JP2597931B2 - 高速度工具鋼のチタンコーティング被膜の除去剤 - Google Patents

高速度工具鋼のチタンコーティング被膜の除去剤

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    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23GCLEANING OR DE-GREASING OF METALLIC MATERIAL BY CHEMICAL METHODS OTHER THAN ELECTROLYSIS
    • C23G1/00Cleaning or pickling metallic material with solutions or molten salts
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速度工具鋼の加工物
に被覆されたチタン、窒化チタン、炭化チタン等のチタ
ン化合物のコーティング被膜(以下、チタンコーティン
グ被膜という)を素材の硬度等の表面品質を劣化させる
ことなく除去を容易にし、しかも再コーティングを可能
ならしめることを目的としたコーティング被膜の化学的
除去剤に関するものである。
【0002】
【従来技術】高速度工具鋼に窒化チタン等の硬質コーテ
ィング被膜を施した加工物は、耐摩耗品として切削工具
を始めとして、種々の分野でその使用が盛んになってい
るが、摩耗が進行したときはこの摩耗部分に所要の再整
形を加えて使用されることが普通である。これは主とし
て研削加工によってなされる。しかしながら、チタンコ
ーティング被覆を施した加工物の場合、チタン化合物の
難削性のために、研削加工では新品と同じ形状を得るこ
とが困難である。さらに、窒化チタン等のコーティング
被覆膜をめっきの剥離のように化学的処理方法で除去す
ると、加工物の母材である高速度工具鋼に含まれている
タングステン、モリブデン等の化合物が母材表面から溶
出し、これにより母材である高速度工具鋼表面の硬度の
低下等の性状劣化を伴うという問題が生ずるので、化学
的処理方法を行うことは殆どなされていない。例えば、
既存のチタンの化学処理液のほとんどが酸化被膜除去、
光沢化処理剤(特開昭60−207725号、特開昭6
2−167895号、特開平1−272785号参照)
であり、高速度工具鋼素地の肌荒れが激しい。また鉄素
地用と称するものにおいても、除去処理時間が長くかか
り、しかも高速度工具鋼の表面組成成分の溶出があり、
硬度低下等に起因する品質低下が避けられない。そこ
で、主として研削加工によって被膜の除去がなされてい
るのが実情である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、チタン
コーティング被膜を施した加工物に研削加工を行って
も、上述のように、チタン化合物の難削性が原因して研
削が十分になされず、新品と同じ形状を得ることは困難
である。しかも、研削加工は部分的にしか実施できない
のであり、加工物の再コーティングは新品時に施したコ
ーティング被膜上に再コーティングする他はない。この
ため、再コーティング加工を行っても高い密着度が得ら
れず、高速度工具鋼加工物の性能低下を招いている。さ
らに、上記のように研削加工に代表される機械加工以外
にめっきの剥離のように、チタンコーティング被膜が化
学的処理方法で除去されることは稀である。
【0004】また、チタンコーティング被膜の除去に当
たって、研削加工を行っても作業性が悪く、また、コー
ティング被膜全面を除去するには新品を製作するのと同
程度の多くの工数をかけなければならず、寸法、形状の
再現性も不十分である。現在行なわれている部分的除去
方法では、除去されなかったチタンコーティング被膜が
再生品の性能低下の要因となっている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、高速度工具鋼
の表面性状の劣化を引起こすことなく、チタンコーティ
ング被膜の除去を可能ならしめ、再コーティングに必要
な清浄な素地面を得るチタンコーティング被膜の除去剤
を得ることを目的としてなされたチタンコーティング被
膜の除去剤に関する。本発明に係る除去剤は高速度工具
鋼のチタン、窒化チタン、炭化チタン等のチタン化合物
のコーティング被膜を重合リン酸アルカリ塩、ヒドロキ
シ・カルボネート系有機酸アルカリ塩、エチレン・ジア
ミン・酢酸アルカリ塩、水酸化カリウム又は水酸化ナト
リウム、チオグリコール酸アルカリ塩、過酸化水素を含
有する混合水溶液に浸漬することにより高速度工具鋼の
チタンコーティング被膜の除去剤を可能としたものであ
る。
【0006】さらに、上記の混合水溶液に10〜40°
Cの温度範囲で、浸漬することにより加工物の高速度工
具鋼の素地を劣化させることなくチタンコーティング被
膜を除去できるのである。この混合液に含まれる重合リ
ン酸アルカリ塩は、ピロリン酸、トリポリ・リン酸、テ
トラポリ・リン酸のアルカリ塩を示し、ヒドロキシ・カ
ルボネート系有機酸アルカリ塩は、具体的にはグルコン
酸、グリコール酸、クエン酸等のアルカリ塩がある。
【0007】また、重合リン酸アルカリ塩は、タングス
テン、モリブデン等のまたはこれらの化合物の溶出を抑
制するのに効果があるが、その濃度が1重量%以下で
は、その効果が弱く、長時間浸漬で溶出が顕著であり、
20%以上になると重合リン酸アルカリ塩の完全な溶解
が得られられず、除去速度が遅くなる。そこで、水溶液
中の重合リン酸アルカリ塩を1〜20重量%に限定し
た。
【0008】ヒドロキシ・カルボネート系有機酸アルカ
リ塩は、チタンコーティング被膜の除去速度に効果があ
るが、1重量%以下では、除去が完全ではなく水酸化チ
タンの沈着が発生し、素地が白化することがある。10
重量%以上になると素地組成成分の溶出が認められる。
そこで、ヒドロキシ・カルボネート系有機アルカリ塩の
1種以上を1〜10重量%に限定した。
【0009】エチレン・ジアミン・酢酸アルカリ塩は、
除去速度促進に効果があるが、その濃度が2重量%以下
では、その効果が弱く、15重量%以上になると素地の
肌荒れがみられる。そこで、エチレン・ジアミン・酢酸
アルカリ塩を2〜15%に限定した。
【0010】水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム(以
下「水酸化アルカリ」と記す)は過酸化水素を還元剤と
して作用させる効果があるが、その濃度が0.1重量%
以下では、除去速度が遅く、5重量%以上になるとまた
除去速度がおそくなる。それに素地が黒く変色してく
る。そこで、水酸化アルカリを0.1〜5重量%に限定
した。
【0011】チオグリコール酸アルカリ塩は、素地の除
錆効果とエチレン・ジアミン・酢酸アルカリ塩との相互
作用により除去速度を促進する効果がある。その濃度
は、0.05〜0.5重量%において有効である。そこ
で、チオグリコール酸アルカリ塩を0.05〜0.5重
量%に限定した。
【0012】過酸化水素は、アルカリ溶液中でIV族元素
のチタンと過酸化物を形成し、過酸化水素の濃度が3重
量%以下では、除去速度が遅過ぎ、7重量%以上では、
安定した除去速度が得られず、過酸化水素の分解反応に
よる熱で処理溶液の温度上昇とともに素地の肌荒れが激
しくなる。そこで、過酸化水素を3〜7%に限定した。
【0013】なお、安定したチタンコーティング被膜の
除去速度を得るための処理温度は、10〜40℃の範囲
であり、処理温度が低いほど除去速度が遅く、温度が高
いほど素地の表面性状が悪くなる。また、除去速度は油
分付着等の清浄度の程度にもよるが、1〜2時間/0.
001mmの範囲である。
【0014】
【実施例】本発明に関する除去剤の組成の実施例を示す
と次のようである。 .主剤 :水酸化カリウム 15g/l .酸化還元剤 :過酸化水素 10〜20% .イオン封止剤:グルコン酸Na 50g イオン封止剤:EDTA・4Na 30g/l .腐食防止剤 :チオグリコール酸Na 1g/l .溶出抑制剤 :トリポリリン酸Na 50g/l .反応起動剤 :シュウ酸NH 5g/l 除去剤の性状 :無色・液状─アルカリ性(PH 12.9) 比重(1.095)[20℃]
【0015】窒化チタンコーティングが施された直径6
mmの高速度鋼製ドリルを試料として次のような条件で
窒化チタンの除去を行った。 1)処理条件 濃度:原液 外観・性状:無色,液状(アルカリ性,PH12.9) 比重:1.095(20℃) 温度:10℃〜40℃ 時間:12時間以内 2)処理槽 耐熱性プラスチック槽 3)ランニング 10dm/1以下 本発明剤100V%+過酸化水素水20V% ガスが発生した場合、直ちに過酸化水素を添加した(1
回の添加量10V%以下)除膜後、充分水洗し防錆処理
を行った。
【0016】(1)結果 .発明によれば、処理液がドリル性能に及ぼす影響は
表1に示すようになった。また、コーティグ除膜後の表
面硬度を調べたところ、試料5個平均値でみると、ベー
ス硬度がHV(100g)855であり、除膜後の表面
硬度は同じく852であり、除膜剤による表面硬度の影
響は認められなかった。
【0017】
【表1】
【0018】.TiN除膜時のドリルの切削性能試験
を下記により行った。 切削条件 使用ドリル:G.SD φ6.0mm 被削材 :SNC 836(HB262〜288)20mm 切削速度 :V=18.8/min(1000r/min) 送り量 :f=0.1mm/r(100mm/min) 切削油剤 :水溶性エマルジョン 除膜後の切削性能は、図1に示す通りであった。
【0019】
【図1】
【0020】.TiN除膜後、再コーティングしたド
リルの切削性能試験を行ったところ、図2に示す通りの
結果を得た。 切削条件 使用ドリル:G.SD φ6.0mm 被削材 :SNC 836(HB262〜288)20mm 切削速度 :V=37.7/min(2000r/min) 送り量 :f=0.1mm/r(100mm/min) 切削油剤 :水溶性エマルジョン これによれば、除去剤による切削性能の影響は認められ
なかった。
【0021】
【図2】
【0022】本発明に係るチタンコーティング被膜の除
去剤の他の実施例を表2及び表3に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【発明の効果】本発明に係るTi除去剤は上記のような
組成を有し、浸漬処理をするのみで、チタンコーティン
グ被膜を除去できるので、処理が極めて簡単に行うこと
が可能となった。しかも本発明に係るチタンコーティン
グ被膜の化学的除去液は表面性状を劣化することなく有
効に作用するので、工具としての性能が損なわれること
がなく、新品と同等以上の性能を発揮するのである。さ
らに、コーティング装置の治工具に付着したチタンコー
ティング被膜の除去にも応用可能であり、コーティング
装置の保守工数の削減を図ることできる。さらに、従来
の機械的除去方法に伴う粉塵の発生もなく、作業環境の
改善を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る除去剤による除膜時のものと
ーティングを施していない(無処理の)新品との切削性
能の比較図である。
【図2】この発明に係る除去剤による除膜後再コーティ
ングしたものと、無処理品、除膜前のものの切削性能、
及び除膜後に除去液に長時間浸漬し、再コーティングし
たものの切削性能の比較図である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重合リン酸アルカリ塩を1〜20重量
    %、ヒドロキシ・カルボネート系有機酸アルカリ塩の1
    種以上を1〜10重量%、エチレン・ジアミン・酢酸ア
    ルカリ塩を2〜15重量%、水酸化カリウム又は水酸化
    ナトリウムを0.1〜5重量%、チオグリコール酸アル
    カリ塩を0.05〜0.5重量%、過酸化水素を3〜7
    重量%含有する混合水溶液から構成されることを特徴と
    する高速度工具鋼のチタン、窒化チタン、炭化チタン等
    のチタン化合物のコーティング被膜の除去剤。
JP3230983A 1991-08-19 1991-08-19 高速度工具鋼のチタンコーティング被膜の除去剤 Expired - Lifetime JP2597931B2 (ja)

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