JP2621909B2 - 改良された収縮性と捲縮特性を有するアクリル系複合繊維集合体 - Google Patents

改良された収縮性と捲縮特性を有するアクリル系複合繊維集合体

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JP2621909B2 JP63052070A JP5207088A JP2621909B2 JP 2621909 B2 JP2621909 B2 JP 2621909B2 JP 63052070 A JP63052070 A JP 63052070A JP 5207088 A JP5207088 A JP 5207088A JP 2621909 B2 JP2621909 B2 JP 2621909B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は改良された収縮性と捲縮特性を有するアクリ
ル系複合繊維集合体、特に共重合組成を異にする2種の
アクリル系重合体(以下、アクリル系ポリマという)の
多層構造化による収縮性とソフトなバルキー性を有する
アクリル系複合繊維集合体に関する。
[従来の技術] 従来,アクリル系複合繊維を二次延伸して高収縮化
し、潜在的な収縮性能と捲縮性能を向上させる、いわゆ
る高収縮性アクリル系複合繊維は公知である(例えば特
公昭41−11660号,特公昭42−27584号,特公昭45−3905
9号各公報)。
しかし、このような方法で複合繊維の高収縮化を図る
べく、延伸倍率,就中,二次延伸倍率を大きくとると,
必然的に収縮性能は向上するが結節強度が低下し、この
ため該繊維の紡績,特にカーディング時に風綿が多発し
たり、タフティング時に糸切れする等はよく知られた事
項である。
また複合繊維の二次延伸倍率の上昇は、潜在捲縮の発
現性が顕著に高くなり,発現捲縮数が必要以上に増大す
ると共に発現捲縮度が相対的に大きく低下するため“ち
ぢれ捲縮”になり易い。このことが反って繊維の風合を
硬くかつやせた外観と為すため複合繊維製品としての評
価を著しく低下させるという問題があったのである。
このように従来のアクリル系複合繊維は嵩高性製品と
なすために必要な高い収縮率を与える条件に関しては捲
縮発現数が過大になり、一方,捲縮の発現を適正な範囲
に限定する条件のもとでは収縮率が低くなって最終製品
に必要で充分な嵩高性が得られないなどの欠点を有して
いた。
このような問題に対して、更に特公昭51−32729号公
報により、前記の二次延伸法のみでは達成し得なかった
捲縮数と収縮率の適正範囲を満足し得る領域を、二次延
伸と三次延伸とを適宜組み合せて捲縮の発現性を抑制す
ることが提案されている。
しかし、上記の手段によって得られた複合繊維は、従
来の複合繊維に比較して収縮性や嵩高性がある程度改良
されるというものの,その製糸段階の乾燥緻密化後に,
延伸を二次,三次と多段延伸を行なっているため、発現
捲縮数をソフトな風合を得るのに適した範囲となるよう
制御しながら,高収縮化を図ることが非常に困難であっ
た。また多段延伸の採用によって物性低下,特に結節強
度の低下が起り、紡績性が不良になるばかりか、バイメ
タル型複合繊維では不可避の染めムラが発生し、特にこ
の傾向は複合ポリマ間の共重合組成差を大きくとればと
るほど顕著である等の問題があった。
[発明が解決しようとする問題点] かかるアクリル性複合繊維の高収縮化における問題
点、特に高収縮化のための二次延伸に伴う結節強度の低
下や染めムラの問題、並びに高収縮化後において顕著に
発現する捲縮のため風合が硬くかつやせた外観を呈する
等の問題に対して、本発明者らの先の提案に係るアクリ
ル系繊維の多層化複合技術(特公平7−109041号)に比
し、潜在発現収縮率および潜在発現応力を大きくするこ
とにより、前記の諸問題が一挙に解決できることを見出
し本発明に至ったのである。
すなわち、本発明の目的はアクリル系複合繊維の高収
縮化に伴う収縮性と捲縮発現性とのバランス,二次延伸
における結節強度の低下,染めムラの問題,並びに風合
が硬くかつやせた外観を呈する(所謂,セミの羽根現
象)等の諸問題を解消し、以て紡績性の良い,潜在的に
バルキーでソフトな風合を有するアクリル系繊維製品を
得るのに適したアクリル系複合繊維集合体を提供するこ
とにある。
[問題点を解決するための手段] このような本発明の目的は、共重合組成を異にし、共
重合成分量の差が1〜10モル%である2種のアクリル系
重合体の1成分重合体が他の成分重合体中に、繊維表面
の内部を形成せしめるよう、繊維軸方向に沿って非対称
に分配された多層複合構造を持つ単繊維から構成され、
かつ平均4層以上に接合され、捲縮発現処理および1.3
〜1.6倍の二次延伸処理が施された繊維集合体であっ
て、潜在的に、次式(I)で定義される沸水における収
縮率が10〜25%、次式(II)で定義される捲縮発現数が
10〜20山/25mmである能力を有し、かつ結節強度1.3g/d
以上であることを特徴とする改良された収縮性と捲縮特
性を有するアクリル系複合繊維集合体。
沸水における収縮率(%)={(A−B)/A}×100
(I) A:単繊維試料の沸水処理前100mg/d荷重下での長さ B:該単繊維試料の沸水処理後300mg/d荷重下での長さ 捲縮発現数(山/25mm)=25a/b (II) a:沸水処理後単繊維試料の2mg/d初荷重下での捲縮数 b:該単繊維試料の2mg/d初荷重下での長さによって達成
することができる。なお、本発明において、単繊維中の
平均層数は次のとおりの方法で求められる値をいう。
試料繊維を任意に100本取り出し、単繊維中の層数を
切片法により光学顕微鏡NIKON BIOPHOTOで位相差条件
で観察して各単繊維の層数を数え平均層数とする。
すなわち、本発明繊維における多層複合構造とは、第
1図の多層複合繊維の部分横断面写真が示すように,複
合繊維を構成する2種の成分ポリマのうち,1成分ポリマ
が他の成分ポリマ中に1層以上に分配され、かつこの分
配されたポリマは繊維表面の一部を形成して、繊維軸の
長手方向に沿って非対称に連続した構造をとることを意
味し、バイメタル構造あるいは芯鞘構造をとる従来の複
合繊維とは複合構造を全く異にするものである。
このような多層複合構造は、多層化層数が増大すると
最終的には単一ポリマ様に完全混合され複合繊維となら
ないため、潜在捲縮発現能および潜在捲縮数を制御する
際,極めて有効に利用できる。しかも高収縮化を図るべ
く二次延伸倍率の増大に対しても、共重合成分量が多く
延伸能に優れているアクリル系重合体層(高収縮成分
側)が有効に働き、二次延伸後の結節強度などの低下が
抑制できる。
このように捲縮発現性に敏感なバイメタル構造に比較
して、多層複合構造は多層を形成しているポリマ組成と
製糸段階における諸条件との結合によって、予想以上に
収縮能と機械的物性と潜在捲縮発現能とをバランスよく
制御できるばかりか、該複合繊維を構成するポリマ組成
にかなり差異があっても該多層複合構造にもとづき染め
ムラが減少することが判明した。
本発明の多層複合繊維集合体は、2種の成分ポリマの
うち,1成分ポリマを他の成分ポリマを積層し、層数が4
層以上,好ましくは25層以下,さらに好ましくは8〜20
層となるように,かつ繊維軸の長手方向に沿って連続化
した構造を形成させる。理想的にはこのような層状複合
構造をとる単繊維のみで全繊維を構成させるべきである
が、実際的には必ずしも繊維を構成する単繊維の全てが
上述の複合構造をとらずともよく、多層化装置による複
合ポリマ成分の単糸中理論層数や,得られた繊維の後処
理条件などを選択特定することによって、十分優れた収
縮性能と物性と捲縮発現性を兼ね備えた繊維とすること
の方が望ましい。
また、本発明繊維は沸水中における収縮率が10〜25
%,好ましくは10〜20%,捲縮発現数が10〜20山/25mm
の範囲内にバランス良く保持させると共に、該繊維の結
節強度が1.3g/d以上とする必要がある。その理由は、該
繊維の沸水中における収縮率が10%よりも小さいと,ア
クリル系複合繊維を嵩高性製品になすために必要な捲縮
発現数を得ることができない。一方、該収縮率が25%を
超えると,高収縮化に伴って製品がやせると共に,捲縮
発現数が多くなり製品風合が硬くなる。さらにこのよう
な収縮率となるには二次延伸倍率が高くなり、この結
果,結節強度が1.3g/dより小さくなって紡績性が顕著に
低下するなどの不都合が生じる。
また、該繊維の捲縮発現数が10山/25mm未満では、最
終製品の嵩高性が不足する。一方、20山/25mmを超えて
も,反って最終製品の嵩高性を阻害して粗硬な風合にな
るという欠点が生じる。
なお、該繊維は二次延伸後の均染度も大巾に向上し、
従来のバイメタル状の複合繊維における染色ムラの発現
し易い欠点が著しく改善されるのである。
ここでいう沸水中における収縮率,捲縮発現数および
結節強度は次のように定義される。
沸水中における収縮率(%): (a)窓空き滑沢紙(窓空き部分:20〜100mm)の両端部
に単繊維を接着剤で貼付し、100mg/dの荷重をかけ、ピ
カ精工(株)製読取顕微鏡で試料長(A)を測定する。
(b)上記試料をガラス管に入れ、沸水中で処理(98℃
×60分)し、冷却,乾燥後,300mg/dの荷重下(発現した
巻縮が伸された状態)において読取顕微鏡で試料長
(B)を測定する。
(c)次式に従って収縮率(n=10の平均値)を算出す
る。
収縮率(%)={(A−B)/A}×100 A:原試料の長さ B:処理後の長さ 捲縮発現数(山/25mm): JIS−L1015に準じ、沸水処理による捲縮発現後の単繊
維を2mg/dの初荷重下で捲縮数a(山)および単繊維長
b(mm)を測定し、これから次式に従って捲縮発現数を
算出する。
結節強度(g/d): JIS−L1015に準じて測定する。
次に本発明繊維の製造例について述べる。
本発明におけるアクリル系ポリマとしては、公知の繊
維形成性を有するアクリル系ポリマ、即ち,30モル%以
上のアクリロニトリル(以下、ANと略称)を含有するモ
ダクリル系ポリマや、80モル%以上のANを含有するアク
リル系ポリマおよびそれらのコポリマであればよく,特
に限定されるものではないが、多層複合繊維における複
合ポリマとして,二次延伸後の物性,収縮性,捲縮発現
性および均染性などの面から2種のポリマを選択すると
き、二次延伸後の物性,特に結節強度の低下を抑制する
ため複合ポリマの高収縮成分側のポリマの共重合成分量
は5モル%以上,好ましくは7モル%以上が望ましい。
またポリマ間の共重合成分量の差が約1〜10モル%,好
ましくは1〜5モル%のものとする。この共重合量の差
が1モル%未満であると,沸水中での捲縮発現性が低下
し易く、一方,10モル%を越えると二次延伸後に繊維の
均染性が低下したり、また製品風合に適正な捲縮発現特
性が得られない等,不都合な問題が生じる可能性があ
る。
また、このアクリル系ポリマの共重合成分には、例え
ば,アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの低級アル
キルエステル類、イタコン酸、アクリルアミド、メタク
リルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、塩化
ビニリデン等のビニル系化合物の外に、ビニルスルホン
酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチ
レンスルホン酸等の不飽和スルホン酸およびそれらの塩
類などの酸性モノマ類の同種または異種を用いることが
できる。
上記アクリル系ポリマは、ジメチルホルムアミド,ジ
メチルアセトアミド,ジメチルスルホキシド(以下、DM
SOと略称)などや、ロダンリチウム,ロダンカリウム,
ロダンナトリウムなどのアルカリ金属のロダン塩、ロダ
ンアンモン、塩化亜鉛,過塩素酸塩などの有機溶剤や無
機溶剤に適宜溶解し、ポリマ濃度が約10〜25重量%の紡
糸原液とする。その複合されるべき2種のポリマの紡糸
原液は多層化装置に供給して層分割し、しかる後通常の
紡糸口金孔から凝固浴中に吐出する湿式、または該紡糸
口金孔から一旦空気または不活性雰囲気中に吐出した
後,凝固浴に導入する乾湿式紡糸法などによって繊維化
される。
第2図は本発明繊維の製糸段階での工程要件を説明す
るためのフローシートである。図中,A,Bは複合ポリマの
紡糸原液、1は複合ポリマの紡糸原液を個別に流入させ
るための案内装置、2は多層化装置、3はフィルター、
4は紡糸口金、5は繊維糸条の捲縮発現装置、6は捲縮
発現装置5により発現させた捲縮を一旦除去し、潜在的
な収縮性能と捲縮発現性能を向上させるための二次延伸
装置である。
この本発明繊維の製糸段階で特に留意すべきことは、
先ず複合ポリマの紡糸原液を該多層化装置によって十
分,かつ安定に層分割し、得られた多層化状態を紡糸口
金孔に至るまで,安定に維持することである。
すなわち、多層化装置内で充分に多層化するには、単
糸中理論層数で,4層以上、好ましくは25層以下さらに好
ましくは8〜20層の範囲に層分割した後、単一紡糸口金
へ導入することである。
この単糸中理論層数は、多層化装置内の構造、即ち,
多層化エレメントの積層段数と配列,ねじり羽根のねじ
り角度,通路管数、並びに紡糸口金のホール数などで適
宜制御すればよい。
この範囲内の単糸中理論層数に維持することによっ
て、得られる繊維の前記高収縮性に起因する高い捲縮発
現性を制御できるばかりか、紡績上で必要な物性や,均
染性の優れた繊維とすることが初めて可能となるのであ
る。
ここでいう単糸中理論層数とは、紡糸口金の紡糸孔当
りの統計的平均流入原液層数を表わし、完全層流域では
理論的に単繊維中に入り得ると考えられる層数の理論値
で,次式により求めることができる。
上式中、Kは紡糸口金の外郭形態により定まる定数で
あり、方形状口金ではKの値は1であり、円形状の口金
ではKの値は1.1になる。
次に、複合ポリマの紡糸原液を多層化装置内で安定に
多層化するには、この紡糸原液間の粘度差を60℃におい
て50ポイズ以下とするのが望ましい。この粘度差を50ポ
イズ以下とすることで,多層化装置内で流線が乱れ難
く,層状に分割された多層状態がより安定化するのであ
る。この際、多層化装置内ではレイノルズ数が小さく、
0.2以下となっている。
該紡糸原液を多層化装置に供給するに際しては、複合
させる紡糸原液を一旦合流した後に,多層化装置へ供給
するのではなく、複合させる2種の各紡糸原液が互いに
混合されないよう,第2図に示すように多層化装置の流
入口に設けた原液案内装置(流入口)にて個別に流入さ
せることが望ましい。このような紡糸原液の流入手段
は、単に多層化エレメントを1個減少させた効果とは全
く異なり、多層化装置内での多層化を確実かつ安定に行
なわせるのである。
さらに該多層化装置は第3図に示すように多層化エレ
メントのピッチ(L/D)を0.8〜2.5,特に1.4〜2.0の範囲
内とするのが望ましい。このピッチが0.8〜2.5から外れ
ると該多層化装置内で多層化された紡糸原液の流線が乱
れて混合され易く、多層化状態が不安定になり勝ちとな
る。
ここに用いる多層化装置には、例えば,東レ(株)製
の“ハイミキサー”、ノリタケ(株)製の“スタティッ
クミキサー”、桜製作所(株)製の“スケヤミキサ
ー“、特殊化工機械(株)製の“ロスISGミキサー”な
どを挙げることができる。
これらの多層化装置の中でも構成エレメントが複雑で
なく、紡糸原液の流動抵抗が比較的小さく、しかも紡糸
原液流路における有効断面積の変化が少ない、換言すれ
ば,装置内で紡糸原液の異常滞留が生じ難い“スタティ
ックミキサー",“スケヤミキサー”が好ましく使用され
る。
上記多層化装置で所定範囲に層分割された紡糸原液
は、通常の単一紡糸口金に導くが、本発明においては多
層化装置と紡糸口金との間に特定のフィルターを介在さ
せることが不可欠となる。すなわち、このフィルターに
は目開きが10μ以上,好ましくは20〜50μのものが用い
られる。このフィルターは目開きが小さくなればなる
程,紡糸原液のフィルター効果ないし紡糸性は向上する
が、その反面,紡糸原液はフィルターでの混合あるいは
撹乱効果により先の多層化装置による層分割が保持でき
なくなる。従って、フィルターの目開きを10μ以上とす
るのである。
このフィルターの濾材として、ポリエステル,ポリア
ミドなどの紗織物や、ステンレス性の金網などの格子状
物が好ましく採択されるのも主に上述した層分割後の混
合ないし撹乱防止のためである。
フィルターを通った上記紡糸原液は、単一紡糸口金孔
に分配され、前記有機溶媒または無機溶媒の水溶液を凝
固剤とする凝固浴中に吐出される。
その際、紡糸口金から吐出されたポリマ溶液は直接凝
固浴中に導入(湿式紡糸法)してもよいし、また紡糸口
金を凝固浴液面上約2〜20mmの位置に設け、その口金孔
から吐出された該紡糸原液を紡糸口金孔と凝固液面との
間の微小空間を走行させた後、凝固浴中に導入する,所
謂乾湿式紡糸法によってもよい。
なお、本発明繊維が乾式紡糸法によっても繊維化でき
るのは勿論である。
凝固浴より導出された凝固糸条は、水洗または水洗と
同時に延伸、延伸後水洗、または水洗後延伸などの処理
を施した後、乾燥緻密化させるが、本発明においてはこ
の乾燥緻密化後に捲縮発現処理および二次延伸処理を施
すことが不可欠となる。
すなわち、捲縮発現処理は蒸熱下,弛緩状態で行なう
が、その際の蒸熱処理温度は105℃以上,特に108〜125
℃とするのが望ましい。この蒸熱処理によって初めて繊
維糸条の潜在捲縮が十分に発現できるのである。
また、二次延伸処理は先の捲縮発現処理によって十分
発現させた捲縮を一度潜在化させると共に,高収縮化を
図るために行なうものであるが、この二次延伸条件とし
ては前記捲縮発現処理時における熱処理温度よりも低温
で二次延伸するのが望ましく、通常,80〜115℃の湿熱ま
たは蒸熱下で行なう。この捲縮発現処理時における熱処
理温度よりも低温で行なう二次延伸によって、収縮率が
高くなるのである。またこの際の二次延伸倍率は1.3〜
1.6倍,好ましくは1.3〜1.5倍の範囲とする。
この二次延伸倍率の範囲に維持することによって、得
られる繊維を紡績性が良い結節強度に維持することがで
き、また過大な捲縮発現能をも抑制できるのである。
このように本発明においては、特定した複合ポリマの
多層構造化に加えて、潜在捲縮発現処理−二次延伸処理
(高収縮化および捲縮の潜在化)プロセスの一体的な組
合せによって、初めて多層複合繊維の高収縮化による捲
縮特性,特に該繊維の製品化段階での捲縮発現能を一段
と向上させることができるのである。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明す
る。なお本例中、捲縮発現収縮率、捲縮発現応力、均染
度および風合は次のようにして求めた。
捲縮発現収縮率: 捲縮発現収縮率とは沸水中での捲縮発現収縮率であ
り、次のようにして測定される。長さAの2、000デニ
ールのサブトウに0.4mg/d(0.8g)の荷重をかけ、沸水
処理(98℃×20分)し、冷却、乾燥(65℃×60分)後、
測長し(このときの長さをBとする)、次式に従って収
縮率を算出する。
捲縮発現収縮率(%)={(A−B)/A}×100 A:原試料の長さ B:処理後の長さ 捲縮発現応力: 捲縮発現応力とは乾熱での発現応力であり、次のよう
にして測定される。試料繊維より4番手の粗糸を作製す
る。この粗糸をカネボウ(株)製の収縮応力試験機にル
ープ状に取り付け、初荷重1mg/dを負荷する。常温から
昇温し、乾熱140℃下での捲縮発現応力を測定する。
均染度: 標準繊維と試験繊維をパッケージ染色機を用いて、次
に示す染着速度の異なる3種の染料で100℃×60分間同
浴染めを行なう。
染色条件; Astrazon Golden Yellow GL 1.0 %owf Maxilon Red 0.5 %owf Malachite Green 0.22%owf カチオーゲン L 0.5 %owf 酢酸ソーダ 0.5 %owf pH=4 得られた染色後の繊維束各部をそれぞれ2g採取し、10
2mmにカット後、開綿した原綿の色調差および濃度差を
デーライト下で0.2刻みで視感判定し、色調および濃度
の最大値と最小値の染差を均染度として評価する。染差
なしのものが最良であり、2.0以上になると繊維束内の
染色ムラがはっきりとわかる。
ここでの標準繊維とは、共重合組成の異なる複合ポリ
マをほぼ完全に単一ポリマー様に混合して得た紡糸原液
を本発明繊維と同様の製糸条件のもとで得られた繊維で
ある。
風合: 試験繊維から4番手の紡績粗糸を作製した。この粗糸
をスチーム中(100℃×10分)でバルキー出しを行な
い、乾燥後に官能で嵩高性およびソフト性を評価した。
これを紡績糸における染色後の嵩高性(拘束下での捲縮
発現性)とソフト性および形態均斉性(以下,均斉性と
略称)の目安とした。
◎;非常に優れている ○;良好 △;やや良い ×;不良 ××;非常に劣る 実施例1 AN94.0モル%、アクリル酸メチル5.7モル%およびメ
タリルスルホン酸ソーダ0.3モル%をDMSO中で溶液重合
し、溶液粘度128ポイズ/60℃、濃度22.4重量%の紡糸原
液(A)を作製した。
他方、AN91.7モル%、アクリル酸メチル8.0モル%お
よびメタリルスルホン酸ソーダ0.3モル%を同様に溶液
重合し、溶液粘度が123ポイズ/60℃、ポリマ濃度22.2重
量%の紡糸原液(B)を作製した。
上記(A),(B)2種の紡糸原液の等量を第2図に
示すように原液流入口案内装置1を備えた“スタティッ
クミキサー”(多層化エレメントのピッチ径L/D 1.5)
に導き、層分割したのち、紡糸口金直近に備えたポリエ
ステル紗織物製フィルター(目開き:約30μ)をとおし
て、孔径0.065mmφの方形状単一紡糸口金から55重量%
のDMSO水溶液を凝固液とする凝固浴中に吐出し、凝固糸
条とした。このとき、多層化エレメントの積層段数およ
び方形状単一紡糸口金のホール数を制御して第1表に示
すような単糸中理論層数とした。
また紡糸ドラフトは0.48、凝固糸条の引取速度(紡糸
速度)は10m/分とした。
凝固糸条は、98℃の熱水中で6.4倍に延伸し、その延
伸糸条を温水で充分洗浄した後、160℃で乾燥緻密化し
た。
この乾燥緻密化糸条を引続き110℃の蒸熱中,弛緩状
態で捲縮発現処理した。
次に、この捲縮発現処理後の糸条を蒸熱温度102℃下
で,1.40倍の倍率で二次延伸し、更に押込式捲縮機にて
約11山/25mmの機械捲縮を付与し、70℃の熱風で乾燥
し、単繊維繊度が3デニールのアクリル系多層複合繊維
を得た。
得られた繊維の結節強度,収縮率,沸水処理後の捲縮
発現数,均染度,および風合(嵩高性,ソフト性,均斉
性)を調べて第1表に示した。
また、比較のためにバイメタル型の複合紡糸口金を用
いた以外は、上記実施例と同様にして、単繊維繊度が3d
の複合繊維を作製し、結節強度,収縮率,沸水処理後の
捲縮発現数,均染度,および風合(嵩高性,ソフト性,
均斉性)を第1表に併記した。
この結果が示すように、繊維軸の長手方向に沿って平
均4層以上に接合された多層化構造を有する本発明繊維
は、二次延伸による結節強度の低下が少なく、また沸水
処理での高収縮化時の捲縮発現数が適正に制御できると
共に、発現捲縮の均斉性がよく、嵩高性やソフト感に優
れ、また染色時の均染性も良好であることがわかる。
これに対して、単糸理論層数4層未満の多層複合繊維
は結節強度の低下や発現捲縮のムラが大きいため、紡績
性および風合不良となっている。また当然染色ムラも大
となっている。
実施例2 実施例1において、紡糸原液作製時における重合時間
およびポリマー濃度を制御し、紡糸原液(A)との溶液
粘度差を第2表に示すとおり変更した。それ以外は実施
例1と同様にして単繊維繊度3デニールのアクリル系多
層複合繊維を得た(但し、この場合の単糸中理論層数は
11.1とした)。
得られた繊維の結節強度,収縮率,沸水処理後の捲縮
発現数,均染度,および風合(嵩高性,ソフト性,均斉
性)を第2表に示した。
実施例3 実施例1において、2種の紡糸原液を層分割した後、
ステンレス金網フィルターをとおして紡糸口金より凝固
浴中に吐出し凝固糸条とする際、該フィルターの目開き
を第3表に示すとおり変更した。それ以外は実施例1と
同様にして単繊維繊度3デニールのアクリル系多層複合
繊維を得た(但し、この場合の単糸中理論層数は11.1と
した)。
得られた繊維の結節強度,収縮率,沸水処理後の捲縮
発現数,均染度,および風合(嵩高性,ソフト性,均斉
性)を第3表に示した。
この結果が示すように、紡糸口金直前に設けるフィル
ターは目開き10μ以上と10μ未満とで、得られる繊維の
嵩高性,ソフト性および均斉性に顕著な差異が認められ
る。
実施例4 実施例1において、乾燥緻密化糸条に対する捲縮発現
処理条件を第4表に示すとおり変更した。それ以外は、
実施例1と同様にして単繊維繊度3デニールのアクリル
系多層複合繊維を得た(但し、この場合の単糸中理論層
数は11.1とした)。
得られた繊維の結節強度,収縮率,沸水処理後の捲縮
発現数,均染度,および風合(嵩高性,ソフト性,均斉
性)を第4表に示した。
実施例5 実施例1において、乾燥緻密化糸条に対する捲縮発現
処理後の二次延伸条件を第5表に示すとおり変更した。
それ以外は、実施例1と同様にして単繊維繊度3デニー
ルのアクリル系多層複合繊維を得た(但し、この場合の
単糸中理論層数は11.1とした)。
得られた繊維の結節強度,収縮率,沸水処理後の捲縮
発現数,均染度,および風合(嵩高性,ソフト性,均斉
性)を第5表に示した。
[発明の効果] 以上の如き本発明繊維は、第1図に示すような複合ポ
リマの多層構造と収縮特性に基づいて,一定の荷重下
(紡績糸内の拘束力に相当する)で優れた捲縮発現能を
発揮するばかりか、収縮繊維に拘らず優れた均染性(染
色ムラがない)を示す。そして、その多層構造は繊維内
に多様な繊維特性を層状に分配,付与することが可能に
なる外、1d以下の細繊度化を可能にする。例えば,単糸
中理論層数が6の場合、実際には単繊維中に2層以上12
層までの多層複合を有する繊維が形成されることになる
が、このような多層複合繊維は、従来のサイドバイサイ
ド型の複合繊維に比較して高収縮性を維持しながら捲縮
発現数を任意に低下させ、よりソフトな製品ができる。
また本発明繊維は、紡績性が良く(結節強度が高
い)、高い収縮能で,かつソフトで嵩高な風合を得るに
適した潜在捲縮発現能を保有し、製品段階(特に混紡
品)では充分な嵩高性と高発色性が発揮できる。さらに
該複合繊維の二次延伸性および捲縮特性を改良せんとし
て,ポリマ成分間の共重合組成の差を大きく採っても染
色ムラが殆ど発生しない等の顕著な効果を奏するのであ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る多層複合繊維の部分横断面写真、
第2図は本発明繊維の製糸段階での工程要件を説明する
フローシート、第3図は多層化装置における多層化エレ
メントの概略図である。 A,B:複合ポリマの紡糸原液 1:複合ポリマの案内装置 2:多層化装置、2′:多層化エレメント 3:フィルター 4:紡糸口金 5:繊維糸条の捲縮発現装置 6:捲縮発現繊維の二次延伸装置 D:多層化エレメントの直径 L:多層化エレメント1ケの長さ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭51−75151(JP,A) 特開 昭51−70322(JP,A) 特公 平7−109041(JP,B2) 特公 昭46−22887(JP,B1) 特公 昭51−2529(JP,B1)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】共重合組成を異にし、共重合成分量の差が
    1〜10モル%である2種のアクリル系重合体の1成分重
    合体が他の成分重合体中に、繊維表面の一部を形成せし
    めるよう、繊維軸方向に沿って非対称に分配された多層
    複合構造を持つ単繊維から構成され、かつ平均4層以上
    に接合され、捲縮発現処理および1.3〜1.6倍の二次延伸
    処理が施された繊維集合体であって、潜在的に、次式
    (I)で定義される沸水における収縮率が10〜25%、次
    式(II)で定義される捲縮発現数が10〜20山/25mmであ
    る能力を有し、かつ結節強度1.3g/d以上であることを特
    徴とする改良された収縮性と捲縮特性を有するアクリル
    系複合繊維集合体。 沸水における収縮率(%)={(A−B)/A}×100
    (I) A:単繊維試料の沸水処理前100mg/d荷重下での長さ B:該単繊維試料の沸水処理後300mg/d荷重下での長さ 捲縮発現数(山/25mm)=25a/b (II) a:沸水処理後単繊維試料の2mg/d初荷重下での捲縮数 b:該単繊維試料の2mg/d初荷重下での長さ
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