JP2635908B2 - 木質フィラー強化樹脂材料 - Google Patents

木質フィラー強化樹脂材料

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、木質フィラーを強化
材として使用した樹脂材料に関し、特に制振性に優れた
成形品となし得る強化樹脂材料に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車に関しては、快適な走行状
態の確保が要求されており、その中でも走行時における
車室内での静粛性が強く求められている。走行時の静粛
性を確保するには、エンジン及びその近傍の騒音の対策
が重要であるが、より静粛な走行を得るためには、車室
内の内装部品に用いる樹脂材料において制振性能を付与
することも重要である。
【0003】かかる制振性能を付与した樹脂材料とし
て、特開昭62−43443号公報、特開平4−153
242号公報に記載された発明がある。前者は、粘着性
付与材樹脂、熱可塑性エラストマ、ポリプロピレン樹脂
を混合したものであり、高温(40〜80℃)での制振
性に優れるが、機械的強度、耐熱性が不十分であった。
一方、後者は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹
脂、芳香族炭化水素樹脂及び無機フィラーを混合したも
のであり、樹脂の機械的強度及び高温での制振性は十分
得られているが、常温における制振性能が不十分であっ
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、これらの樹
脂材料は主としてエンジン周辺の部品に使用される樹脂
材料であって、特に高温での制振性能に着目して開発さ
れたものであるため、常温における制振性能が必要な内
装部品には適当でない。また、使用量の多い内装部品に
おいて機械的強度を向上させるには、安価な強化材によ
ることも望まれる。そこで、本発明は、常温における優
れた制振性能と機械的強度を有し、かつ安価に得ること
ができる木質フィラー強化樹脂材料を提供することを目
的とし、もって自動車用内装部品に適したものとするこ
とにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決する
ために、本発明者らは、安価な廃材である木質フィラー
に着目し、木質フィラーを強化材として用いて、常温で
の制振性能及び機械的強度に優れた強化樹脂材料を鋭意
検討した結果、良好な成果を得て本発明を創作した。す
なわち、本発明者らは、木質フィラーが20〜40重量
%(以下、単に%という)、グラフト変性ポリプロピレ
ン樹脂(以下、単に変性PPという)が36〜58%、
スチレン−イソプレンブロック共重合体(以下、単に共
重合体という)が2〜44%よりなり、かつ変性PPと
と共重合体の合計量が60〜80%であることを特徴と
する木質フィラー強化樹脂材料を創作した。また、前記
変性PPが、2%マレイン酸グラフト変性ポリプロピレ
ン樹脂であることを特徴とする木質フィラー強化樹脂材
料を創作した。
【0006】前記木質フィラーとは、木材を微粒に粉砕
したものであり、芯材(木材の芯部)を粉砕したもので
あってもよい。なお、木質フィラーは安価に得ることが
できるが、廃材を用いた場合は一層安価となし得る。樹
脂に機械的強度を付与する意味において、ヒノキ、ツガ
等の針葉樹を原料とするのが好ましく、また粒径は、樹
脂への機械的強度付与及び成形加工性の観点から例えば
0.05〜0.5mmが好ましい。0.05mm未満で
は、その他の材料との混合均一性が低下し、0.5mm
を越えると強化樹脂中における分散が不十分となるから
である。さらに、高い機械的強度補強効果を得るための
木質フィラーの粒径は0.05〜0.15mmが好まし
い。
【0007】本発明の強化樹脂材料における木質フィラ
ーの配合量は20〜40%である。木質フィラーの強化
樹脂材料における配合量が20%未満では樹脂の機械的
強度向上の効果が不十分であり、40%を越えると機械
的強度が十分であっても制振性能、耐衝撃性、成形加工
性に欠けるものになってしまうからである。
【0008】前記した変性PPとは、ポリプロピレン樹
脂を所定の条件でグラフト共重合させたものであって、
樹脂と木質フィラーとの接着性(相溶性)を高めたもの
をいう。木質フィラーによる機械的強度の補強効果を得
るためである。このような変性PPとしては、ポリプロ
ピレン樹脂の不飽和カルボン酸のグラフト共重合体があ
るが、特に、マレイン酸をポリプロピレン樹脂に対して
2%グラフト共重合させたもの(2%マレイン酸グラフ
ト変性ポリプロピレン樹脂、以下単にMPPという)が
好ましい。これらのもののメルトフローインデックスは
15〜50のものが好ましい。メルトフローインデック
スが15未満の場合は、成形加工性が低下し、50を越
えると、耐衝撃性の低下が著しくなるからである。
【0009】次に、共重合体としては、スチレンとイソ
プレンのブロック共重合体(いわゆるSIS構造(styr
ene-isoprene-styrene)のブロック共重合体)であっ
て、変性PPとの相溶性が良く、変性PPとの組み合わ
せにより常温域で制振性能を発揮できるものを用いるこ
とができる。そのような共重合体としては、分子量が1
25000〜135000のものが好ましい。
【0010】また、変性PPと共重合体は、樹脂材料中
に変性PPが36〜58%、共重合体が2〜44%で、
かつ変性PPと共重合体の合計量が60〜80%であ
る。変性PPが36%未満では、十分な機械的強度が得
られず、共重合体が2%未満では、常温域での制振性能
が発揮されないからである。また、変性PPと共重合体
との合計量が60%未満であると、機械的強度は十分で
あっても、変性PPによる制振性能、特に共重合体によ
る常温での制振性能が低下するとともに、耐衝撃性や成
形加工性が低下してしまう。
【0011】一方、変性PPが58%を越えると、機械
的強度は十分であるが、制振性能が発揮されないからで
ある。また、共重合体が44%を越えた場合は逆に、剛
性及び機械的強度が得られないからである。さらに、変
性PPと共重合体の合計量が80%を越えると、木質フ
ィラーによる樹脂材料の機械的強度の補強効果が得られ
ないからである。すなわち、36〜58%の変性PPと
2〜44%の共重合体とを、両者の合計量が60%以上
80%未満となるように混合することにより、常温での
制振性能に優れ、かつ機械的強度も十分な樹脂材料を得
ることができる。
【0012】なお、本発明の強化樹脂材料には、前記成
分以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、核
剤、顔料、難燃剤、増量剤、加工助剤等の各種添加剤を
混合することができる。
【0013】次に、上記組成物は、一軸押出機、二軸押
出機、ニーダー、ブラベンダー、バンバリーミキサー等
の通常の混練機を用いて製造することができる。通常は
各配合成分を所定の割合にてダンブラー式ブレンダー、
ヘンシェルミキサー等により混合し、その後押出機等で
混練してペレット状コンパウンドとなし、その後所望す
る自動車用内装部品に成形加工する。
【0014】また、混練にあたっては、予め変性PPと
木質フィラーを押出機で溶融混練し、その混練組成物と
共重合体を混練押出しする2ステージ法を用いることも
できる。
【0015】本発明にかかる木質フィラー強化樹脂材料
は、例えば自動車のボディ及びボディに取り付けられて
いる部品に取り付ける樹脂成形品として用いるものであ
る。具体的には、樹脂成形品としてはインストルメント
パネル、カバー、パネル、ボックスなどに用いられる。
【0016】
【作用】上記構成によれば、樹脂材料のベースポリマー
である変性PPに木質フィラーが混合されて機械的強度
が付与され、また共重合体が配合されることにより、常
温における制振性能が向上する。
【0017】
【実施例】以下に、本発明を具現化した一実施例につい
て説明する。本例の木質フィラー強化樹脂材料は、木質
フィラーとして、ツガ材の芯材の木粉で粒度0.05〜
0.15mmのものを用い、変性PPとして、MPP
(三井東圧化学株式会社製、BJ5Hグレード、MI:
20)を用い、共重合体として、株式会社クラレ製、ハ
イブラーVS−1グレードを用いた。各配合成分を、表
1の所定の配合割合に基づいて前記した方法により混
合、混練して実施例の樹脂材料を調製した。また、比較
対照のために上記配合成分を用いて表1の所定の配合割
合に基づいて比較例1〜3の樹脂材料を調製した。
【0018】
【表1】
【0019】これらの樹脂材料につき、以下に示す諸項
目につき試験を行い、物性評価を行った。結果を表1に
示す。 引っ張り強度及び引っ張り伸び JIS K7113に従って試験を行った。 曲げ強さ及び弾性率 JIS K7203に従って試験を行った。 アイゾット衝撃強度 JIS K7110に従って試験を行った。 損失係数 ASTM〔E756−83〕に従って試験を行った。
【0020】表1から明らかなように、実施例の樹脂材
料は、引っ張り強度、曲げ強さ及び曲げ弾性率、常温で
の制振性を示す20〜40℃での損失係数に優れた値を
示し、バランスの取れた樹脂材料となっている。すなわ
ち、比較例1及び比較例3との比較から、木質フィラー
による引っ張り強度、曲げ強さ及び曲げ弾性率の向上、
木質フィラーによる機械的強度の補強効果が明らかであ
る。
【0021】また、比較例1、比較例2及び比較例3と
の比較対照から、共重合体の混合による20〜40℃で
の損失係数の向上が明らかである。そして、実施例にお
いては、共重合体の混合により木質フィラーの混合によ
る引っ張り伸び及びアイゾット衝撃値が使用できる程度
に維持されたものとなっている。
【0022】このように木質フィラーを最大40%と
し、MPPと共重合体をそれぞれ42%及び18%とす
ることにより、機械的強度を有するとともに特に20〜
40℃における損失係数が向上された強化樹脂材料とな
っている。
【0023】次に、この強化樹脂材料を用いて成形した
レゾネータについて説明する。レゾネータとは、エンジ
ンの吸気騒音を低減させるためのものであって、150
〜350HZ の周波数内での制動減衰性能が要求される
ものである。このレゾネータは、図2に示すように中空
の容器状に形成されて自動車のボディに機械的に取り付
けられる。
【0024】かかるレゾネータを、本例の樹脂材料と比
較例1の樹脂材料(MPP樹脂100%)から、シリン
ダ温度180℃で、金型温度約30℃にて、所定の形状
に成形し、本例のレゾネータと比較例4のレゾネータ試
料を調製した。これらを、図2に示す加振点イナータン
ス測定系により、恒温室(23℃)内にて、同一条件下
で図2に示す加振点Pにおけるイナータンスを測定し
た。その結果を、図1に示す。
【0025】図2から明らかなように、比較例4に対し
て実施例のレゾネータでは150〜350HZ の周波数
における振動レベルにつき5〜15dbの低減効果が観
察され、実施例の樹脂材料が実際の樹脂成形品において
も制振性能を発揮することを確認できた。
【0026】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
安価な木質フィラーを利用して、変性PPに機械的強度
を付与するとともに、共重合体を配合することにより、
機械的強度を有するとともに常温での制振性能に優れた
樹脂材料を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の強化樹脂材料及び比較例の樹脂材料を
用いて成形したレゾネータの加振点における各周波数に
おける振動レベルを示すグラフ図である。
【図2】レゾネータ及び加振点イナータンス測定系の図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 53/02 LLY C08L 53/02 LLY

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】木質フィラーが20〜40重量%、グラフ
    ト変性ポリプロピレン樹脂が36〜58重量%、スチレ
    ン−イソプレンブロック共重合体が2〜44重量%より
    なり、かつグラフト変性ポリプロピレン樹脂とスチレン
    −イソプレンブロック共重合体の合計量が60〜80重
    量%であることを特徴とする木質フィラー強化樹脂材
    料。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記グラフト変性ポリ
    プロピレン樹脂が2%マレイン酸グラフト変性ポリプロ
    ピレン樹脂であることを特徴とする木質フィラー強化樹
    脂材料。
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CN107793687A (zh) * 2017-09-26 2018-03-13 苏州市木包装材料有限公司 一种耐老化木塑包装材料及其制备方法

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