JP2615728B2 - 含Cr銑の脱炭方法 - Google Patents

含Cr銑の脱炭方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は含Cr銑の脱炭方法に関する。
〔従来の技術及びその問題点〕
一般に、ステンレス鋼等の高Cr鋼は、クロム鉱石から
製造されたフェロクロムを溶解炉へ合金材として投入し
て溶解し、これを脱炭処理することにより溶製される。
この脱炭処理を大気圧下で行う方法として所謂AOD法
やLD−OB法等が知られているが、これらの方法は真空方
式であるVOD法やVODC法に較べ設備コストが低くて済む
反面、Cr酸化ロスが非常に大きいという難点がある。
本発明は、大気圧下においてこのようなCr酸化ロスを
抑えつつ脱炭処理を行うことができる方法を提供せんと
するものである。
〔問題を解決するための手段〕
フェロクロムの溶解工程では脱炭も行われるため、そ
のままではCr酸化ロスが著しく、このためスラグに還元
剤としてFe−Siを投入している。ところが、このFe−Si
の投入により母溶湯中にSiが大量に含まれることにな
り、このSiが続く脱炭工程において脱珪され、耐火物に
対して非常に有害な酸性スラグを生成してしまうという
問題がある。このため従来では、スラグ中に中和剤とし
てCaOを投入し、耐火物の損耗を防止しているが、この
ような操業では必然的にスラグが大量に生じていた。
また、LD−OB法等では熱源用として炭材が投入され、
溶湯中のS濃度が高くなる。このため、脱炭終了後、酸
化Crの還元とともに脱硫を行う必要があるが、この脱硫
性を高める上でも多量のスラグが必要となる。
このように従来の脱炭吹錬は多量のスラグを形成した
下で行われていたものであるが、このようなスラグ量そ
のものがCr酸化ロスにおよぼす影響については、特に定
量的で詳細な検討の対象にはされていなかった。
これに対し、本発明者等はこのように多量に形成され
るスラグに着目し、スラグ量とCr酸化ロスとの関係につ
いて検討を行った。この結果、脱炭吹錬中のスラグ量と
Cr酸化ロスとの間には強い相関関係があり、スラグ量を
低く抑えつつ吹錬を行うことにより、Cr酸化ロスを効果
的に低下させ得ることを見い出した。
本発明は、このような事実に基づき、さらにCr酸化ロ
スを効果的に防止し得る適正スラグ量の範囲を解明する
ことによりなされたもので、その特徴とするところは、
脱炭前に二次燃焼を行う溶融還元法によって溶銑中の硫
黄濃度の低減を図り、スラグ量を50kg/溶湯Ton以下とし
つつ脱炭吹錬を行うことにある。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明において、スラグ量を上記範囲に抑えることに
よってCr酸化ロスが低減するのは次のような理由による
ものと考えられる。すなわち、脱炭処理においては上吹
きのO2は以下のような反応を生じさせる。
上記(1)及び(2)式から、下記(3)式が成立す
る。
このように上吹きO2によって生成したCr2O3は溶湯中
Cにより還元されることが判る。
ここで、還元作用すなわち上記(3)式の反応を右方
向へ進行させるためには、スラグ中のCr2O3の濃度を上
げることが重要である。このCr2O3濃度を上昇させるに
は、スラグ全体の量を減らすことが有効であり、これに
より上記(3)式の反応が生じ易くなり、この結果Cr2O
3の還元が促進され、Crロスが効果的に低減する。また
炉体耐火物(マグクロ、マグ・カーボン、マグドロ等)
を構成するMgOの溶損によりスラグ中には10〜30%程度
のMgOが含まれているが、このMgOはCr2O3と結合して難
溶融のMgO・Cr2O3スピネルを生成させるため、スラグ量
が多いと、この点からもスラグ中に溶解しているCr2O3
濃度が低下し、還元作用が得にくくなる。
そして、このようなスラグ量低下によるCr酸化ロス低
減効果は、スラグ量を50kg/溶湯Ton以下で吹錬処理した
場合に極めて顕著になることが判明した。すなわち換言
すれば、Cr酸化ロス低減効果を得るには、脱炭時にスラ
グ量を50kg/溶湯Ton以下に抑制すればよいことを本発明
者らは新たに見い出したものである。そして本発明で
は、脱炭終了後の脱硫がスラグ量増加の一要因であるこ
とに着目し、脱炭時前に二次燃焼を行う溶融還元法によ
って溶銑中の硫黄濃度の低減を図るものとした。なお、
硫黄濃度低減をより有効に図れる溶融還元法についても
本発明者らは既に開発したが、その詳細については後述
する。
本発明を適用すべき脱炭吹錬の方式は特に限定される
ものではないが、本発明者等が開発した次のような脱炭
方法によれば、より高いCr酸化ロス防止効果が得られ
る。
この脱炭方法は、第1図に示すように底吹き羽口2と
上吹きランス1とを備えた容器内の高Cr溶銑に対し、上
吹きランス1から、不活性ガス(N2,Ar等)で希釈した
脱炭用O2を上吹きするとともに、底吹き羽口2から不活
性ガス(N2,Ar等)を吹き込んで溶銑を強攪拌すること
により脱炭処理を行うものである。
従来知られているAOD法では、O2を炉底側の羽口から
吹き込む方法が採られているが、本発明者等の検討によ
れば、底吹きO2がCr酸化ロスを増大させる大きな原因で
あることが判った。すなわち、O2底吹きでは溶鋼静圧が
加わるためCO分圧が高くなり、この結果、脱炭反応が阻
害され、脱炭用O2がCrを酸化させてしまう。このため本
脱炭法では、O2底吹きは行わず、上吹きランス1から送
酸を行う。
しかし、この上吹きを単に純O2で行うだけでは効果が
不十分であることが判った。これは、脱炭反応はランス
送酸による火点において最も激しく生じるが、O2だけの
送酸ではこの部分のCO分圧が非常に高くなり、この結
果、脱炭反応が阻害され、O2がCrを酸化させてしまうこ
とによるものである。このため、本脱炭法では不活性ガ
ス(N2,Ar等)で希釈したO2を上吹きするようにし、こ
れによつて火点におけるCO分圧を下げ、脱炭反応を促進
させるようにしたものである。なお、上吹きランスから
は処理時間を短くするため大量送酸することが好まし
い。
さらに本脱炭法では、溶湯と上吹きO2との混合を促進
させるため、底吹き羽口2から不活性ガスを吹き込み、
溶湯を適度に強攪拌するものであり、この底吹き不活性
ガスによる適度な強攪拌と、上記ランスによる不活性ガ
ス希釈O2の上吹きとの組み合わせによりCr酸化ロスを抑
えた効率的な脱炭処理が可能である。
溶湯を適度に強攪拌するためには大量の不活性ガスを
吹き込む必要がある。しかし、ガス量が多すぎると溶湯
が飛散して問題を生じるおそれがあり、このため0.5〜5
Nm3/分・溶湯Ton、好ましくは1〜3Nm3/分・溶湯Ton程
度の量のガスを吹き込むことが好ましい。
また、以上のような脱炭吹錬において、Cr酸化ロスを
より適切に防止するためには、Cレベルの低減にしたが
って送酸量を絞っていくことが有効である。しかし、一
般に上吹きランスによる送酸において、同一ノズルで送
酸量を絞るということは、吹込圧力の低下という面から
限界があり、最大でも1/2程度までしか送酸量の絞り込
みができない。
このような問題に対して、上吹きガス中の希釈用不活
性ガスの割合を、脱炭の進行にしたがって吹錬途中から
順次高め、これに伴い送酸量を絞るようにすることが好
ましく、これによって吹込圧力を過度に低下させること
なく送酸量を絞り込むことができる。
このような不活性ガスの増大と送酸量の絞り込みは、
連続的或いは段階的に行うことができる。
以上のような脱炭方式は、その方式そのものがCr酸化
ロスの防止に有効であり、本発明法との組み合わせによ
り、よく高度のCr酸化ロス防止効果を得ることができ
る。
また、本発明を実施するに当たっては、脱炭すべき溶
銑中の〔Si〕,〔S〕分が出来るだけ低いほうがスラグ
量をコントロール(低減)する上で有利であることは言
うまでもなく、このため、従来の各種脱炭方式に適用す
る場合、本発明の実施可能な製造条件を選定すべきこと
は当然である。
この点上述した新たな脱炭方式では、Fe−Si等の還元
剤の添加量を低く抑えることができることから、スラグ
量のコントロールも容易であるという優れた利点があ
る。
ところで、本発明者等はフェロクロム等を用いること
なく、Cr鉱石等の原料から直接含Cr銑を得ることができ
る所謂溶融還元法に関し、従来方式に較べ還元処理性が
非常に高い新たな方法を開発した。そして、この方法に
よれば、高い還元処理性が得られるだけでなく、二次燃
焼比が高いため、気化脱硫現象が活発になり、溶湯中の
Sがより効果的に低減する。したがって、このような溶
融還元により得られた溶銑を原料とすることにより、本
発明をより容易に実施することができる。
この溶融還元法は、還元期間中、下記(イ)〜(ハ)
のガス吹き込みを行い、 (イ)底吹き羽口から不活性ガスを吹き込む、 (ロ)ガス流の少なくとも一部が、底吹きガスによる溶
湯隆起部に当たるよう、横吹き羽口から不活性ガスを吹
き込む、 (ハ)上吹きランスから、溶湯中へ脱炭用O2を吹き込む
とともに、スラグ中へ二次燃焼用O2を吹き込む、 且つ、二次燃焼比を0.3以上に保持しつつ還元処理を
行うことをその内容とするものである。
この溶融還元法は、Cr鉱石はスラグ中に溶解した後、
スラグ中の炭材により還元されるものであるという従来
の認識に反し、実際の還元反応のほとんどが、実は溶湯
中のCが還元物質として作用することにより生じるとい
う新たな知見に基づき、次のような作用により高い還元
処理速度が得られるようにしたものである。
(イ)攪拌ガスの底吹きと横吹きの組み合わせ、具体的
には、底吹きガスにより溶湯面に形成された溶湯隆起部
に横吹きガスを衝突させて、溶湯をスラグ中のCr鉱石の
存在する領域に積極的に拡散させ、溶湯中CによるCr鉱
石の還元作用を促進させる。
スラグの見掛比重は通常0.3〜0.5であり、一方Cr鉱石
の嵩比重は3.0前後であり、したがってスラグ中のCr鉱
石は、ほとんどスラグ下部領域に集中して浮遊してい
る。上記のように溶湯隆起部を横吹きガスで飛散させる
と、この飛散溶湯は、Cr鉱石が存在するスラグ下部領域
に拡散し、この拡散溶湯中のCがCr2O3を還元し、高い
還元速度が得られる。
(ロ)脱炭用O2とは別に二次燃焼用O2の吹き込みを行
う。すなわち、この二次燃焼用O2を上吹きランスからス
ラグ中に吹き込んで二次燃焼領域をスラグ中に形成さ
せ、且つ横吹きガスによりスラグを強攪拌し、二次燃焼
により生じた熱を鉱石に着熱させる。
このように二次燃焼領域をスラグ内に形成し且つ横吹
きガスによってスラグを強攪拌することにより、高二次
燃焼を確保しつつ高い着熱効率を得ることができる。し
たがって、上記二次燃焼用O2は、主としてスラグ内に二
次燃焼領域が形成されるようスラグ中に吹き込まれるこ
とが必要である。
(ハ)溶湯中Cによる還元作用及び上吹きO2による二次
燃焼が阻害されないようにするため、横吹きガス及び底
吹きガスはCOまたは不活性ガスとし、O2は使わない。
横吹きガスにO2を用いると、Cr鉱石還元のために飛散
させた溶湯中のCとこのO2とが反応し、溶湯中Cによる
還元作用を阻害してしまうという基本的問題がある。加
えてO2を使用した場合、耐火物の温度が上昇し、耐火物
の損耗という問題を生じる。
また、底吹きガスにO2を用いると、溶湯中で大量のCO
ガスを生じさせて溶湯を強攪拌し過ぎ、この結果、溶湯
のスプラツシュが二次燃焼領域に達し、溶湯中Cが後述
する二次燃焼用O2と反応して二次燃焼が阻害されてしま
う。加えて、O2を使用すると底吹き羽口など耐火物の温
度が上がり過ぎるため冷却ガス(C3H8等)を添加する必
要があり、これも底吹きガス量を増大させ、溶湯の過大
な強攪拌→溶湯スプラッシュの発生を助長することにな
る。
(ニ)二次燃焼比は、排ガス中のガス成分の(CO2+H
2O)/(CO+CO2+H2+H2O)で定義されるが、本方法で
は、この二次燃焼比を0.3以上として上述の還元処理を
行う。本方法では高着熱効率が得られるため、二次燃焼
比を上記のように高くすることにより、高い還元処理性
(還元速度)が得られるが、これに加え、二次燃焼比を
上げることにより炭材(主としてコークス)の添加量を
低く抑えるこができ、この結果、炭材原単位の低減を図
ることができるとともに、溶湯のP成分のほとんどが炭
材により持込まれることから、溶湯中Pの低減を図るこ
とができる。そして、二次燃焼比が高くなると、上述し
たように気化脱硫現象が活発になり、溶湯中のSも低下
する。第4図は、本方式の溶融還元における炉内二次燃
焼比とコークス原単位、溶湯中P成分及びS成分との関
係を示すもので、二次燃焼比を0.3以上とすることによ
り、コークス原単位が抑えられ、且つ溶湯中のP,Sも適
切に低減している。
〔実施例〕
転炉型容器を用い、5.5Tonの18%Cr溶銑の脱炭処理を
種々のスラグ量レベルで実施した。なお、脱炭処理は上
吹きランスからN2ガスで希釈した脱炭用O2を上吹きする
とともに、底吹き羽口2からN2ガスを吹き込む方法によ
り実施し、溶湯を約40分間でCを6.5%から0.03%まで
脱炭した。第2図はその際の吹込みガス量を示したもの
である。
第3図は、本実施例において得られたスラグ量とCr酸
化ロスとの関係を示すもので、スラグ量の低下とともに
Cr酸化ロスが低下するが、特にスラグ量≦50kg/溶湯Ton
(好ましくは≦40kg/溶湯Ton)においてCr酸化ロスが著
しく低下していることが判る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明を適用し得る脱炭方式の一例を示す説明
図である。第2図は本発明の実施例におけるガス吹込条
件を示すものである。第3図は実施例においてスラグ量
がCr酸化ロスに及ぼす影響を示したものである。第4図
は本発明法の脱炭対象として好適な溶湯を得るための溶
融還元法に関し、溶湯中〔S〕,〔P〕及びコークス原
単位に及ぼす二次燃焼比の影響を示したものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩崎 克博 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 井上 茂 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−222518(JP,A) 特開 昭61−12812(JP,A) 特開 昭61−19716(JP,A) 特開 昭59−222511(JP,A) 特開 昭56−38412(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】二次燃焼を行う溶融還元法により、溶銑中
    の硫黄濃度を低減させて含Cr溶銑を得た後、スラグ量を
    50kg/溶湯Ton以下としつつ脱炭吹錬することを特徴とす
    る含Cr銑の脱炭方法。
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