JP2631866B2 - ピリミジン類の製造法 - Google Patents

ピリミジン類の製造法

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、分子状酸素の存在下、1,4,5,6−テトラヒ
ドロピリミジン類を金属酸化物を含む触媒上、気相にて
酸化脱水素してピリミジン類を製造する方法に関する。
ピリミジン類は医、農薬の原料として有用なものであ
る。
従来の技術 従来、ピリミジンを気相で製造する方法としては、次
の方法が公知である。
(1)1,3−ジアミノプロパンとメタノールおよび/
又は一酸化炭素をアルカリ金属で促進されたパラジウム
触媒を用い気相で反応させピリミジンを製造する方法、
および(2)2−メチルピリミジンをバナジウム系触媒
の存在下、気相脱アルキルしてピリミジンを製造する方
法。
さらにアルキルピリミジン類を気相で製造する方法と
しては、次の方法が公知である。
(3)1,3−ジアミノプロパンとアルデヒド類とをア
ルミナに白金およびロジウムを担持した触媒を使用し、
気相環化して2−アルキルピリミジン類を製造する方
法。および(4)酸素の不存在下、アルミナ等に白金あ
るいはパラジウムを担持した触媒を用い2−アルキルテ
トラヒドロピリミジンを脱水素して2−アルキルピリミ
ジン類を製造する方法。
発明が解決しようとする課題 前記(1)の従来方法(特開昭61−103875)はピリミ
ジン収率が28%と低く工業的に満足出来るものではな
い。又、前記(2)の従来方法(EP137,567)は原料で
ある2−メチルピリミジンが高価なうえ、反応率が75
%、ピリミジン選択率が55%であり、2−メチルピリミ
ジンからのピリミジン収率に換算すると41%(反応率×
選択率)と低く、この方法も工業的に満足出来る方法で
はない。
又、前記(3)の従来方法(薬学雑誌97(4)373〜3
81(1977))は触媒として高価な白金およびロジウムを
使用しなければならない欠点を有する。さらに前記
(4)の従来方法(特開昭59−164757)も(3)の従来
法と同様に触媒として白金又はパラジウムを使用しなけ
ればならない欠点を有する。
課題を解決するための手段 本発明者らは工業的に満足出来るピリミジン類の製造
法について鋭意検討した結果、分子状酸素の存在下、1,
4,5,6−テトラヒドロピリミジン類を気相にて酸化脱水
素すれば白金、パラジウム又はロジウム等の高価な貴金
属触媒を使用しなくとも、例えば酸化バナジウム等の酸
化物触媒にて貴金属を用いた従来方法と同等もしくはそ
れ以上の収率でピリミジン類が得られることを見出し
た。
すなわち、本発明は分子状酸素の存在下、式(I)で
示される1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン類を 式; 金属酸化物を含む触媒上、気相にて酸化脱水素して式
(II)で示される、ピリミジン類を (式中R1,R2,R3およびR4は前述に同じ) 製造する方法に関する。
本発明の方法は気相で分子状酸素の存在下、1,4,5,6
−テトラヒドロピリミジン類を酸化能力を有する触媒に
接触させて、酸化脱水素を行い高収率でピリミジン類を
得るものである。後述の比較例に示すごとく、分子状酸
素の不存在下で反応を行うとピリミジン収率は22.1%と
本発明の酸化脱水素に比べて極めて低い。
本発明における1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン類
と分子状酸素のモル比は水生成反応の理論量以上であれ
ばよいが、理論量以下で実施してもよい。好ましい1,4,
5,6−テトラヒドロピリミジン類と分子状酸素のモル比
は1:1〜5である。分子状酸素としては通常空気を使用
するが、純酸素あるいは空気との混合物も使用できる。
本発明の方法は、希釈剤を使用しないでも実施できる
が、窒素、アンモニア、ヘキサン、シクロヘキサン、ピ
リジン等で希釈しても実施できる。好ましい希釈剤とし
ては窒素、アンモニア、ピリジン等があげられる。
反応供給ガス中の1,4,5,6−テトラヒドロヒドロピリ
ミジン類の濃度は0.5〜20モル%が好ましい。
本発明における反応温度は300〜600℃であり、好まし
くは350〜550℃である。空間速度(以下SVという)は10
0〜20,000Hr-1であり、好ましくは300〜15,000Hr-1であ
る。
本発明における1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン類
は工業的には1,3−ジアミノプロパン類とアルデヒド類
あるいはカルボン酸類との環化反応によって容易に製造
できる。
式(I)および式(II)におけるR1,R2,R3,R4はそれ
ぞれ水素原子または炭素数1から6までの炭化水素基を
示し、当該炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プ
ロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、
ヘプチル基、ヘキシル基などがあげられる。
1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン類としては例えば
1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、2−メチル−1,4,
5,6−テトラヒドロピリミジン、2−エチル−1,4,5,6−
テトラヒドロピリミジン、2−イソプロピル−1,4,5,6
−テトラヒドロピリミジン、2−t−ブチル−1,4,5,6
−テトラヒドロピリミジン、4−メチル−1,4,5,6−テ
トラヒドロピリミジン、5−メチル−1,4,5,6−テトラ
ヒドロピリミジン、6−メチル−1,4,5,6−テトラヒド
ロピリミジン等があげられる。
本発明における金属酸化物を含む触媒は一般的に知ら
れている酸化用触媒ならいずれも使用できる。好ましい
金属酸化物としてはバナジウム、クロム、スズ、アンチ
モン、モリブデン、タングステンおよびビスマスの中か
ら選ばれる元素の酸化物があげられ、またこれらの酸化
物の2種以上の組合せからなる触媒である。
本発明における触媒の調整には一般に知られている調
製方法が適用出来る。例えば触媒の構成元素の化合物を
水あるいは有機化合物の存在下、混合し、蒸発乾固した
のち空気存在下焼成する。焼成温度は400〜1,000℃が好
ましい。
本発明における触媒は、担体を用いてもよく、特にシ
リカ、アルミナ、シリカアルミナ、炭化ケイ素、酸化チ
タン、ケイソウ土およびゼオライトが好ましい。担体の
量は特に制限はないが、触媒に対して10〜90%が好まし
い。
本発明における触媒は他の元素を含有していてもよ
い。他の元素としては鉄、コバルト、銅、ジルコニウ
ム、亜鉛、タリウム、ニッケル、ニオブ、セリウム、マ
ンガン、ホウ素、セシウム、ナトリウム、リチウムある
いはリン等があげられる。
反応は通常常圧で行われるが減圧あるいは加圧下にお
いても実施することができる。反応器は通常固定床で行
えるが、流動床あるいは移動床を用いることもできる。
次に実施例により本発明を説明する。
なお、反応率および収率は次の定義に従って計算し
た。
実施例−1 80〜90℃に加温された水35ccにシュウ酸(COOH)
2H2O43.3gを加え溶解させ、これに五酸化バナジウム17.
3gを徐々に加えシュウ酸バナジル溶液を得た。
シュウ酸(COOH)・2H2O71.3gを水63ccに加え、加
熱しながら三酸化クロムCrO319.0gを徐々に加えシュウ
酸クロム溶液を得た。
更にホウ酸H3BO35.9gを水350ccに加え60〜70℃に加熱
し溶解させてホウ酸水溶液を得た。これら3種類の溶液
を混合して得られた混合液にシリカゾル20%水溶液173.
4gを加え、よく撹拌しのち、濃縮、乾燥した。乾燥物を
空気存在下250℃で12時間、さらに550℃で12時間焼成
し、酸化物触媒を得た。得られた触媒中の、バナジウ
ム、クロム、ホウ素、ケイ素の含有比率はV1Cr1B0.5Si3
であった。この触媒10ccを内径12.6mmφのパイレックス
製反応管に充填し、反応管の触媒充填部を380℃に保持
したところに1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、窒素
及び空気のモル比を1:20:10に混合したガスを、SV1,800
Hr-1で通し、反応ガスを水に20分間吸収させ捕集し、ガ
スクロマトグラフィーで分析したところ、反応率100%
およびピリミジン収率71.0%であった。
比較例 空気を使用せず且つSVを1,220Hr-1とする以外は実施
例−1と同様にして反応を行なった。その結果は反応率
100%およびピリミジン収率22.1%であった。
実施例−2 水600ccに三酸化アンチモンSb2O360g、メタバナジン
酸アンモンNH4VO324g、85%リン酸H3PO423.7gシリカゲ
ルSiO274gを混合した懸濁液に56.5%硝酸HNO3を加えた
のち、撹拌しながら85〜90℃で2時間反応させた。反応
液をアンモニア水でpH5としたのち濃縮、乾燥した。乾
燥物を空気存在下500℃で6時間、さらに700℃で4時間
焼成し、酸化物触媒を得た。得られた触媒中のアンチモ
ン、バナジウム、リン、ケイ素の含有比率はSb2V1P1Si6
であった。この触媒10ccを実施例−1と同様に反応管に
充填し、触媒充填部の温度を400℃に保持したところに
1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、アンモニア及び空
気のモル比を1:15:10に混合したガスをSV900Hr-1で通
し、実施例−1と同様に反応ガスの捕集およびガスクロ
マトグラフィー分析を行なったところ、反応率100%、
およびピリミジン収率95%であった。
実施例−3 水25ccに85%リン酸H3PO460.1g、三酸化モリブデンM0
O350g、パラタングステン酸アンモン5(NH42O・12WO
3・5H2O45.4gおよび20%アルミナゾル13.3gを加え、よ
く撹拌しながら85℃に加熱し2時間反応させたのち濃
縮、乾燥した。乾燥物を空気存在下550℃で5時間焼成
し、酸化物触媒を得た。得られた触媒中のモリブデン、
タングステン、リン、アルミニウムの含有比率はMo2W1P
3Al1.5であった。
この触媒を用い、触媒充填部の温度を450℃、SVを1,0
00Hr-1とする以外は実施例−1と同様に反応、反応ガス
の捕集およびガスクロマトグラフィー分析を行なったと
ころ、反応率100%およびピリミジン収率91.0%であっ
た。
実施例−4 水300ccにモリブデン酸アンモニウム(NH46Mo7O24.
4H2O127.4gを加熱し溶解した。その溶液を撹拌したとこ
ろに硝酸ビスマスBi(NO335H2O29gを67.5%硝酸HNO36
cc、水30ccに溶かした溶液、硝酸コバルトCo(NO3)・6
H2O70gを水20ccに溶かした液さらに硝酸鉄Fe(NO3
・9H2O24.3gを水20ccに溶かした溶液の3種類を混合し
た混合液を徐々に加えたのち、濃縮、乾燥した。乾燥物
を空気存在下450℃で6時間焼成し、酸化物触媒を得
た。得られた触媒中のモリブデン、ビスマス、鉄、コバ
ルトの含有比率はMo12Bi1Fe1Co4であった。この触媒を
用い、触媒充填部の温度を420℃、SVを1,000Hr-1とする
以外は実施例−1と同様に反応し、反応ガスの捕集およ
びガスクロマトグラフィー分析を行なったところ反応率
100%およびピリミジン収率83.2%であった。
実施例−5 67.5%硝酸180gに金属スズ粉末35.6gを溶かした。そ
の溶液に67.5%硝酸60gを加え、金属アンチモン7.3gを
溶かした。黄褐色のガスの発生がなくなったらこのスラ
リーをろ過し水で充分に水洗した。この沈殿物に20%シ
リカゾル181.5gを加え、撹拌しながら濃縮、乾燥した。
乾燥物を空気存在下900℃で2時間焼成し酸化物触媒を
得た。得られた触媒中のスズ、アンチモン、ケイ素の含
有比率はSn5sb1Si10であった。
この触媒を使用し、触媒充填部を400℃、SVを1,200hr
-1とする以外は実施例−2と同様に反応し、反応ガスの
捕集およびガスクロマトグラフィー分析を行なったとこ
ろ反応率100%、ピリミジン収率70.5%であった。
実施例−6 水200ccに85%リン酸H3PO463gを95〜100℃に加熱した
ところに、五酸化バナジウムV2O550gを加えて、黄色沈
殿が析出した反応液を得た。この反応液を濃縮、乾燥し
たのち、空気存在下500℃で8時間焼成し酸化物触媒を
得た。得られた触媒中のバナジウムとリンの含有比率は
V1P1であった。この触媒を使用し、触媒充填部の温度を
400℃、SVを750hr-1とする以外は実施例−1と同様に反
応し反応ガスの捕集およびガスクロマトグラフィー分析
を行なったところ、反応率100%およびピリミジン収率9
2.5%であった。
実施例−7 実施例−6の触媒を用い、2−t−ブチル−1,4,5,6
−テトラヒドロピリミジン、ピリジン、アンモニア及び
空気のモル比を1:5:15:12に混合したガスを、SV600Hr-1
で通す以外は実施例−1と同様に反応し、反応ガスの捕
集およびガスクロマトグラフィー分析を行なったところ
2−t−ブチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンの
反応率は100%、および2−t−ブチルピリミジン収率8
5.3%であった。
発明の効果 本発明方法を実施することにより、医、農薬の原料と
して有用なポリミジンが、白金、パラジウム又はロジウ
ム等の高価な触媒を使用しなくても例えば収率70%以上
という格段に高い収率で得られ、従来法に比べて工業的
に有利に製造することができる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】分子状酸素の存在下、式(I)で示される
    1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン類を 式; 金属酸化物を含む触媒上、気相にて酸化脱水素して、式
    (II)で示されるピリミジン類を 式; (式中、R1,R2,R3およびR4は前述に同じ) 製造する方法。
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