JP2003014122A - ピストンリング - Google Patents
ピストンリングInfo
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Abstract
性に優れ且つ耐スカッフ性および耐摩耗性に優れたピス
トンリングを提供する。 【解決手段】 少なくとも上面8および下面9に硬質炭
素積層皮膜2が形成されたピストンリング10であっ
て、その硬質炭素積層皮膜2は、上面8および下面9の
表面に形成された少なくともSiを含有する第1硬質炭
素皮膜11と、その第1硬質炭素皮膜11下に形成され
た少なくともWまたはW、Niを含有する第2硬質炭素
皮膜12とからなるピストンリングにより、上記課題を
解決する。このとき、第2硬質炭素皮膜12をピストン
リングの外周摺動面6に更に形成したり、更に内周面7
をも加えたピストンリングの全周に形成することもでき
る。また、第1硬質炭素皮膜11を必要に応じて第2硬
質炭素皮膜12上に形成してもよい。また、こうした各
硬質炭素皮膜には、下地皮膜を形成できる。
Description
関し、更に詳しくは、ピストンリング溝の側面との初期
なじみ性、耐スカッフ性および耐摩耗性に優れ且つAl
凝着が抑制されたピストンリングに関するものである。
い、ピストンリングにも耐摩耗性や耐スカッフ性等のさ
らなる向上が要求されている。
や上下面には、従来よりCrめっき皮膜や窒化処理層等
が形成され、耐摩耗性の向上や耐スカッフ性の改善が図
られている。また、近年においては、PVD(物理的蒸
着)法で作製されたCrN(窒化クロム)やTiN(窒
化チタン)等の硬質皮膜を採用することにより、上記の
要求に対応している。
VD法で作製された硬質皮膜がピストンリングの上下面
に形成されている場合においては、特にピストンリング
の上下面がAl合金製からなるピストンリング溝の側面
を攻撃する傾向があり、その結果、A1凝着現象を起こ
してピストンリング溝内の摩耗を増大させるおそれがあ
った。
66625号公報および特開平12−120869号公
報に開示されているように、硬質炭素皮膜(ダイヤモン
ドライクカーボン皮膜ともいわれることがある。以下同
じ。)をピストンリングの上下面に形成してAl凝着現
象を抑制することが検討されている。
ンリングの上下面は、ピストンが上下に摺動するたびに
ピストンリング溝内の側面に叩かれ、その結果、ピスト
ンリングの上下面、特に下面側にAl凝着が発生した
り、摩耗が発生しさらには促進するおそれがあるが、上
述した従来のピストンリングにおいては、上下面に形成
された硬質炭素皮膜の耐Al凝着性および耐摩耗性につ
いて十分に検討されているとはいえないものであった。
れたものであって、ピストンリング溝の側面との間の耐
Al凝着性に優れ耐摩耗性に優れたピストンリングを提
供するものである。
は、少なくとも上面および下面に硬質炭素積層皮膜が形
成されたピストンリングであって、該硬質炭素積層皮膜
は、該上面および下面の表面に形成された少なくともS
iを含有する第1硬質炭素皮膜と、該第1硬質炭素皮膜
下に形成された少なくともWまたはW、Niを含有する
第2硬質炭素皮膜とからなることに特徴を有する。
する第1硬質炭素皮膜と、その第1硬質炭素皮膜下に形
成された少なくともWまたはW、Niを含有する第2硬
質炭素皮膜とからなる硬質炭素積層皮膜が、ピストンリ
ングの少なくとも上面および下面に形成されているの
で、第1硬質炭素皮膜により耐スカッフ性の向上を図る
ことができ、第2硬質炭素皮膜により耐摩耗性の向上を
図ることができ、さらにそれらの硬質炭素皮膜によりA
l凝着現象を抑制することができる。本発明のピストン
リングは、作用の異なる2つの硬質炭素皮膜を積層した
ので、従来の単一層からなる硬質炭素皮膜に比べて積層
する各硬質炭素皮膜の個々の特性を最適なものに調整し
易いという利点があり、ピストンリングの上下面の耐A
l凝着性および耐摩耗性をより一層向上させることがで
きる。
のピストンリングにおいて、前記第2硬質炭素皮膜が、
ピストンリングの外周摺動面に更に連続して形成されて
いることに特徴を有する。また、請求項3に記載の発明
は、請求項1に記載のピストンリングにおいて、前記第
2硬質炭素皮膜が、ピストンリングの外周摺動面および
内周面に更に連続して形成されていることに特徴を有す
る。
に優れた第2硬質炭素皮膜がピストンリングの外周摺動
面に更に連続して形成されているので、シリンダライナ
の内周面に摺動接触する外周摺動面の耐摩耗性を向上さ
せることができる。また、請求項3に記載の発明によれ
ば、ピストンリングの全ての面に耐摩耗性に優れた第2
硬質炭素皮膜が連続して形成されているので、使用中に
おける第2硬質炭素皮膜のクラック及び/又は欠けを発
生させる起点が少なく、第2硬質炭素皮膜の耐剥離性を
向上させて長期間優れた耐摩耗性をピストンリングの全
周で維持することができる。
請求項3に記載のピストンリングにおいて、前記第1硬
質炭素皮膜は、前記第2硬質炭素皮膜が形成されたピス
トンリングの外周摺動面またはピストンリングの外周摺
動面および内周面の何れか一以上の面に形成されている
ことに特徴を有する。
第1硬質炭素皮膜は、耐摩耗性に優れた第2硬質炭素皮
膜が形成された外周摺動面、内周面の何れか一以上の面
に形成されているので、その第1硬質炭素皮膜の形成面
における初期なじみ性と耐スカッフ性をより一層向上さ
せることができる。
求項4の何れかに記載のピストンリングにおいて、前記
第1硬質炭素皮膜は、含有するSiの比率が、表面側か
ら第2硬質炭素皮膜側に向かって連続的又は段階的に増
加することに特徴を有する。
表面側から第2硬質炭素皮膜側に向かって連続的又は段
階的に増加する第1硬質炭素皮膜を有するので、第2硬
質炭素皮膜側のSiの比率が高い部分は、第2硬質炭素
皮膜との密着性が高くなる。その結果、第1硬質炭素皮
膜の耐剥離性を向上させることができ、第1硬質炭素皮
膜に基づく耐スカッフ性をより一層向上させることがで
きる。
求項5の何れかに記載のピストンリングにおいて、前記
ピストンリングの少なくとも外周摺動面には、スパッタ
リング皮膜、イオンプレーティング皮膜、クロムめっき
皮膜および窒化層から選択された何れかが下地皮膜また
は下地層として形成されていることに特徴を有する。
くとも外周摺動面には、硬くて靱性のあるスパッタリン
グ皮膜、イオンプレーティング皮膜、クロムめっき皮膜
および窒化層から選択された何れかが下地皮膜として形
成されているので、外周摺動面の耐摩耗性をより一層向
上させることができる。
求項6の何れかに記載のピストンリングにおいて、前記
ピストンリングの少なくとも上面および下面には、少な
くともCrを含有する下地層が形成されていることに特
徴を有する。
ついて図面を参照しつつ説明する。
3に示すように、少なくとも上面8および下面9に硬質
炭素積層皮膜2が形成されている。そして、本発明の特
徴とするところは、その硬質炭素積層皮膜2が、上面8
および下面9の表面に形成された少なくともSiを含有
する第1硬質炭素皮膜11と、その第1硬質炭素皮膜1
1下に形成された少なくともWまたはW、Niを含有す
る第2硬質炭素皮膜12とからなることにある。こうし
た構成からなる本発明のピストンリングは、第1硬質炭
素皮膜11により耐スカッフ性の向上を図ることがで
き、第2硬質炭素皮膜12により耐摩耗性の向上を図る
ことができる。
に形成されたピストンリング溝に装着され、ピストンの
上下運動(往復運動に同じ。)によってシリンダライナ
の内周面を摺動接触しながら、さらにピストンリング溝
内の側面に叩かれながら、上下運動する摺動部材であ
る。本発明のピストンリング10は、トップリング、セ
カンドリング、オイルリングの何れかであってもまたは
それらの全てであってもよい。
ている材質からなるものであればよく特に限定されな
い。したがって、いかなる材質からなるピストンリング
10に対しても本発明を適用でき、従来より好ましく用
いられている例えばステンレススチール材、鋳物材、鋳
鋼材、鋼材等にも適用できる。なお、本発明のピストン
リング10は、アルミニウム合金製のピストンに装着さ
れるピストンリングとして好ましく用いられ、また、鋳
鉄、ボロン鋳鉄、鋳鋼、アルミニウム合金等からなるシ
リンダライナに対するピストンリングとして好ましく用
いられ、本発明の所期の目的を達成することができる。
l凝着性および耐スカッフ性に優れた第1硬質炭素皮膜
11を有し、その第1硬質炭素皮膜11の下にはその第
1硬質炭素皮膜が摩耗した後に現れる耐摩耗性に優れた
第2硬質炭素皮膜12を有する。
る。
膜2における表面層を構成し、少なくともSi(ケイ
素)を含有するSi−C系の硬質炭素皮膜である。Si
を含有する第1硬質炭素皮膜11は、ピストンリング溝
の側面に対する耐Al凝着性および耐スカッフ性に優れ
ると共にピストンリング溝の側面との間の初期なじみ性
にも優れたものである。こうした特徴を有する第1硬質
炭素皮膜11は、後述する第2硬質炭素皮膜12に比べ
て耐摩耗性については若干落ちるものの、厚さの下限値
を0.5μmとすることによって、優れた耐スカッフ性
を発揮することができ、初期なじみ性も著しく改善する
ことができる。なお、第1硬質炭素皮膜11の好ましい
厚さの範囲は、0.5〜15μmであり、更に好ましく
は3〜10μmである。こうした範囲内に第1硬質炭素
皮膜の厚さを設定することによって、ピストンリングの
上下面8、9に優れた耐スカッフ性と初期なじみ性を付
与することができると共に、そうした第1硬質炭素皮膜
によりピストンリング溝の側面との間のAl凝着現象を
抑制することができる。
に限定されないが、Si:50〜70wt%好ましくは
55〜65wt%、C:残部、その他不可避不純物から
なることが好ましい。こうした第1硬質炭素皮膜11中
に含有するSiは、金属Siとして含まれていても、S
iCとして含まれていても、または、金属SiおよびS
iCとして含まれていてもよい。
後述する第2硬質炭素皮膜12を必ず有するので、第1
硬質炭素皮膜11と第2硬質炭素皮膜12とが高い密着
性をもって積層されていることが望ましい。こうした要
求を満たすため、本発明においては、第1硬質炭素皮膜
11中のSi含有比率を、表面側から第2硬質炭素皮膜
側に向かって連続的又は段階的に増加するように傾斜さ
せて形成することが好ましい。そうすることにより、少
なくともWまたは、W及びNiを含有する第2硬質炭素
皮膜12近傍の第1硬質炭素皮膜11のSi含有比率を
高くして、第1硬質炭素皮膜12と第2硬質炭素皮膜1
2との密着性を向上させることができる。その結果、耐
スカッフ性に優れた第1硬質炭素皮膜を密着性よく第2
硬質炭素皮膜上に設けることができるので、ピストンリ
ング10の上下面8、9における耐Al凝着性および耐
スカッフ性を顕著に向上させることができる。
Siの含有比率を膜厚方向に傾斜させた態様を示してい
る。図4に示すように、Siの含有比率が表面側から第
2硬質炭素皮膜側に向かって高くなるように曲線状に変
化させたり、直線状に変化させることができる。このと
き、第2硬質炭素皮膜12に接する部分の第1硬質炭素
皮膜11のSiの含有比率を高くし、およそ70〜10
0重量%とすることが好ましい。Si含有比率をこうし
た範囲内とすることにより、第2硬質炭素皮膜12との
密着性がより向上する。このとき、最外周側の第1硬質
炭素皮膜11のSi含有比率は低くなり、およそ0〜7
0重量%となる。
る。
形成された硬質炭素積層皮膜2における下層、すなわち
硬質炭素積層皮膜2における第1硬質炭素皮膜11の下
層を構成するものである。
W(タングステン)を含有するW−C系の硬質炭素皮膜
または、更にNiを含有するW−Ni−C系の硬質炭素
皮膜である。こうした第2硬質炭素皮膜12は、金属W
及び/又はWCを含有しているので、極めて耐摩耗性に
優れている。さらに、第2硬質炭素皮膜12が含有する
Wの作用により、膜厚形成能が向上し厚膜化が可能とな
る。その結果、生産性のよい耐摩耗性皮膜を形成できる
という利点がある。
ーゲット中に含有されている場合が多く、第2硬質炭素
皮膜12中に含有されやすい元素である。Niを含有す
る第2硬質炭素皮膜形成用Wターゲットはコスト削減の
観点から有利である。
μmであることが好ましく3〜20μmであることがさ
らに好ましい。こうした範囲内の厚さを有する第2硬質
炭素皮膜12は、優れた耐摩耗性を発揮することができ
る。第2硬質炭素皮膜12の厚さが1μm未満では、膜
厚が薄いので、摩耗が僅かながら進行した際にピストン
リングの上下面8、9の耐摩耗性を十分担保できないこ
とがある。一方、第2硬質炭素皮膜12の厚さが30μ
mを超えると、摺動接触中に剥離することがある。
に限定されないが、W−C系の第2硬質炭素皮膜12の
場合には、W:50〜85wt%好ましくは60〜80
wt%、C:残部、その他不可避不純物であることが、
上述した優れた作用効果の観点から好ましい。また、W
−Ni−C系の第2硬質炭素皮膜12の場合には、W:
55〜85wt%好ましくは60〜80wt%、Ni:
3〜10wt%好ましくは5〜8wt%、C:残部、そ
の他不可避不純物であることが、上述した優れた作用効
果の観点から好ましい。
膜12は、反応性スパッタリング法およびプラズマCV
D法等により成膜されるが、成膜中にガス流量を変化さ
せ、母材1側から表面側に向かって第2硬質炭素皮膜の
成分組成を連続的または段階的に徐々に変化させること
もできる。こうした手段により、厚さ方向の第2硬質炭
素皮膜の耐摩耗性を徐々に変化させることができる。
ピストンの上下運動によりシリンダライナの内周面を摺
動接触しながら且つピストンリング溝内の側面に叩かれ
ながら、上下運動するものであるが、本発明のピストン
リング10においては、上述の硬質炭素積層皮膜2が上
面8および下面9に形成されているので、先ず、表面に
形成された第1硬質炭素皮膜11の作用により、ピスト
ンリング溝の側面に対する耐スカッフ性が向上し、さら
にピストンリング溝の側面との間の初期なじみ性も改善
される。次いで、ピストンリング溝の側面との摺動接触
が進行すると、その第1硬質炭素皮膜11が徐々に摩耗
し、その第1硬質炭素皮膜11の下に形成された第2硬
質炭素皮膜12が現れる。現れた第2硬質炭素皮膜12
は、耐摩耗性に優れるので、上面および下面の摩耗が抑
制され、良好な摺動接触を長期間継続させることができ
る。しかも、こうした各硬質炭素皮膜11、12は、ピ
ストンリング溝の側面との間のAl凝着現象を抑制する
ことができる。
(c)に示すように、少なくとも上面8および下面9に
硬質炭素積層皮膜2を有するものであるが、必ずしも上
面8および下面9にのみ硬質炭素積層皮膜2が形成され
ている必要はない。したがって、上下面8、9以外の
面、すなわち、ピストンリングの外周摺動面6や内周面
7にも硬質炭素積層皮膜2を形成することができる。
膜2がピストンリング10の上下面8、9および外周摺
動面6に連続して形成される場合には、ピストンリング
溝内の側面とピストンリングの上下面8、9との間にお
ける耐Al凝着性、耐スカッフ性および耐摩耗性を向上
させることができると共に、シリンダライナの内周面と
ピストンリングの外周摺動面6との間における耐スカッ
フ性および耐摩耗性の向上を図ることができる。
膜2がピストンリング10の上下面8、9、外周摺動面
6および内周面7に連続して形成される場合には、ピス
トンリング溝内の側面とピストンリングの上下面8、9
との間における耐スカッフ性と耐摩耗性の向上およびA
l凝着現象を抑制することができると共に、シリンダラ
イナの内周面とピストンリングの外周摺動面6との間に
おける耐スカッフ性および耐摩耗性の向上を図ることが
できる。しかも、ピストンリングの内周面7を含めた全
周全てに硬質炭素積層皮膜2が連続して形成されている
ので、使用中における硬質炭素積層皮膜2のクラック及
び/又は欠けを発生させる起点が少なく、硬質炭素積層
皮膜2の耐剥離性を向上させることができる。その結
果、ピストンリングを長期間使用した場合であっても、
優れた耐摩耗性を発揮することができる。
の外周摺動面6に形成される硬質炭素積層皮膜2の厚さ
は、0.3〜80μmであることが好ましい。この硬質
炭素積層皮膜2のうち、耐スカッフ性に優れた第1硬質
炭素皮膜11の厚さは少なくとも0.1μmであればよ
く、耐摩耗性に優れた第2硬質炭素皮膜12の厚さは少
なくとも0.2μmであればよい。ピストンリング10
の外周摺動面6に形成される硬質炭素積層皮膜2の厚さ
を0.3〜80μmとしたのは、シリンダライナの内周
面との間の耐摩耗性および耐スカッフ性、および製造上
の観点によるものである。具体的には、外周摺動面6に
形成される硬質炭素積層皮膜2の厚さが0.3μm未満
では、結果的に第2硬質炭素皮膜12の膜厚が薄くな
り、シリンダライナの内周面との間で耐摩耗性の向上が
図れないことがある。一方、外周摺動面6に形成される
硬質炭素積層皮膜2の厚さが80μmを超えると、形成
された硬質炭素積層皮膜2に剥離が発生し、十分な耐摩
耗性を発揮できないことがある。
の内周面7に形成される硬質炭素積層皮膜2の厚さは、
0.015μm以上であることが好ましい。この硬質炭
素積層皮膜2のうち、第1硬質炭素皮膜11の厚さは少
なくとも0.005μmであればよく、第2硬質炭素積
層皮膜12の厚さは少なくとも0.01μmであればよ
い。0.015μm以上の硬質炭素積層皮膜2を内周面
7に形成したピストンリング10は、硬質炭素積層皮膜
2の耐剥離性を向上させることができる。また、内周面
7に形成される硬質炭素積層皮膜2の厚さは、後述のよ
うに、成膜時に隣接するピストンリング間の隙間を大き
くすることによって厚くすることができるので、外周摺
動面6や上下面8、9の厚さとの差を適宜調整できる。
2(a)(b)に示すように、上述の第2硬質炭素皮膜
12を、ピストンリングの外周摺動面6にも、さらには
内周面7にも連続して形成することが好ましい。
た第2硬質炭素皮膜12を単一層としてピストンリング
10の外周摺動面6に更に連続して形成する場合には、
シリンダライナの内周面とピストンリングの外周摺動面
6との間の耐摩耗性の改善を図ることができる。
た第2硬質炭素皮膜12をピストンリングの全ての面に
単一層として連続して形成する場合には、使用中におけ
る第2硬質炭素皮膜のクラック及び/又は欠けを発生さ
せる起点が少なく、第2硬質炭素皮膜の耐剥離性を向上
させて長期間優れた耐摩耗性を維持することができる。
2(c)に示すように、耐摩耗性に優れた第2硬質炭素
皮膜12をピストンリングの全ての面に単一層として連
続して形成し、第1硬質炭素皮膜11を上面8及び下面
9以外の外周摺動面6にも更に連続して形成して積層さ
せてもよい。すなわち、第1硬質炭素皮膜11を、第2
硬質炭素皮膜12が更に連続して形成されたピストンリ
ングの外周摺動面6またはピストンリングの外周摺動面
6および内周面7の何れか一以上の面に形成して、部分
的に積層させてもよい。第1硬質炭素皮膜11を、耐摩
耗性に優れた第2硬質炭素皮膜12が更に連続して形成
された外周摺動面6、内周面7の何れか一以上の面に形
成することにより、その積層部分は上述した硬質炭素積
層皮膜2を構成し、その第1硬質炭素皮膜形成面におけ
る初期なじみ性と耐スカッフ性さらには耐摩耗性をより
一層向上させることができる。
等を形成した場合における第2硬質炭素皮膜12の厚さ
は、ピストンリング10の外周摺動面6については、2
〜50μmであることが好ましい。ピストンリング10
の外周摺動面6に形成される第2硬質炭素皮膜12の厚
さを2〜50μmとしたのは、シリンダライナの内周面
との間の耐摩耗性および製造上の観点によるものであ
る。
成される第2硬質炭素皮膜12の厚さについては、耐摩
耗性の観点から少なくとも0.01μm以上であること
が好ましく、より好ましくは0.3〜27μmの範囲内
である。0.01μm以上の第2硬質炭素皮膜12を内
周面7に形成したピストンリング10は、第2硬質炭素
皮膜12の耐剥離性を向上させることができる。また、
内周面7に形成される第2硬質炭素皮膜12の厚さは、
後述のように、成膜時に隣接するピストンリングの隙間
が大きくなるように配置することによって厚くすること
ができるので、外周摺動面6や上下面8、9の厚さとの
差を適宜調整できる。
に応じて形成する第1硬質炭素皮膜の厚さは、初期なじ
み性と耐スカッフ性の観点から、0.005μm以上で
あればよく、好ましくは0.15〜14μmである。
びその厚さの調整方法について説明する。
硬質炭素皮膜12は、反応性イオンプレーティング法や
反応性スパッタリング法等のいわゆるPVD法によって
形成することができる。また、プラズマCVD法等のC
VD法によっても形成することができる。さらに、PV
D法とCVD法との組合せによっても形成することがで
きる。こうしたPVD法やCVD法は、ワークの形状要
因に基づいて、ワークの各部で厚さの差が生じることが
あり、特に、本発明のピストンリング10のように、例
えば反応性イオンプレーティング装置や反応性スパッタ
リング装置のチャンバー内の治具に取り付けられて成膜
されるワークにあっては、外周摺動面6が最も厚くなり
やすく、上面8と下面9が続き、内周面7が最も薄くな
りやすい。そうした厚さの差は、ピストンリングの母材
1を治具に取り付ける際に、隣接するピストンリングの
母材1との隙間を調整することによってコントロールす
ることができ、例えば、その隙間を大きくすることによ
って各々の面の厚さの差を小さくでき、隙間を小さくす
ることによって各々の面の厚さの差を大きくすることが
できる。なお、本発明においては、上面8および下面9
における硬質炭素積層皮膜2の厚さを100(指数)と
したときに、外周摺動面6における硬質炭素積層皮膜2
または第2硬質炭素皮膜12の厚さを100〜200
(指数)とすることが好ましく、また、内周面7におけ
る硬質炭素積層皮膜2または第2硬質炭素皮膜12の厚
さを1〜99(指数)とすることが好ましい。
いては、硬質炭素積層皮膜2または第2硬質炭素皮膜を
内周面7に形成することにより、ピストンリング10の
摺動時におけるオイル焼けに基づくすすの付着の問題を
解決することができるという利点がある。すなわち、従
来においては、ピストンリングとピストンリング溝との
間で起こるオイル焼けによって発生したすすが、ピスト
ンリングの下面9および内周面7に付着または凝着し
て、ピストンリングを拘束してしまうことがあった。こ
うしたことは、ピストンリングとピストンリング溝との
間にすすがたまりやすい矩形形状のピストンリングの場
合に顕著であり、ハーフキーストンリングや、ディーゼ
ルエンジンに好ましく採用されているフルキーストンリ
ングの場合であっても同様な傾向を示した。こうしたす
すの付着の問題に対して、本発明のピストンリング10
は、全周、特にこうしたすすの問題が起こる下面9およ
び内周面7に硬質炭素積層皮膜2または第2硬質炭素皮
膜12を形成することができるので、すすが付きにく
く、たとえ付着したとしても容易に砕くことができ、す
すを排除し易くなる。その結果、すすの付着を防止する
ことができ、ピストンリングが拘束されるのを防ぐこと
ができるという顕著な効果を有している。
する。
のピストンリング10の少なくとも外周摺動面6には、
スパッタリング皮膜、イオンプレーティング皮膜、クロ
ムめっき皮膜および窒化層から選択された何れかを下地
皮膜または下地層(以下、下地皮膜または下地層を、
「下地皮膜3」という。)として形成することができ
る。
ても、外周摺動面6、上面8および下面9に形成して
も、外周摺動面6、内周面7、上面8および下面9の全
周に形成してもよく、適宜必要に応じて設けることがで
きる。
グ皮膜、クロムめっき皮膜および窒化層から選択された
何れかの下地皮膜3を上述した硬質炭素積層皮膜2また
は第2硬質炭素皮膜12の下地皮膜として外周摺動面6
に形成すれば、外周摺動面6の耐摩耗性をより向上させ
ることができるので特に好ましいが、それらの硬質炭素
積層皮膜2または第2硬質炭素皮膜12が形成されてい
ない場合においても表面皮膜として外周摺動面6に形成
することが好ましく、外周摺動面6に好ましい耐摩耗性
を付与することができる。
ング法で形成されるイオンプレーティング皮膜であり、
特に、CrN、Cr2N、TiN、Cr−O−N、Cr
−B−N等の硬質皮膜であることが好ましい。イオンプ
レーティング皮膜は、硬くて靱性があるので、摺動面と
して作用するピストンリング10の外周摺動面6の耐摩
耗性を更に向上させることができる。なお、イオンプレ
ーティング法の代わりに反応性スパッタリング法等の薄
膜形成法によって形成された下地皮膜3であってもよ
い。こうした下地皮膜3の厚さは、5〜50μm程度で
あることが好ましい。
についても特に限定されない。窒化層においては、イオ
ン窒化層でも、ガス窒化層でもよく、その形成手段には
特に限定されない。
面及び下面に形成される下地層としては、少なくともC
rを含有するものであることが好ましい。硬質炭素積層
皮膜2または硬質炭素皮膜12の下地層として少なくと
もCrを含有する皮膜を形成することで、下地のピスト
ンリング母材1と硬質炭素積層皮膜2または硬質炭素皮
膜12との密着性を向上させることができる。この少な
くともCrを含有する下地層は、スパッタリング法、イ
オンプレーティング法またはCrめっき法により形成す
るのが望ましい。
方法の一例について説明する。
ピストンリング母材1を反応性スパッタリング装置のチ
ャンバー内の取付治具にセットし、そのチャンバー内を
真空引きする。その後、取付治具を回転させつつアルゴ
ン等の不活性ガスを導入し、イオンボンバードメントに
よってピストンリング母材1の表面を清浄化する。その
後、先ず、Crターゲットをイオン化したアルゴン等で
スパッタリングし、チャンバー内の蒸発したCr原子を
ピストンリング母材1上に析出させ、次いで、炭素源で
あるメタン等の炭化水素ガスをチャンバー内に導入し、
WおよびNiが含まれている金属ターゲットをイオン化
したアルゴン等でスパッタリングし、チャンバー内の炭
素原子と蒸発した金属原子とが結合してピストンリング
母材1上に少なくともWおよびNiを含有する皮膜とし
て析出させ、耐摩耗性に優れた第2硬質炭素皮膜12を
形成する。WおよびNiの含有比率は、それらの元素の
蒸発速度および反応性ガスの圧力等を調整することによ
って制御される。この場合において、第2硬質炭素皮膜
12を形成しない面にはマスキング等の処理を施す。
第2硬質炭素皮膜12が形成されたピストンリングをプ
ラズマCVD装置のチャンバー内の取付治具にセット
し、そのチャンバー内を真空引きする。その後、取付治
具を回転させつつアルゴン等の不活性ガスを導入し、イ
オンボンバードメントによって第2硬質炭素皮膜が形成
されたピストンリングの表面を清浄化する。その後、炭
素源であるメタン等の炭化水素ガスをチャンバー内に導
入し、Siが含まれているシランガス等を導入して、プ
ラズマで活性化し、チャンバー内の炭素原子と蒸発した
金属原子とが結合してピストンリング上に少なくともS
iを含有する皮膜として析出させ、耐スカッフ性に優れ
た第1硬質炭素皮膜11を形成する。Siの含有比率
は、Si元素を含む反応性ガスの圧力等を調整すること
によって制御される。この場合においても、第1硬質炭
素皮膜11を形成しない面にはマスキング等の処理を施
す。
ティング皮膜、クロムめっき皮膜および窒化層の何れか
を下地皮膜3として有するピストンリング10は、そう
した下地皮膜3を予めスパッタリング装置、イオンプレ
ーティング装置、クロムめっき装置、窒化装置等によっ
て形成し、その後、上述の反応性スパッタリング装置等
に供して硬質炭素皮膜を形成して製造される。
更に詳しく説明する。
のピストンリング母材1を作製し、その母材1上の少な
くとも上下面8、9に硬質炭素積層皮膜2を反応性イオ
ンプレーティング装置により形成した。上下面8、9以
外の面には、硬質炭素積層皮膜2または第2硬質炭素皮
膜12を任意に形成し、さらに必要に応じて第1硬質炭
素皮膜11を任意に形成した。下地皮膜3を有したピス
トンリングとする場合には、予め、クロムめっき皮膜、
窒化処理層、イオンプレーティング皮膜の何れかを形成
した。各硬質炭素皮膜および各下地皮膜3の形成条件を
以下に示す。
−Ni−C系とし、ターゲットおよび炭素含有ガス圧な
どの反応条件を制御することによって、W:75wt
%、Ni:8wt%、C:残部、および不可避不純物か
らなる組成とした。第1硬質炭素皮膜11はSi−C系
とし、ターゲットおよび炭素含有ガス圧などの反応条件
を制御することによって、Si:60wt%、C:残
部、および不可避不純物からなる組成とした。ピストン
リングの上下面8、9には第1硬質炭素皮膜11および
第2硬質炭素皮膜12からなる硬質炭素積層皮膜2が少
なくとも形成されているように各実施例を構成した。
電解めっきにより、厚さ150μmのクロムめっき皮膜
を形成した。その後、クロムめっき皮膜の表面を研削加
工し、研磨ペーパーを用いた表面研磨を行い、粗さ1μ
mRzとなるとように調整した。最終的な皮膜厚さを1
20μmとした。形成されたクロムめっき皮膜のビッカ
ース硬さはHv900であった。
成した。アンモニア分解ガス雰囲気中で590℃×6時
間保持し、さらに、540℃×2時間保持して、厚さ1
00μmのガス窒化層を形成した。その後、窒化層の表
面を研削加工し、研磨ペーパーを用いた表面研磨を行
い、粗さ1μmRzとなるとように調整した。最終的な
皮膜厚さを70μmとした。形成された窒化層のビッカ
ース硬さはHv1100であった。
ティング法により、主に{200}に配向した厚さ30
μmのCrN皮膜を形成した。その後、イオンプレーテ
ィング皮膜の表面を研削加工し、研磨ペーパーを用いた
表面研磨を行い、粗さ1μmRzとなるとように調整し
た。最終的な皮膜厚さを20μmとした。形成されたイ
オンプレーティング皮膜のビッカース硬さはHv150
0であった。
た。
ストンリング母材1を作製し、その母材1の全周に窒化
層を上記実施例と同じ方法により形成した。外周摺動面
6には、厚さ30μmのイオンプレーティング皮膜を形
成した。窒化層およびイオンプレーティング皮膜の形成
条件は上記実施例と同様にした。こうして比較例1のピ
ストンリングを作製した。作製した比較例1の構成を表
1に示した。
耗試験機を使用し、試験片のほぼ半分を油に浸漬し、相
手材を接触させ、荷重を負荷して行った。試験片として
は、アムスラー試験片を用いた。このアムスラー試験片
は、実施例1〜8および比較例1のピストンリングと同
様の処理を施したものを使用した。各試験片を用いて摩
耗試験を行い、耐摩耗性の評価を行った。試験条件は、
潤滑油:クリセフH8(1号スピンドル油相当品)、油
温:80℃、周速:1m/秒(478rpm)、荷重:
150kgf、試験時間:7時間の条件下で、ボロン鋳
鉄を相手材として行った。このボロン鋳鉄からなる相手
材は、所定に形状に研削加工した後、研削砥石の細かさ
を変えて順次表面研削を行い、最終的に2μmRzとな
るように調整した。摩耗量の測定は、粗さ計による段差
プロファイルで摩耗量(μm)を測定して評価した。
摩耗量と実施例1〜8に対応する各試験片の摩耗量とを
それらの相対比として比較し、比較例1に対応する試験
片の結果に対する摩耗指数として評価した。従って、各
試験片の摩耗指数が100より小さいほど摩耗量が少な
いことを表す。実施例1〜8に対応する各試験片は、比
較例1に対応する試験片よりも僅かに摩耗指数が悪い
が、比較例1に対応する試験片の結果とほぼ同等であ
り、大きな問題が発生することはない。結果を表2に示
した。
ラー型摩耗試験機を使用し、試験片に潤滑油を付着さ
せ、スカッフ発生まで荷重を負荷させて行った。試験片
としては、アムスラー試験片を用いた。このアムスラー
試験片は、実施例1〜4、6および比較例1のピストン
リングと同様の処理を施したものを使用した。各試験片
を用いてスカッフ試験を行い、耐スカッフ性の評価を行
った。試験条件は、潤滑油:クリセフH8(1号スピン
ドル油相当品)、周速:1m/秒(478rpm)の条
件下で、ボロン鋳鉄を相手材として行った。このボロン
鋳鉄も上述の方法により最終的に2μmRzとなるよう
に調整した。
片のスカッフ発生荷重を100とし、実施例1〜4、6
に対応する各試験片のスカッフ発生荷重を比較例1に対
応する試験片の結果に対する耐スカッフ指数として比較
した。従って、実施例1〜4、6に対応する各試験片の
耐スカッフ指数が100より大きいほど、スカッフ発生
荷重が大きくなり、比較例1に対応する試験片よりも耐
スカッフ性に優れることとなる。外周摺動面に硬質炭素
積層皮膜を有する実施例1〜4に対応する各試験片の耐
スカッフ指数は、220であり、比較例1に対応する試
験片よりも著しく耐スカッフ性に優れていた。結果を表
2に示した。
高温弁座摩耗試験機51を使用して行った。すべりたた
き試験片としては、実施例1〜8および比較例1と同様
の処理を施したものを使用し、たたき摩耗量の評価を行
った。試験条件は、ストローク:4mm、繰り返し速
度:500回/分、リング回転数:3rpm、試験時
間:10時間、ピストン材温度:340℃、ピストン
材:AC8Aの条件下で行った。なお、凝着の有無は、
表面を15倍に拡大して観察し、評価した。ここで、
「すべりたたき試験」とは、ピストン材53を試験機5
1に対して軸方向移動不能に固定し、ピストンリング材
52をピストン材53に同心に装着し、ピストンリング
材52の内周面側に備わっているシリンダライナ相当の
鋳鉄製円棒55を軸方向に往復させることにより、ピス
トンリング材52に、回転しつうピストン材53を叩く
動作モードを付与する試験である。試験機51は、被験
材加熱用のヒータ54を有しており、実際に燃料を燃焼
させずともエンジン内の燃焼時の高温状態を再現するこ
とができ、ピストン材の状態変化を模すことができる。
この試験により、ピストン側摩耗(ピストン材の摩耗
量)、ピストンリング摩耗(ピストンリング材の摩耗
量)を評価した。
摩耗指数で表した。その値は、比較例1のピストンリン
グのたたき試験の摩耗量の結果を100とし、実施例1
〜8の各試験片の結果を比較例1の結果に対する摩耗指
数として比較した。従って、実施例1〜8の摩耗指数が
100より小さいほど、摩耗量が小さくなり、比較例1
よりも耐摩耗性に優れることとなる。上下面に硬質炭素
積層皮膜を有する実施例1〜8のピストンリングの摩耗
指数は、60または80であり、比較例1の試験片より
も著しく耐摩耗性に優れていた。その結果を表2に示
す。
R式衝撃試験装置(特公昭36−19046号、めっき
密着度の定量的試験装置)の改良試験機を使用し、表面
に1回当たり43.1mJ(4.4kgf・mm)の衝
撃エネルギーを加え、剥離発生までの回数で評価した。
試験片としては、上述の実施例1〜3、5、7のピスト
ンリングを使用した。各試験片を用いて耐剥離性試験を
行い、耐剥離性の評価を行った。剥離の有無は、表面を
15倍に拡大して観察し、評価した。図6は、測定に使
用したNPR式衝撃試験装置を示す。なお、図6におい
て、21はピストンリング、22は圧子、23は当て金
である。
回数を100とし、実施例1〜3、5の各試験片の剥離
発生回数を実施例7の結果に対する耐剥離性指数として
比較した。従って、実施例1〜3、5の各試験片の耐剥
離性指数が100よりも大きくなると、実施例7の試験
片よりも多い回数で剥離が発生することとなるので、耐
剥離性に優れることとなる。実施例1〜3、5の耐剥離
指数は、105〜110であり、実施例7のピストンリ
ングに比べ、耐剥離性に優れていた。結果を表2に示し
た。
は、比較例1のピストンリングに比べ、その何れも上下
面にAl凝着の発生はみられなかった。また、上下面の
耐摩耗性は著しく向上した。また、外周摺動面の耐摩耗
性および耐スカッフ性は、硬質炭素積層皮膜が形成され
ることにより、耐スカッフ性において著しく向上した。
また、全周面に硬質炭素積層皮膜を形成することによ
り、耐剥離性にも優れていた。
リングによれば、少なくともSiを含有する耐スカッフ
性に優れた第1硬質炭素皮膜と、その第1硬質炭素皮膜
下に形成された少なくともWまたはW、Niを含有する
耐摩耗性に優れた第2硬質炭素皮膜とからなる硬質炭素
積層皮膜が、ピストンリングの上下面に少なくとも形成
されているので、第1硬質炭素皮膜により耐スカッフ性
の向上を図ることができ、第2硬質炭素皮膜により耐摩
耗性の向上を図ることができる。本発明のピストンリン
グは、作用の異なる2つの硬質炭素皮膜を積層したの
で、従来の単一層からなる硬質炭素皮膜に比べて、積層
する各硬質炭素皮膜の個々の特性を最適なものに調整し
易いという利点があり、Al凝着現象の抑制効果に加
え、摺動時の初期なじみ性、耐スカッフ性および耐摩耗
性をより一層向上させることができる。
開発が予想される高出力、高温高負荷のエンジンにも十
分に使用することができ、その効果は甚大である。
る。
である。
ストンリングの他の例を示す断面図である。
態様の例である。
Claims (7)
- 【請求項1】 少なくとも上面および下面に硬質炭素積
層皮膜が形成されたピストンリングであって、該硬質炭
素積層皮膜は、該上面および下面の表面に形成された少
なくともSiを含有する第1硬質炭素皮膜と、該第1硬
質炭素皮膜下に形成された少なくともWまたはW、Ni
を含有する第2硬質炭素皮膜とからなることを特徴とす
るピストンリング。 - 【請求項2】 前記第2硬質炭素皮膜が、ピストンリン
グの外周摺動面に更に連続して形成されていることを特
徴とする請求項1に記載のピストンリング。 - 【請求項3】 前記第2硬質炭素皮膜が、ピストンリン
グの外周摺動面および内周面に更に連続して形成されて
いることを特徴とする請求項1に記載のピストンリン
グ。 - 【請求項4】 前記第1硬質炭素皮膜は、前記第2硬質
炭素皮膜が形成されたピストンリングの外周摺動面また
はピストンリングの外周摺動面および内周面の何れか一
以上の面に形成されていることを特徴とする請求項2ま
たは請求項3に記載のピストンリング。 - 【請求項5】 前記第1硬質炭素皮膜は、含有するSi
の比率が、表面側から第2硬質炭素皮膜側に向かって連
続的又は段階的に増加することを特徴とする請求項1乃
至請求項4の何れかに記載のピストンリング。 - 【請求項6】 前記ピストンリングの少なくとも外周摺
動面には、スパッタリング皮膜、イオンプレーティング
皮膜、クロムめっき皮膜および窒化層から選択された何
れかが下地皮膜または下地層として形成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のピ
ストンリング。 - 【請求項7】 前記ピストンリングの少なくとも上面お
よび下面には、少なくともCrを含有する下地層が形成
されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何
れかに記載のピストンリング。
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- 2001-06-29 JP JP2001199886A patent/JP4374154B2/ja not_active Expired - Fee Related
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