JP2620296B2 - ウレタン樹脂組成物及びその成型体 - Google Patents

ウレタン樹脂組成物及びその成型体

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、耐水性及び耐熱性と向上させた放射線架橋
されたウレタン樹脂組成物成型体に関する。
[従来技術] 熱可塑性ウレタン樹脂は、優れた機械的強度、耐摩耗
性を生かして、ホース、ベルト、電線被覆、パイプ、靴
底、各種成型品等の種々の分野に用いられている。とこ
ろが、ウレタン樹脂は、エステル結合やウレタン結合の
加水分解の為に、長時間水分にさらされる所や蒸気、熱
水を使用する用途には使用できない。最近では加水分解
を起こしやすいエステル結合をもつ脂肪族エステルでは
なくエーテル結合をもつものや、カプロラクタム系のポ
リオールを使用して、耐水性の改良が行なわれているも
のの、ウレタン樹脂では本質的に加水分解はさけられな
い。更に、ウレタン樹脂は180℃以上の温度で溶融する
ことから、例えは電線での半田浸漬等の作業により、被
覆層が変形する為、150℃以上の高温にさらされる用途
には使えないといった問題がある。
一方、自動工作機械等の発達に伴い、耐摩耗性及び機
械的強度が高い材料の使用用途は増々拡大しており、耐
水性及び耐熱性をもつウレタン樹脂が求められている。
高分子材料の耐熱性等の改良の方法としては、ポリエ
チレン等で行なわれている分子間の架橋という方法があ
る。一般に、この架橋方法には、有機ペルオキシドによ
る化学架橋、電子線又はγ線などによる放射線架橋、反
応性シランによる水架橋等がある。この中で、多官能性
モノマーを添加して放射線架橋する方法が有効であり、
耐熱水性に対しても有効であることが特開昭62−54714
号公報に記述されている。
しかしながら、高分子材料では空気中の高温での長期
間使用という耐熱性も要求される。この場合は、フェノ
ール系やアミン系の酸化防止剤を添加して対処するのが
一般的で、ウレタン樹脂でも用いられている。ところ
が、ウレタン樹脂の耐水性と耐熱性を同時に改良する酸
化防止剤は知られていなかった。
[発明の目的] 本発明の目的は、ウレタン樹脂において、耐水性、特
に耐熱水性及び耐熱性を改良することにある。
[発明の構成] 本発明は、(a)熱可塑性ウレタン樹脂100重量部
に、(b)多官能性モノマー0.1〜50重量部、及び
(c)4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフ
ェニルアミン0.1〜10重量部を単独で又はペンタエリス
リトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−
4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1〜10重
量部とペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリ
ル−チオ−プロピオネート)0.1〜5重量部を組み合わ
せて添加してなる組成物を提供する。
また本発明は、このような組成物の成型体であって、
放射線を3〜50Mrad照射したことを特徴とするウレタン
樹脂組成物成型体をも提供する。
本発明において、熱可塑性ウレタン樹脂はいずれの熱
可塑性ウレタン樹脂であってもよいが、例えば、アジペ
ートエステル系、ポリエーテル系、カプロラクトンエス
テル系、ポリ炭酸エステル系が挙げられる。
多官能性モノマーとして、トリメチロールプロパント
リアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリ
レート及びトリアクリルホルマールが挙げられる。多官
能性モノマーの添加量は熱可塑性ウレタン樹脂100重量
部に対して0.1〜50重量部である。0.1重量未満では、多
官能性モノマーの添加効果が不充分で、放射線を照射し
ても架橋せず、50重量部を越える場合には、機械的強度
の低下が著しい。
本発明の組成物において、酸化防止剤として4,4′−
ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを
単独で使用する。あるいはペンタエリスリトール−テト
ラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ
フェニル)プロピオネート]とペンタエリスリトール−
テトラキス(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)を
組み合わせて使用する。
4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニ
ルアミンの添加量は熱可塑性ウレタン樹脂100重量部に
対して0.1〜10重量部である。0.1重量部未満では耐熱性
の効果がなく、10重量部を越えると、耐熱性効果が飽和
し、それ以上添加する意味がない。4,4′−ビス(α,
α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンは、アミン系
の中では非汚染性であるため種々の樹脂に酸化防止剤と
して使用されているが、従来、ウレタン樹脂では使用さ
れていなかった。
ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ
−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー
ト]の添加量は熱可塑性ウレタン樹脂100重量部に対し
て0.1〜10重量部である。0.1重量部未満では耐熱性の効
果がなく、10重量部を越えるとブリードする。ペンタエ
リスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオ−プロ
ピオネート)の添加量は熱可塑性ウレタン樹脂100重量
部に対して0.1〜5重量部である。0.1重量部未満では耐
熱性の効果がなく、5重量部を越えるとブリードする。
ヒンダードフェノール系化合物と有機イオウ系二次酸
化防止剤との組合せを使用する場合に、耐熱性がポリオ
レフィン系樹脂では向上することは知られていたが、こ
の場合でもヒンダードフェノール系化合物として1,3,5
−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジ
メチルベンジル)イソシアヌル酸が優れていると言われ
ている。ところが、ウレタン樹脂ではこれら酸化防止剤
を添加すると耐熱性が無添加のものより劣る。これに対
して、本発明のようにヒンダードフェノール系化合物と
して、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5
−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオ
ネート]を使用した場合、耐熱試験後の引張における伸
びと破断強度共に優れている。
本発明の組成物には、要すれば、他の成分、例えば、
難燃剤としてデカブロモジフェニルオキサイドや三酸化
アンチモン、又は着色のためのカーボン等の顔料等をも
添加してよい。
放射線は電子線又はγ線であることが好ましい。しか
し、α線、β線及びX線などを使用することも可能であ
る。照射線量は3〜50Mradである。3Mrad未満では照射
しても照射架橋の効果が見られず、例えば180℃での加
熱変形試験で完全に変形する。一方50Mradをこえて照射
する場合には、機械的強度の低下が著しく実用に供せな
い。
ウレタン樹脂組成物を調製するには、2本ロールや一
軸又は二軸スクリューの混練機などによって各成分を混
合すればよい。
成型体を製造するには、ウレタン樹脂組成物を熱プレ
ス、押出機や射出成型機などにより成型した後、放射線
を照射すればよい。
[実施例] 以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説
明する。
実施例1〜4 熱可塑性ウレタン樹脂(エラストランE385PNAT:日本
エラストラン製)に対して、第1表に示した成分を180
℃の熱ロールにより混合した後、180℃の熱プレスにて1
0分間加圧し1mm厚のシート状試験試料を作成した。しか
る後、2MeVの電子線と25Mrad照射した。該照射試料につ
いて、150℃ギヤーオーブン中と100℃熱水中で14日間老
化した後の引張における伸び及び破断強度を測定した。
試験試料は、JIS3号ダンペルを打抜いたものを使用し、
引張はインストロン引張試験機により引張速度500mm/分
を行った。結果を第1表に示す。
比較例1〜3 第1表に示す成分を使用して実施例1と同様の手順を
繰り返した。結果を第1表に示す。
[発明の効果] 本発明のウレタン樹脂組成物から得られた成型体は優
れた耐水性、特に耐熱水性と耐熱性を持っている。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)熱可塑性ウレタン樹脂100重量部
    に、 (b)多官能性モノマー0.1〜50重量部、及び (c)4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフ
    ェニルアミン0.1〜10重量部を単独で又はペンタエリス
    リトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−
    4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1〜10重
    量部とペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリ
    ル−チオ−プロピオネート)0.1〜5重量部を組み合わ
    せて 添加してなるウレタン樹脂組成物。
  2. 【請求項2】(a)熱可塑性ウレタン樹脂100重量部
    に、 (b)多官能性モノマー0.1〜50重量部、及び (c)4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフ
    ェニルアミン0.1〜10重量部を単独で又はペンタエリス
    リトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−
    4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.1〜10重
    量部とペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリ
    ル−チオ−プロピオネート)0.1〜5重量部を組み合わ
    せて 添加してなる組成物の成型体であって、放射線を3〜50
    Mrad照射したことを特徴とするウレタン樹脂組成物成型
    体。
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