JP2621151B2 - 磁性材料およびその製造方法 - Google Patents

磁性材料およびその製造方法

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修二 森内
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は鉄系アモルファス磁性合金からなる磁性材
料、特に高周波におけるコアロスの小さい磁性材料およ
びその製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
従来より高周波で使用する磁性材料として、Mn−Znフ
ェライト、ケイ素鋼板、パーマロイなどがあるが、比抵
抗が小さいため高周波特性が悪く、高周波におけるコア
ロスが大きい。この点を解決する磁性材料として、高周
波におけるコアロスの小さいアモルファス磁性合金が提
案されている(例えば特公昭55−19976号)。
ここで開示されているアモルファス磁性合金は、 式:MaYbZc (式中、Mは鉄、ニッケル、クロム、コバルトおよびバ
ナジウムからなる群から選択される金属またはそれらの
混合物;Yはリン、炭素およびホウ素から選択される非金
属、またはそれらの混合物;Zはアルミニウム、シリコ
ン、スズ、アンチモン、ゲルマニウム、インジウムおよ
びベリリウムからなる群から選択される元素、またはそ
れらの混合物;a,bおよびcはそれらの和が100になると
いう条件下でそれぞれ60〜90、10〜30、0.1〜15の原子
百分率である。) で示される熱安定性アモルファス合金である。
このうち鉄系アモルファス合金であるFe79B16Si5が特
に高周波特性が良く、高周波におけるコアロスが小さい
とされている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
従来の磁性材料の高周波におけるコアロスは、周波数
f:50kHz、磁束密度B:0.3Tの場合、Mn−Znフェライトが1
50W/kg、ケイ素鋼板、パーマロイが1000W/kg、高周波特
性が良い鉄系アモルファス合金のFw79B16Si5は70W/kg程
度である。鉄系アモルファス合金は従来の磁性材料に比
較して高周波におけるコアロスが小さいが、さらにコア
ロスの小さい磁性材料が要望されている。
この発明は上記要望に応えるためのもので、高周波に
おけるコアロスの小さい磁性材料およびその製造方法を
提案することを目的としている。
〔問題点を解決するための手段〕
この発明は次の磁性材料およびその製造方法である。
(1)一般式 FeaWb〔Bi(1-x)(Bi2O3cBdSieMf …(I) (式中、MはNi、Co、Cr、Re、RuおよびZrの少なくとも
1種の金属原子を示し、a、b、c、d、eおよびfは
各元素のグラム原子%を示し、xはBiの分率を示す。そ
してa+b+c+d+e+f=100、70≦a≦85、0.5≦
b≦10、0.01≦c≦0.5、10≦d≦20、0<e≦5、0
<f≦5および15≦d+e≦25、0<x≦0.6であ
る。) で表わされる鉄系アモルファス磁性合金からなる磁性材
料。
(2)一般式 FeaWb〔Bi(1-x)(Bi2O3cBdSieMf …(I) (式中、MはNi、Co、Cr、Re、RuおよびZrの少なくとも
1種の金属原子を示し、a、b、c、d、eおよびfは
各元素のグラム原子%を示し、xはBiの分率を示す。そ
してa+b+c+d+e+f=100、70≦a≦85、0.5≦
b≦10、0.01≦c≦0.5、10≦d≦20、0<e≦5、0
<f≦5および15≦d+e≦25、0<x≦0.6であ
る。) で表わされる鉄系アモルファス磁性合金を、その合金の
キュリー温度ないし結晶化温度の範囲の温度において、
磁場中で熱処理を施した後、無磁場中不活性ガス雰囲気
および酸素含有ガス雰囲気中で交互に熱処理を施すこと
を特徴とする磁性材料の製造方法。
本発明の磁性材料を構成する鉄系アモルファス磁性合
金は前記一般式(I)で示される組成を有するものであ
る。一般式(I)において、MはNi、Co、Cr、Re、Ruお
よびZrの少なくとも1種の金属原子の単独または複数の
併用の場合があり、いずれの場合もほぼ同等の特性を示
すが、特にMとしてはNi、Co、Crが望ましい。a〜fお
よびxの望ましい範囲は、74≦a≦80、0.5≦b≦5、
0.01≦c≦0.4、10≦d≦20、0<e≦5、0<f≦
4、17≦d+e≦22、0<x≦0.6である。
一般式(I)で示される鉄系アモルファス磁性合金の
代表的な例をあげると、Fe76W1〔Bi2(Bi2O3)〕0.5
13.5Si5Ni2Cr2、Fe76W1Bi0.2(Bi2O30.313.5Si5Cr2
などがある。
一般式(I)において、a、b、c、d、e、fおよ
びxが前記範囲の数値に限定される理由は次の通りであ
る。すなわちaが70未満または85を越える場合は、アモ
ルファス合金ができなくなる。bが0.5未満または10を
越える場合は、交互熱処理効果がなくなる。cが0.01未
満の場合は、コアロスが多くなり、cが0.5を越える場
合は、飽和磁束密度が低下するようになる。dが10未満
または20を越える場合は、アモルファス合金ができなく
なる。eが5を越える場合は、アモルファス合金ができ
なくなり、fが5を越える場合は、飽和磁束密度が低く
なる。またxが0.6を越える場合は、透磁率が著しく低
下するようになる。
上記の鉄系アモルファス磁性合金は、一般式(I)の
組成に調整した溶融金属を、高速で回転する冷却ロール
等の冷却面に噴射し、冷却面上で溶融金属を105〜106K/
秒程度の速い冷却速度で急冷する急冷法その他の方法に
より、金属結晶の成長を抑制して固化させ製造される。
こうして製造される鉄系アモルファス磁性合金は通常は
薄帯であり、そのままトロイダルコアに巻いて磁性材料
として使用できるが、熱処理を行うことにより高周波特
性が改善される。
またBiとBi2O3の混合物を含む合金から調製した鉄系
アモルファス磁性合金は、再現性良くコアロスの小さい
磁性材料となる。すなわちBiのみから合金を製造する場
合、Biが揮散し易いとともに酸化され易いので、組成が
均一になりにくいが、BiとBi2O3の混合物から合金を製
造すると、組成が均一になり易いと同時に、熱処理効果
が大きくなる。
本発明の磁性材料の製造方法では、上記のようにして
得られた鉄系アモルファス磁性合金をそのまままたはコ
アを形成した状態で、合金のキュリー温度ないし結晶化
温度の範囲において、磁場中で熱処理を施した後、さら
に無磁場中不活性ガス雰囲気および酸素含有ガス雰囲気
中で交互に熱処理を施すことにより磁性材料を得る。こ
の場合熱処理の温度は順次高くして行くのが好ましい。
不活性ガスとしてはN2ガスが一般的であるが、Arその他
のガスでもよい。また酸素含有ガスとしては空気が一般
的であるが、酸素濃度の異なるガスでもよい。各段階の
熱処理時間は特に制限されないが、5〜30分間程度が適
当である。また磁場中での熱処理の場合の磁束密度も特
に制限はないが、5〜20G程度が適当である。
こうして得られる磁性材料は、熱処理前のものに比べ
て高周波特性が改善され、高周波におけるコアロスは従
来の鉄系アモルファス磁性合金よりも小さいものが得ら
れる。適用周波数に制限はないが、10〜100kHzの高周波
に適用して低コアロスの磁性材料として使用でき、特に
50kHz以上の高周波用の磁性材料に適している。また従
来のものは磁束密度0.5T以上ではコアロスが大きくなっ
て使用困難であったが、上記磁性材料は0.5T以上でも使
用可能であり、薄帯の厚さを従来の1/2にし、テープ間
に絶縁処理をすると、磁束密度0.9Tでも使用可能であ
る。
〔発明の効果〕
本発明の磁性材料および製造方法によれば、一般式
(I)で示される鉄系アモルファス磁性合金を成分とし
たので、高周波におけるコアロスの小さい磁性材料が得
られる。
〔実施例〕 以下、本発明の実施例について説明する。
出発原料をBi粉(試料1)、Bi2O3粉(試料2)およ
びBi粉とBi2O3粉の混合(Bi濃度で1対1)物(試料
3)の3種を使用し、Fe76W1Bi0.513.5Si5Ni2Cr2の組
成となるように各成分を石英管内で溶融し、この溶融金
属を高速回転している銅製の冷却単ロール上にArガスに
より噴出し、液体急冷法により鉄系アモルファス磁性合
金からなる薄帯を製造した。こうして製造した薄帯約10
gを直径約15mmのトロイダルコアに巻き、1次および2
次コイルを巻回し測定用コアを形成した。
次に上記コアについて、10Gの磁場中かつN2ガス中に3
50℃で20分間熱処理し、次に無磁場中10℃間隔で、370
℃まではN2ガス中20分間熱処理、その後440℃まではN2
ガス中および空気中で各20分間交互に熱処理を行った。
熱処理前および各温度で熱処理終了後、コアロスP
(f:50kHz、B:0.3T)および透磁率μを測定し、コアロ
スが最小となる温度を最適熱処理温度とした。結果を表
1に示す。
各鉄系アモルファス磁性合金のDSC(示差走査熱量)
曲線を図面に示す。
表1より、本発明の磁性材料である試料3は優れた高
周波特性を有しており、特に熱処理によりコアロスの小
さく透磁率の大きい磁性材料が得られることがわかる。
図面において、EXOは発熱量を示し、Bi粉から調製し
たアモルファス合金は、BiとBi2O3の混合物から調製し
たアモルファス合金に近いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
図面は実施例のDSC曲線を示すグラフである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 FeaWb〔Bi(1-x)(Bi2O3cBdSieMf …(I) (式中、MはNi、Co、Cr、Re、RuおよびZrの少なくとも
    1種の金属原子を示し、a、b、c、d、eおよびfは
    各元素のグラム原子%を示し、xはBiの分率を示す。そ
    してa+b+c+d+e+f=100、70≦a≦85、0.5≦
    b≦10、0.01≦c≦0.5、10≦d≦20、0<e≦5、0
    <f≦5および15≦d+e≦25、0<x≦0.6であ
    る。) で表わされる鉄系アモルファス磁性合金からなる磁性材
    料。
  2. 【請求項2】鉄系アモルファス磁性合金がFe76W1〔Bi2
    (Bi2O3)〕0.513.5Si5Ni2Cr2である特許請求の範囲
    第1項記載の磁性材料。
  3. 【請求項3】一般式 FeaWb〔Bi(1-x)(Bi2O3cBdSieMf …(I) (式中、MはNi、Co、Cr、Re、RuおよびZrの少なくとも
    1種の金属原子を示し、a、b、c、d、eおよびfは
    各元素のグラム原子%を示し、xはBiの分率を示す。そ
    して、a+b+c+d+e+f=100、70≦a≦85、0.5
    ≦b≦10、0.01≦c≦0.5、10≦d≦20、0<e≦5、
    0<f≦5および15≦d+e≦25、0<x≦0.6であ
    る。) で表わされる鉄系アモルファス磁性合金を、その合金の
    キュリー温度ないし結晶化温度の範囲の温度において、
    磁場中で熱処理を施した後、無磁場中不活性ガス雰囲気
    および酸素含有ガス雰囲気中で交互に熱処理を施すこと
    を特徴とする磁性材料の製造方法。
  4. 【請求項4】鉄系アモルファス磁性合金がFe76W1〔Bi2
    (Bi2O3)〕0.513.5Si5Ni2Cr2である特許請求の範囲
    第3項記載の磁性材料の製造方法。
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