JP2598878B2 - ピストンリング - Google Patents
ピストンリングInfo
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- JP2598878B2 JP2598878B2 JP5318889A JP31888993A JP2598878B2 JP 2598878 B2 JP2598878 B2 JP 2598878B2 JP 5318889 A JP5318889 A JP 5318889A JP 31888993 A JP31888993 A JP 31888993A JP 2598878 B2 JP2598878 B2 JP 2598878B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- piston ring
- chromium nitride
- coating layer
- chromium
- base material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
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Description
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)この発明は、耐摩耗性に優れた皮
膜を有する内撚機関用ピストンリングに関する。 (従来技術と問題点)内燃機関のピストンリングは、ピ
ストンの上昇下降の過程において、リング溝内での軸方
向、半径方向及び円周方向の運動を行う。ピストンリン
グの上下面は、リング溝の上下面との間で絶えず摺動を
繰り返し、摩耗する。近年、エンジンの高出力化などの
高性能化に伴い、ピストンリングに要求される条件はま
すます過酷なものとなっている、有鉛ガソリンを使用す
るエンジンでは燃焼により硬質の鉛化合物が生成され、
ディーゼルエンジンではカーボンなどの残渣が生成され
る。これらの生成物がリング溝内に堆積し、この堆積物
がリング上下面の摩耗を促進する。従来、リング上下面
の摩耗を防止するために、硬質クロムめっきを施したも
のが提案されているが、クロムめっきはリング上下面に
均一な厚さでかつ平坦なめっき層を形成することは難し
く、めっき後に仕上げ加工を施す必要がある。また、ク
ロムめっき層の高度はHmv800〜1000程度であ
り、耐摩耗性が十分でない場合があり、さらに優れた耐
摩耗性を有するピストンリングが望まれている。 (問題点を解決するための手段)この発明は、第1図に
示すように、ピストンリングの少なくとも上下摺動面
に、Cr2N窒化クロムとCrN窒化クロムからなる皮
膜層が形成し、また前記Cr2N窒化クロムとCrN窒
化クロムからなる皮膜層において、ピストンリング母材
表面側から複合皮膜層表面に向かって窒素の比率が段階
的あるいは連続的に増大しているピストンリングを提供
することで、上記のような問題点を解決している。 (作用)本発明ピストンリングの複合皮膜層は、窒化ガ
スの存在する減圧雰囲気の中で、クロムをターゲット材
として、スパッタリングを行うことによって得ることが
できる。スパッタリング法は、イオンプレーティング法
に比べて膜厚の制御がやり易く、しかも均一な膜厚が得
られるなどの利点がある。窒素ガス雰囲気中で、金属ク
ロムをターゲット材にしてスパッタリングを行うと、タ
ーゲット材のクロムは原子状になり、クロム原子の一部
は窒素と反応して窒化クロムとなる。本発明のような、
Cr2N窒化クロムとCrN窒化クロムからなる皮膜層
は真空容器内の窒素ガスの分圧を適当に選んで形成する
ことができる。また、真空容器内に窒素ガスを導入する
前にスパッタリングを行うと、ピストンリング母材に純
金属クロム膜の下地層が形成される。下地層が所定の厚
さになった所で徐々に窒素ガスを導入してスパッタリン
グを続けると、クロムの一部は窒化クロムに転換する。
このようにすると、ピストンリングの母材に近い方は、
密着性の良い金属クロムが形成され、摺動面に近い方は
耐摩耗性に優れている窒化クロムが多くなる。また、複
合皮膜層内の窒化クロムの量は連続的に増加するので、
金属クロム層との間での剥離が防止できる。第1表に、
母材温度を400℃とし、種々の窒素ガス分圧でスパッ
タリングを行ったとき、形成される皮膜の組織と硬度の
関係を示した。 この表から本発明のCr2N窒化クロムとCrN窒化ク
ロムからなる皮膜層は極めて高い硬さをもつことがわか
る。 (実施例) 実施例1 本発明に使用したマグネトロン型ハイレートスパッタリ
ング装置の概要を第2図に示す。母材1を母材保持具2
で保持し、ヒーター3で母材1を所定の温度に加熱す
る。母材1の上方には、ターゲット源の金属5が設置し
てある。真空容器4の側壁には窒素ガス供給口9とプラ
ズマ用アルゴンガスの導入管8が設けてある。真空容器
4内は図示しない真空ポンプにより減圧されるようにな
っている。真空容器4内にアルゴンガスを導入し1×1
0−2torr程度に減圧してボンバードにより、母材
1の表面のクリーニングを行う。次にアルゴンガスを導
入し、1×10−3torr程度に減圧して、スパッタ
リングを開始する。次に窒素ガス供給口9より窒素ガス
を導入し、スパッタリングを行う。スパッタリングされ
たターゲット源の金属5は、容器内の窒素と一部反応し
て、母材1にCr2N窒化クロムとCrN窒化クロムか
らなる皮膜層を形成する。呼び径×幅×厚さが、φ77
mm×1.5×3.1のSKD−61材のピストンリン
グを適当な間隔で並べて母材1として、以下の条件で反
応性スパッタリングを実施した。 母材温度: 400℃ スパッタ電力: 1KW 窒素ガス分圧: 1.5×10−3torr アルゴンガス分圧:1×10−3torr ターゲット材: 金属クロム 処理時間: 10分 母材バイアス: −100V 実施例2 実施例1の方法において初めは窒素ガスを導入せずにス
パッタリングを行って金属クロムの下地層を形成し2分
経過後に窒素ガスを導入してCr2N窒化クロムとCr
N窒化クロムからなる皮膜層を形成した。この処理をピ
ストンリングの上下摺動面に行い、厚さがそれぞれ6μ
mの皮膜層を形成した。本実施例1,2により得られた
ピストンリングと、比較のため、従来の硬質クロムめっ
きを施したピストンリングを水冷4サイクル4気筒、1
300ccのエンジンに組み込み7500回転、全負荷
で5時間の実機試験を行い、ピストンリング上下面の摩
耗量を測定した。 (発明の効果)測定の結果、本発明によるピストンリン
グは、従来の硬質クロムめっきを施したものに比べて、
摩耗量は約1/5であった。また、スパッタリングによ
り得られた複合皮膜層の表面は平坦で、仕上げ加工は不
要であった。このように、窒化クロムからなる複合皮膜
層を有する本発明のピストンリングは、密着性、耐摩耗
性に優れたピストンリングとして、エンジンの耐久性を
向上させる上で顕著な効果を示すことが理解できる。
膜を有する内撚機関用ピストンリングに関する。 (従来技術と問題点)内燃機関のピストンリングは、ピ
ストンの上昇下降の過程において、リング溝内での軸方
向、半径方向及び円周方向の運動を行う。ピストンリン
グの上下面は、リング溝の上下面との間で絶えず摺動を
繰り返し、摩耗する。近年、エンジンの高出力化などの
高性能化に伴い、ピストンリングに要求される条件はま
すます過酷なものとなっている、有鉛ガソリンを使用す
るエンジンでは燃焼により硬質の鉛化合物が生成され、
ディーゼルエンジンではカーボンなどの残渣が生成され
る。これらの生成物がリング溝内に堆積し、この堆積物
がリング上下面の摩耗を促進する。従来、リング上下面
の摩耗を防止するために、硬質クロムめっきを施したも
のが提案されているが、クロムめっきはリング上下面に
均一な厚さでかつ平坦なめっき層を形成することは難し
く、めっき後に仕上げ加工を施す必要がある。また、ク
ロムめっき層の高度はHmv800〜1000程度であ
り、耐摩耗性が十分でない場合があり、さらに優れた耐
摩耗性を有するピストンリングが望まれている。 (問題点を解決するための手段)この発明は、第1図に
示すように、ピストンリングの少なくとも上下摺動面
に、Cr2N窒化クロムとCrN窒化クロムからなる皮
膜層が形成し、また前記Cr2N窒化クロムとCrN窒
化クロムからなる皮膜層において、ピストンリング母材
表面側から複合皮膜層表面に向かって窒素の比率が段階
的あるいは連続的に増大しているピストンリングを提供
することで、上記のような問題点を解決している。 (作用)本発明ピストンリングの複合皮膜層は、窒化ガ
スの存在する減圧雰囲気の中で、クロムをターゲット材
として、スパッタリングを行うことによって得ることが
できる。スパッタリング法は、イオンプレーティング法
に比べて膜厚の制御がやり易く、しかも均一な膜厚が得
られるなどの利点がある。窒素ガス雰囲気中で、金属ク
ロムをターゲット材にしてスパッタリングを行うと、タ
ーゲット材のクロムは原子状になり、クロム原子の一部
は窒素と反応して窒化クロムとなる。本発明のような、
Cr2N窒化クロムとCrN窒化クロムからなる皮膜層
は真空容器内の窒素ガスの分圧を適当に選んで形成する
ことができる。また、真空容器内に窒素ガスを導入する
前にスパッタリングを行うと、ピストンリング母材に純
金属クロム膜の下地層が形成される。下地層が所定の厚
さになった所で徐々に窒素ガスを導入してスパッタリン
グを続けると、クロムの一部は窒化クロムに転換する。
このようにすると、ピストンリングの母材に近い方は、
密着性の良い金属クロムが形成され、摺動面に近い方は
耐摩耗性に優れている窒化クロムが多くなる。また、複
合皮膜層内の窒化クロムの量は連続的に増加するので、
金属クロム層との間での剥離が防止できる。第1表に、
母材温度を400℃とし、種々の窒素ガス分圧でスパッ
タリングを行ったとき、形成される皮膜の組織と硬度の
関係を示した。 この表から本発明のCr2N窒化クロムとCrN窒化ク
ロムからなる皮膜層は極めて高い硬さをもつことがわか
る。 (実施例) 実施例1 本発明に使用したマグネトロン型ハイレートスパッタリ
ング装置の概要を第2図に示す。母材1を母材保持具2
で保持し、ヒーター3で母材1を所定の温度に加熱す
る。母材1の上方には、ターゲット源の金属5が設置し
てある。真空容器4の側壁には窒素ガス供給口9とプラ
ズマ用アルゴンガスの導入管8が設けてある。真空容器
4内は図示しない真空ポンプにより減圧されるようにな
っている。真空容器4内にアルゴンガスを導入し1×1
0−2torr程度に減圧してボンバードにより、母材
1の表面のクリーニングを行う。次にアルゴンガスを導
入し、1×10−3torr程度に減圧して、スパッタ
リングを開始する。次に窒素ガス供給口9より窒素ガス
を導入し、スパッタリングを行う。スパッタリングされ
たターゲット源の金属5は、容器内の窒素と一部反応し
て、母材1にCr2N窒化クロムとCrN窒化クロムか
らなる皮膜層を形成する。呼び径×幅×厚さが、φ77
mm×1.5×3.1のSKD−61材のピストンリン
グを適当な間隔で並べて母材1として、以下の条件で反
応性スパッタリングを実施した。 母材温度: 400℃ スパッタ電力: 1KW 窒素ガス分圧: 1.5×10−3torr アルゴンガス分圧:1×10−3torr ターゲット材: 金属クロム 処理時間: 10分 母材バイアス: −100V 実施例2 実施例1の方法において初めは窒素ガスを導入せずにス
パッタリングを行って金属クロムの下地層を形成し2分
経過後に窒素ガスを導入してCr2N窒化クロムとCr
N窒化クロムからなる皮膜層を形成した。この処理をピ
ストンリングの上下摺動面に行い、厚さがそれぞれ6μ
mの皮膜層を形成した。本実施例1,2により得られた
ピストンリングと、比較のため、従来の硬質クロムめっ
きを施したピストンリングを水冷4サイクル4気筒、1
300ccのエンジンに組み込み7500回転、全負荷
で5時間の実機試験を行い、ピストンリング上下面の摩
耗量を測定した。 (発明の効果)測定の結果、本発明によるピストンリン
グは、従来の硬質クロムめっきを施したものに比べて、
摩耗量は約1/5であった。また、スパッタリングによ
り得られた複合皮膜層の表面は平坦で、仕上げ加工は不
要であった。このように、窒化クロムからなる複合皮膜
層を有する本発明のピストンリングは、密着性、耐摩耗
性に優れたピストンリングとして、エンジンの耐久性を
向上させる上で顕著な効果を示すことが理解できる。
【図面の簡単な説明】
第1図に、本発明のピストンリングを示す。
図中 1…ピストンリング
2…複合皮膜層
第2図に、本発明の実施例のマグネトロン型ハイレート
スパッタリング装置の概要を示す。 図中 1…母材(ピストンリング) 2…母材保持具 4…真空容器 5…ターゲット源 6…水冷銅パイプ 7…シャッター 8…アルゴンガス導入口 9…窒素ガス導入口
スパッタリング装置の概要を示す。 図中 1…母材(ピストンリング) 2…母材保持具 4…真空容器 5…ターゲット源 6…水冷銅パイプ 7…シャッター 8…アルゴンガス導入口 9…窒素ガス導入口
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 (1)ピストンリングの少なくとも上下摺動面に、Cr
2N窒化クロムとCrN窒化クロムからなる皮膜層が形
成されていることを特徴とするピストンリング。 (2)前記Cr2N窒化クロムとCrN窒化クロムから
なる皮膜層において、ピストンリング母材表面側から皮
膜層表面に向かって窒素の比率が段階的あるいは連続的
に増大していることを特徴とする特許請求の範囲第1項
記載のピストンリング。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5318889A JP2598878B2 (ja) | 1993-11-12 | 1993-11-12 | ピストンリング |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5318889A JP2598878B2 (ja) | 1993-11-12 | 1993-11-12 | ピストンリング |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP61069814A Division JPH0765543B2 (ja) | 1986-03-29 | 1986-03-29 | ピストンリング |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07224936A JPH07224936A (ja) | 1995-08-22 |
JP2598878B2 true JP2598878B2 (ja) | 1997-04-09 |
Family
ID=18104102
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5318889A Expired - Lifetime JP2598878B2 (ja) | 1993-11-12 | 1993-11-12 | ピストンリング |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2598878B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102004043550B4 (de) * | 2004-09-09 | 2012-02-16 | Schaeffler Technologies Gmbh & Co. Kg | Verschleißfeste Beschichtung, ihre Verwendung und Verfahren zur Herstellung derselben |
BRPI1102335A2 (pt) | 2011-05-27 | 2013-06-25 | Mahle Metal Leve Sa | elemento dotado de pelo menos uma superfÍcie de deslizamento com um revestimento para uso em um motor de combustço interna ou em um compressor |
CN103522627B (zh) * | 2013-10-12 | 2016-03-30 | 中国科学院宁波材料技术与工程研究所 | 一种阀门密封件表面的复合涂层及其制备方法 |
-
1993
- 1993-11-12 JP JP5318889A patent/JP2598878B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH07224936A (ja) | 1995-08-22 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
EXPY | Cancellation because of completion of term |