところで、このような構造のうず室式燃焼
室では、うず流の旋回に基づく遠心力により、うず室内
で質量の異なる未燃ガスと既燃ガスとが分離して、うず
室の中央近傍に質量の小さい既燃ガスが集合し、ここが
局部的に高温となってＮ０_Xの生成が促進される。この
ため、うず室式燃焼室では、ＮＯ_Xの低減が重要な課題
の一つとなっている。

【０００４】

【従来技術】従来、ＮＯ_Xの低減を図る技術として、例
えば実開昭60−139030号公報に開示されたものがある。
これは、図４に示すように、うず室１０１の中央近傍内
にガス排斥具１０２を設けたものである。これによれ
ば、うず室１０１の中央近傍内に既燃ガスが流入するの
を阻止できるので、うず室１０１内での未燃ガスと既燃
ガスとの分離を妨げることができ、これにより、うず室
１０１内に既燃ガスの集合による高温領域が形成される
のを防止してＮＯ_Xの発生量を低減させることができ
る。

【０００５】ところで、この従来技術につき、上記公報
では、うず室１０１内にガス排斥具１０２を設けたの
で、うず流の速度分布を均一化することができ、これに
より、燃料の分布を均一にしてＨＣ・ＣＯの発生量を低
減化させることができる旨が説明されている。また、図
４（Ｂ）に示すように、特にガス排斥具１０２の両端部
を細くすることにより、うず室１０１から主燃焼室への
燃焼ガスの噴出を円滑に行わせることができるので、主
燃焼室の燃焼をスムーズに行わせることができ、これに
より、エンジンの出力を向上させることができるととも
に、燃費を低減化させることができる旨が説明されてい
る。

【０００６】しかし、この従来技術には、うず流や燃焼
ガスについての改善手段が示されているのみで、ＨＣ・
ＣＯの低減化、エンジンの出力性能の向上、燃費の低減
化に最も重要な要素となる、噴射燃料の微細化や拡散の
促進についての工夫が欠けているため、次のような問題
が生じる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】上記従来技術では、噴
射燃料の微細化や拡散を十分に図ることができないた
め、噴射燃料と空気との混合性能の向上が望めない。こ
のため、燃焼性能を十分に高めることができず、ＨＣ・
ＣＯの低減化、エンジンの出力性能の向上、燃費の低減
化が十分に行えない。

【０００８】本発明は、ＮＯ_Xの低減化を図ると同時
に、噴射燃料の微細化や拡散の促進によってエンジンの
出力性能の向上等を十分に図ることをその課題とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、例えば図１に示すように、次のように構
成したものである。ディーゼルエンジンのうず室(１)に
噴口(２)を接線状に連通させ、その噴口(２)を介して主
燃焼室(３)にうず室(１)を連通させ、そのうず室(１)に
燃料噴射ノズル(４)を臨ませ、そのうず室(１)内に柱形
状のガス排斥具(５)を設けたディーゼルエンジンのうず
室式燃焼室において、ガス排斥具(５)の軸心(１７)を、
うず室(１)内でのうず流(１０)の旋回の中心軸(１８)と
一致させ、うず流(１０)の旋回方向に沿って凹曲状とな
る噴射激突面部分(９)をガス排斥具(５)に設け、その噴
射激突面部分(９)に燃料噴射ノズル(４)の噴射軸心(６)
を直交させて、燃料噴射ノズル(４)から噴射された全て
の噴射燃料(７)が噴射激突面部分(９)に激突するように
構成したものである。

【００１０】

【作用】本発明は、例えば図１に示すように、次のよう
に作用する。 燃料噴射ノズル４から噴射された全ての噴
射燃料７が、ガス排斥具５の噴射激突面部分９に激突す
ることにより、その噴射激突面部分９で反射し、その際
の反動によって微細化されるとともに、うず室１内に飛
散して拡散する。

【００１１】そして、噴射激突面部分９をうず流１０の
旋回方向へ凹曲状にしたうえ、燃料噴射ノズル４の噴射
軸心６を上記噴射激突面部分９に直交させたことによ
り、噴射激突面部分９を平面状や凸面状にした場合に比
し、噴射激突面部分９への噴射 燃料７の入射角が小さく
なる。

【００１２】さらに、ガス排斥具５にうず室１内の燃焼
熱が蓄熱し、噴射激突面部分９に激突した全ての噴射燃
料７にその熱が吸収されることにより、噴射燃料７の気
化が促進される。

【００１３】

【発明の効果】本発明は、上記のように構成し作用する
ことから次の効果を奏する。

【００１４】例えば、噴射激突面部分への噴射燃料の
入射角が大きいと、噴射激突面部分へ激突した際の衝撃
力が噴射激突面部分の面方向へそがれて、激突の際の反
動が噴射燃料に伝わりにくくなる。しかも、噴射燃料
は、その粘性とうず流とによって噴射激突面部分でうず
流の旋回方向へ滑りやすい。つまり、うず流の旋回方向
に対して、噴射激突面部分への噴射燃料の入射角が大き
い程、噴射激突面部分へ激突した際の反動が噴射燃料へ
伝わりにくくなり、噴射燃料の微細化と拡散とが行われ
にくくなる。 これに対し、噴射激突面部分をうず流の旋
回方向へ凹曲状にしたうえ、燃料噴射ノズルの噴射軸心
を噴射激突面部分に直交させたので、噴射激突面部分を
平面状や凸面状にした場合に比し、噴射軸心から離れた
位置で噴射激突面部分に激突した噴射燃料の入射角も比
較的小さくなる[図１（Ａ）や（Ｄ）参照]。 つまり、噴
射激突面部分を平面状や凸面状にした場合に比し、うず
流の旋回方向に対し、全ての噴射燃料の噴射激突面部分
への入射角が小さくなる分、噴射激突面部分へ激突した
際の反動が全ての噴射燃料へ十分に伝わって、全ての噴
射燃料の微細化と拡散とが十分に促進される。この結
果、噴射燃料と空気との混合性能が高まって、燃焼性能
を向上させることができ、これによりＨＣ・ＣＯの低減
化、エンジンの出力性能の向上、燃費の低減化を十分に
図ることができる。

【００１５】全ての噴射燃料が噴射激突面部分に激突
するので、全ての噴射燃料にガス排斥具の蓄熱を吸収さ
せて、全ての噴射燃料の気化を促進できる。従って、噴
射燃料の気化の遅れに起因する発火遅れを抑制すること
ができ、これによってディーゼルノックの発生を有効に
防止できる。

【００１６】

【実施例】本発明の第１実施例を図１に基づいて説明す
る。 （第１実施例） 図１は本発明の第１実施例に係るディーゼルエンジンの
うず室式燃焼室を説明する図であり、図１（Ａ）は上記
うず室式燃焼室の縦断面図、図１（Ｂ）は図１（Ａ）の
Ｂ−Ｂ線断面図、図１（Ｃ）は本発明に係るガス排斥具
の斜視図、図１（Ｄ）は図１（Ｃ）のＤ−Ｄ線断面図、
図１（Ｅ）は図１（Ｄ）のＥ−Ｅ線断面図である。

【００１７】図１（Ａ）において、符号５０はディーゼ
ルエンジンのうず室式燃焼室を示しており、これは次の
ようになっている。図１（Ａ）に示すように、シリンダ
ブロック１１のシリンダ１２内にピストン１３を嵌入
し、ピストン１３の上側に主燃焼室３を形成している。
シリンダブロック１１上に組み付けたシリンダヘッド１
４内にうず室１を形成しており、うず室１の上半部はシ
リンダヘッド１４の肉壁内に形成し、うず室１の下半部
はシリンダヘッド１４に嵌め込んだ噴口口金１５内に形
成している。噴口口金１５の底壁にうず室１に接線状に
連通する噴口２を形成し、この噴口２を介して主燃焼室
３にうず室１を連通させている。うず室１内には、燃料
噴射ノズル４及びグロープラグ１６を臨ませている。

【００１８】このうず室式燃焼室５０では、ＮＯ_Xの発
生量を低減させるため、図１（Ａ）・（Ｂ）に示すよう
に、うず室１の中央近傍内にガス排斥具５を設けてあ
る。このガス排斥具５は、ほぼ円柱状に形成してあると
ともに噴口口金１５と一体に形成してある。そして、上
記ガス排斥具５をうず流１０の旋回中心軸１８に沿って
横架させて、ガス排斥具５の軸心１７をうず流１０の旋
回中心軸１８と一致させてある。

【００１９】また、このうず室式燃焼室５０では、噴射
燃料の微細化や拡散を促進するために、図１（Ｄ）に示
すように、燃料噴射ノズル４の噴射軸心６をガス排斥具
５と交わる向きに向かわせ、燃料噴射ノズル４からの全
ての噴射燃料７が、そのガス排斥具５の外周面のうちの
上記噴射軸心６との交点８付近の噴射激突面部分９に衝
突し、反射して飛散するように構成している。なお、燃
料噴射ノズル４の噴射軸心６はガス排斥具５の軸心１７
と交叉するようにしてある。

【００２０】さらに、この噴射激突面部分９は、図１
（Ｃ）・（Ｄ）に示すように、うず流１０の旋回方向に
沿って凹曲状となっており、また、図１（Ｃ）・（Ｅ）
に示すように、うず流１０の旋回中心軸１８又はガス排
斥具５の軸心１７方向に上記凹曲面が平坦状に延びてい
る。

【００２１】上記噴射激突面部分９は、上述の形状に限
られるものではなく、以下の第２実施例及び第３実施例
に示すように形成してもよい。 （第２実施例及び第３実施例） 即ち、第２実施例と第３実施例とは、図２と図３とに示
すように、いずれも上述の第１実施例と同様にうず流１
０の旋回方向に沿って凹曲状となっており、第１実施例
とは、うず流１０の旋回中心軸１８又はガス排斥具５の
軸心１７方向への形状が異なっている。

【００２２】つまり、上記第２実施例での噴射激突面部
分９は、図２（Ａ）・（Ｃ）に示すように、うず流１０
の旋回中心軸１８又はガス排斥具５の軸心１７方向に沿
って凸曲状となっている。 また、上記第３実施例での噴
射激突面部分９は、図３（Ａ）・（Ｃ）に示すように、
うず流１０の旋回中心軸１８又はガス排斥具５の軸心１
７方向に沿って凹曲状となっている。

【００２３】なお、噴射燃料７を乱反射させるために、
噴射激突面部分９の表面に凹凸条を形成してもよい。こ
の凹凸条は、平行に形成してもよいし、格子状に形成し
てもよい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例に係るディーゼルエンジン
のうず室式燃焼室を説明する図であり、図１（Ａ）は上
記うず室式燃焼室の縦断面図、図１（Ｂ）は図１（Ａ）
のＢ−Ｂ線断面図、図１（Ｃ）は本発明に係るガス排斥
具の斜視図、図１（Ｄ）は図１（Ｃ）のＤ−Ｄ線断面
図、図１（Ｅ）は図１（Ｄ）のＥ−Ｅ線断面図である。

【図２】本発明の第２実施例に係るディーゼルエンジン
のうず室式燃焼室を説明する図であり、図２（Ａ）は第
２実施例に係るガス排斥具の斜視図、図２（Ｂ）は図２
（Ａ）のＢ−Ｂ線断面図、図２（Ｃ）は図２（Ｂ）のＣ
−Ｃ線断面図である。

【図３】本発明の第３実施例に係るディーゼルエンジン
のうず室式燃焼室を説明する図であり、図３（Ａ）は第
３実施例に係るガス排斥具の斜視図、図３（Ｂ）は図３
（Ａ）のＢ−Ｂ線断面図、図３（Ｃ）は図３（Ｂ）のＣ
−Ｃ線断面図である。

【図４】従来のディーゼルエンジンのうず室式燃焼室を
説明する図であり、図４（Ａ）は上記従来のうず室式燃
焼室の縦断面図、図４（Ｂ）は図４（Ａ）のＢ−Ｂ線断
面図である。

【符号の説明】

１…うず室、２…１の噴口、３…主燃焼室、４…燃料噴
射ノズル、５…ガス排斥具、６…４の噴射軸心、７…噴
射燃料、８…交点、９…噴射激突面部分、１０…うず
流、１７…５の軸心、１８…１０の中心軸。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ディーゼルエンジンのうず室(１)に噴口
   (２)を接線状に連通させ、その噴口(２)を介して主燃焼
   室(３)に上記うず室(１)を連通させ、そのうず室(１)に
   燃料噴射ノズル(４)を臨ませ、そ のうず室(１)内に柱形状のガス排斥具(５)を設けたデ
   ィーゼルエンジンのうず室式燃焼室において、上記ガス排斥具(５)の軸心(１７)を、上記うず室(１)内
   でのうず流(１０)の旋回の中心軸(１８)と一致させ、 上記うず流(１０)の旋回方向に沿って凹曲状となる噴射
   激突面部分(９)を上記ガス排斥具(５)に設け、 その噴射激突面部分(９)に上記燃料噴射ノズル(４)の噴
   射軸心(６)を直交させて、上記燃料噴射ノズル(４)から
   噴射された全ての噴射燃料(７)が上記噴射激突面部分
   (９)に激突 するように構成した、 ことを特徴とするディーゼルエンジンのうず室式燃焼
   室。